美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。 作:雨を呼ぶてるてる坊主
さて・・・。暴漢に襲われかけていたショタを助けて、数分が経過した・・・。そんな私達は今、森の中で御互い見つめ合っているのだが・・・。
(ち、沈黙が重いな・・・。)
恐らく、目の前の少年は突然現れた謎の美女に戸惑っているのであろう。そして、そんな私は私で少年とどう接すれば良いのか分からないという、地獄の時間が流れていた。
(クソッ・・・。こんな事なら、前世の会社で積極的に飲み会に参加してコミュニケーション能力を鍛えておくべきだったか?いや、けど上司の武勇伝を延々と聞かされる地獄の飲み会だったからなぁ、前世の会社は・・・。)
そう考えていると、グーッっという腹の虫が鳴く音がした。この場所には現在、私とこの少年しかいない。そして、私は女神という種族であるが故に食事や睡眠は必要とはしない。
まぁ・・・。食事の美味しさを感じる事が出来たりはするのだが、栄養補給という目的で食事をしたりする事は無いのだ。つまり、この腹の虫の出所は・・・。
「・・・・・・っ。」
「もしかして、腹が空いたのか?」
私の質問に対して、小さく頷く少年・・・。そんな彼は、白い頬を桃色に染めて恥ずかしそうにプルプル震えていた。そんな彼の仕草に、私は胸の奥が締め付けられるような感覚になる。
「はぁ・・・。これが、母性というやつなのか・・・?少し待っていろ・・・。」
そう言いながら、私は森の中から食べ物を散策しようと立ち上がろうとする。けれども、それは叶わなかった。何故なら、私の神衣の袖を少年が引っ張っていたからだ。そんな彼は、泣きそうな顔をしながら私の顔を見上げている。
「お・・・、御願いします・・・。置いて行かないで・・・ください。」
そんな彼の表情を見た瞬間、私の心臓が急激に高まっていく感覚に陥る!!何故なら、私を見上げてきた少年の顔は儚げで触れただけで消えてしまいそうなほどの美しさだったからだ。
(・・・っ!!な、何だ!?わ、私は女神に転生したとはいえ、元々は男なんだぞ!?幾ら美少年相手だからといえ、胸を高鳴らせるなど・・・!!)
「ひ、一人ぼっちは嫌なんです・・・。な、何でもしますから捨てないで・・・ください。」
そう懇願する彼の瞳に、大粒の涙が溜まっていく。そんな彼の表情に罪悪感を覚えた私は、反射的に彼を胸に抱きしめてしまった。
「だ、大丈夫だ。ほら、一緒に行こうか。」
「は、はい・・・。」
そう頷く彼を腕に抱えながら、私は森の中を歩き始める。そんな私の腕の中では、少年が時折私の顔を見つめながらキョロキョロしている。恐らくは、森の中が珍しいのだろう。
そんな彼は、時折ガサガサと茂みの方から音がすると体を震わせて縮こまってしまう。とはいえ、そんな音と共に飛び出してくるのは、たいていは下級魔族なので私の敵ではない。
「レベル1、水弾!!」
私がそう唱えると、下級魔族は断末魔を上げながら消滅してしまう。そんな様子に、私に抱かれた少年は少し怖がってしまった様だ。私はそんな彼を安心させようと、私は彼を腕に抱いたまま頭を撫でてやることにする。
「大丈夫だ。もう、怖い魔族は居なくなったからね。」
私がそう頭を撫でてやると、少年は涙で潤んだ瞳を私の方へと向けてくる。そんな彼の瞳の美しさに私は少し見とれてしまったが、食料を見つける為に気を取り直して森の中を進み続ける。
そうして数分後、私達は遂に食料を発見する事に成功する。その食料とは、目の前にいる巨大豚・・・。通称、ペパットンだ。この豚は生きている頃から、文字通りに過食部位が胡椒で既に味付けされている為、炎で焼くだけで美味しく食べる事が出来てしまう。
そんなぺパットンは、気が立っているのか分からないが私達目掛けて突進しようとしてくる。そんな奴の様子に、腕の中にいる少年は私にしがみついてくるが、私は彼を安心させるように頭を撫でてやる。
「・・・お、お姉さん。」
「大丈夫だ。私の敵ではないよ。レベル2・・・氷槍。」
私がそう唱えると、空中で生成された氷の槍がぺパットン目掛けて飛んで行く!!そして、見事にヤツの腹に大穴を開けて命脈を断ち切ることに成功した!
