スキマ妖怪と支配の悪魔   作:時雨オオカミ

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それぞれの天使たちにラブソングを

 

 生きていることを証明するには死が必要である。

 故に、死なない生き物は存在しない。生きていなければ死なず、死なない生き物は生きてもいない。

 生きているうちは本物の死を体験することは叶わず、死は常に生の幻想としてそこにある。逆もまた然り。死は常に生きているものの友人である。

 

 そして、この厚さゼロの境界を境界に住む妖怪は生死の境界と定義していた。

 

 

 

 八雲紫にとって『死』とは親友の代名詞である。

 

 

 

 そして、『死』とは、彼女にとって『桜』とも言い換えることのできる単語だった。

 幻想郷において死を想起する存在は多くある。それこそ死の世界に生きる存在や、動物霊たち、地獄に生息する生き物たちに旧地獄に住み着いた妖怪たち。はたまた、死体を集める猫とか、幽霊を運ぶ死神、あの世の閻魔様までより取り見取りだ。

 

 その中でも八雲紫にとって唯一と言える親友がいる。

 

 生前、死霊を操るばかりだった能力が、死を誘う妖怪桜に影響されて問答無用で己も死に誘うようになってしまった人間の娘。

 人間にしたら強すぎる力を持ち、彼女の元に訪れるものたちは誰も彼も死に取り憑かれて自ら桜の下で命の花を散らす。そして美しい桜をより美しくするための肥料となって朽ちていく。

 

 最初は気まぐれだった。

 彼女のそばに寄ることができるのは従者である半人半霊の種族だけのようだったから、自身の生死の境界を曖昧にしてどんな娘がそんなことをしているのかと見に行っただけ。

 

 娘は明るく、優しく、そしてただの人間の娘だった。いたって普通の女の子。

 ただ自身の能力の制御が効かず、桜に引きずられていて、桜に殺されず能力を同一のものとされて、問答無用で人の心を死に誘ってしまうだけ。

 

 桜を、彼女を見れば、いや近づくだけで人間も妖怪も、生き物は全てその心に『死』の選択肢が突きつけられる。

 

 ああ、美しい。あの下で死ねたら素晴らしいだろう。

 首を吊ろう。腹を裂こう。頭を打ちつけよう。どうか連れて行ってくれ。そんな風に自然に脳が死へと引き寄せられ、本人はいたってそれが自然であるかというように死を選ぶ。あまりにも恐ろしい力。

 

 そんな力を持つ少女はどうしようもなく人間だった。

 思っていたよりも明るく笑いかけるその娘に、紫はほんの少しだけこの哀れな子に付き合ってやることにした。最初はそれだけだった。

 

 しかし次第に八雲紫は娘に惹かれていくことになる。

 友人と呼べるほどの存在になり、明るく笑うその子の心の中にもまた『死』が少しずつ忍び寄っていることを知った。己の力を疎んで、どうにか制御したいと考えていることを知った。桜をどうにかしようと考えていることを知った。

 

 八雲紫が桜の封印を提案して、あまりにも強大になってしまった妖怪桜を押さえ込むための結界を練り、そしてたくさんのリスクを背負って己の死さえもあるかもしれない賭けに出ることにしたあと。

 

 準備をするために八雲紫が留守にしたわずか数日で娘が――まさか自らの胸に刃を突き立て、その亡骸を封印の楔にすることなど、彼女は予想だにしていなかった。

 

 計算高い八雲紫さえも欺き、最期まで己の計画を悟らせなかった娘の手腕は見事だったと言えるだろう。

 

 八雲紫は亡骸となった娘が桜を封印しようとしていることに気づき、己の心に空いた大きな穴を自覚する前に、茫然自失とする時間さえも与えられず彼女の遺志を尊重した。

 

 強大な妖怪桜はそうして封印され、千年以上花をつけずに幽冥楼閣に佇んだまま息づいている。

 

 次に娘が現れたのは花をつけていない桜の下。

 亡霊となった彼女は生前の一切を覚えておらず、慌てて彼女の元に現れた八雲紫に笑いかけた。あのときと全く同じ表情で。「はじめまして、妖怪さん」と。

 

 八雲紫は己の心の傷を癒す時間もなく、彼女に返事をした。

 もう一度友達になればいいのだと心の中で決意をして。なんでもない顔で。妖怪の賢者らしく、己の弱った心を上手に隠して。

 

