スキマ妖怪と支配の悪魔   作:時雨オオカミ

32 / 56
犬・シャワー・誤解

ほんのりデンマキデンっぽい要素

 

 

 

 

 真っ暗闇のような世界をほんの少しだけ通る間、マキマは振り返らなかった。

 まるで足音を感じないような、上も下も分からない。

 しかし確かに地面を踏み締めることができる。そんなよく分からない場所をデンジとポチタは歩いていた。

 前を進むマキマだけを目印にして、暗闇ばかりだと思っていたが、山を通った気もするし、水の音がザザン、ザザンと聞こえる場所を通った気もする。潮の匂いは彼らには理解できなかった。

 とにかくほんの少しの道筋の間にいろんな場所を通った気がしていた。

 

 そして、すぐに明るい空間に出る。

 

「ただいま」

 

 扉もなく、ただ入るときと同じように空いた空間の亀裂に足を踏み入れる。

 マキマは後ろで手を組みながら三つ編みを揺らして、気分良さげに鼻歌なんかも歌っていた。

 

「マキマさん、ちょ〜カワイイ……」

 

 デンジのひとり言も彼女には聞こえているだろう。しかし、彼女はそれに反応を返さない。

 

 デンジはマキマの部屋に出たとき、一瞬それがなんなのか分からなかった。

 それが大きなベッドだと気がついたのは、どこかで破れた雑誌の特集なんかを見たことがあったからかもしれない。

 

 雨風の凌げる清潔な広い部屋。

 カチコチと時を刻む音。

 ほんのりと香るマキマと同じシャボンの匂い。

 

 なにもかもがはじめて見る空間に、デンジとポチタは感動していた。

 そして同時に、自分たちの匂いを自覚して縮こまる。

 

「ま、マキマさん……俺たち、くせー……っすよね。すんません」

「キュウン」

「私は匂いに敏感だけど、そこまで気にならないよ。でも、気になるならお風呂に入ろうか」

 

 それでも、マキマは嫌な顔ひとつせずに振り返った。

 マキマとしてはチェンソーマンであるポチタの匂いがすぐ近くに感じられるため、むしろそれでも構わない……という、いささかネジの飛んだ思考に至っていたのだが、ポチタまで申し訳なさそうにするものだからそれに配慮することにしたのである。同居人のユカリもさすがに嫌がるかな、と考えて。

 

「あ、そうだ。キミたち犬は大丈夫だよね?」

「え? はい、まあ」

 

 寝室の扉が開かれ、ワッと犬たちが入り込んでくる。

 

「おああぁぁぁ!?」

「んにゅあ〜、はい、ただいまただいま! ぺろぺろはあとでね、血とかついててばっちいからほらほら」

「キャウーーーン!?」

「キャン!?」

 

 デンジは一瞬で犬に埋もれたし、マキマはなだれ込んでくる犬たちを制しながら一頭一頭撫でていく。

 しかし、犬に囲まれたポチタが叫び、そして自分の犬の悲鳴も聞こえて思わず「あっ」と声を漏らした。

 ポチタの剥き出しになっている刃に構わず鼻を近づけた犬がほんの少しだけ鼻を切ってしまい、びっくりして悲鳴をあげたのだった。

 マキマの目が泳ぐ。ポチタの刃をどうするかは事前に決めてあったのだが、いざ二人を連れて帰ってくることができたら浮かれてしまい、なにも考えずに犬たちのいる部屋の扉を開けてしまったのである。

 普通にテンションが上がりすぎたマキマのミスだった。

 

「ごめんなさい、少し抱きあげてもいいですか?」

「キューーーン」

 

 悲鳴をあげた犬の元になになに? とばかりに他の犬も向かう。

 その中心で目を瞑ってどうしようどうしよう! と焦って下を向いているポチタに尋ねる。すぐに返事がきたのでマキマはポチタをやたらと丁寧に抱き上げて救出した。

 

「はいはいはい、みんなは一度広いお部屋に移動しようね。ポチタくんにオラつかないよ〜。怪我の治療はすぐしてあげるから待っててね〜」

 

 マキマの指示を聞いて素直に部屋をぞろぞろ退出していった犬たちを見送って、マキマはほうと息を吐く。

 その横の床には仰向けに押し倒された状態のままヨダレでデロデロになったデンジが転がっていた。

 

「ごめんなさい、あなたには刃物がついているのでした」

「クウン」

 

 マキマに抱き上げられたまま、しょんぼりしたポチタが「あの子たちは大丈夫?」と目で訴える。ただ、抱き上げているのがデンジじゃないせいか、ポチタの前足は突っ張ってもうおろしていいよと主張していた。マキマはその主張を無視してしばらくポチタの匂いを堪能してからおろす。

 ポチタは依然マキマを不審そうに見ていたが、デンジが心配になったのか駆け寄って行った。

 

