美人女神に転生してしまった俺。いや・・・私は、今日も追放ショタを愛でまくる。 作:雨を呼ぶてるてる坊主
ヒカリとホムラに、セルジオという男に対する情報共有を終えた私は寝室に向かった。そしてそこには、
「あら、ヒサメちゃんじゃない。ホムラちゃんと、ヒカリちゃんとの御話しは終わったの?」
「あぁ・・・。ルルを見守っていてくれたんだな、感謝するぞ。」
「構わぬ・・・。幼子の無垢な顔は、何物にも代えがたいものだからな・・・。」
そう呟く偉龍さんの目線の先には、柔らかな布団に包まれながら安心した様に寝息を立てるルルが眠っていた。そんな彼の表情は、形容し難いほどの愛らしさに満ち溢れていた。
そんな彼の髪を、私は指で掬ってやることにする。すると、こそばゆく感じたのかルルの表情に笑顔が宿る。そんな彼の仕草には、寡黙な事で知られる偉龍さんも破顔してしまう程だ。
しかし、偉龍さんとヒスイは穏やかな笑みを一度抑えると、申し訳なさそうな顔で私に話し掛けてくる。
「ヒサメよ・・・。勝手な事とは承知しているが、奇跡の子の記憶を覗かせてもらった・・・。」
「気を悪くさせたらごめんなさい・・・。」
そう呟く彼と彼女の表情は怒りに満ちていたヒカリとホムラとは違い、物憂い気な表情をしていた。流石は、最年長の大地の神と慈愛に満ちた風の神と言ったところだろうか。
「問題はないさ、ヒカリとホムラにも話したからね。」
「本当に、悲しい事だわ・・・。歳端もいかない子を、その身一つで突き放しちゃうなんて・・・。」
「ましてや幼子を、色欲を満たす
そう私達が話し合っていると、ルルが長く美しい睫毛を動かしながら目を覚ました。あぁ・・・この子の、あどけない表情のなんと愛らしい事か・・・。
「ヒシャメ・・・しゃん?ヒシュイしゃんに・・・、ウェイリョンしゃんも・・・?」
「おはよう、よく眠れたかな?」
「う・・・。フカフカ・・・気持ち良かったれす・・・。」
そう言いながら、ルルは私に向かって甘えるように両手を広げてくる。そんな彼の仕草に、私は流れるような動きで彼を抱きかかえてしまう。そして、ヒスイはそんな私を見ながら微笑みかけてくる。
「あらあら~。ルル君ったら、ヒサメちゃんに甘えるのが上手ね~。」
「ほぅ・・・。ヒカリと並んで、神界の鉄仮面と呼ばれるヒサメが破顔するとは・・・。まさに、魔性の子供よ・・・。」
そうして暫くルルを抱きかかえていると、段々と意識を取り戻した彼は頬を桃色に染めながら私から離れようとする。けれども私は、
「ヒ・・・ヒサメさん・・・。す、すぐに離れます・・・!」
「ん?どうして離れようとするんだい?それとも、私に抱かれるのは不満かな?」
「あ・・・あぅ・・・。」
なるほど・・・。前世で小学生だった頃に好きな女子を虐める男子というものは居たが、当時の私は行動原理が理解できなかった。だが、この子の反応を見ると彼を虐めたくなる衝動に駆られてしまう。
「・・・フフッ、可愛らしい頬だね。桃色に熟れて、食べ頃の果実のようだよ。」
「ぼ、僕のほっぺは・・・。美味しくないです・・・。」
そう言いながらも、ルルの目に大粒の涙が溜まっていく。流石に泣かせてしまうのは忍びないので、私はここらで頬を突くのを中断する。
「すまなかったね、君の頬が熟れた果実の様だったからね。・・・さてと、君に一つ質問をしても良いかい?」
「ほぇ・・・?な、なんでしょうか?」
「・・・ルル、君はこれからどうしたい?」
私がそう言うと、ルルは分かりやすいように疑問を抱いたのか首を傾げ始める。そんな彼に、もう少し詳しく説明してやろうと私は話し始める。
「つまりだね、君には二つの道がある。一つ目は、このまま神界で魔物にも怯えず暮らす道だ。そして、もう一つ・・・。それは、人間界に降り立ちマルチウィザードとして人々を護る道だ。」
その私の言葉に、ルルは少し迷い始める。前世でのファンタジー漫画では、主人公はこういった質問に対して迷いなく世界を救う事を選ぶだろう。・・・だが、此処は現実だ。今でこそ私は、魔物相手にも臆せず立ち向かえるが、転生して間もない頃は魔物相手に後れを取ったり慄いたりもしたものだった。
