美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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ルルVSグレイブル

ビリビリと空気が震える、肌がピりつく・・・。そんな気迫を感じながら、私はルルを自分の体の後ろに隠す。そんな私を見ながら、グレイブルは私に質問を投げかけてくる。

 

 

『水の女神よ・・・。貴殿ほどの実力者が、何故ここに居る・・・。我の血肉を食わんでも、貴殿は不老不死の様なものだろう?』

 

 

「御生憎様だがね、そんな物に興が湧いて来たわけじゃないさ。ここを訪れたのは、不老不死の為じゃない。後ろに隠れている、この子の為さ。」

 

 

『何・・・?この様な、ちっぽけな人間の為にか?冷徹無比で知られる水の女神が、この様な(わらべ)に絆されでもしたのか・・・?それとも、無垢なる魔力を持つからか?』

 

 

その言葉に、私は少し考え込んでしまう・・・。絆された・・・か。確かにグレイブルの言う通り、私はこの子に絆されているのかもしれない。だが、それはルルがマルチウィザードだからではない。

 

 

「そうだね、絆されているのかもしれない。だが、それはこの子がマルチウィザードだからじゃない。その様な才能を抜きにしても、真に強い男の子だからだよ。」

 

 

その私の言葉に、ダンジョン内に静寂が訪れる。そして、そんな静寂を打ち破ったのはグレイブルの嘲笑ともとれる大きな笑い声だった。

 

 

『ブワハハッ!!貴殿は、正気でも失ったのか!?この童が、強い男だと!?随分と戯けた事を抜かすものだ!魔力量も、出力量もそこらのゴミ虫共と変わらんではないか!!』

 

 

確かに・・・ルルの現在のステータスを見れば、こう思われるのも無理はないだろう。だが、グレイブルは知らないのだ。ルルの、本当の強さを・・・。

 

 

「ゴミ虫・・・か。何故そう思うんだい?」

 

 

『決まっておろう!!その魔力量では、低級魔族程度としか渡り合えん!!そもそも、このダンジョンにも貴様が助力した御陰で来れた様なものだろう!?人間など、所詮は儚い生き物だ!!その様な者が、我の前に現れる事自体が不愉快極まりない!!』

 

 

そう叫びながらも、口から炎を吐き続けるグレイブル・・・。そんな奴は、ルルに対して厳しい言葉を吐き続ける。だが、奴が人間に対して嫌悪感を抱く理由は・・・奴の血肉にある。

 

 

「グレイブル、君が人間に対して嫌悪感を抱くのは・・・。君の不老不死の血肉にあるのかい?君の血肉を狙う、人間達が憎いのだろう?」

 

 

『当然だ!!我の血肉を血眼になって探し当てようとする、愚かな人間共を数多く見てきた!!我は、ただ静かに暮らしたいだけだというのに!!貴様等のような、神々もそうだ!!我の様な魔族に、救いの手を差し伸べてくれん!!ならば、我等は己自身を守らなければ生きてはいけないのだ!!』

 

 

ヤツの慟哭に、私は少なからず居た堪れない気持ちになる。彼がここまで狂暴化した理由には、我々神の怠慢もあったというのか・・・。

 

 

「それに関しては、申し訳ないとは思っている・・・!だが、我々は君の血肉を欲しいが為に来た訳ではない!!」

 

 

『何だと・・・!?』

 

 

「君に、この子を鍛える指南役になって欲しいから、此処に来たんだ!!」

 

 

私のその言葉に、再び静寂が訪れる。そして、グレイブルはジッと目を細め始める。まるで、ルルの事を品定めするかのように・・・。

 

 

そして、ルルはそんな彼の眼差しに怯えつつも、しっかりとその眼を見つめ返そうとする。その眼を見つめ続けたグレイブルは一息を吐くとルルに話し掛けてきた。

 

 

『無垢なる魔力を持つ、小さき人間よ・・・。』

 

 

「ル、ルルです・・・。」

 

 

『我の名は、グレイブル・・・。この地に根差す、神級魔族だ・・・。貴様は、マルチウィザードで間違いはないのだな・・・?』

 

 

「は、はい・・・!」

 

 

