幽霊は知っている
※ 曇らせ確定演出。
姫野、佐原ペアの二人での任務が安定してきた頃だった。
仕事中に突然鳴り響いた携帯電話には、個人の電話番号として登録された『姫野ちゃん』の文字が表示されていて、マキマは無性に嫌な予感を覚えて通話ボタンを押す。
そして、電話に出た第一声で届いたのは泣きじゃくる姫野の悲痛な声だった。
「どうしよう、マキマさん。どうしよう……! 佐原ちゃんが、ナツキちゃんが……私のせいで、わたっ、私のせいで死んじゃったの……! どうしよぉ……!」
「……え?」
パサリと手に持っていた書類が落ちて、同時に四人で撮影した宅飲みでの写真が机上でパタリと倒れる。
悪魔相手には油断せずに戦えるようになり、もう大丈夫とユカリと二人で太鼓判を押した一ヶ月後の出来事だった。
「姫野先輩とこうして現場に行くのも、もう一年半くらいになりますね」
「そうだねぇ、佐原ちゃんにはオススメのお店いっぱい紹介したけど、あとなに教えてなかったっけな〜。沼ラーメン食べたことあったっけ?」
「あそこはもう二度と行きません」
運転中の佐原が嫌な顔をして、姫野はケラケラと笑った。
口直し用のチャーハンをわざわざ注文しておいて、なにも知らない佐原に沼ラーメンを食わせた姫野はそのときも腹を抱えて笑っていた。佐原にとっての苦い思い出である。
姫野
傍迷惑な恒例行事だと先輩のバディに苦々しく思いながら、佐原も笑う。あれほどまでに見事なドブみたいな味のするラーメンを錬成するのに、どうしてあそこのチャーハンは絶品なのかと不思議に思ったからだ。
そのメカニズムを解き明かせば少し前に設立されたイグノーベル賞だって狙えるかもしれない。今なら狙う人も少ないかもしれないし、もし公安を辞めることがあったのなら、そういう研究をしてみるのもおもしろいかもしれない。そんなことを夢想する。
助手席の姫野は外の景色を眺めながら、表面が揺れるワンカップの酒をぐいぐい飲んでいる。
こうして彼女が酒を飲んだり煙草を吸っているために、佐原は運転手としての技能がめきめきと上がっていった。今では知らない現場に赴くときでも先に軽く調べるだけで向かえるようになったほどである。
「私、特に夢とかなくて……単にお給料がいいから公安入ったんですけど」
「んー、別にそれでもいいんじゃな〜い? 私みたいに銃野郎に恨み持ってるのも多いけど、お金目的のほうがよっぽど健全だよ。恨みを原動力にするやつは死に急いじゃうから。無駄死にに犬死に。急いでるせいで銃の肉片ひとっつも集められなくて死んでいくとかバカじゃん?」
「お金のために死ぬのも馬鹿みたいですけどね」
自嘲するように佐原が笑った。
姫野の言葉の端々に嘲りではなく、後悔のために貶すようなことをわざと吐き出しているのだと感じ取って。
「んなら、危ないと思ったら辞めればいいよ。そういう原動力ないんなら、ある程度お金稼いで辞めてまっとうに生きたほうがいいんじゃないかな〜って、お姉さんは思うわけ」
「でも、マキマさんもユカリさんも期待してくださっているみたいですし」
思い浮かぶのは何回か任務をともにした二人組。
新設する部署に誘われているうちの一人は姫野のバディである自分もだ。なら、期待に応えたほうがいいのかもしれないと彼女は考えていた。
けれど、姫野は軽い調子で首を振る。
「いーのいーの、上司は私が説得するからさ。辞める権利は誰にだってあると思うよ? 私は、首が締まって死ぬまで公安にいるのかなあ……大事だと思ってた人もみんな死んじゃったのに、辞めれないんだもん。気がおかしくなってるから辞めれないんだよ。佐原ちゃんはそうなる前に辞めちゃいな」
死ぬ前に辞めたほうがいいよ。
優しさのこもったそれにくすぐったい気持ちになった佐原は、はにかんで彼女に答える。
「夢はなかったって、言いましたよね。でも、最近夢を見つけられたような気がするんです」
「ほお〜? どんな夢? 彼氏作りたーいとか、お金貯めていっぱい遊びた〜いとかあ?」
「酔っ払いすぎですよ。大丈夫ですか?」
