僕のヒーローアカデミア 電脳獣プライガVSフェイザー 作:サツキタロオ
時系列的には仮免試験が終わった辺り。
警視庁本部庁舎――
度重なるヴィラン犯罪やテロ行為に対抗するため設立された特別部隊、
特別嚮導派遣技術部(通称:特派)。
その一室では、書類の山に囲まれた青年が黙々とペンを走らせていた。
「先輩、資料持ってきました。」
明るい声とともにドアが開く。
オレンジ色の髪を揺らしながら入ってきたのは、後輩の藤丸立香だった。
彼女は腕いっぱいのファイルを抱え、机の上にドサッと置く。
「ありがとう、藤丸。」
「いえ、それより――例の事件、聞きました?」
「もちろん。あの“装甲生命体”の件だろ。」
新道雄一郎はペンを止め、眉をひそめた。
「この件、どうやら僕たち特派も調査に関わることになったんだ。後でホワイトボードに事件概要をまとめておいてくれ。」
「……了解です。でも、“特派”まで動くなんて異例ですよね。そんなに危険な存在なんですか?」
藤丸の声には、わずかな緊張が混じっていた。
雄一郎は溜息をつきながら、机の端に置かれた報告書を指で叩く。
「映像解析の結果を見る限り……あの二人、“個性”とは明らかに異なる何かを使っている。」
「異なる、って……?」
「装甲はここじゃ見ない物質らしいし、個性にしてはかなり異例らしいんだ。あの様子だと制御できてないらしいしね。」
藤丸は言葉を失う。
部屋の中に、時計の針の音だけが響いた。
「……今後、公安と雄英にも連携が入るだろう。僕たちの仕事は、その前に“あれが何か”を突き止めることだ。」
雄一郎の声には、静かな決意が宿っていた。
「……入るぞ。」
すると、重厚な扉が開き、室内に鋭い空気が走った。
入ってきたのは、特派を束ねる司令官――松田伊五郎。
「司令!」
雄一郎と藤丸は即座に立ち上がり、敬礼する。
「くつろいで構わん。」
伊五郎はゆっくりと手を下げながら言った。
「しばらくの間、我々は“装甲生命体”の調査に全力を注ぐ。すでに現場では玄也巡査部長と権藤巡査部長が聞き込みを行っている。雄一郎巡査部長――お前もいつでも出撃できるよう準備しておけ。」
「承知しました!」
「……今回は厄介な任務になる。覚悟しておけ。」
そう言い残し、司令は静かに部屋を後にした。
…………………………
数時間後――
静岡市内のとある通り。
「……そっちはどうです?先輩。」
「まだ分からずじまいだ。どうやらあちこちをウロチョロしてやがる。」
街を歩くのは、不知火玄也と権藤操の二人。
聞き込みを続けながら、タブレットに記録を残していく。
「しかし、あの脳無を一瞬で倒すほどの相手か……。」
「暴走してるとはいえ、厄介ですね。俺たちだけで止められますかね。」
操が言い終えたその瞬間――
遠くで爆音が轟いた。
「今の音……!」
「行くぞ!」
二人が駆けつけた先で見たのは、
倒れ伏すプロヒーローたちと、トラックを荒らす狼型の装甲生命体――オルペウス。
彼女の腰に取り付けられた尻尾に居る“鬼火”は、
沈黙したまま微動だにしない。
「いた……!しかも狼の方だ!」
「くそっ、プロヒーローがやられてる。雄一郎、聞こえるか!お前の出番だ!」
『了解!すぐ向かう!』
玄也の通信に応じて、特派本部にアラートが鳴り響いた。
「出撃要請、確認!」
雄一郎は机から立ち上がり、格納庫へと駆け出す。
そこでは整備班が既に準備を整えていた。
メカニカルなフレームの上で、アーマーが次々と自動装着されていく。最後にヘルメットを被ると顔が覆われ、雄一郎の周りにモニターが展開する。
「嚮導試作装備――ライオットB、全武装アクティブ。
いつでも出られます、どうぞ!」
「よし……いつでも行ける!」
