美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。 作:雨を呼ぶてるてる坊主
私が名も知らぬ少年と出会ってから数時間が経過した。そんな彼は、昨夜から私の膝の上で眠りこけている。きっと、今まで一人で生きてきたのだろう。・・・少年が寝ている間に彼の体を確認すると、青い痣や痛ましい傷跡が並べ立てられていた。その傷は、何処からどう見ても人為的に付けられた傷に他ならなかった。
まぁ、そんな傷も私の治癒魔法で治療済みだ。痛ましい傷跡は消えて、子供特有の柔らかい素肌に戻っている。
(何者かは分からないが、この子は間違いなく虐待を受けて育っていた。こんな歳端もいかない、か弱い子を・・・。絶対に許しはしない・・・。)
そう思いながら、名も知らぬ少年の体に傷をつけた者に
「ヒサメさん・・・。おはよう御座います。」
「おはよう、名も知らぬ少年君。よく眠れたかな?」
「はい・・・。」
そう言いながらも、彼は寝ぼけているのか私の胸元にギュッと抱き着いてくる。それにしても、何と言うかこの体勢は・・・。まるで、私の乳房を枕代わりにしている様だな・・・。
(・・・まぁ、きっと性知識もないような年齢だろうし、大目に見てやろう・・・。それに、乳房に夢中になってしまう気持ちは、よく分かるからな。前世の私もそうだったし・・・。)
そう考えながら優しく彼の背中を叩いていると、だんだん意識が覚醒してきたのか彼は目をパッチリ開け始める。そんな彼は、もう一度可愛らしい欠伸をすると辺りをキョロキョロし始める。
「目が覚めたかい?」
私がそう再び聞くと、彼は私に密着していたことが恥ずかしいのか顔を赤く染めてコクコクと頷き始める。その姿は、身長も相まって小動物のようだった。
「そうか、では朝飯にしようか。昨日採った、ぺパットンの残りが有るからね。亜空間に押し込めている以上、腐りはしないだろうが早く食べるに越した事は無いからね。」
私がそう言うと、彼はモジモジしながら何かを言おうとするが緊張しているのか中々言い出せないでいる。そんな彼の髪を、私は優しく
「どうしたんだい?何か言いたい事があるなら、遠慮なく言ってごらん?」
「あ、あの・・・。僕の御名前を、まだ御伝えしていないような気がして・・・。」
「ん?あぁ、そうだったな。名前も知らないから、ずっと少年呼びをする羽目になるところだったよ。・・・そうだね、君の名前はなんというのかな?」
「ぼ、僕の名前は・・・。ルル・・・です。ね、年齢は10歳・・・です。」
「ルルか、可愛らしくて良い名前だね。まさに、君のような可憐な子にぴったりの名前だ。」
「あ、有り難う御座います・・・。」
そんな彼の表情は慎ましい笑みを浮かべており、その表情は見ている者を魅了させ、庇護欲を掻き立ててしまう程の可愛らしい笑みだった。
・・・きっと、前世の頃の数少ない友人であったショタ好きの同僚が見たら発狂するんだろうな・・・。
「さて、次は私の番だね。私の名はヒサメ・アリステラ。年齢は3500歳だ、・・・恐らくはね。年齢から分かる様に、この地に鎮座している神の様なものだよ。」
そう私が自己紹介をすると、ルルは信じられない物でも見るかのように私の事を凝視してきた。まぁ、この反応が当たり前なんだがな・・・。前世の世界でこんな事を言ったら、間違いなく良い歳
そう私が考えていると、ルルが大きな声を上げて質問をしてきた。そんな彼らしくない声の大きさに、私は少し驚いてしまう。
「か、神様・・・。あ、あの!!神様という事は、神ノ加護を分け与えられたこともあるのですか!?」
「うぉっ!そ、そんな大きい声を出す事が出来たのか・・・。」
「あっ・・・!ご、ごめんなさい。」
「いやいや、大丈夫だよ。元気があるのは良い事だからね。神ノ加護を分け与えた事は無いかな・・・。ここは辺境の地だし、滅多に人が来ないんだよ。水のセカンドウィザードも少ないしね。一応は水神だから、水魔法と氷魔法が得意かな。君も、昨夜見ただろうけど。」
「は、はい!物凄く格好良かったです・・・!」
そう言いながら目を輝かせるルルに口角を上げてしまいそうになるが、慌てて顔を引き締める事に成る。何故なら、今からルルと真面目な話をしなければならないからだ。
「ルル、一つ聞いても構わないかい?」
「は、はい・・・。僕に答えれる事なら・・・。」
「昨日の事なんだが・・・。君はどうして、一人で森の中を彷徨っていたんだい?こう言っては何だが、此処は人間が殆ど居ない未開の地だ。仮に居たとしても、昨日の様な人
そう私は目を細めながら言うと、彼は分かり易い程に動揺し始めた。やはり睨んだ通り、訳有りのようだね・・・。
「ルル、話したくないなら別に構わないけど・・・。」
「あ、あの・・・。御話ししても、僕の事・・・嫌いに成ったりしませんか?や・・・役立たずだって、捨てたりしませんか?」
そう言ってくる彼の表情は、とても不安そうな顔に成っていた。まるで、全てを失った後に見つけた拠り所を再び失う事を恐れるかのように・・・。その表情は、前世で父親に捨てられた頃の自分を見ている様だった。
私はそんな彼を安心させるかのように、そっと抱きしめる。
「大丈夫、嫌いに成ったりしないよ。・・・心の準備が出来たら、話してみてくれ。」
そう私が言うと、暫くの間は戸惑ったりしていたが、覚悟を決めたかの様にルルは今に至るまでの生い立ちを話してくれた。そして、その話を聞いた私は表面上はルルを心配するかのような顔を取り繕ったが、内心では怒りに支配されそうになっていた。
(なんだ、そのセルジオとかいう奴は・・・!!両親を亡くして傷心中だったルルに近づき、仲間にしてやると言ったくせに、その本当の目的は素直で可愛らしいルルを餌にして美女を引き寄せる為だったというのか・・・!!そして、用が済めば役立たずだと切り捨てるなど・・・っ!そんな愚か者が神託を受けているとは、心底ふざけている!!)
