美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。 作:雨を呼ぶてるてる坊主
サラサラって綺麗な音が御耳に聞こえてくる。それから、僕の御顔にフワフワしたものもポフポフ当たってる気がする・・・。僕・・・、何してたんだっけ?
そう考えた僕は、必死にさっきまでしてた事を思い出そうとする。そうだ、今日はヒサメさんと一緒にダンジョンに来たんだ。そして・・・、神級魔族のグレイブルさんとバッタリ会っちゃって・・・。戦う事になっちゃったんだっけ?
段々思い出してきた・・・。グレイブルさんに魔法を教えて貰う為に、僕は一生懸命戦ったんだ。いっぱい、色んな魔法を出したつもりだったけど・・・グレイブルさんには効いてないみたいだった・・・。
そんな僕の攻撃が終わってもう駄目だと思った僕は、目の前に居るグレイブルさんに風魔法を唱えた・・・。誰からも教えて貰ってない、僕だけの特別な魔法・・・。でも、魔法を唱えたら僕は疲れて眠っちゃったんだ・・・。
(グレイブルさん・・・、悲しそうにしてた・・・。)
そう考える僕の身体はポカポカしてて、フワフワしてる。良い匂いのする御布団で僕は眠ってるのかな・・・?
(そろそろ、起きないと駄目かな?でも、フワフワしてて起きれない・・・。)
そう思いながらも、僕は頑張って目を開けようとする。すると、僕の目の前に有ったのは銀色の綺麗なフワフワの御毛だった。
「・・・?フカフカの御布団?」
『誰の毛皮が毛布だ、この小童が。』
「う・・・?」
段々と意識が戻ってきた僕が顔を上げると、僕の視界に金色のキラキラした御目が入ってきた。そう、そこに居たのはグレイブルさんだったのだ。
「グレイブル・・・しゃん?」
『ようやっと、目が覚めたか。我の体毛を寝床代わりにするなど、貴殿ぐらいだぞ。』
「あぅ・・・。ごめんなしゃい。」
『ふん・・・。』
そう御鼻を鳴らすと、グレイブルさんは目を閉じて寝ちゃった・・・。静かに成ったオレンジ色の夕日が照らす森の中で、僕は最後に出した風魔法を出してみる事にする。すると、僕の身体を優しい風さんが包み込んでくれた。
(これが・・・、僕の魔法なんだ。)
そう思いながら、僕は少しでも風さんの温かさを捕まえようと自分の身体を抱きしめようとする。すると、僕の身体を誰かが包み込んでくれた。御顔を見なくても分かっちゃう・・・。
「ヒサメさん・・・?」
「ルル、良い子で待っていられたかな?」
「は、はい!グレイブルさんは、寝ちゃいました・・・。」
「そうか、折角グレイブルが好みそうな肉を狩って来てやったというのに・・・。捻くれた奴だな・・・。」
そう言いながら、ヒサメさんは御肉を捌いている。まだ、御肉の解体を見るのは慣れないけど・・・。もしかして・・・、ヒサメさんって御料理得意なのかな?そう思った僕は、ヒサメさんに恐る恐る提案してみる。
「ひ、ヒサメさん。」
「ん?」
「ぼ、僕と一緒に、御夕飯作りませんか?」
「・・・無理しなくても良いよ?グレイブルとの戦闘で疲れているだろう?」
ヒサメさんはそう言いながら、僕の頭を優しく撫でてくれる。でも・・・、僕はヒサメさんと一緒に御飯を作ってみたいのだ。その思いをヒサメさんに伝えると、ヒサメさんは困ったように笑いながら頷いてくれた。
「分かったよ。その代わり、食材を切るのは私に任せて貰えるかな?」
「は、はい!」
その言葉と共に、僕達は一緒に御料理を始める。ヒサメさんが水魔法で作った、水のナイフで御肉をドンドン切っていって、僕は風魔法で食べれる野草を切っていく。
そして、最後には僕の炎魔法で起こした焚火で御肉を焼いて行けば完成しちゃうんだ。
「ふわぁ・・・。良い匂いですね。」
「そうだね。・・・とはいえ、肉だけだと栄養が偏るからね。しっかりと、野菜も食べようね。」
「は、はい!御野菜、大好きです!」
「そうか。好き嫌いが無いのは、偉い事だよ。」
そう言いながら、ヒサメさんは僕の頭を撫でてくれる。そんなヒサメさんの手付きに、僕の心はポカポカしちゃう。
そうこうしていると、僕達の後ろで眠っていたグレイブルさんが大きな欠伸をしながら御目を覚ましてくれた。
『この匂いは・・・、肉か?我の好物だ。』
「起きたのか、野菜も食べるんだよ。」
そのヒサメさんの御小言に、グレイブルさんは物凄い御顔をしちゃってる。御野菜嫌いなのかな・・・?
