テンヨ・ザ・ブラッド 作:天縛(あましば)
呪術関係で真爾(しんじ)くんだと別の存在が頭をよぎって違和感凄かったので……今は甚真(とうま)くんです。
「わあぁ……!」
「「「……ッ!!」」」
「何だこの状況」
教室側の廊下にて。
教室の中の1人からは興味の眼差しを、その他男子多数からは敵意を向けられている。
前者はともかくおい後者、俺達初対面だよな?
「姫柊、説明しろ」
「ふふ、実は……」
予想通りという顔をする姫柊、イタズラは年頃らしくて大いに結構だが、初日に一般人から敵意を向けられる様な事態は御免蒙る。
「このクラスの方ではないんですが、1人の女子生徒が伏黒先生に一目惚れしてしまったそうなんです」
「は?」
「その方がどうやら、クラスどころか中等部全体の男子生徒に人気だったそうで……」
「つまり、俺は勤務早々僻まれてるって訳か」
「そうなります。……良かったですね、伏黒先生」
前言撤回年頃なんて可愛らしいもんじゃねえ、笑顔が凄まじい圧を放ってやがる。
つまりどう言うことだよ。
『モテモテってことよ、良かったわね?』
「ガキにモテても嬉しくねぇー……」
「先輩?」
「何でもない、時間もねぇし入るぞ」
「はい」
姫柊からの圧が留まることを知らない。
今まで戦って来たどの魔術師よりも凄まじいのは気の所為か?
『……仲良くなれそうね、ほんとに』
「しみじみと言うことじゃねぇな」
揶揄いをあしらいつつ教室の中へと足を運ぶ。
この状況で仲良くなれそうは最早暴言だろ、妹に謝っとけ。
あとお前らはお前らで俺との年齢差わかってるよな?
「よお、初めましてだな」
「俺の名前は伏黒甚真。今日からお前らのクラスの古文を担当することになった」
「よろしく頼むよ」
「かっこいいじゃねぇかこんちくしょーっ!」
「クソイケメン!
「何言ってんだお前らぁ」
先生を退職に追い込みたいのか?
そういう意図だったんなら中々な策士だな、初日から中々に追い詰められている。
教職ってのは難しいな。
「ね、伏黒先生!」
「あん?」
「
「あのな暁、俺にとってそいつは姿すら知らねぇ上に生徒だぞ。ノーコメントだ」
「確かに、でも愛の力は無限大って言いますし」
「愛の力も世間からの視線には勝てん」
「えー、酷いなぁ」
「教師って立場はな、世間体に敗北する哀れな公僕って生き物なんだよ」
「わあ、かっこ悪いのにかっこいい」
かのちゃんって言われてもな、担当しない生徒のクラスまで覚えてなんざいない。
『
「は、覚えてんのかよ」
『一通り、あなたの横で目を通したもの』
「?」
そうなってても相変わらずな様で。
叶瀬ねぇ……1人とんでもない奴が思い当たるが。
「娘がいたのか?」
『さあ、アルディギアに行ったことはあるけれど。そんな噂は聞いたことがないわね』
「ええっと……?」
「……悪い、独り言だ。何でもないさ」
「……」
虚空を見つめる暁。
てかこれあいつの方を見てねぇか?
『そう言えば霊的素質に溢れてたわね、彼女』
「……もう席に戻れ、授業は終わったんだ。俺も職員室に戻る」
「あっ、はい! またお話ししましょう伏黒先生!」
「おう、暇な時はな」
見えてるのか見えてないのかははっきりしない。
とは言えヒラヒラと手を振んじゃねぇよ、思い出したらどうする。
『これで思い出すなら、あなたを見た時点で思い出す筈よ』
「用心に越したことはねぇ。例え絶対に思い出さないとしてもな」
『ふふ、そうね』
真祖の方はともかく、あっちの暁には辛い思い出になるからな。
思い出さない方がいい記憶だよ。
「さて説明してもらおうか……!」
「……ああ」
帰ったら帰ったで南宮センパイに絡まれた。
なんだ厄日か?
「こちらのセリフだ馬鹿者め、何故戻ってきた!」
「何故って言われてもな」
「柊が死んだというのに……!」
『もしもーし』
黙ってろ真昼。
世間体では死んでんだお前は。
『ふふ、実際は生きてるんだけどね』
「……はぁ。俺がどこで何しようが俺の勝手でしょう、センパイ」
呑気なこいつの相手してたらボロが出そうになる。
だからとっとと目の前の相手を凌ぐしかない。
「
「……姫柊の事情はご存知で?」
「獅子王機関の剣巫だろう、さっきまでここに来ていた」
「そりゃ話が早い。そいつと一緒に真希の奴のバックアップに来たんだよ、俺は」
「……チッ」
当たりが強えよチビ先輩。
そんな調子じゃ他の先輩方と出会った時持ちませんぜ。
「やはり第四真祖か」
「ええまあ。ジジイが珍しく用心して俺を勝手に派遣したんですよ」
「私の知るお前が、大人しく従う奴だとは思えんがな」
「好きに考えといてください」
拘束を振り解きさっさと出口に向かう。
こういう手合いは誤魔化さないと切り抜けるのが難しいからな。
「お前は」
「……」
「……お前は、柊の死をどう思っている」
『あら』
……ほんっと、面倒なセンパイだよなあんた。
後輩思いなとこを素振りからは一切感じさせねぇのなんなんだ。
「夏油センパイは俺の獲物です」
「檻から出した時が最後の時になります、くれぐれも用心しといてくださいよ。南宮センパイ」
「っ……そうか、やはりそこまで……」
当然、知ってはいるが。
まぁ出てこないんなら手を出すつもりもない。
『そんなに思ってくれるなんて、嬉しいわ』
「この人意外と情が深いからな」
「黙れ」
おお、怖い怖い。