テンヨ・ザ・ブラッド   作:天縛(あましば)

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聖者の右腕Ⅱ

「姫柊、真希のバカに言っとけ」

 

「青髪の方が妙な力使うんならそれも報告しとけ、ってな」

 

 

 土埃を払いつつ、姫柊に真希への苦情を告げる。

 俺を知ってて前に出させるんだから妙なもんは持ってんだろうなって考えるのは容易だったがな、流石にホムンクルスに眷獣植え付けてるタイプとまでは思わねぇ。

 

 

「あれって眷獣なんですか? でも……」

 

「ああ、青髪は間違いなくホムンクルスだ」

 

 

 姫柊の疑問は間違っちゃいない。

 眷獣ってのは吸血鬼がだけが持ち吸血鬼だけが使役できる意思を持った魔力の怪物だ。

 使役する者は大量の寿命を喰らい尽くされる、だから吸血鬼にしか扱えない、奴ら名目上は不老不死だからな。

 

 

「だがまあ、吸血鬼以外が眷獣の力を使役する方法もないわけじゃない」

 

「そうなんですね」

 

「ああ、人の欲望ってのは上も下も際限がない。いずれは眷獣すらも呑み込んじまうだろうよ」

 

 

 今はまだ限られた奴にしか使えないピーキー品だろうよ、俺のもそうだし。

 結局は人の業ってのが人間種1番の武器だよ。

 

 

「今ある中なら十中八九まともな方法じゃねぇし、あのホムンクルスがやってるのはその中でも1番邪悪な方法だ」

 

「……なら」

 

「その為にも情報を集めねぇとだ、奴らの目的もそうロクなもんじゃない」

 

 

 狙いは分かったが、馬鹿正直にあそこであいつらが万全を期してやって来るのを待つ必要はない。

 あそこまで非道になれる奴なら、2()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「とりあえず、今後の拠点になる場所に向かおうぜ。今すぐには無理だ」

 

「わかりました」

 

 

 幸い大きな騒ぎにはなっていない、この島にいるかませ犬共も暫くは来ないだろうさ。

 

 

『バレたら怖ーい先輩が来るものね?』

 

「……確かに威圧感だけは一丁前だな」

 

「?」

 

「こっちの話だ、気にすんな」

 

 

 かませとは別のやべー魔女が居たな。

 チビ先輩は遭遇するまで無視でいいとして……問題は第四真祖の方か。

 

 

「俺達は真希に何かあった時の保険なんだよな?」

 

「え、はい」

 

「……じゃあ暫くは避けときゃ良いか……?」

 

 

 わざわざ戦力いっぱい居るって知らせる必要があるのか否か。

 奴が気にするのかという前提の疑念もあるにはあるがどう成長したのか俺は知らんからな。

 

 

『確かに、元気かしらね?』

 

「……ま、遭遇してから考える。行こうぜ姫柊」

 

 

 あいつから真祖を受け継いだ白髪のガキとその妹……覚えてねぇだろうし話すつもりもない。

 記憶を削いだ術者にゃ悪いが、俺の身体は特別性だし憑いてるのも化け物だ、割と覚えてる。

 

 だが、あいつの覚悟を貶める様な行いをすんなら……そん時はそん時さ。

 


 

「兄貴っ!? 何でこんなとこに居やがんだっ!」

 

「うるせーな真希」

 

 

 それから2日、見事ステルスを完遂した俺と姫柊は彩海学園へと訪れていた。

 それぞれ、教師と生徒という立場で。

 ……俺が? 嫌がらせかよクソジジイ。

 

 

「あー……ん"ん"っ、このクラスの副担任として今日から配属されることになった、伏黒(ふしぐろ)甚真(とうま)だ。よろしく頼む」

 

「……な、あ……!?」

 

 

 面白百面相をしている真希を横目に、足を踵で念入り踏んで来やがるチビ先輩が言葉を紡ぐ、鬱陶しいにも程があるぞおい。

 

 

「こいつは私の後輩でな、新人として配属されたこいつを先輩として面倒を見ることになった、生意気な奴だからお前達も雑に扱って良い」

 