「確か、ちょうど良いものがあったはずです。少し待ってくださいね……あ、あった! これです!」

 

 マキマが棚から引っ張り出してきたのはクリスマスなどで吊るすような毛糸でできた靴下である。なぜか靴下らしく折れ曲がっておらず、まるでポチタにあつらえたかのようにピッタリのサイズ感で刃が貫通しないほどに分厚く作られているが、あくまで「ちょうどよく」しまっていたものだ。

 

「これでよし! デンジくんはお顔、べちゃべちゃになっちゃったね。お風呂の前に一度これで拭いてて。私はさっきの子の傷を見てくるから」

「あの……すみませんでした。俺のポチタが……」

「クウン」

「……俺の……………………ううん、気にしなくていいよ。失念していた私が悪いんだからね。だから、そこに座って少し待っていてください。あとで改めてあの子たちにも挨拶しましょう」

「はい!」

 

 ポチタにいちいち尋ねて許可を取ってからマキマはその靴下らしきカバーをポチタの刃に装着し、満足そうに頷いてからデンジにはハンドタオルを渡して扉の向こうに慌てて行った。

 扉越しに犬の名前を甘い声で呼びながらよしよしと治療しているらしき音がする。

 

「ポチタ、オレたちいい人に拾ってもらえたなぁ!」

「キューン……」

 

 ポチタは本当かなあという顔をしていたが、デンジがなんだか幸せそうなのでマキマの怪しさについては目を瞑ることにしたようだ。害があるような怪しさには一応見えないので、許容できる範囲だと思ったのだろう。

 

「あ、ユカリ? ごめんね急に呼び出して。ビスケットが鼻を切っちゃって……応急処置はしたんだけど病院に連れて行ってほしいんだ。デリケートな部分だし、他の子と隔離しなくちゃいけないから帰ったときは隣の部屋に連れて行ってあげてほしいの」

「あらあら、派手にやっちゃったわねぇ〜。感染症予防のためにもビスちゃんもエリザベスカラーしなくちゃダメね。分かりました、連れて行ってきますけど、マキマは大事な用事があるの?」

 

「ポチタ……見ろよこの部屋。すげ〜よな。俺たちみてぇなムキョカ? のデビルハンターじゃねぇし、マキマさんってお金持ちなのかなあ」

「ワン!」

 

「うん、ごめんね。これ動物病院用の費用。よろしくね」

「はいはい、仕方ないわね。岸辺との三次会の最中だったのですが……さすがにあの人も飲みすぎでしょうし、ちょうど良かったわね。飲みを切り上げることだけ神隠しに伝えさせておくわ」

 

「俺ァ、まだ夢見てる気分だぜ。ポチタ、これ夢じゃねぇよな?」

「ワフッ!」

 

「え、いいな……二人でお酒飲んでたの?」

「あら、見ていなかったの?」

「昼間のは見てたけど、ちょっと忙しくなっちゃったから。いいなあ、岸辺さん怖くない?」

 

 顔を拭いたデンジが天井を見ながら夢見心地に呟く。

 ポチタはそんな彼の膝に乗り上げて尻尾を振った。毛糸のカバーで包まれた刃で恐る恐るデンジの胸に擦り寄ると、きちんと彼を傷つけずに接触することができた。回転させればもちろんカバーは壊れるだろうが、ポチタがそんなミスをすることはない。

 普段よりもずっとずっとデンジとふれあいやすいことに、そしてそのふれあいが正面からできることにポチタは嬉しそうな顔をした。

 

「案外おもしろい人よ。無言のまま飲み食いしてても気まずい雰囲気にならないし、心に決めた人がいるかたなら変な絡みかたされないし。なんだかんだ声かけの類からも守っていただけますし」

「声かけがある……ってことは、個室以外の飲みもしたんだね。ますます羨ましいなあ。っと、早く治療してあげないといけないし、ビスのことよろしくね」

「は〜い、行ってきます」

 

 そして隣の部屋から話し声がしていたのもおさまり、扉が開く。

 今度は犬たちも静かに入ってきてゆっくりと二人に挨拶をした。犬特有の挨拶である匂いの確認をポチタに行っているが、先ほどのことが若干トラウマになっているのか、ポチタは前足でデンジにしがみついて目をギュッと瞑りながらひゅーん、ひゅーんと情けない声を出している。

 

「こらこら、あんまり無理強いしちゃダメだよ。申し訳ありません、ポチタくん」

 

 ポチタのそんな姿をびっくりしたように見つめたあと、マキマはキャンディをよいしょっと持ち上げて引き離す。十分挨拶したからか、それともマキマに触れられたからか、キャンディは尻尾をぶんぶん振ってなにもない空中をぺろぺろと舐め回していた。

 

