美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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王都からの呼び出し

はぁ・・・。どうして、こうなってしまったのだろうな・・・?今の私達の目の前には、大層な髭を蓄えた一人の男が座っていた。

 

 

「ふむ・・・。そこに居わせられるのが、新進気鋭のギルド・・・純白ノ索冥か。五代属性神様にマルチウィザード・・・それに、神級魔族・・・。面妖な組み合わせじゃのう・・・。」

 

 

「如何にも・・・。その通りに御座います。」

 

 

そんな男に応えるかのように、ギルドマスターは跪いている。その隣で私達は、事の成り行きを静観するしかない。何故なら、目の前に居るのは現在私達が身を置いている国・・・ヴァルガンのトップである、国王陛下が座っているからだ。

 

 

どうしてこうなったかというと、話は数時間前に遡る・・・。

 

 

野鳥のさえずりが聞こえる中、私は目を覚ます。そして隣を見ると、ルルは未だに眠ったままだった。そんな彼を起こさないように体を起こすと・・・目の前の机に、一通の便箋が置かれているのに気が付いた。

 

 

(何だこれは・・・?)

 

 

そう不思議に思いながらも便箋を破ると、中には一通の手紙が入っていた。そして、差出人を見た私は少しだけ眉を寄せてしまう。

 

 

「・・・王都から?」

 

 

差出人名に不信感を抱きつつも、私は一寸の狂いも無く丁重に折り畳まれた手紙を開いてみる事にする。すると、そこには達筆な文字でこう書いてあった。

 

 

拝啓、純白ノ索冥の御一行様。突然の御便りを、如何か御容赦下さいませ。先日のグレイブル無力化の件を、我が国のギルドマスターから拝聴致しました。ついては、その件について御話しが御座います。御時間が御座いましたら、本日の昼時に王宮へと御越し頂けないでしょうか。御手数を御掛けしますが、詳しい話はギルドマスターに御聞きくださいませ。良き返事を待っております・・・。

 

 

「まぁ、こうなる事は予見していたが・・・。」

 

 

そう言いながら、私は念の為に手紙を亜空間魔法の中に押し込んでおく。そして、あどけない表情をしているルルの頬を少しだけ突いてみると、彼は目を擦りながら起き始めた。

 

 

「ヒシャメしゃん・・・おはようございます。」

 

 

「おはよう。・・・まだ寝ぼけてるみたいだから、顔を洗ってくると良いよ。」

 

 

「分かりまひた・・・。う~・・・。」

 

 

そう言いながらヨタヨタと洗面台に行く彼を見送りながら、私は手紙の内容を思い出す。一つの依頼を熟しただけなのにも関わらず、即刻王宮に招待される・・・。やはり、神級魔族を一目見たいという好奇心からか・・・?それとも、普段人間界に姿を現さない五大属性神に一目会いたいという想いからか?

 

 

まぁ、それらの二つが目的ならば特に問題はないだろう。・・・だが、万が一にでもルルを言いくるめて政治利用などしようものなら・・・。

 

 

「一族郎党皆殺しにしてくれる・・・。」

 

 

そうして、洗面台から帰ってきたルルに手紙の内容を伝えると彼は瞬く間に顔を青ざめさせてしまった。

 

 

「・・・というのが、手紙の内容だ。理解はしてくれたかな?」

 

 

「お、王都から・・・?え、えぇ!?ど、どうして王様達が僕を・・・!?」

 

 

「恐らくはグレイブルを従魔にしたという事や、五大属性神。更には、マルチウィザードという類を見ない魔法の才覚を持つ子が在籍をしている・・・。こんな耳寄りな情報を、王都が黙って見過ごすはずもない。」

 

 

「で、でも・・・。僕達の正体は、秘密の筈なんじゃ・・・。」

 

 

「大人の世界には、色々なしがらみや事情があるんだよ・・・。さて、朝御飯でも食べて緊張を解そうか。」

 

 

「は、はい!」

 

 

そうして、私達は宿の階下にある食堂に向かい食事をする事にする。そんな食堂では、先日の食堂とは違い礼節を弁えた冒険者が多々在籍している様で、気兼ねなく私達と接してくれた。

 

 

「坊主!てめぇ、神級魔族を手懐けたんだってなぁ!!」

 

 

「連れの姉ちゃんも、なかなかやるじゃねぇか!!」

 

 

「見掛けによらず、根性あるじゃねぇか!!気に入った!朝飯の代金は、奢らせてくれ!!」

 

 

「ねぇねぇ、良かったらお姉さん達のパーティに来な~い?」

 

 

そんな彼等に迫られ、私は上手い事躱していたがルルは対応に手一杯に成っているのかアワアワと戸惑うだけだ。そして、私は私でルルの肩に手を回す女冒険者に嫌悪感を抱きルルを抱き寄せてしまう。

 

 