それに・・・正直な事を言うと、私はルルに痛い目に遭って欲しくはない。ルルの可愛らしい顔を、哀しみに歪ませたくはないのだ。だが、そんな私の願いは届かなかった。
「ぼ、僕は・・・。人々を、護りたいです・・・。」
「・・・理由を聞かせてくれるかな?」
「ぼ、僕の御父さんと御母さんは、魔物さんにやられちゃいました・・・。そ、そこから僕は一人ぼっちで・・・。だ、だから僕と同じ様な思いをする人が、一人でも減れば良いな・・・って。」
そう話すルルの目に、嘘偽りの心は一欠けらも無かった。この子は心の底から人々の幸せを願い、人々の悲しみを自分の様に捉える事が出来る優しい子なのだと改めて確認できる。
「その意志を変えるつもりは・・・、無いようだね。」
「ご、ごめんなさい・・・。ヒサメさんに助けてもらった命なのに・・・。」
「構わないさ。君が無辜の人々を見捨てれる性格ではないのは、承知済みだからね。・・・さて、それじゃあ出立しようか。・・・と言いたいところなんだけど、まずはそれなりの服に着替えないとね。」
そう言いながら、私はルルの服をチラリと見遣る。そんな彼の服は、盗賊に破られた箇所を修復魔法で直したはいいものの長年使い古されたかのようにボロボロだったからだ。
そんな服装に恥ずかしそうにするルルに、私は創造神様から渡された服を彼に渡してやることにする。その服は、私達神々が着る服と同じ素材と効果をもたらす神衣だ。そんな衣装に、ルルは驚いたように目を丸くする。
「綺麗な・・・御洋服です。」
「この服は、我々神々が着用する神衣と同じ効能を持っているよ。どの様な環境下でも快適に過ごす事ができて、自身の頭に思い浮かべた服装に変化する優れ物の服だ。もちろん、耐久性も折り紙付きだよ。そこらの低級魔族では、傷一つ付けられないだろうね。」
「こ、こんな御洋服・・・。良いんですか?」
そう遠慮がちに呟く彼を安心させるかのように、ヒスイは微笑みかけながら彼の頭を撫で始める。
「フフッ、遠慮しなくていいのよ。マルチウィザードである以上は、ルル君の力は私達神の一族と同じ様なものなの。だから、ルル君にはこの神衣を着る資格があるのよ~。」
「ご、ごめんなさい・・・。まだ、マルチウィザード・・・?の自覚が無くって・・・。」
「構わぬ。我々が、君の重荷になるような事を申し立ててしまった事にも非はある・・・。肩の力を抜くと良いぞ・・・。」
その偉龍さんの言葉に恥ずかしそうにしながら、ルルはボロボロの服から神衣に着替え始める。そして、着替え終わった彼を見た私は思わず呆けてしまった。・・・彼の姿が、あまりに美しかったからだ。
「ひ、ヒサメさん・・・。ど、どうですか?」
「・・・っ!あ、あぁ・・・似合っているよ。正に、白銀の世界に生まれ落ちた雪の精のようだ。」
「あ、ありがとう・・・ございましゅ。」
そう言い合いながら、私達は創造神様とヒカリとホムラが居る神殿に向かい始める。そうして、私達が付くとそこには創造神達が待っていた。
「うむ!話はついた様なのじゃ!!」
「なぁ、見ろよヒカリ。あのガキんちょ、少し覚悟の決まった眼をする様に成ってねぇか?」
「うむ、歴戦の
そんな創造神様達の前に行くと、ルルは緊張した面持ちで彼女達に自らの意思を話し始める。そんな彼に様子に、彼女達も微笑ましそうな表情になる。
「そうかそうか!その心意気、天晴れなのじゃ!!では、早速じゃが五大属性神達の加護を与えなくてはな!!皆の者、彼の少年に加護を与えるのじゃ!!」
その創造神様の言葉に、私達五人は手を重ね合わせて加護を与えようとする。・・・しかし、そんな私達を止める声がした。その声の正体は・・・まさかの、ルルだった。
「あ、あの・・・!加護の事なのですが、僕には必要無いかもです・・・。」