『そうか・・・。話を聞く限り、どうやら水の神は我を貴様の指南役にするつもりらしい・・・。確かに、我は水魔法以外の五大属性全てを扱えるからな・・・。だが、我にも魔族としての矜持というものがある・・・。分かるな・・・。』

 

 

その言葉に、ルルは首を傾げながらも恐る恐るコクリと頷いた。そんなルルを見定めるように目を細めると、グレイブルはルルに対して条件を突きつけ始めた。

 

 

『無条件で手を貸すなど、我の矜持が傷ついてしまう・・・。故に、貴殿に決闘を申し込む!!』

 

 

その言葉に、ルルの顔に緊張感が走る。私も、この展開は予想はしていたものの、内心では焦燥感が募ってしまう。果たして、ルルの今の実力でどこまでやれるのか・・・。

 

 

「ルル・・・。君は、どうするのかな?」

 

 

私のその言葉に、ルルの顔が恐れに染まり始める。それもそうだろう、圧倒的な体格差に肌で解かる程の魔力量の差・・・。まさに、大人と赤子ほどの実力差だ。

 

 

だが、ルルは逃げなかった・・・!小さく柔らかな手を震わせながら・・・。桃色の頬に、恐れ涙を流しながらもグレイブルの目を見据えたのだ!!

 

 

「た・・・戦います!!つ、強く成る為に!!」

 

 

『その言葉・・・撤回効かんぞ・・・。ではゆくぞ!!レベル3・・・!テンペスト・ハウル!!』

 

 

グレイブルはそう言うと、大地を震わせるほどの咆哮を上げ始める!!私は結界魔法で身動(みじろ)ぎ一つもしないが、ルルは吹き飛ばされてしまう!!そして壁に叩き付けられる彼に、私は駆け寄りたくなってしまうが心を鬼にして状況を見守る。

 

 

(ルル・・・!)

 

 

そうして、地面に伏してしまったルルはなんとか立ち上がる。神衣の効果で、ダメージは並の冒険者が食らうよりも軽減されているはずだ。しかし、ルルにはキツかったのか咳き込み始めてしまう。

 

 

「う、うぅ・・・。ケホッ・・・!」

 

 

『フン・・・。やはり脆いな、人間よ・・・。水の女神よ、貴殿も損な役回りとなってしまったな。これほど弱い、小さき生物の傍に居てやらなくてはならんのだからな。』

 

 

グレイブルはそう言いながら挑発してくるが、私は感情を抑え続ける。今ここで私が激昂してしまえば、ルルの折角の覚悟が無駄となってしまう。

 

 

「まだ、ルルは降参していない。戦い続ける限りは、この子は負けていないのだ。判断を早まるのは、戦場では命取りだぞ。」

 

 

私のその言葉と同時に、ルルは炎魔法を展開する。その炎は微かな揺らめきを見せながらも、グレイブル目掛けて飛んで行く。

 

 

「れ、レベル1!!え、焔哭(えんこく)!!」

 

 

しかし、その炎はグレイブルには効かずに消滅してしまう。そんな炎魔法に、グレイブルは呆れたように呟く。

 

 

「・・・何だこの程度の攻撃は?レベル1・・・フルメン・デウス・・・。」

 

 

そして、次いで放たれたのは雷魔法だが・・・。流石は、神級魔族だ・・・。レベル1魔法にも拘らず、その雷魔法はもはや災害そのもの。ルルは呆気なく食らってしまう・・・。

 

 

「あぐっ・・・!」

 

 

そして、雷の勢いが収まり静寂が訪れる。そして、そこに居たのは案の定と言うかぐったりと横たわるルルの姿だった。そんな彼の惨状に、心が引き裂かれるほどの痛みに襲われるが私は動かない・・・。

 

 

『水の女神よ・・・。その童を連れて、ダンジョンから立ち去れ・・・。今なら、まだこの童の命は助かるであろう。』

 

 

「そんな甘言に、私が乗ると思ったのかい?何より、ルルは毅然とした覚悟で、君との果し合いに望んでいるんだ。その様な事をすれば私は、ルルの覚悟を蔑ろにしているのと同じだ。勝負を引くも続けるも、それを決めるのはルル自身だ。」

 

 

そう言い切ると、私はぐったりしているルルに呼び掛け始める。彼の耳・・・否、魂に聞こえるように。

 

 

「ルル・・・!!耳で聞こえ無くとも、魂で聞き取ってくれ!!雷魔法を、自分の胸の奥辺りに向かって放つんだ!!」

 

 

その言葉に反応は無い・・・。しかし、ルルの胸部付近に小さな稲妻が走ったかと思うと彼の身体が痙攣する。どうやら、無意識の内に心臓に電気刺激を与えたらしい・・・。生存本能によるものかな・・・?