「足踏むのは陰湿なんじゃねぇんですかね南宮センパイ」

 

「黙れ伏黒、お前にはほとほと呆れているのでな」

 

「そっすか」

 

 

 やべぇな、これ後で校舎裏……じゃねぇな今は、空き教室来いよって顔してやがる。

 非常に面倒だ。

 

 

「センセー質問!」

 

「構わん、今から伏黒の質問時間とする」

 

「はーい! 伏黒センセーは真希ちゃんのお兄さんなんですか?」

 

「まぁな。あと苗字が違うのにはそんな複雑な事情とかはない」

 

「じゃ、じゃあ理由を聞いても……?」

 

「俺が勝手に苗字を変えた」

 

「そんなことできるんすかっ!?」

 

「できたからそう名乗ってるんだよ」

 

 

 実際にはもう少し複雑だが事細かに説明してやる理由はない。

 勝手に変えたってのが1番手っ取り早くて都合がいい。

 

 

「はいはーい! 授業は担当されるんですか?」

 

「高等部と中等部から1枠ずつ交代することにはなってるから、運が良ければ今年から担当することにはなるだろう、担当は古文な」

 

「センセーって彼女いる?」

 

「ノーコメントだ、独身じゃあるが」

 

「他には  

 

 

 とか聞かれ続けて、今は昼。

 南宮センパイの追求は躱して来た。

 

 

「おい、説明してもらうからなっ」

 

「教師に蹴り入れようとさんじゃねぇよ真希」

 

 

 相変わらずのじゃじゃ馬が絡んで来た、後ろには例の野郎もいる。

 

 

「姫柊から聞いてねぇのか?」

 

「ジジイから姫柊ともう1人後任の保険がいるとは聞いてたが、わざわざ姫柊に深く聞いたりしねぇ。そもそも何で今更あんたがジジイの言うこと聞いてんだよっ!」

 

「ジジイだから聞いてやったんだよ」

 

 

 適当に誤魔化して理由を言う、面倒な。

 

 

「にしても一緒に行動してんのは第四真祖か? ()()()()()だな」

 

「お、おう……よろしくな」

 

 

 頭を痛そうにこちらを見ている第四真祖……(あかつき)古城(こじょう)

 ま、思い出せるわけねぇし初対面のフリだフリ。

 

 

「で、要件はそれだけか」

 

「それだけかって……」

 

「お前がやらかしたり辞めたりしねぇ限り、俺と姫柊がお前らにとやかく言うことはない」

 

「それまでは変な先生と後輩、とでも思っときゃ良いさ」

 

 

 そうやって真希をあしらっていると、姫柊がこちらにやって来た。

 

 

「先ぱ……じゃなくて、伏黒先生。何やってるんですか」

 

「どうした姫柊」

 

「どうしたも何も、もう授業始まっちゃいますよ」

 

「見ての通り絡まれてるんだよ」

 

「姫柊……!」

 

 

 俺が首根っこ掴まれて振り回されてる図を見て、若干呆れている姫柊。

 不可抗力だろ。

 

 

「行きましょう、初回から遅れてるのも不味いでしょうし」

 

「おう」

 

「すみません真希さん。そう言うことなので残りの要件は後にしてもらえますか」

 

「……ああ、わかった」

 

 

 姫柊が言うと、おとなしく引き下がる真希。

 おう随分と素直だなお前、都合は良いが。

 

 

「友人は出来たか?」

 

「はい、初めてなので少し緊張はしてましたけど……なんとかやって行けそうです」

 

「そうかよ」

 

 

 まあ明らか世間のこととか知るタイミング無いわな、姫柊のところ。

 

 

『この年齢でこれだけ優秀な子を育ててるんだし、多少は仕方がないんじゃないかしら』

 

「そうかもな」

 

『……シノアと仲良くなれそうね』

 

 

 妹想いで何より。

 その妹にはあんまり伝わってねぇみたいだが。

 

 

「あ、でも……」

 

「何だ」

 

「いえ、何でもありません」

 

「伏黒先生にも驚いてもらいたいので」

 

「?」

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