 娘――西行寺幽々子が最期まで己の本当の計画を隠し通したように。

 

 それ以来、八雲紫の親友はただ一人。

 西行寺幽々子その人だけである。

 

 友が増えようとそれは変わらない。

 変わらない、はずなのだ。

 

 いつの間にか己の心の中に同心円状のあの瞳が焼き付いている自覚もありながら、八雲紫は彼女に貰った扇子を撫でる。

 

 八雲紫にとって『死』の象徴とは西行寺幽々子その人であり、そして最も身近な存在である。

 

 ……故に、桜の下でそれと邂逅するのは必然と言えた。

 

「支配ちゃんと友達になってくれたのってあなた?」

 

 コテンと首を傾けて八雲紫を見上げるその悪魔は、両耳にストラップのように垂れたピアスをしていて、どっかの誰かのように同心円状の瞳をしていた。

 

「こんにちは、死の悪魔。友達のお姉さんに会うのって、なんだか緊張してしまうわね」

 

 今はまだ中学校に通っている彼女は、桜の下で何段もの大きなお弁当箱を開封してレジャーシートの上に座っている。

 

 ゴキゲンなお花見の真っ最中だった。

 

「しーちゃんって呼んで」

「マキマでさえ呼び捨てなんですよ? 嫌ですわ、お姉さん」

 

 一人花見である。

 頭上の桜は満開を通り越して、少し花が落ちてきている時期だ。

 桜が落ちきってしまう前に死んで肥料になればまた美しく咲くだろうか? 

 

 そこまで考えが至りそうになって、覚えのある力に八雲紫は自身の境界をいじってすり抜ける。

 

「むう」

「……効果がないからって、さらっと死を操ろうとするのはやめていただけませんか?」

「結果的に死なないんならいいんじゃない?」

 

 手掴みで弁当の中身を食べ出した彼女にドン引きしつつ、八雲紫はうっすら笑う。ああ、『違うな』と確認して。

 だって私の親友はもっと上品だものなんてその違いをきっちり認識して、境界線を敷く。彼女はあくまで友達(マキマ)の姉である。

 

「妹のお友達を殺そうとするだなんて、そんなんだからマキマに嫌われちゃうんですよ。お姉さん」

「嫌われてる……私が……? そんなわけないでしょ」

 

 ナポリタンを手で食べてオレンジ色にしたまま死の悪魔が首を傾けた。

 

「……あなた、自覚がないのですか? 本当に……?」

「……? 妹に嫌われるような要素、なにもないと思うけど」

 

 マジか、みたいな顔を素で出す八雲紫はレア中のレアものである。

 痛いほどの沈黙が、二人の間にしばし漂っていた。

 

 マキマが出張中に、とんだ家族への挨拶である。

 結婚ではなくもちろん友達としての。

 

 ◇

 

 一方、マキマは薄着で南国の島に訪れていた。

 観光地とは程遠い島には独自の生活をしている人間たちが住んでおり、そこに目的の悪魔が住んでいることを彼女は知っていた。

 

 チェンソーマンを地獄で信奉していた悪魔の一人。

 ただ、現在ここにいる彼はその記憶は微塵もないだろうが。

 地獄でチェンソーマンに救いを求め、殺された悪魔の一人だからだ。

 

 元、チェンソーマンの信奉者たちはそうして最期にチェンソーの駆動音を聞いた悪魔たちで構成されている。

 正確には、マキマがそうやって勝手に定義しているだけなのだが。

 チェンソーマンを恐れながらも救いを求める。そんな存在は己と同じように彼を敵としてではなく、羨望の目で見ている。だから信奉者としての同士だと、勝手にマキマが集めているに過ぎない。

 

 以前から集めている中にチェンソーマンの暴力を肯定する暴力の悪魔もおり、この天使の悪魔はそのうち能力を確認してから連れて行こうとしていた存在である。

 

 その前にユカリと出会ったためにタイミングはズレたが、勧誘することに違いはない。ユカリと出会う前と後で、少しばかり心境の変化はあったが。

 

 故に、マキマは現地の言葉を話し、渡りをつけ、正当な交渉を経て天使の悪魔と邂逅したのである。

 

「僕を勧誘しに来たって? その……こことは違う島国から?」

「そうです」

 