「へーきへーき、任意発動になるけど、酒の魔人と契約してフィジカル面でも結構動けるようになったかんね。猫の餌代がま〜たかくってたかくって! 酒のほうに払う対価は安めになっちゃったから万全ではないけどさ〜。で、夢って?」
佐原は照れたように笑った。
「姫野先輩の夢を、私も一緒に追いかけてみたいんです」
空になったワンカップの瓶が置かれて、姫野が煙草に手を出す。
衝撃を受けた顔をしていた。
運転中の佐原の横顔に、目を見開く姫野の視線が向けられてすぐに逸らされる。
姫野は、いつもの軽い調子を取り戻すのに幾分か苦戦した。
そうしてようやく言葉をしぼり出すことができた。
「な、なんでそんな……嬉しい、けど」
「人の夢に乗っかるみたいで変かもしれないですけど、頑張ってる先輩を見て応援したいな〜とか、少しでも私が支えられたらいいな〜って思ったんです。悪魔殺すのは怖いけど、先輩はかっこよくて、でもときどき弱くて、こんなに頑張ってる人の夢は叶うべきだと思うんです。だから」
車が停止する。
「だから、私にも姫野先輩の夢が叶うところ見せてください。それがバディとしての、今の私の夢です……現場に着きましたよ。行きましょう」
「あ、うん……」
火をつけたはずの煙草は、一度も吸われることなく灰皿に押し付けられた。
依頼人は現場となっている家の住民ではなく、その彼氏なのだという。
民間に一度頼んだものの、悪魔の強さに恐れ慄いた結果全員死んでしまったらしい。
通り魔事件のあった現場にも近いため、それなりに悪魔が惹き寄せられる要因はあると言える。そこまでは二人にも調べはついていた。通り魔事件のほうは犯人が見つかっていないそうなので、特に任務中は要注意である。まだ近くにいたらたまったものではない。
「そんで、悪魔がずっと家の前に居座ってて彼女が立てこもってるってえ?」
「はい、そうです……あの、もしかして酔ってますか?」
「酔ってない酔ってな〜い。大丈夫ですよ。公安のデビルハンターが来たからには悪魔の駆除はお任せあれ!」
「実力はあるので問題はございません。不安にさせてすみません。ほら先輩……」
「はいはい、悪魔の特徴は?」
「女の顔が上にあって、その下に……花? みたいなのがいっぱいついた首があって、あと下のほうは全部手みたいなものに覆い尽くされている感じの不気味な見た目です」
「ほーん、なんの悪魔だろ……」
「悪魔がどこから来たかとかの心当たりはありませんか?」
考え込む姫野に代わり、佐原が尋ねると男は心当たりがありそうな顔で変な顔をした。
「いえ……あ、でも……」
「ちょっとでも気になることがあったら言ってくださいね〜」
「ええと……彼女のお母さんが、包丁で刺されて亡くなっているはずです。悪魔が家の前に陣取り始めたのもその頃です。家に備蓄食料があるといっても、そろそろ一週間になるので心配で心配で」
「ほーん、ああ、ここ通り魔事件で亡くなった人の家なんだね。じゃあ、その通り魔が悪魔と違法契約して残りの住民も殺そうとしてるとか〜?」
「あの……早く駆除してきてくれませんか。彼女が心配なので」
「あーはいはい、分かりましたよっと」
焦っている様子の男に姫野は冷めた眼差しを向ける。
「現場を案内していただくことってできますか〜?」
「む、無理です。あの、俺は近づくと襲われちまうんです……必死で逃げて、やっとのことで連絡したんですから、お二人で頑張ってください」
「先に連絡した民間のデビルハンターの氏名は覚えてたりします?」
「ああ、はいそれなら……」
男はさらさらと三名ほどのフルネームをメモ帳に書き込み、姫野に渡す。それを佐原に渡した姫野は「それじゃ、現場行くんで離れててくださいね〜」と男に念押ししてその場から歩き出した。
「あ、待ってください!」
慌ててそれについていく佐原。そして酔っ払っているわりにスタスタと歩く姫野。二人の後ろ姿を、男は穴があきそうなほどにジッと、見つめていた。
「これは女の勘なんだけどさ〜、佐原ちゃん。民間のデビルハンターって全員男だったりしない?」
