元軍人は透き通るような世界観には似合わない?   作:暁の夢

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白夜 黒昼現象


影の発生

とある日の深夜、日付が変わり、街も寝静まる頃、ビルの屋上に佇む影がある

街には人影も少なく、銃声も聞こえない

だがここはゲヘナだ、夜でも気を張らなければならない

影が仮面をはめると、黒い霧が立ち込めた

霧は色を奪っていく、街灯、壁、全ての色が白と黒に変わる

まるでモノクロのテレビを見ているかのように

雨が降り始めた、透明な雨ではなく、黒い絵の具のような雨

何処からか鐘の音がする、ゲヘナには不釣合いの鐘の音が

雷鳴が響く、雷は黒い雲と光の当たらない路地裏を照らす

「なんだ……これは」

不届き者は恐怖する、何処から響く鐘の音に

ガチリ、ガチリと金属を引き摺る音がする

影が近づいてくる、霧を連れて

影が進む、恐怖を与えに

影がゲヘナを包み込む、恐れを抱かせるために

 

「はぁっ……はぁっ…はぁっ…くっ…来るな!」

スケバンは地を這いずってでも逃げようとする

影は鎌を引き摺り、近づいてくる

スケバンは引き金を弾き、弾丸を放つ

影はものともせずに近づいていく

うわぁぁぁぁぁ

影は鎌を振るい、スケバンの意識を刈り取った

水溜りに血が入り、赤くなっていく

「そこのお前!何をしている!」

風紀委員が路地裏に入り、影と対面する

「そこを動くな!動いたら敵対行動とみなして射撃する!」

影はその言葉を無視し、風紀委員に近づく

「な、なんだ……お前」

身構え、何時でも抵抗できるようにするが、影は風紀委員の横を通り抜け、姿をくらませた

「……なんだったんだ?」

 

 

周囲の霧が薄まり、街に色が戻っていく、時刻はもう5時になっていた

雨が止み明るくなり始め、陽の光が辺りを照らし始める

先程までの陰鬱な雰囲気とは違い、今は暖かい光がゲヘナを包み込む

鳥の声や、人の声、車の音が増え、いつの間にかいつも通りのゲヘナになっていた

 

「おはよ」

イオリがユウリの身体を揺すって起こそうとする

「ゥ〜おはざいます」

ユウリは呻きながらも、ソファから身体を起こした

「大丈夫か?目の隈が酷いぞ」

イオリはユウリの顔を覗き込んで頬に手を当てる

「心配無用、ちょっとばかし寝付けなかっただけだ」

「ならいいんだが……」

2人は各々の支度をし、家を出た

「ユウリの家って学校から遠くない?」

「そうか?俺的にゃあ、丁度ええと思うんだが」

ユウリはヘルメットを被りながら、イオリにヘルメットを渡す

「さ、行くぞ〜しっかり掴まれよ?」

「安全運転でね?」

「それは……まぁ安心してくれ」

イオリはユウリの腰を後ろから抱き締める形で掴まる

ユウリはそれを確認して、バイクを発進させた

冷えた風が2人に当たり、コートがあっても寒く感じる

ゲヘナ学園に着く頃には耳が赤くなっていた

「なんか、今日急に会議があるんだって」

「何かあったんやろか?」

「知らなーい」

靴を履き替え、風紀委員会の執務室に入る、もう全員が集まっていた

「え〜……皆集まったかな?」

「はい、委員長」

委員長と行政官がやりとりを終え、こちらに向き直る

「ごめんね、急に集まってもらっちゃって、じゃあ会議を初めよっか。今日の午前0時に、風紀委員がパトロール中に、急に街の色が無くなって霧が立ち込めたらしいんだ」

「それと同時にローブを羽織っている黒い影も発生した、影はスケバンを何人か気絶させて、何処かへ消えたらしい」

「写真が一応あるんだけど……ぼやけててなんだか分からないんだ」

委員長が見せる写真は、かろうじて人型に見えるぐらいぼやけていた

「念の為、警戒はしておいて、もし遭遇しても、なるべく刺激せずにその場から離れてね」

そんな感じの話し合いを終え、教室に戻る

「影ってなんなんだろ?」

「さぁ…夢かなんかと間違えたとかじゃねぇか?」

「それは無いでしょ……」

「けどなぁ…信憑性はあんま無いだろ?」

「うーん……」

「まぁ……そん時はそん時で考えるかぁ」

「だね」

 