 海に潜って魚を獲っていたらしい天使の悪魔の隣にしゃがみ、マキマは告げる。まずは挨拶から。そして目的を。

 以前の彼女ならそんな過程をすっ飛ばして、島にいる人間など彼の力を確認するために必要な存在としか思わなかっただろう。

 だが、少し調べれば天使の悪魔が島の住民たちと良好な関係を築いて暮らしていることなどすぐに分かる。以前の彼女なら知っていても強行しただろうが、今のマキマはそれをしない。

 

 天使の悪魔にとっての島の住民は、マキマにとっての八雲紫であり、姫野であり、佐原である。

 そう定義して、自分がされて嫌なことはなるべくしない。そういう良心がしっかりと彼女の心の中に染みついていた。

 

「正確には雇用契約のお願いですね。悪魔に対抗するための武器は通常のものより、キミのような悪魔の作る武器のほうが有用です。人間を守るためにご協力いただきたい」

「僕は……この島からは離れる気なんてないよ」

 

 天使はマキマの予想通りのことを言った。

 さすがにマキマも即決で彼の力を借りることができるだなんて思っていない。

 だからこそ、ユカリと出会う前の彼女なら問答無用で支配の力を使って攫っていただろうと考えていた。そのほうが手っ取り早いのだから。

 

「みんな僕に優しくて、こうして言葉を話せるのだって彼らに教えてもらったからだ。海で魚を獲ることも教えてもらって、人間の生活の仕方を知った。たまに悪魔に襲われることもあるけど、僕がみんなを助けると喜んでくれる。僕のほうが強いのに、僕だけで悪魔を倒そうとすると叱られて、頼れって言ってくれる。みんなのほうがずっとずっと弱くて、僕に媚びて悪魔を殺してもらうほうがいいだろうに、そんなこと絶対にしないんだ」

 

 ポツポツと自分の考えを伝えるために、天使は言葉を紡ぐ。

 隣にしゃがんだマキマのほうは決して見ようとしない。うんざりしたように。

 もしかしたら、すでに何回か他の国からの勧誘があったのかもしれない。

 島の住民にマキマが話を聞いたとき、どこか慣れているようにも感じられたから恐らくそうなのだろう。しかし、あくまで島の住民たちは天使自身の意思を尊重しているようだった。

 

 だからこそ、こうしてマキマは交渉の場に立たされているのだ。

 天使が欲しくば、自分で説得してみせろと。

 島の住民たちには自信があるのだろう。必ず彼は自分たちを選ぶだろうと。そこには信頼があった。かたい絆があった。人間と悪魔という異なる種の。互いに殺し合うばかりの種の共存がそこにあった。それはある意味ユカリの言う幻想郷にも似た場所と言えるのかもしれない。

 

 マキマは見るだけしかできない、その理想の世界がどんなところか考えながら天使の言葉を待つ。

 

「僕はさ、ここでは悪魔じゃなくて人間として生きてるんだ。生きていいって、みんなが許してくれてる。許してくれてるって言っても彼らに飼われてるわけじゃないよ? 彼らは僕が僕だから……一緒に暮らしてるんだ」

 

 そして、はじめて天使の目がマキマを見た。

 

「僕はここで人間として望まれて生きている。悪魔としての僕を望むならそれには応えられない」

 

 悪魔では考えられないほどのあたたかい情がそこにある。

 悪魔は全て、本能的に人間を害そうとする。それをここまで変えた環境に、マキマは微笑んだ。

 

「キミのことはよく分かった。優しいんだね、天使君」

「それに僕、好きな人がいるんだよ。いくらキミみたいな美人さんでもあんまり長くいると不安にさせちゃうと思うんだ。もう行っていい?」

 

 その場から離れるつもりだったんだろう。

 立ち上がった天使の手を取って、マキマがその場に引き留める。

 驚いた彼はすぐにマキマの手を乱暴に振り解いて後ろに二歩下がった。

 

「おや、ごめんね。それは知らなかった。すごいな……でも、ねえ天使君。好きな人と触れ合えないのって残念だと思わない?」

「……げえ、僕の力まで知ってるの!? 知ってるのにどうして触った!? 死にたいのか!?」

 

 青ざめた彼にマキマは「大丈夫だよ」と首を傾けて話を続ける。

 

「うん、悪いと思ったけど……ちょっとだけ観察させてもらってたから。魚を獲るときはいつも素手でちょっと触れて、そして網に入れる。のんびりしてる魚はそうやって捕まえてるんだよね」