その言葉に場が静まり返ると、ホムラが真っ先に驚愕の声を上げ始めた。それもそうだろう、『神ノ加護』を享受する事はこれ以上ない名誉な事だ。だからこそ、人間界でセコンズウィザードは崇められる。しかし、ルルはその加護を断ったのだ。
「は・・・はぁぁ!?が、ガキんちょ!テメェ、なんてこと言うんだよ!!アタシ達の加護が、必要無いだってぇ!?」
「む・・・。これは、予想外だな・・・。童よ、貴殿の考えを御聞かせ願おうか?」
そう不思議そうな顔をするヒカリとホムラに申し訳なさそうな顔をしながらも、ルルは自分の考えを述べ始める。そんな彼の言葉に、思慮深い偉龍さんは納得した様に頷く。
「あ、あの・・・。確かに僕は、マルチウィザードっていう希少な力を持ってるのかもしれません・・・。でも・・・大きな力を急に持っては、弱い人の気持ちを考えてあげられなくなるかもしれないんじゃないかって思うんです。」
「ふむ・・・。たしかに弱い者程、弱者の目線に立つ事ができるとは言うが・・・。」
「じゃあ・・・。ルル君、君は私達に何を望むのかしら?」
そう穏やかな声で聴くヒスイも、どこか落ち着きが無さそうにしている。それもそうだろう、今の今までに『神ノ加護』を断った者など一人もいないのだから。
そんな中、しばらく考え込んでいたルルが申し出た願いは彼らしい謙虚な願いだった。
「ぼ、僕は・・・。五大属性の強化ではなく、使い分けをちゃんと出来るようにしたいです・・・。炎魔法を出したいときは炎魔法を出せて、水魔法を出したいときは水魔法を出せるように・・・。」
その願い事に、五大属性神である私達は呆けていたが思わず笑みが浮かんでしまう。強欲に力を欲さない彼が、とても愛おしく思えてくるからだ。
「フ・・・っ!フハハハ!!いやはや、この童には驚かされてばかりだ!!」
「全くだよ!!アタシらの加護を、全て欲しがらない人間なんて初めてだ!!」
「だが、強欲に呑まれずに謙虚に居られる姿勢もルルの魅力だ。」
「そうねぇ~。本当に純粋で良い子だわ。まさに、マルチウィザードに成るべくして成ったかのようにね〜。」
「あぁ・・・。やはり、この子は奇跡の子だ・・・。この子を死なせてしまうのは、人間界と神界・・・。両世界の損失となってしまう程の・・・。」
そう私達が笑い合っていると、創造神様が場を取り仕切るかのようにルルに話し掛ける。
「そうかそうか!!では、御主の望む通りにしてやるのじゃ!」
そう言うと創造神様はいつもの明朗快活な雰囲気を潜め、瞳を閉じて手を合わせながら詠唱を唱え始める。すると、ルルの身体に変化が訪れる。
「白に染まりし、無垢なる魔力よ。己が身の姿を変え、五大魔法としてその身を分けるのじゃ・・・。」
創造神様がそう仰られると、ルルの身体から白い魔力の塊が飛び出る。そして、そんな魔力は形を変え始めたのだ。・・・そして数分後には、赤・青・黄・緑・茶の五つの色をした魔力の塊に姿を変え、ルルの体の中に戻って行く。
「これで、御主は思うように属性を切り替える事が出来る筈じゃ。魔力の強さは、まだまだ未熟なままじゃがのう・・・。」
「い、いえ・・・!ありがとうございます・・・。」
「では、ルルよ。これからの旅の道中では、念の為にヒサメと共に行動をしてもらうのじゃ。今の御主は五大属性全てを操る事が出来るとはいえど、低級魔族と引き分ける程の実力しかないからの。」
「え・・・!?い、いいんですか?ヒサメさん・・・?」
そんな彼の頭を撫でながら、私は彼を安心させるかのように笑い掛けてやる。すると、彼は頬を赤らめながら笑顔を向けてくれる。やはり、この子は笑顔が似合うな・・・。
「構わないよ。最近は水属性のセカンドウィザードの使い手が居ないから、私も暇を持て余していたしね。良い暇つぶしにはなるさ。」
「わ、分かりました・・・。」
「では、二人とも気を付けるのじゃぞ!!極東のダンジョンへ向かうのを、忘れるでないぞ!!」
創造神様がそう仰られると、異空間転移魔法が発動して人間界に戻される事に成る。そんな道中、私は彼と巻き起こす旅路に思いを馳せながら気分を高揚させていたのだった・・・。