雄一郎はバイクのエンジンをかけて、地上に飛び出した。
青白いライトが走り、空気を震わせる。
「特派第七班・新道雄一郎、出撃する!」
叫びとともに、ライオットBが唸りを上げて飛び出した。
…………………………
その頃、オルペウスはトラックの電子機器を破壊しながら、内部のエネルギーを吸収していた。
青白い光が装甲の隙間から漏れ、低い唸り声のような音が周囲に響く。
「……」
次の瞬間、遠くからサイレンの音が鳴り響く。
オルペウスはゆっくりと首を巡らせ、その赤い瞳が音源を捉える。
そこには、バイクから降り立った装甲兵――ライオットBの姿があった。
「発見した。こちらを警戒してるな……。」
『まだ仕掛けないでください。相手が動いたら攻撃を。』
通信モニターに立香の顔が映し出される。
その瞬間、オルペウスが四足歩行の姿勢を取ると、地面を砕きながら猛然と突進してきた。
「来たッ!」
雄一郎は胸部機関砲を展開し、正面から射撃を開始する。
弾丸が雨のように降り注ぐが、オルペウスは獣のような身のこなしで弾道を読み、すり抜けながら距離を詰めてくる。
鋭い爪が唸りを上げて迫る。
「速いッ!」
雄一郎は右肩のホルスターからエネルギーサーベル《プロトン・セイバー》を抜き放ち、迎撃する。
青い光の刃と鋭い爪がぶつかり、金属音が響いた。
しかし、力比べでは完全に押し負け、雄一郎は衝撃で数メートル吹き飛ばされる。
「なんてパワーだ……! このセイバーでも押し返せないのか!」
追撃をかけるように、オルペウスの尾部が展開し、内蔵されたガトリング砲が火を噴く。
弾幕が地面を穿つ中、雄一郎は転がるように回避し、左肩のセイバーも抜いて二刀流の構えを取る。
「やるしかない!」
地を蹴り、跳躍と同時に交差斬りを放つ。
空中で火花が散り、オルペウスと激しく鍔迫り合う。
「ッ……!!」
押し負ける寸前、雄一郎は胸部パネルを開いて機関砲を至近距離射撃。
爆炎が二人を包み、轟音と煙が立ちこめた。雄一郎はバックステップで様子を見る。
「……仕留めたか?」
だが、煙の向こうからゆっくりと歩み出てくる影――。
装甲は焦げてもなお損傷ひとつなく、赤い瞳が冷たく光る。
「……このままじゃ勝ち目がない……。」
握るセイバーの光が微かに揺れる中、雄一郎の額を汗が伝う。
オルペウスは無言のまま、一歩、また一歩と距離を詰めてきた。
「……ここは、これを使う!」
雄一郎は深呼吸し、両手のサーベルを交差させた。
次の瞬間、エネルギー刃が一斉に消え、発振部同士が自動で磁結合を起こす。
ガシィン――という重厚な音とともに、二本の柄が連結し、一本の巨大なロングブレードへと変形した。
「この一撃なら――!」
地面を蹴り、青白い光を纏ったまま飛び上がる。
オルペウスの頭上から縦一文字に斬り下ろした。
「ッ……!?」
オルペウスが腕で防御の構えを取った瞬間、金属音と衝撃波が同時に走り、周囲の車両が吹き飛ぶ。
オルペウスは後方に弾き飛ばされ、地面を滑っていく。
「やった……!」
雄一郎は着地し、息を荒げながら構えを解いた。
だが、ロングブレードの光刃は不安定に明滅し、やがて消えかけていく。
(最大出力でこの程度だなんて…!)
『先輩!エネルギー残量が13%を切っています。撤退を!』
「ッ……了解!」
雄一郎は舌打ちし、ロングブレードを分離して肩に戻すと、急いでバイクへと駆け寄った。
背後では、吹き飛ばされたはずのオルペウスが、ゆっくりと立ち上がってその場を去る雄一郎を見つめていた。
雄一郎はバイクのエンジンを唸らせ、黒煙を上げて現場から走り去っていった。
爆発跡に残されたのは、静かに佇むオルペウスの影と、風に流される焦げた砂埃だけだった。
ヒロアカ面白いすね。