 

風紀委員のパトロールを終え、家に帰っている途中、イオリが言った

「もしかして、またコンビニ弁当で済ませるつもり?」

「え、何かマズイのか?」

「いや……健康を考えなよ」

「とは言っても……家に何も無いし…作れるもんも無いし」

「仕方ないな…私が作ってあげるから、スーパー寄って」

「へーい」

近くのスーパーに寄って、イオリが野菜や肉を買う姿を眺めながら、過ごしていた

「こら、弁当を入れようとするな」

「え〜…楽やんか」

「まったくもう…楽ばかり考えるなよ……」

「仕方ないだろぉ?面倒なもんは何処まででも面倒なんだから」

なんて言うと、イオリは脛を蹴ってくる

「イテッ…ちょっ…イオリさん?痛いんですけど?」

「しーらない」

買い物を終えて、家に帰り、買ったものを冷蔵庫に入れ、ソファに飛び込む

「はぁ……今日も疲れたな」

「ご飯作ってるから、寝ないでね?」

「頑張るわ」

ぼんやりとしていると、いい匂いがするいつの間にかご飯ができていた

「できたよ、あんまり味に自信は無いけど……」

目の前には、美味しそうな肉じゃがが置かれていた

「美味しそうだなぁ…いただきます」

「ん、美味しい」

「よかった」

久しぶりに誰かが作った飯を食べた、何ヶ月いや、何年だろうか

「ご馳走様……美味しかった」

「ご粗末様でした」

「食器は俺が洗うから、風呂行ってきな」

「ありがと」

なんだか、こうやって皿を洗うのも懐かしく感じてしまう

過ぎてしまった事に固執するのは嫌だが、昔が恋しくなるな

過去の事を考える度、自己嫌悪に至ってしまう、そんな自分が嫌いになって、もっと自己嫌悪する

皿洗いを終え、ソファでくつろいでいると、イオリが風呂から出てきた

「お風呂いいよ…って、もう寝そうだから早く行きな?」

「そうさせてもらうよ……」

服を脱ぎ、洗濯機に入れ、浴室に入る

体を洗い、湯船に浸かる、暖かいお湯に入ったせいで、もっと眠くなる、瞼が重い…このままでは…寝てしまう……寝て

……しま……う

「っぶね、寝るとこだった」

どうにか意識をたもち、浴室を出て、着替える

着替えを終えて、リビングに行き、電気を消してソファに寝転がり、毛布にくるまる

「おやすみイオリ」

「おやすみユウリ」

 

 

深夜、イオリは物音で目覚めた

耳をすませてみると、ユウリの声だった

「違う……違うんだ……俺は……俺は……」

ユウリは苦しそうに呻いている

「辞めろ…辞めてくれ…これ以上俺から奪わないでくれ…」

「ヴがぐっ…ゲホッ…」

「…待ってくれ……俺を……置いていかないでくれ…」

イオリはベットから立ち上がり、ユウリに近づく

「ユ、ユウリ……?」

軽く揺すってみると、息を切らしながら起きた

「はぁっ…はぁっ……ゆ…夢か…」

「だ、大丈夫か?凄く魘されてたけど……」

ユウリを見てみると、涙を流していた

「あぁ…少し…嫌な夢を見て…っ」

イオリは、無意識にユウリの頭を撫でていた

「なん…の…真似……だ」

「こうすれば、少しは安心するかなって」

「…」

余程嫌な夢だったのだろう、涙がポツリポツリと落ちる

「きゅ、急に抱きついてくるなユウリ!?」

「頼む……少しでいいから…少しの間…このままでいさせてくれ」

今のユウリは、いつもと違い、弱々しく見えた

「……仕方ないな」

イオリは寝てしまったユウリを抱え、ベットに行った

「ふふっ…なんだか、子供みたいだな」

腕の中で眠るユウリは、静かな寝息を立てていた




寿司
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