「……照合しました。全員男性ですね。民間のデビルハンターとして届出があるので簡単に調べられました」
「あ〜、んじゃどうしようかな……まずは家の住民にもお話聞く必要出てきちゃったや」
「どういうことですか?」
「さっきの男が本当のこと言ってるとは限らないってコト。特に、家の住民が一人通り魔に殺されてて、最後の一人も悪魔に狙われてるって……なんか変じゃない? 悪魔なら狙ってる人間いたら家ごとぶっ壊して殺せばいいのにそうしてないんでしょ?」
「たしかに……そうですね」
家の付近に来ると、悪魔の姿はよく見えた。
目を縫い付けたアンバランスな大きさの女の頭に、献花の類がズラッと並ぶ首。無数の青白い手が体の下半分を覆い尽くしており、なによりまっすぐと……悪魔は玄関を背にして道路のほうを向いていた。
「依頼人の話だと家の住民が狙われてるってことだったから、やっぱり話が食い違うな〜」
「そう、みたいですね」
姫野と佐原が家に近づく。
悪魔は彼女たちを見えないはずの目で見つめているように首をまわしたが、それでも襲ってくることはなかった。
玄関まで辿り着いた姫野がインターフォンを押して、ピンポーンとよく聞く音声が流れる。
「すみませーん、公安のデビルハンターなんですがー」
姫野が間延びした声をかける。
しかし、返事が来る前に事態は動いた。
「はあ? おい! なんだよ通れるじゃねえかよ! 民間の奴ら殺して満足したのか?」
離れたはずの男の大声が聞こえ、その姿を見せたとき、それまで姫野たちを見ていた悪魔が顔を逸らして、下半身の腕をびゅっと伸ばした。
「あ……?」
大量の腕が絡み合ってコンクリートの地面を叩きつける。
依頼人の男があっという間に叩き潰されて血と臓物を撒き散らしたシミとなり、インターフォンを押したままだった姫野は指をそのままに振り返って「え!?」と素っ頓狂な声をあげた。
そして、悪魔が玄関から移動して男の死体のそばに寄って行った。
さすがにそんなことになるとは予想していなかったのだろう、姫野は悪魔の行く末を見送ったまま困惑する。
「姫野先輩っ、危ない!」
姫野が玄関の扉が開いたと認識する前に、佐原が叫んで彼女を突き飛ばした。
「った! な、なになにどうしたのっ、佐原……ちゃん……?」
右腕から転んだ姫野は激痛を感じながらも顔をあげる。
折れた腕で起き上がるのが遅れた。いやそれよりも……現実を認識して動き出すことができなかった。
もしかして他にも悪魔がいたのか?
危ないと突き飛ばされたのなら佐原はどうなった?
どうして肉が裂かれるような嫌な音がするんだ。
佐原のうめき声がする。
庇われた? 酒の魔人の力で多少は瞬発力も上がるのだから、私を庇う必要なんてなかったのに?
ぐるぐると巡らされた考えが四散する。
姫野が見た光景は、玄関から出てきた女に包丁で刺される佐原の姿だ。
口から血を吐いて、肺のあたりを刺された彼女が横目に姫野を見ている。
そして、安心したように目を細めて笑った。
「さはら、ちゃん……?」
現場に響き渡ったのは佐原の悲鳴でもなく、姫野の慟哭でもなく、女の狂った笑い声だった。
「あっはははは! やってやった! やってやった! 褒めてよお母さん! あははははは! お母さんは誰にも殺させない……! お母さんはわたしを守ってくれたんだ! だから、お母さんは悪い悪魔なんかじゃない! デビルハンターも殺してお母さんと一緒に暮らすんだ……!」
首が献花で構成された悪魔がガサガサと腕を動かして男の死体の元へ向かい、その血肉に腕を伸ばす。ぐちゃぐちゃ、がつがつ、じゅるじゅる、そんな音が姫野のいる位置にまで聞こえてくるほどだった。
そのうちの一本が姫野のほう……女のほうを向くと、手のひらには血をつけた口がニンマリと笑っていた。
「や、やだお母さん……なんでそんなの、食べるの……」
女が一歩下がる。
女のそばまで寄ってきた一本の腕が笑って口をあける。
「怖がったね、怖がったね。お前の母親とかわした契約は、お前をあの男から助けること。もう契約は完了した。もう助ける必要はない」