『何故我が、野草なんぞを食べねば・・・。』
「ルルでさえ、野菜を食べる事が出来るというのにね。まさか、悠久の時を生き続けてきた伝説の魔族様が、野菜を食べれないなんて事は無いだろうね。」
『ぬぅ・・・!』
「あれだけルルの事を『ちっぽけな人間』と罵っていたくせに、野菜も食べる事が出来ないのか。まったく・・・、神級魔族の威厳の欠片も無いな。」
『ぐぬぅぅっ・・・!!』
そう言いながら、グレイブルさんはヒサメさんに物凄く怒ってるみたい。だって、セルジオさんに出て行けって言われた時よりも、空気がビリビリしてるもん。でも、そんなビリビリした空気も直ぐに収まっちゃった。
『ならば、せめて肉と共に食わせろ!!』
「分かっているよ、元よりそうするつもりだったからね。」
そう言うと、ヒサメさんは焼きあがった御肉を御野菜の上に乗っけて包み始めてる。なんだろう・・・、御肉だけで食べるよりも美味しそう。
「さぁ、召し上がれ。」
ヒサメさんの言葉が終わると、僕とグレイブルさんは葉っぱに包まれた御肉を口を開けて食べ始めた。すると、御口の中に肉汁が溢れ出たんだけど、脂っぽさは野菜の御陰で無くなってた。
「ふわぁぁ・・・!美味しいです!」
「そうだろう?グレイブルはどうだい?」
『不味くは無いな・・・。』
そう言いながらも、グレイブルさんはモグモグ御肉を食べている。グレイブルさんは、どうして美味しいって言わないのかな?
「グレイブルさん・・・。美味しくないんですか?」
「ルル、心配しなくても良いよ。彼は、ツンデレなんだ。」
ツンデレ・・・って何だろう?ツンツンって事は、トゲトゲの事を言ってるのかな?でも、それじゃあデレって何なんだろう?デレ・・・デレ・・・?
僕がそう考えてる間にも、グレイブルさんはヒサメさんにぷりぷり怒っているけど、ヒサメさんはあんまり反省はしてないみたい。
『おい!"つんでれ"とやらの意味は分からんが、馬鹿にされているという事は分かったぞ!!今すぐ訂正せんか!!』
「一応、誉め言葉のつもりで言ったのだけれどね。御気に召さなかったかな?」
『貴様!我の炎魔法で、消し炭にしてやろうか!?』
「ならば、水魔法で君の炎を消して見せようか?」
そんなヒサメさんとグレイブルさんの後ろに、ボウボウって燃える炎が見えるけど・・・。僕の気の所為なのかなぁ・・・?でも・・・、喧嘩は良くない事なんだけど・・・。
(家族みんなで、御飯を食べてるみたい・・・。嬉しいな・・・。)
ヒサメさんとグレイブルさんの喧嘩の様子を見た僕の心は、なんでか分からないけどポカポカしてたんだ。
しばらくしてから、御片づけをしたりしてダンジョンから街に帰る僕達なんだけど・・・。なんでか分からないけど、僕とヒサメさんはグレイブルさんの背中に乗ってた。そして、グレイブルさんは僕達を乗せながら不満そうにしてるみたい。
『何故、我が貴様等を運ばねば・・・。』
グレイブルさんは、そう言いながら怖そうな顔をするけど、ヒサメさんに言いくるめられちゃう。
「働かざる者食うべからずだよ。飯の恩を返さないのかい?」
「ぐ、グレイブルさん・・・。ぼ、僕達、重たいですか?」