「よし、討伐成功だね。ここらで飯にしようか。」
私がそう言って少年の方に目を向けるが、少年は何故かポロポロと涙を流し始めてしまった。そんな彼に、私は慌ててしまう。
「ど、どうしたんだ?先程の衝撃で、目に砂埃でも入ってしまったのかい!?目を見せなさい!私の水魔法で、洗ってあげるから!!」
そんな私の心配とは裏腹に、涙を流してしゃくりを上げる少年の口から出た言葉に私はポカンとしてしまう。
「ぶ、豚さん・・・。死んじゃったんですか・・・?」
「は・・・?い、いや・・・。まぁ、食べる為だからね。殺して当然だろう?」
「で、でも・・・。可哀想です・・・。」
そんな彼の様子に、私は複雑な感情を抱いてしまう。たしかに、彼の言う通り私に討伐されてしまったぺパットンはその命を終えてしまっただろう。それは、とても残酷な事なのかもしれない・・・。だからこそ、私はこの少年に教えてあげたい。
「そうだね、確かに可愛そうかもしれない。けれども、君が生きる為にもこのぺパットンは食べなければならないよ。・・・それとも、罪悪感の方が勝ってしまうかい?」
「はい・・・。」
「そうか・・・。それでは、君に魔法の言葉を教えてあげよう。」
「魔法の・・・言葉ですか?」
「そうだ。その魔法の言葉とは・・・、『いただきます』という言葉だ。聞いた事はあるかい?」
私は少年に尋ねるが、少年は聞いた事が無いというように頭を振ってしまう。どうやら、『いただきます』の文化はこの世界には定着していないらしい。
「いただきますと言うのはね、今から自分が食する命に対して感謝の言葉を述べる儀式だよ。奪ってしまった命に感謝して、敬意を表する為に行うものだよ。」
「感謝して・・・食べるですか?」
「そうだよ。自分が口にする全ての食材に敬意を込め、彼等の血肉を自分の物にする事への感謝を示すんだ。そうすれば、彼等もきっと心置きなく成仏してくれるはずだよ。」
私がそう言いながら笑いかけると、彼は納得してくれたのか小さく頷いてくれた。そんな彼の様子を確認した私は、魔法で氷ナイフを作るとぺパットンを解体していく。そうして数分後、私達の目の前には大量の肉の山が出来ていた。
「さて・・・。この大量の肉をどうするべきか・・・。私はそもそも、食事を必要としないしなぁ・・・。それに、君の場合は・・・。」
私は彼の、小さな体躯を観察する。この様な考えをしては失礼だとは思うが、彼の小さな体にこれだけの肉が入るとは到底思えない。
「取り敢えず、亜空間魔法の中に収納しておこう。」
そう言いながら、私は亜空間の中に食べきれる分以外の肉や毛皮や骨を押し込める。私の使用する攻撃主体の魔法属性は水と氷で固定されており、炎魔法や雷魔法を使用する事は出来ない。
しかし女神の種族としての能力として、修復魔法や治癒魔法。亜空間転移魔法なども持ち合わせているのだ。
因みに、異空間転移魔法と亜空間転移魔法の違いとしては、異空間転移魔法は人間界から神界や魔界などの、別世界に行く際に使われる転移魔法だが、亜空間転移魔法は無限に物を収納できるアイテムボックスの様なものだ。
そうしている間に、少年はいつの間にか大量の乾燥した葉や薪を持って来てくれていた。そんな彼に感謝をしながら頭を撫でてやると、気恥ずかしいのか顔を赤く染めて小さく震えてしまった。
「よし。君が枯葉を集めてきてくれた御陰で、料理を早く終わらせる事が出来そうだよ。」
そう言いながら、私は早速火起こしを始める。え・・・?氷と水属性の魔法しかないのに、火を起こす事が出来るのかって?全く、甘いね・・・。確かに私は、炎魔法を使う事は出来ない。だからこそ、少しだけ工夫すれば良いだけの話じゃないか。
「氷魔法、レベル1・・・氷鏡。」
そう私が唱えると、空中に氷で出来た透明なレンズが出現する。私はそんなレンズで太陽光を収束させて、枯葉に熱を集めさせる。そうする事で、枯葉から煙が上がり火種が出来るのだ。
そうして数分後には薪に非が付いて、焼いていた肉からも良い香りがしてくる様に鳴っていた。そんな肉から漂う香りに、私は幸せな気持ちになってくる。そんな私に感化されたのか、目の前の少年の腹からも虫の音が出続ける。
「ご・・・ごめんなさい・・・。」
「ハハッ、気にしなくても構わないよ。この肉は君の為に焼いたんだから。もしかして、腹に優しい果物とかの方が良かったかい?」
「だ、大丈夫です・・・。あ、あの・・・。女神様?」
「ヒサメで構わないよ。」
「ひ、ヒサメさん・・・。い、いただきますの儀式の方法を教えてくれませんか?」
その言葉に私はポカンとした後に、思わず笑いそうになってしまった。儀式と大層な事を言ったはいいが、実際の所は両手を合わせて『いただきます』と言うだけなのだから。そう思いながら、私は彼にいただきますの仕方を教える事にする。
「まずは、両手を合わせてみてくれ。」
「こ、こうですか?」
「そうだ。そして、目を閉じて全ての食材に感謝を込めながら・・・。いただきますと言うんだ。一緒にやってみようか。」
「は、はい!!」
その少年の言葉と共に、私達は目を閉じると両手を合わせる事にする。そして、二人で『いただきます』と言うと私はぺパットンの肉を食べ始める。
(やはり旨いな、下味無しでここまで胡椒の味を感じる事が出来るとは・・・。異世界食糧、様々だな。)
そう思いながら、私は何気無く目の前にいる少年の方を見つめると首を傾げてしまった。なんと彼は、未だに肉料理に手を付けていないのだった。そんな彼に、肉を食べる様に勧めるが彼は戸惑うばかりだ。
「食べないのかい?・・・まさか、菜食主義者だったりするのかな?」
「い、いえ!!いただきます!!」
そう言いながら彼は、恐る恐る私の顔色を伺いながらぺパットンの肉に手を伸ばす。その様子はまるで虐待を受けている子供の様だった・・・。そして、ようやく肉を掴むと恐る恐る肉を口に運んでくれた。
(・・・やはり、訳アリのようだね。まぁ・・・聞くのは後にして、今は肉に舌鼓を打つ事にしようか。)
そう思いながら私は胡椒味のよく効いた肉に、かぶりついたのだった。