「すまないが、この子は随分と人間関係に苦労した生い立ちを送っていてね。あまり、ベタベタと触らないでもらえるかな?」

 

 

「あら~、ごめんなさいね?それじゃあ、またね~。」

 

 

その女性の言葉と共に、私達の周囲に居た観衆は瞬く間に散らばって行ってしまう。すると、ルルが私に対して頭を下げてきてくれた。

 

 

「ひ、ヒサメさん・・・。有り難う御座いました。」

 

 

「ルル・・・。大丈夫だったかい?」

 

 

「は、はい・・・。ちょっと怖かったですけど・・・、ヒサメさんが抱きしめてくれてホッとしました。えへへ・・・。」

 

 

「・・・天使かな?」

 

 

そう心の中でボソリと呟いただけのつもりだったが、どうやら口に出てしまっていた様だ。ルルは、まるで茹蛸のように顔を赤らめてしまった。

 

 

「て、天使さんじゃないですよぉ・・・。」

 

 

そんなルルを揶揄うように、ふっくらした頬を突くと更に頬が熟れた林檎(リンゴ)の様に赤く染まってしまった。そして、その恥ずかしさを隠すかのように彼は急いで朝御飯を平らげてしまう。

 

 

そんなルルを、私は頬杖を付きながら観察してみる。本当に可愛いな・・・。そう思いながら、私は食事を終えたルルの手を引いてグレイブルが居る小屋の前に向かう。

 

 

「おはよう、グレイブル。よく眠れたかな?」

 

 

『フン・・・。そこそこと言ったところだな。』

 

 

「まったく、素直じゃ無いな。・・・今日は、王宮に向かわなければならないんだ。乗せてってくれるかい?」

 

 

『良いだろう・・・。そこの童に、歩き疲れたと愚図られるのも面倒だからな。』

 

 

そう言うと、グレイブルは私達を乗せて城下町を走り出す。そんな中、ルルがグレイブルの体毛に顔を埋めながら気の抜けた表情で笑顔を浮かべ始める。

 

 

「えへへ・・・、御日様の匂いがします。」

 

 

『御日様だと・・・?』

 

 

「は、はい!ポカポカして、心がフワフワしてきます。」

 

 

そんなルルの純粋な言葉に、グレイブルは何も言わずに走り続ける。・・・生き血目当てに、様々な人間からその身を狙われてきた奴の事だ。こんなにも純粋な子供に出会って、どう接してやればよいのか決めあぐねているのだろう。

 

 

『世辞を言ったところで、魔法の訓練を甘くするわけではないからな・・・。』

 

 

「は、はい!よ、よろしくお願いします!」

 

 

「さて・・・王宮に着くまで、のんびり風景でも眺めていようか。」

 

 

そう言うと、私とルルはグレイブルの背中で美しい街並みや草原などを見つめ続ける。そうして、暫くすると王城の門前にまで到着していた。すると、門兵が警戒しつつも私達に声を掛けてくる。

 

 

「失礼。御用件と、所属ギルド名を御提示くださいませ。」

 

 

「Eランクギルドの、純白ノ索冥だ。此度は、王宮から届いた手紙を拝読し参上(つかまつ)った。開門してはくれぬだろうか?」

 

 

「純白ノ索冥・・・。ギルドカードは、偽造された物ではないか・・・。失礼致しました、どうぞ御入りに成られてください。」

 

 

その声と共に、重そうな鉄の扉が開門していく。そうして、左右に分かれて道を作る衛兵達に無言の歓迎を受けながら、私達は王宮へと入っていく。そして、王室に入る事になって今に至る訳だが・・・。

 

 

「さて、初めましてというべきかの?ワシはヴァルカン国の王である、アガトスと申す。よくぞ来てくれたな、水の女神に無垢なる魔力を有する子。そして、神級魔族グレイブルまで。」

 

 

「・・・用件を早く言ってくれないか、私達も暇じゃないんだ。」

 

 

「ひ、ヒサメさん・・・!王様相手に、その口調は・・・!」

 

 

「全く・・・、今日はルルに特訓を付けてやるつもりだったというのに。それからギルドマスター、・・・私は君に言ったはずだぞ。私達の素性は、内密にする様にと。」

 

 

そう私がギルドマスターを睨むと、彼は全身から滝の様に汗を流しながらブルブル震え始めた。まぁ、色々事情があったのだろうが、契りを反故にされた事には変わりはない。そんな彼を見ながら溜息を吐くと、私は改めてヴァルカン国の王であるアガトスの方を見遣る。

 

 

「はぁ・・・。それで、王族様が一体何の用だ?」

 

 

「ハッハッハッ!!そう睨むでない!なにも悪いようにはせんからな!!」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

そんなアガトスを眼前に見据えながら、私はいつでも魔法が展開できるように準備をしておく。ルルの髪の毛一本にでも傷を付けようものなら・・・。全員消す・・・。

 