ケラケラと笑った悪魔が女の頬に手を添えて、そして女が悲鳴をあげる。
耳から頬までにかけてが食いちぎられていた。
「……は!? クソッ、猫!」
猫の手が現れて悪魔の本体を狙う。しかし、その手は悪魔の体をあっさりとすり抜けていった。
「いイっ、いたいいたいいたいィ! どうしてェ! おがあざあ゛ん゛!!」
幽霊。
「知っているよお……あの男はお前にひどいことをしようとしていたんだね。付き纏われて怖がっていたんだろうねえ。それを助けてたお前の母さんが、あの男に刺されて死んだとき、死の間際に会った私に願ったんだよ。悪魔だって知ってて契約したんだ。馬鹿だねえ。幽霊はみんな私の中に溶け込む。お前も母さんと一緒になりたいんだろう? 私の中においでよ」
幽霊の悪魔。
姫野の脳裏に浮かんだ言葉はきっと正しい。
「ミチコ、また私と一緒に暮らそう?」
「あ……お母さん、の、こえ……」
どうする? どうする? 猫の攻撃も効かない。フィジカルを上げる酒の魔人の力も通じるとは思えない。佐原は致命傷を受けていて、助かりっこない。物理的な解決法が通じない相手にはじめて出会い、いつの間にか大事になっていた相棒の命の危機に姫野はパニックに陥った。
乗り越えたと思っていた、修繕できたと思っていた心のヒビに再び亀裂が入って壊れていく。
幽霊の手を取った女は抱きしめられるように腕の中へ埋もれていった。
醜悪な咀嚼音と悲鳴という現実を残して。
そしていよいよ姫野に幽霊の悪魔が目を向ける。
目は縫い付けられていて見えていないはずだが、明らかに見えている動きだった。
「ゆうれい、の……あくま……けいやく、して、くれま、せんか……?」
そのときだった。
佐原の弱々しい声が聞こえたのは。
「さ、佐原ちゃん……もういい、もういいよ……血が止まらない……すぐに応援呼んで、それで、そんで……救急車も来て……マキマさんたちが、きっと助けに……」
動かない右腕をぶら下げながら姫野が佐原のそばに寄り、自分のジャケットを傷口に押さえつける。
包丁は刺された時に捻るように抜かれて傷口はぐちゃぐちゃだ。助からない。そんなことは二人とも分かっていた。
「い、です……きっと、たすかりません。ごめんなさい。あくまじゃなくて、ひとが、まさか、おそってくる、とは、おもって……なくて」
「それは」
私もそうだ。いや、私のほうがもっと早くに気づかなければならなかったのに。彼女はそう後悔をしていた。今なら一瞬で沈溺の悪魔に溺死させられるだろう。それほどの深く、重い後悔を。
「娘、契約の内容を話せ。条件次第ではお前の大事な人を守ってやろう」
「わたしの、すべてをとりこんだら……どれくらい……いえ」
佐原が一度目を閉じる。
姫野に教わったことだ。悪魔との契約で下手に出てはならない。強気でいって、少しでもいい条件をまず突きつける。それから拒否されたならされたでそこから交渉していくべきである。
なぜなら悪魔も自分が楽な条件で契約を結ぼうとしてくるからだ。悪魔優位の契約よりも、自分の都合をまず押し付けて様子を見る。
酒の魔人相手に散々値切ってごねて、対価を極限まで安くした姫野を見ていた佐原だからこそ、それに納得もしていた。
だから、死に際でも。死に際だからこそ言ったのだ。
「わたしのすべてをとりこんでいいので、二十年。おまえが……滅びない限り、はたらいて、姫野先輩と、公安のみなさんの助けに、なりなさい……」
「……十年だ」
「それでも、いいです」
「契約成立だねえ」
それからはもう、幽霊は動かなくなった。
そして、少しずつ体の一部が消えていく佐原だけが残される。
一気に奪わないのは最後まで恐怖の感情を食べるためだろうか。
「姫野、せんぱい……あのね」
姫野は彼女を抱き上げて泣きながら謝り続ける。
「せんぱいのこと、おねえちゃんみたいだって、おもってました」
彼女の全てが溶けるように消えて、公安の制服だけが残される。
その制服を腕の中に閉じ込めた姫野は、いつまでもその場にうずくまって泣いていた。