 

 

「ハァッ・・・!!ハァッー・・・!!ハァァッ・・・!!」

 

 

そう荒い呼吸をしながらも、目を覚ますルル・・・。己自身の心臓に電気刺激を与えるなど、並の精神性では出来ない筈だ。そんなルルの様子に、グレイブルも何か思う事があるのか目を細める。

 

 

『ぬぅ・・・!雷魔法で、心の臓を動かしたか・・・!貴殿は阿呆なのか?加減を間違えていれば、死んでいたのかもしれんのだぞ?』

 

 

その言葉に、ルルは覚束(おぼつか)無い足取りでグレイブルに歩み寄る。そんなルルの目つきは、相変わらず怒りや憎しみなどは感じられない優しい目つきだ。しかし、その眼の奥には確固たる意志が宿っている。

 

 

「ぼ・・・僕は、絶対に諦めません・・・。」

 

 

『何・・・?』

 

 

「ぼ、僕は・・・。五大・・・属性を使いこなして・・・、皆の笑顔を護りたい・・・んです。ぼ、僕と・・・同じ様な、悲しい目に遭う人は・・・居なくなってほしいんです・・・。だ・・・だから、グレイブルさんに・・・魔法を教えて欲し・・・いんです。だ・・・だから、貴方に認められた・・・いんです。」

 

 

そう言いながらも、ルルは風魔法を作り出す。しかし、その風魔法は先程の炎魔法と同じ程度の威力・・・。いや、それ以下ともいえる程の威力しかない。

 

 

「い、今の僕の・・・出せるっ!最後の魔法です・・・!れ、レベル1・・・!春風(しゅんぷう)・・・和心(わしん)・・・。」

 

 

その言葉が終わると、ルルはその場に倒れ込んでしまう。そして、ルルが倒れると同時に洞窟内に風魔法が吹き始める。その風魔法の威力は、グレイブルの前では無力同然のそよ風の様な物だ。だが・・・、私は内心で勝利を見出していた。

 

 

『なんだ・・・、この風魔法は?・・・とても清らかで、温かいぞ。』

 

 

そう呟くグレイブルと私を撫でる風魔法は、如何なる物も切り裂く通常の風魔法ではない。寧ろ・・・全てを優しく包み込む、春風の様な心地良さすら感じられる。

 

 

『風魔法というのは、レベル1であったとしても物体を切り裂く魔法では無いのか?いくら力の差が有ったとしても、我の体毛一本も切れんなど・・・。いや、それどころか・・・。』

 

 

「心が温まってきたかい?」

 

 

『・・・っ!!わ、分からぬ!!攻撃効果の無い風魔法など、聞いた事も見た事も無いぞ!!わ、童よ!貴殿は、不老不死に成る為に我のもとに来たのではないのか!?まさか、我に情けを掛けたのか!?答えよ!!』

 

 

そう混乱をするグレイブルに、私は無数の氷槍を宙に浮かばせ静かにさせる。レベル2の魔法とはいえど、数千本の槍に囲われてはグレイブルもただでは済まない。

 

 

「グレイブル・・・。幼子の眠りを邪魔する事以上に、罪深い事は存在しないよ。」

 

 

『ぬ、ぬぅ・・・!』

 

 

そんなグレイブルを横目に、私はルルのもとへと向かい治癒魔法で体を治し始める。幸い、心肺機能に影響は無さそうだ。目を覚まさないのは、ただ眠っているだけであろう。

 

 

「神級魔族相手に、よく頑張ったね・・・。ゆっくりお休み。」

 

 