 

「さて、本日御前達を読んだのは用があるからではない。」

 

 

「何・・・?」

 

 

「ど、どういう事ですか・・・?」

 

 

そう眉を寄せる私と、不安そうな顔をしながらも首を傾げるルル。そんな私達を見ながら、アガトスは己の考えを端的に話す。

 

 

「なに、御前達の存在を他国の王に共有しようと思っていてな。」

 

 

「は・・・?」

 

 

そんなアガトスの言葉に、私は眉を寄せる。他国の王へ、この事を共有するだと・・・?それはつまり、ルルのマルチウィザードの力が知れ渡るという事・・・。そして、ルルは強い魔導士という訳ではない。そんな彼がもしも、私の留守の間に連れ去られてしまったら・・・?

 

 

そんな考えに至りながらも、私は何とか平静を保ちながらアガトスに己の考えを告げる。

 

 

「申し訳ないが・・・、その条件は御受けできない。確かに、君は聡明な王と御見受けする・・・。だが、それでも他の王がそうとは限らない。この子の力を、軍事利用する様なやからが居るかもしれない以上・・・。極力、内密にして欲しい。」

 

 

「水の女神よ、御言葉を返す様で申し訳ないが・・・。王国間で認知をしておいた方が、その子の為だと思うぞ。」

 

 

「理由は・・・?」

 

 

「ワシが此度の件を他国に通達すれば、実質としてその子は全ての国の庇護下に入る。・・・それに、御前達は今後も冒険者パーティとして活動を続けていくのだろう?さすれば、その子の力が他の冒険者に伝わるのは時間の問題だぞ。・・・脅すような言い方になってしまうが・・・それこそ、その子の力を利用しようと目論む者が現れてもおかしくはないと思うが・・・。」

 

 

その言葉に、私は黙りこくってしまう・・・。たしかに、ルルの名声を上げる以上はアガトスの言った事は避けては通れない。そして、次の言葉が決定打となった。

 

 

「大方の話は、ギルドマスターから聞いている。先日この街を去った、冒険者ギルド・・・不死鳥ノ爪といったか。彼のパーティリーダーである、セルジオという男から追放されたと・・・。話を聞く限り、傲慢な男だという事が容易に想像できる。そんな男が・・・名誉欲の為にこの子を連れ戻そうとしたら?」

 

 

「そんな事はさせはしない・・・!!水神の名の下に・・・!!」

 

 

「だとしてもだ。後ろに、大きなバックが付いていた方が何かとやり易かろう。」

 

 

その言葉に、私は少々の間思案する・・・。確かに、何をするにしても後ろ盾があった方が良いのかもしれない・・・。確かに、前世でも中小企業に大企業の後ろ盾が有るとなにかとやり易いのは事実だった・・・。そう考えた私は、一呼吸置くとアガトスの目を見遣る。

 

 

「・・・良いだろう、そちらの提案を飲む事にするよ。」

 

 

「うむ。では、近い内にワシも此の件を他国の王に伝えに行くとする。必ずや、良い報せを伝えると約束しよう。神に誓ってな。」

 

 

その言葉に一礼すると、私とルル・・・そして、グレイブルは数多くの近衛兵達に見送られながら王城を出る事になる。そんな中、ポツリとルルが呟く・・・。

 

 

「た、大変な事になっちゃいましたね・・・。ま、まさか王様から護られる事になるかもしれないなんて・・・。」

 

 

「フン!あんな奴等の庇護などなくとも、我とヒサメだけで事足りるだろう!!」

 

 

「グレイブルの言う通りだ。・・・と言いたいところだが、後ろ盾が出来たのは大きい。私やグレイブルでも、カバーできない部分はあるだろうからね。」

 

 

「そ、そうですか・・・。」

 

 

そう言いながらも、ルルは何処か夢心地の様な顔をしている。まぁ、王族と謁見したのだから当然と言えば当然か。そんな彼は、何かを思い出したかのように目を瞬かせると恐る恐る聞いてくる。

 

 

「ヒ、ヒサメさん・・・。あ、あの・・・今日は魔法の練習は・・・。」

 

 

「ん?あぁ、そういえばもうこんな時間になってしまったね・・・。」

 

 

そう呟く私達の頭上には、オレンジ色の美しい夕日が広がっていた。今の時間に特訓をしても、かえって逆効果になってしまうな・・・。そう考えた私は、ルルの手を握り笑い掛ける

 

 

「それじゃあ、練習は明日からにしようか。今日は風呂に入って、床に就こう。グレイブルもそれで良いね?」

 

 

「フン・・・、好きにしろ。」

 

 

「それじゃあ・・・帰ろうか。」

 

 

「は、はい!」

 

 

そう言い合いながら、私達は温かな明かりが灯る宿まで歩を進める。そんな私達を照らす夕日は、私達三人を温かく見守ってくれている様だった。

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