そう思いながら、私は柄にもなく殺気立ってしまった。一応、クールで冷静な女神として立ち振る舞うつもりだったんだがな・・・。そして、私の豹変ぶりにルルは怯えた表情になってしまう。
「ヒ、ヒサメさん・・・、ごめんなさい・・・。こんな御話をされても、迷惑ですよね・・・。」
「・・・っ!迷惑な訳あるものか・・・。」
そう言うと、私は無意識の内にルルの事を抱きしめてしまう。両親を亡くし、信じていた仲間にすら裏切られた彼が、母親を亡くして父親に裏切られた、前世の自分と重なって見えてしまったからだ。そんな私の抱擁に驚いていた彼も、だんだんリラックスをしたのか私の胸の中で泣き始めてしまう。
「ルル・・・、君は役立たずなんかじゃないよ。君のその素直な心、そして妖精の様に美しい外見には人々を幸せにする力がある筈だ・・・。だから、自分の事を卑下しないでくれ・・・。」
「ぼ、僕・・・。生きてて良いんですか?ま、魔法の適性も無いのに・・・。」
「魔法の適性など、関係があるものか・・・。君は、生きているだけで十二分に価値があるんだ。だから・・・生きる事を、諦めないでくれ・・・。頼む・・・。」
私の言葉に感涙してしまったのか、ルルの涙によって私の胸が濡れてしまう。だとしても、不快感などは一切無かった。そこにあるのは、目の前の儚げな少年が生きる希望を見出してくれた事による喜びだけだった・・・。
そうして数分後・・・、涙が収まったルルと私は腰を据えて今後について話し合う事にする。
「さて、ルルよ。こうなってしまった以上、君を独りにする事は出来ない。私が傍で、君を見守っていてやろう。」
「あ、ありがとうございます・・・。神様が僕なんかの為に、直々に・・・。」
「あとそれから、今日からはなるべく『僕なんか』とかいう自分を卑下する言葉は禁止だ。分かったね?」
「は、はい・・・。」
そう話す中で、私は一つ気になった事をルルに尋ねる。まぁ、質問の内容はルルにとっては酷な内容ではあるのだが・・・。
「ルルよ、一つ質問をさせてくれ。」
「な、なんですか・・・・?」
「君は先程、魔法属性が無いと言っていたが・・・。魔法属性の適性検査のとき、水晶玉は何色にも染まらずに無色透明のままだったのかい?」
「いえ・・・、白色に染まりました・・・。けれども、こんな事例が極端に少なすぎて王宮の人達も戸惑ってて・・・。結局、僕の適性は分からずじまいだったんです・・・。」
ルルのその言葉に、私は思わず眉を顰めてしまう。私が気になったポイントは、"水晶が白色に染まった"という点に関してだった。
「水晶玉が、白に染まった・・・?それは、本当なのかい?」
「は、はい・・・。」
ルルの言葉に、私は1つの仮定を導き出す。それが本当なら、彼は人類史を大きく動かしてしまいかねない存在だからだ。
(この子・・・。まさか・・・?いや、そんな筈は・・・。だが・・・私の推察が間違っていなければ、私は逸材の子を拾ってしまったのだろうか・・・?私を転生させた神のもとに向かってみるしかないようだな・・・。この子の力を確認する為にも・・・。)
そう思いながらも、私は彼にとある提案をする事にする。
「ルル、私から提案があるんだが・・・。一度、神界へと
「し・・・。神界って、神様達が住んでいる世界ですか・・・?」
「そうだ。既に知っているとは思うが、神々とは人間の何十倍もの知識を蓄えてきた種族なんだ。つまり、何が言いたいかと言うと・・・水晶を白く輝かせた君の魔力の正体を、彼等なら知っているんじゃないかと思ってね。」
「で、でも・・・。神様の国になんて、行けるんですか・・・?」
「何を言っているんだ?そもそも、私は水の神だぞ?同胞である神々の国に向かうなど、私にとっては造作もない事だよ。まぁ色々面倒臭い奴が居るから、自主的には行きたくはないんだが・・・。」
私はそう言いながら、緊張した面持ちの彼を安心させようと、彼の頭を撫でながら笑い掛けてやることにする。すると、彼は見事に赤面してしまったのだ。
「どうする?行ってみるかい?」
「ぼ・・・僕は。・・・ちょっと怖いけど、行ってみたいです・・・。どうして、僕が触れたときに水晶が白くなっちゃったのかを知りたいから・・・。」
「よし、分かった。それじゃあ、異空間転移魔法を使うからね。しっかりと捕まっているんだよ。」
私の声に、ルルは恐る恐る私の手を握ってくれる。そんな彼の子供特有の柔らかい掌に頬が緩んでしまうが、私は集中して異空間転移魔法を発動させる。そして、私達は神界へと向かったのだった。