「その通り。キミ、かなり嫌なヤツだな。なに? 島のみんなを大切に思ってるなら人質にするとか? というか、触ったとき変な感触だったんだけど……キミってなんなの……!?」

「そんなことはしないよ。ただ、交渉の余地くらいはあるかなって思っただけです」

 

 天使の様子がおかしくなったからだろうか、遠巻きで二人のやりとりを見ていた人々が集まってくる。

 

「天使の悪魔。私はキミのその力を制御する術を知っている。恋人と触れ合いたくはない? 私はその術を教えてあげる。その代わりに、キミは私たちに雇われてある程度の武器の提供と、デビルハンターとしての活動をしてほしい。もちろん、この島にすぐ帰れるようにもしてあげられる。私の友人に、そういうのが得意な子がいるんだ」

「は……? は……? そんな、都合の良いことあるわけ……!」

 

 集まってきていた住民がざわめく。

 その中には彼の恋人もいたのだろう。天使に駆け寄り、二人はいつもしているのだろう。触れるか触れないかの距離感で見つめあっている。

 

「ほ、本当に寿命を吸い取らないか分からないだろ。キミのその、力の制御ってやつは。その話が本当だって分からないと契約なんてできるわけない」

「分かりました。それでは、お試しで今この場でやってみましょうか」

 

 そう言ってマキマは手のひらからチェーンを召喚する。

 ネックレス状になったそれを天使に見せて、そして近づいた。

 

「待て、ま、待って! キミが僕を攫おうとしている可能性とか、そういうのもあるだろ! いくらなんでも怪しすぎる!」

「思っていたよりも警戒心が強いですね……天使君、ちょっと企業秘密の、他の人には聞かせられないことを言うから……こっちにきてほしい。大丈夫。まだチェーンはかけないよ」

 

 天使と恋人は見つめ合い、そして頷いた。

 天使がマキマのほうへ歩み寄り、マキマは彼を連れてその場から少しばかり離れた。そして、彼に耳打ちする。

 

「私は『支配の悪魔』です。キミを無理矢理連れて行くつもりなら、はじめから問答無用ですることができました。それこそ、キミを操ることも、キミの恋人を操ってキミに頷かせることも簡単にできました。それをしないということが、私のキミに対する誠意です」

「キミさぁ……ますます怪しいこと言ってる自覚ある?」

「……? これ以上ない誠意だと思いますが」

「ああそう、そういうね……上手く紛れてるみたいだけど、僕のほうがよっぽど人間をやれてると思うよ」

 

 マキマはわけが分からないという顔で首を傾げる。

 呆れたように天使がため息を吐いて、そして腕を差し出した。

 

「ネックレスにするのは簡単には取れなさそうで怖い。今この場で、腕にそれをつけて。そうすれば僕の力を制御できるって証明できるんでしょ」

「ええ、もちろん。確かめるのに人間は使わないと誓うのでご安心ください。生きている魚でも触ればすぐに分かることでしょう。キミ自身も、触ったらどれだけ寿命を吸い取ったか分かるのではないですか?」

「そうだね。キミからは……一ヶ月くらい取った気がするけど変な感じがした。悪魔だからかな」

「そうかもしれませんね。悪魔は殺さないと死にませんから、寿命とは少し違いますし」

 

 実際にはマキマに触れて吸い取った寿命はどこかの日本国民のものだが、そのような契約を国としていることなど天使は知らないので、彼は勝手に納得してチェーンを巻いた。

 

「誰か、生きてる魚持ってる?」

「エンジェル、これでいい?」

 

 駆け寄ってきたのは、もちろん彼の恋人だった。

 まだ生きている魚は籠の中でビチビチと尾を振ってなんとか逃れようと足掻いている。その籠の中に手を突っ込んだ天使が魚を掴む。

 

「生きてる……」

 

 魚の寿命などすぐに吸い尽くされる。

 そのはずなのに、彼の手の中で魚は元気よく跳ねて砂浜に落下した。

 もう一度掴み上げても魚は依然その手から逃れようと頑張って跳ねようとしていた。

 

「うわあ、こんなに元気に動くんだ。おもしろ……いつもはちょっとビンタしただけで死んで捕まえられるから新鮮だな……これは捕まえるのも難しそ」

「いかがでしょうか。パフォーマンスには十分かと思いますが」

 