泣いて、泣いて、ようやく泣き腫らした目で電話しなければと気づいてマキマに連絡を入れ、そして立ち上がれなくなる。
佐原ナツキは死んだ。
人間によってあっさりと致命傷を受け、そして悪魔と最期に契約をして。
幽霊の悪魔が姫野を食わないように。姫野の夢がこれからもどうか続いて、いつか叶えられる日がきますようにと願いながら。
「応援呼んで……帰らなきゃ……あ、でも」
顔を上げた姫野が震えた声で笑う。
「私お酒飲んでるから……車、運転して帰れないや」
現場にマキマが着いたとき、姫野の表情は全て抜け落ちていた。
吹っ切れて修繕したはずの心はぐちゃぐちゃに割れてしまっていて、治りそうもないほどに。
「姫野ちゃん……」
「マキマ、さん……」
そんな彼女の表情を見ていると、マキマはなぜだかとても胸が苦しくなるような気がした。
どれだけ公安の人間が死のうが気にならなかったはずの彼女の心が、佐原の死と泣く姫野を見て悲鳴をあげている。
泣いている姫野をそっと抱きしめて、マキマは考える。
ねえ、ユカリ。こういうときどうしたらいいのか、私ってなにも知らないんだ。教えてよユカリ。どうすればいい? どうすれば姫野ちゃんを慰めてあげられるの? 経験がないから、全然分からないよ。上辺だけじゃない、本当に心から励ましてあげるのにはどうしたらいいんだろう。
ねえユカリ。
どうして私まで苦しいんだろう。
どうしたらこの痛みはなくなるんだろう。
私への攻撃は全部他に押し付けられるはずなのに、痛いのが治らない。
支配じゃどうしようもないことって、どうすればいいの?
曇天の下でマキマが目を閉じる。
救急車の音が近づいてくる。
付きまといの加害者だった依頼人の死体も、被害者の女の死体も、佐原の死体も、なにもかもが残らなかった現場はこれから騒然とするだろう。
ユカリが一度幻想郷へと戻っているタイミングであったことも災いした。
マキマもそろそろ姫野たちにも神隠しの悪魔と契約をさせて、攻撃をスキマに受け流すという防御手段を与える手筈でいた。
その前に起こってしまったことは、もう二度と戻ることはない。
1993年2月。
世の中に『ストーカー』という言葉が定着する前の事件だった。
・あるはなく なきは
生きている人は亡くなり、亡くなった人の数は増えるばかりのこの世で、私はいつまで嘆き悲しめばよいのだろうか。
小野小町が詠んだとされる哀傷歌。
・佐原ナツキ
ナツが去って、アキがくる。
原作では前のバディは多分男かなあ……なんですけど、ここでは女の子です。姫野さんビンタするのは佐原じゃないまたバディの彼女。
・幽霊を母と呼ぶ女
ストーカー被害を受けていた。防波堤になってくれていた母がストーカー男に殺されている。
死の間際の感情と、死体になったときに食うためにやってきた幽霊に母親は娘を守ることを願った。
男を殺して母親との契約を遂行した幽霊の悪魔は、契約を終えたので娘も食おうとした。男の死体を食べているところを見て、娘が恐怖したのでその感情を好ましく思ったからである。
・姫野
このあと右目を対価に幽霊と契約する。
・マキマ
「前まではなんとも思わなかったのに」
心の成長痛に苦しんでいる。幸せを知ったあとだからこそキくのはデンジ君とおそろい。
心が大事なもの以外全部どうでもいいに傾きはじめているので、ここからの教育と成長が肝心。
・ユカリ
たまに幻想郷に帰っているが、今回がそのタイミングだった。
自分が流れを荒らしている自覚があるので、原作にない悪魔と契約していて強化されてる姫野たちに対処できない事態が起きると思ってはいなかった。
本当に今回は運が悪かっただけ。
あとで泣いてるマキマを抱きしめて一緒に寝た。
マキマの倫理教育を頑張らないとちょっとまずいことになりそうなので、子育て経験のあるまともな人を求めて魔界とかにまで話を聞きに行ったり、お酒をお土産に華仙の家に行ったり、最終手段でお寺や霊廟に話を聞きに行くかどうかを悩んでいるところ。
(山の神社一行はマキマの見た目でナユタになったら困るので除外)