美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。 作:雨を呼ぶてるてる坊主
さて・・・グレイブルを連れて、ギルドに帰還している最中の私達だが・・・。そんな私達の周囲からは、好奇や恐怖の眼差しが向けられている。
「おい・・・、見ろよあれ。」
「な、なんだよあの魔族・・・。デカ過ぎにも程があるだろ・・・。」
「ママー、何あれー?」
「シッ!見ちゃ駄目よ!!」
そんな彼等の喧騒に、私とグレイブルは何処吹く風と言ったところなのだが、私達とは違いルルは縮こまってしまっている様だ
「ルル、大丈夫かい?」
「は、はい・・・。僕は大丈夫ですけど、グレイブルさんが変な目で見られてて・・・。グレイブルさん、大丈夫ですか・・・?」
『フン!人間如きに臆する我ではないわ!!』
「・・・人の心配を、素直に受け取る事が出来ないのか君は?」
そう話しながらも、私達はギルド会場に足を踏み入れる事になる。グレイブルは、その体躯の所為か入室するのに随分苦労していた様だが・・・。そして、私の予想通り会場内は一気に大騒ぎとなってしまった。
「お、おい!あれって、神級魔族のグレイブルじゃねぇか!?」
「な、なんで神級が此処に居るんだよ!!」
「え、衛兵を呼んで来い!!」
・・・私としては、なるべく事を荒立てすにギルドマスターに報告したいんだが・・・。さて、どうしたものかと頭を悩ませているとなんとルルが声を上げたのだ。
「あ、あの・・・。だ、大丈夫です・・・!ぐ、グレイブルさんは、危ない魔族さんじゃないです・・・!!ぼ、僕と契約・・・?しましたから!!」
その言葉に、周囲の冒険者達が静まり返ったかと思えばルルを憐れみ始めたのだ。まぁ、当たり前の反応ではあるんだが・・・。
「嘘だろ!?こんな子供が、グレイブルと契約できるわけがない!!」
「あぁ、可愛そうに・・・!!グレイブルの魔力に中てられたのか!!」
「誰か!僧侶を呼んできてやれ!!」
そう再び現場が混沌を極めようとしたそのとき、グレイブルが強烈な殺気と共に大声を上げた。そんな彼の声量に、ギルド内の窓ガラスが全壊する!!
『貴様らいい加減にせんか!!大の大人が、童の成す事に逐一文句を垂れよって!!この童の事は、我が直々に認めているのだ!!これ以上、この童を侮辱するのならば我が許さんぞ!!』
その咆哮に全員が押し黙ると、グレイブルは満足したかのように地面に伏せ始めた。・・・本当に、何処までいっても自由人だな。いや、自由魔族か・・・。そうこうしていると、奥からギルドマスターがやって来たのだが・・・。
「ヒサメ様!ルル様!お帰りなさいま・・・どぅぇぇ!!ぐぐ、グレイブル!?な、何故ここに!?」
「・・・奴の件なら、ギルド長室で話したい。それで構わないね?」
「はは、はい!!」
そのギルドマスターの言葉を確認すると、私はグレイブルとルルに目配せをしてギルド室に向かう事にした。サイズの都合上、グレイブルには魔法で少し縮んでもらったが。
そして、ギルドマスター室で私は事情を説明する事にする。そして、当然の様に私の説明にギルドマスターは頭を抱えてしまった。
「た、確かに・・・。グレイブルを殺せなどとは御願いしていませんが、まさか契約するとは夢にも思わないではないですかぁ・・・。王都に、なんて説明をすれば・・・。はぁぁ~。」
『なんだ、ただ我が童に付き従うだけの話であろう?何をそんなに思案する事がある?水の女神曰く、魔族と契約する者など珍しくは無いと聞いていたが?』
「思案するに決まってるじゃないですかぁ~・・・。グレイブル殿・・・貴方には自覚が無いかもしれませんが、そこいらの魔族と神級魔族では格が違い過ぎるんですよ・・・。因みに、契約の証拠というのは・・・?」
その彼の言葉に、グレイブルとルルは契約の証明である紋様を浮かび上がらせる。すると、ギルドマスターはいよいよ机に突っ伏してしまった。
「うぁぁ・・・、報告書を提出したく無い・・・。絶対に、王都から呼び出される・・・。」
そう言いながら頭を抱える彼だが、私はどうする事も出来ない。まぁ、神通力を使えばどうとでもなりそうだが・・・面倒な事になるのは目に見えている。
「取り敢えず、任務完了という事で良いのかな?」
「は、はい・・・。こちら、御約束の御金です・・・。」
そうして提示された金額は、私の予想を遥かに上回るほどの金額だった。果たして受け取ってもいいのかどうか迷ったが、いつまでも安宿に泊まる訳にもいかないしルルに美味い物も食べさせてやりたい。