そう言いながら、私は水魔法で出来たクッションにルルを寝かせてやる。そして、ダンジョンの地面に座るとグレイブルも私の傍に座り始めた。

 

 

『・・・何故、この童の風魔法は・・・あそこまで心地の良いものだったのだ?』

 

 

「ルルに、優しい心があったからさ。この子は、私が心配になるくらいに優しい子だからね。君の過去を聞いて、悲しくなってしまったのだろう。人間に不条理な理由で、付け狙われる君に対してね。」

 

 

その私の言葉に、グレイブルは眉一つ動かさずに己の持論を話し始め、私は彼の隣でその言葉に耳を傾ける。

 

 

『・・・人間は嫌いだ。我の平穏を、常に脅かし続けに来る。』

 

 

「そうだね。君のその血は、文字通りに呪いと言っても過言じゃないだろう。」

 

 

『だからこそ、心が乱される・・・。この童は、本当に我の血肉を欲する為に来たのではないのか?』

 

 

「先程から言っているだろう?ルルは、君の不老不死をもたらす血肉などに興味は無いんだよ。彼の心の中にあるのは、五大属性全てを使って無辜の民を救い、この世界に平和をもたらす事だ。いや・・・それどころか、己の目的を果たした後にはその命を絶ってしまいそうなほどの危うさが彼にはある。」

 

 

その言葉に、グレイブルの表情が複雑そうに変わっていく。恐らくは、己が数千年の間持ち続けてきた人間に対するイメージが崩れてきているのだろう。

 

 

『この童は、何故そこまでして己を犠牲にするのだ?もう少し、己を大事にしても良いだろう。』

 

 

その言葉に、私は少しだけ黙り込むとグレイブルに事のあらましを話し始める。その言葉に、グレイブルの顔は驚きの表情から忌々し気な表情に変貌していく。

 

 

『なるほど・・・。あの、礼儀知らずの人間共のもとに居たのか・・・。たしかに、あの色黒の男からは下卑た感情しか感じられんかったが・・・!この様な力無き童を、利用するだけ利用して捨て去るとは!やはり、所詮は人間という訳だ!!その様子では、奴の魔法が我に直撃しなかったのは・・・。』

 

 

「恐らくは、ホムラが神ノ加護を(いじ)ったのだろう。彼女の性格の事だ、恐らくは魔法が発動できずに焦燥感に駆られるセルジオを見て、腹を抱えて(わら)っていたのだろうね。」

 

 

『相変わらずだな、あの炎神も・・・。』

 

 

そう言いながらも、グレイブルはルルの顔を覗き込み始める。そして、大きく溜息を吐いたかと思うと私に話し掛けてくる。

 

 

『それで、我に指導者に成って欲しいと言っていたな。あれは、どういう事だ?』

 

 

「あぁ。ルルの事を鍛えたいのは山々なのだが、生憎私は水と氷魔法しか使えないんだ。だから、ルルに水魔法以外の属性を教えてやってくれないか?君は、水魔法以外の属性魔法なら使えるだろう?」

 

 

『うむ・・・。それだけか?』

 

 

「それ以外の事は、何も望まないさ。不老の肉体も、私とルルにとってはどうでも良い事だ。」

 

 

その言葉に、グレイブルは少しばかり考え始める。そして、大きく溜息を吐くと私の案に了承してくれたのだ。

 

 

『良いだろう・・・。その童の、属性魔法を伸ばしてやる。』

 

 

「おや、良いのかい?」

 

 

『勘違いをするな。この童を鍛えれば、将来的に我の良い遊び相手になるであろうからな。この童の為ではない、我の退屈しのぎの為の戦闘相手を作る為に鍛えるだけだからな。』

 

 

そう言いながら、謎のツンデレを発動させるグレイブル・・・。そんな彼に苦笑いをしながらも、私はルルを抱きかかえて空間転移魔法でダンジョン入り口まで瞬間移動する。

 

 

ダンジョン入り口まで到達すると、視界に入って来た光に私は思わず目を細めてしまう。しかし、そんな温かな日差しはルルを労わっているかのようだ。

 

 

そんな私の腕の中で、幸せそうな顔で眠る天使(ルル)が目を覚ますまであと数分・・・。

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