 マキマが声をかけると、恐る恐る天使が手を伸ばした。

 その手を、躊躇いなく取って涙を流したのは彼の恋人だった。

 二人は手を絡めあい、互いを抱きしめてその形を確かめる。天使は最後まで躊躇っていたのに、彼女のほうはなんの躊躇いもなかった。それだけ彼に触れられるということが嬉しかったのだろう。

 証明されたとはいえ、躊躇いなく触った彼女になにか言いたげな顔をしていた天使は、しかし俯いて泣き出した。言葉なんてすぐには出てこないようだった。

 

 その奇跡の光景を眺めながら、マキマはのんきな顔で拍手をしている。

 マキマの作り出したチェーンにはマキマ自身の支配の力と、八雲紫の結界術の力が込められている。

 

 天使の悪魔の力を話し、そして勧誘のためにその力の制御を手伝おうとしている……と、ユカリに告げたマキマはすぐさま友人がその提案を受け入れた背景を知らない。

 

 しかしそれを知らずとも、目の前の光景はそうして良かったと心から思えるほどのものだった。

 

「キミの提案を受け入れる。これだけのことをしてくれるなら、僕はなんでもできる」

「あまりなんでもできるなどと言ってはいけませんよ。特にこのような交渉の場では」

 

 マキマは目を閉じて、そして手を差し出した。

 

「では、私と契約しましょうか。天使の悪魔」

「勤務形態については多少融通を利かせてよ」

「もちろんです。契約書はこちらに」

「……読めない」

「あっ。日本語のままでした。ごめんなさい」

「先に言語の勉強してからでいい?」

「契約ということで、勤務は言語を習得してからで構いません。そうですね……チェーンを渡す代わりに、先にいくらか寿命武器を作っていただくことは可能ですか? それをお互いの前金ということにしましょう」

「いいけど……一度に一年くらいのしか作らないよ」

「はじめなので問題ありません。ストックもそんなにないでしょうし」

「ご配慮どーもありがとう」

 

 握手に応じた天使が笑う。

 制御できぬ故に恋人に触れられない死の天使は、もうそこにいない。

 

「人間と悪魔の間にも愛が成立するんですね。私もいいことをしました。いいことをしたあとは気持ちがいいですね」

「うさんくさ〜」

 

 早くもちょっと後悔したような顔で天使がつぶやいた。

 真顔で首を傾げるマキマに見つめられながら、触れられて喜ぶ恋人のキスに沈められる。

 

「祝福の讃美歌でも歌おうか? ブギウギで」

「僕は天使である前に悪魔だよ。讃美歌は別に嬉しくないしブギウギってなんだよ。というかおもしろがってるだろ。胡散臭いんだよ! あんまりガン見しないでほしいんだけど!」

 

 マキマはつい先日、ユカリとともに「天使にラブソングを」を見たばかりだった。

 




有給休暇三日目の山下公園ビアガーデンは一回似たような話やってるのでカットされている。今回は五月頃くらい。

・ユカリとしーちゃん
とうとう出会った。
幽々子に脳を焼かれてるので違いを確認するのとともに、友達の姉に挨拶をしにきただけ。
しーちゃんは普通に地獄の悪魔経由で現世に遊びにきて友達作りのために小学校から通って現在中学校。友達ゼロ人。友達作りって難しい。支配ちゃんにはできるのにどうして私はできないのかな、と思ってる。
運命的な友達とは高校生になってから出会えるよ。

・マキマと天使
雇用するために交渉するならやっぱそこだよねというところを突いた。
死の力を制御できず、苦しむ彼のためになにかをするというのなら、八雲紫は無条件で力を貸す。どっかの誰かを思い出して。

マキマの行動は元から怪しいが、八雲紫の影響でますます胡散臭くなっている。が、そのうち天使もこれが素だと気づいてちゃんと友達になれる。

・天使にラブソングを
ユカリにとっては幽々子を想起する死の悪魔に会いに行くこと。
マキマにとっては天使の悪魔と交渉すること。
93年4月に公開された映画。

・天使の悪魔
恋人とお幸せに。
このあと一年から二年くらいで日本語習得して雇用される。とっても頭がいい。優遇されているので武器調達に不備がなければ基本いつでも休みを取って故郷に神隠しワープすることができるし、ちゃんと給料も出る。

・マキマの残機
契約は原作そのまま。この作品においては、これが変わるのはだいぶ後のことになる。
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