グレイブルさんが大変な思いをしちゃうのが嫌だった僕は、ついつい泣きそうな声になっちゃった。・・・うぅ、こういう泣き虫なところも、直さなきゃ駄目なのかなぁ・・・。
『いや、そういう訳では・・・。ぐぬぅ・・・。』
でも、グレイブルさんは僕を泣き虫だって怒ることなんて無かった。でも、どうして困った様な顔に成ってるのかな?ヒサメさんは、グレイブルさんの方を見てニコニコしてるし・・・。
僕がそう考えていると、ヒサメさんが僕にとある提案をしてきてくれた。
「ルル。折角だから、契約を結んでみては如何かな?」
「契約・・・。ですか?」
契約・・・。また、僕の知らない言葉が出てきちゃった。もしかして、もの凄く大事な事なんじゃないかと思った僕は、頑張って耳を大きくして聞き始めてみる。
「そうだ。神級魔族とはいえ、このままだとグレイブルは町に入る事が出来ない。」
『ふんっ!!たかだか人間風情など、我の敵では・・・。』
「グレイブル。人里で暴れれば、偉龍に言いつけるぞ。」
グレイブルさんが自慢気に御鼻を鳴らそうとしてたけど、そんなヒサメさんの一言で静かに成っちゃった。偉龍さんって、もの凄く優しそうだったけど・・・怒ったら怖いのかな?
『ぬぅ・・・。』
「心配せずとも数千年前なら兎も角、今の時代で神級魔族に単騎で勝てる者など居ないだろう。それに、何か言われても私が護ってやるさ。」
『ふん・・・!貴様等に護られずとも、己の身は己自身で護るわ。・・・まぁ、契約などしておいて損は無いからな。』
そう言うと、僕の右手がポカポカ温かくなってきた。不思議に思いながら見ていると、僕の右手に不思議な模様が浮かび上がったのだ。
「ヒサメさん、これって?」
「契約の証だよ。これで、グレイブルは正式に君の従魔になったんだ。見た事は無いかい?従魔使いの冒険者を。」
そのヒサメさんの言葉に、僕は"不死鳥ノ爪"にいた頃に出会った冒険者さん達の事を思い出す。そういえば、スライムさんやゴブリンさん達と一緒に居る人がいっぱい居た様な気が・・・。でも・・・、サギリさんは普通は上級魔族さんを従魔にしたら凄いものって言ってたような・・・。
あれ?グレイブルさんって、神級魔族さんなんだよね?あれれ?も、もしかして・・・僕はとんでもない魔族さんと契約した事になっちゃったんじゃ・・・。
『それにしても、貴殿の空間転移魔法を使えば目的の町まで行けるだろう。何故、わざわざ我の背中に・・・。』
「ルルの情操教育の為さ、我慢してくれ。君も、主であるルルが世間知らずだと恥をかいてしまうだろ?」
『はぁ・・・。とんでもない小童と、契約をしてしまったものだな・・・。』
そんなヒサメさんとグレイブルさんの会話は、僕の御耳には入って来なかった。どうしてかっていうと、森を抜けた先の原っぱには綺麗な御花が沢山咲いてたから!!
「ひ、ヒサメさん・・・綺麗です・・・!!」
「そうだね、辺り一面が綺麗な花畑だ。良い香りもしてくるね。」
『物言わぬ植物を見て、何が楽しいのだ貴殿達は・・・。』
「グレイブル・・・。君には、風情というものが無いのか・・・?」
そう話していると、遠くに大きな門が見えてきた。ギルドマスターさんが、グレイブルさんに会ったらビックリしちゃうかな?そう思いながら、僕は少しだけワクワクしていたのだった。