テンヨ・ザ・ブラッド   作:天縛(あましば)

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主人公の名前変えました。
呪術関係で真爾(しんじ)くんだと別の存在が頭をよぎって違和感凄かったので……今は甚真(とうま)くんです。


聖者の右腕Ⅲ

「わあぁ……!」

 

「「「……ッ!!」」」

 

「何だこの状況」

 

 

 教室側の廊下にて。

 教室の中の1人からは興味の眼差しを、その他男子多数からは敵意を向けられている。

 前者はともかくおい後者、俺達初対面だよな?

 

 

「姫柊、説明しろ」

 

「ふふ、実は……」

 

 

 予想通りという顔をする姫柊、イタズラは年頃らしくて大いに結構だが、初日に一般人から敵意を向けられる様な事態は御免蒙る。

 

 

「このクラスの方ではないんですが、1人の女子生徒が伏黒先生に一目惚れしてしまったそうなんです」

 

「は?」

 

「その方がどうやら、クラスどころか中等部全体の男子生徒に人気だったそうで……」

 

「つまり、俺は勤務早々僻まれてるって訳か」

 

「そうなります。……良かったですね、伏黒先生」

 

 

 前言撤回年頃なんて可愛らしいもんじゃねえ、笑顔が凄まじい圧を放ってやがる。

 つまりどう言うことだよ。

 

 

『モテモテってことよ、良かったわね?』

 

「ガキにモテても嬉しくねぇー……」

 

「先輩?」

 

「何でもない、時間もねぇし入るぞ」

 

「はい」

 

 

 姫柊からの圧が留まることを知らない。

 今まで戦って来たどの魔術師よりも凄まじいのは気の所為か?

 

 

『……仲良くなれそうね、ほんとに』

 

「しみじみと言うことじゃねぇな」

 

 

 揶揄いをあしらいつつ教室の中へと足を運ぶ。

 この状況で仲良くなれそうは最早暴言だろ、妹に謝っとけ。

 あとお前らはお前らで俺との年齢差わかってるよな?

 

 

「よお、初めましてだな」

 

「俺の名前は伏黒甚真。今日からお前らのクラスの古文を担当することになった」

 

「よろしく頼むよ」

 


 

「かっこいいじゃねぇかこんちくしょーっ!」

 

「クソイケメン! 叶瀬(かなせ)さんを連れてけこの先公!」

 

「何言ってんだお前らぁ」

 

 

 先生を退職に追い込みたいのか?

 そういう意図だったんなら中々な策士だな、初日から中々に追い詰められている。

 教職ってのは難しいな。

 

 

「ね、伏黒先生!」

 

「あん?」

 

(あかつき)凪沙(なぎさ)って言います! 先生はかのちゃんのことどう思ってるんですか?」

 

「あのな暁、俺にとってそいつは姿すら知らねぇ上に生徒だぞ。ノーコメントだ」

 

「確かに、でも愛の力は無限大って言いますし」

 

「愛の力も世間からの視線には勝てん」

 

「えー、酷いなぁ」

 

「教師って立場はな、世間体に敗北する哀れな公僕って生き物なんだよ」

 

「わあ、かっこ悪いのにかっこいい」

 

 

 かのちゃんって言われてもな、担当しない生徒のクラスまで覚えてなんざいない。

 

 

叶瀬(かなせ)夏音(かのん)のことじゃないかしら』

 

「は、覚えてんのかよ」

 

『一通り、あなたの横で目を通したもの』

 

「?」

 

 

 そうなってても相変わらずな様で。

 叶瀬ねぇ……1人とんでもない奴が思い当たるが。

 

 

「娘がいたのか?」

 

『さあ、アルディギアに行ったことはあるけれど。そんな噂は聞いたことがないわね』

 

「ええっと……?」

 

「……悪い、独り言だ。何でもないさ」

 

「……」

 

 

 虚空を見つめる暁。

 てかこれあいつの方を見てねぇか?

 

 

『そう言えば霊的素質に溢れてたわね、彼女』

 

「……もう席に戻れ、授業は終わったんだ。俺も職員室に戻る」

 

「あっ、はい! またお話ししましょう伏黒先生!」

 

「おう、暇な時はな」

 

 

 見えてるのか見えてないのかははっきりしない。

 とは言えヒラヒラと手を振んじゃねぇよ、思い出したらどうする。

 

 

『これで思い出すなら、あなたを見た時点で思い出す筈よ』

 

「用心に越したことはねぇ。例え絶対に思い出さないとしてもな」

 

『ふふ、そうね』

 

 

 真祖の方はともかく、あっちの暁には辛い思い出になるからな。

 思い出さない方がいい記憶だよ。

 


 

「さて説明してもらおうか……!」

 

「……ああ」

 

 帰ったら帰ったで南宮センパイに絡まれた。

 なんだ厄日か?

 

「こちらのセリフだ馬鹿者め、何故戻ってきた!」

 

「何故って言われてもな」

 

「柊が死んだというのに……!」

 

『もしもーし』

 

 

 黙ってろ真昼。

 世間体では死んでんだお前は。

 

 

『ふふ、実際は生きてるんだけどね』

 

「……はぁ。俺がどこで何しようが俺の勝手でしょう、センパイ」

 

 

 呑気なこいつの相手してたらボロが出そうになる。

 だからとっとと目の前の相手を凌ぐしかない。

 

 

()()、何をしに戻って来たと言うんだ……!」

 

「……姫柊の事情はご存知で?」

 

「獅子王機関の剣巫だろう、さっきまでここに来ていた」

 

「そりゃ話が早い。そいつと一緒に真希の奴のバックアップに来たんだよ、俺は」

 

「……チッ」

 

 

 当たりが強えよチビ先輩。

 そんな調子じゃ他の先輩方と出会った時持ちませんぜ。

 

 

「やはり第四真祖か」

 

「ええまあ。ジジイが珍しく用心して俺を勝手に派遣したんですよ」

 

「私の知るお前が、大人しく従う奴だとは思えんがな」

 

「好きに考えといてください」

 

 

 拘束を振り解きさっさと出口に向かう。

 こういう手合いは誤魔化さないと切り抜けるのが難しいからな。

 

 

「お前は」

 

「……」

 

「……お前は、柊の死をどう思っている」

 

『あら』

 

 

 ……ほんっと、面倒なセンパイだよなあんた。

 後輩思いなとこを素振りからは一切感じさせねぇのなんなんだ。

 

 

「夏油センパイは俺の獲物です」

 

「檻から出した時が最後の時になります、くれぐれも用心しといてくださいよ。南宮センパイ」

 

「っ……そうか、やはりそこまで……」

 

 

 当然、知ってはいるが。

 まぁ出てこないんなら手を出すつもりもない。

 

 

『そんなに思ってくれるなんて、嬉しいわ』

 

「この人意外と情が深いからな」

 

「黙れ」

 

 

 おお、怖い怖い。

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