そう思った私は、有難く金を受け取るとギルドを出て街へ繰り出す事にする。・・・そして、換金所へ魔族の皮や生き血を売り飛ばすと、換金所の店主から勧められた宿に宿泊する事にする。その宿は、昨日とは違いそこそこの値段のする宿だった。
「よし、今日は此処が私達の寝床だ。」
「わぁ・・・。こんな所、泊まった事も無いです!」
「そうだろう?グレイブル用の、小屋も申請しているからね。」
私がそう言うと、グレイブルは鼻を鳴らして小屋に入って行ってしまった。どうやら、未だに信用はされてはいないようだね。
「グレイブルさん・・・。一人ぼっちで寂しくないでしょうか?」
「寂しいという感情以上に、人間嫌いの感情が勝ってるんだろう。」
「・・・?僕は人間ですけど、ヒサメさんは神様ですよね?ヒサメさんは、嫌われて無いんですか・・・?」
そう呟く彼に、私は暫く呆けた後に思わず吹き出してしまった。どうやらルルは、人間嫌いという言葉をそのままの意味で捉えてしまったようだ。
「フッ、フフッ・・・!そういう意味じゃ無いよ、人間嫌いという言葉は。人間嫌いというのは・・・、分かりやすく言うなら他者と関わるのが酷だという事かな。」
「一人ぼっちが、嬉しいって事ですか?」
「嬉しいというより、気楽と言った感じだろうね。」
そう言いながら、私は宿の受付へと向かうと宿泊手続きを終わらせる。そうして提示された部屋へと向かうと、そこは以前に泊まった宿とは比べ物には成らない程の洗練された宿部屋だった。
「ふわぁぁ・・・!!とっても綺麗です!!」
「おや・・・。まさか、ここまでの待遇だとは思わなかったね。」
「ヒサメさん!真っ白なベッドです!!」
「そうだね、純白の絹糸かな?」
私がそう言うと、ルルは恐る恐るベッドに倒れ込む。すると、まるで蟻地獄に嵌まった蟻のように彼の身体はズブズブ沈んでいく。
「ふわぁぁ・・・。フカフカ・・・れす。」
「眠たいだろうけど、先に湯浴みをしないといけないよ。今日は、沢山動いたからね。」
「ヒシャメしゃ・・・。らっこ・・・してくらさい。」
「御安い御用さ。ほら、掴まって。」
私がそう言うと、ルルは蕩けた眼差しのまま私に甘えるように抱き着いてくる。どうやら、本当に疲れている様だね。まぁ、神級魔族と戦ったのだから当たり前か・・・。しかし、これはなんと言うか・・・。
(可愛過ぎにも程があるだろうっ・・・!!)
私の腕の中で睡魔と勝負しているかのように目を擦る彼は、まるで小動物のようだ。独りでは何をする事もできず、只々蹂躙されるだけ・・・。そんな、強者に護られる為だけに生まれた来たような存在・・・。だが、その実態は・・・。
(奇跡の子とも言われるほどの、魔力の持ち主・・・か。)
そう思いながら、私はルルの体を洗い湯舟に入ると彼を胸元に引き寄せる。すると、私の胸元がじんわりと温まって来る。湯舟の温かさではなく、ルル自身の温かさによって・・・。
(願う事なら、このまま湯船に浸かっておき続けたいが・・・。ルルが
そう考えた私は、ルルを抱き上げるとベッドに向かう。そして、キングサイズともいえる程のベッドに倒れ込むとホッと一息を吐き出してしまう。
「ルル、今日は疲れただろう?」
「う・・・。疲れて無いれす・・・。」
そう呂律の回らない声で抗議する彼が、どうしても可愛らしく感じてしまう。そんな彼に笑い掛けながら、私は彼の髪を指で
「嘘を吐いてはいけないよ。そうやって、自分の身体に嘘を吐き続ける事は破滅に繋がってしまうからね。」
「れも・・・。」
「明日からは、グレイブルと私で魔法の使い方を教えていくからね。しっかりと、魔力と体力を回復させる様に・・・。」
「はい・・・。」
そう言いながらルルを寝かしつけようとするが、魔法の特訓をすると自覚したのかルルは中々に眠れないでいるようだ。
「眠れないかな?」
「・・・ごめんなさい。」
「それじゃあ、私が魔法をかけてあげるよ。眠れる魔法を・・・。」
そう言いながら、私はルルの耳元に口を近づけると子守唄を歌い始める。そうだ・・・この歌は、私が小さい頃に今は亡き母が奏でてくれた唄・・・。
「ルル・・・、ゆっくりお休みなさい。」
「おや・・・すみな・・・さい。」
そう呟くルルが眠りに落ちると、私もゆっくりと目を閉じ始める。そんな私は、明日からの為すべき事に想いを馳せる。ルルとの特訓や、新しいギルドの依頼・・・。
(楽しみだな・・・。)
そう考えた私は、柄にも無く気付く事が出来なかった。窓の外から一羽の鳥が入って来て、机の上に一つの便箋を置いて飛び去った事などは・・・。