「あの……さっきの犬は大丈夫なんですか?」

「うん、傷を処置すれば大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。帰ってきたら撫でてあげてね」

「そりゃもちろん!」

「それから……カ……靴下はちゃんと機能してるみたいだね」

「はい! すげぇ〜んですよ! ポチタ、いつもは遠慮してあんま正面から抱きつけたりしないんすけど、全然刺さらないからこれなら大丈夫そうです!」

「そっか、それはよかった」

 

 微笑んだマキマが、挨拶を終えた犬たちをもう一回退室させて、今度は棚からシャツとスラックスを出してきて、デンジと服を見比べる。

 

「……うん、大きめのやつがあってよかった。これなら着られそうかな? それじゃあ、お風呂で体と髪を洗おうか」

 

 マキマはさも偶然持っていましたとばかりに大きめのシャツとスラックスを出しているが、さすがに男物の下着については、なにも言い訳を思いつかなかったらしく、なぜかそこにあるものの説明ではサラッとスルーされている。

 服はともかく、下着まで用意してあるのはおかしいということに気づくのは、浮かれているデンジには無理のあることだ。

 マキマが持ち出してきたのは視認していたデンジの体格を見て、目測で事前に用意してあった新品の服である。

 

「二人とも、シャンプーとかリンスとかは分かる? あと、お湯の使いかたも」

「大体は分かり…………ィ分かりません! 

 

 デンジはまっすぐな目でマキマの胸を見ていた。

 

「そっか、なら教えてあげるね。こっちにおいで。ここで服を脱いで……」

 

 マキマの説明はデンジの耳を右から左に抜けていく。

 脱衣所に案内された彼らはそこに残されて、マキマが一度退室する。

 

「……マ、マキマさんと一緒に風呂入るって、コトォ!?」

 

 マキマは彼に風呂に入る準備をすると言ってから退室している。

 つまり、デンジがこの場で裸になって風呂に入れば、あとからマキマも来るというわけである。

 混乱したデンジは赤くなりながらポチタを抱きあげ、あわあわと足元を忙しなく動かした。ジタバタとした音は脱衣所の外にも聞こえていたが、マキマは特に疑問に思わない。ああ、慌てているな、と思うだけである。

 

「いやでも女の人の裸……裸ァ!? 見ッ、見るってことか!? 今から!? いいのか!? 俺……俺ん、そんな、え? いいのかなぁ!? ポチタ!!」

「ワンッ」

 

 ポチタは早くしろとばかりにデンジのズボンを引っ張った。

 悪魔には人間の男女の事情や羞恥心を正確に知ることはできない。感覚がそもそも違うため、デンジの葛藤もラッキーじゃんとポチタは思っているのだ。

 

「うわあぁぁぁぁぁ〜……!! っく、うううううう……」

「デンジくん、準備できた? できたらお風呂の中に入っていてね」

「できましたぁ!!!」

 

 デンジは過去最速で自分の服を脱ぎ捨てて浴室に入った。

 置いていかれたポチタがびっくりして後を追う。

 

 椅子らしきものがあったため、デンジはそこに恐る恐る座る。

 マキマに渡された、犬のヨダレを拭うためのハンドタオルも一緒に持ち込んでいるが、それはあまりにも頼りない。かろうじて膝の上にタオルを乗せてドキドキしながら待っていると、ついに浴室の扉が開いた。

 

「……!」

 

 デンジは顔を真っ赤にしながらも、勢いをつけて後ろを振り向く。

 そこには、ラフな半袖シャツと短パンを履き、髪をポニーテールにしたマキマがいた。裸足で浴室に入ってきた彼女はデンジに微笑むと、彼の後ろについてシャワーの使いかたやシャンプーリンスの見分けかたについて中腰になりながら指導する。

 

 燃え尽きたように呆然としたデンジは、それには生返事をすることしかできなかった。期待していたものと違ったのでわりとショックを受けている。

 

 しかし、視線を横に向ければ自分の顔のすぐ近くで肩に手を置き、ポニーテールに髪を結ったマキマがあれこれと柔和な笑みを浮かべたまま説明をしている。

 だが、悪魔の相棒まで許容してくれている命の恩人がここまでのことをしてくれているのだ。しかも顔の良い女が。たとえ裸だと思っていたのに服を着ていたとしても、彼の後ろに立っている彼女は生足で、眩しい太ももが覗いている。そのうえ半袖で腕も露出しているし、少し頑張ればさらけ出されたうなじまで見えそうだ。

 今までのデンジの生活を考えればとんでもなく素晴らしい出来事である。

 ごくりと生唾を飲み込んだデンジは、意を決してマキマに提案した。

 

「あ、その……髪洗うの、よく分かんなくて。やってみてくれたり……?」

 

 提案されてキョトンとしたマキマはすぐに「いいよ」と頷いてしゃがんだ。シャワーのお湯を出し、デンジに「目を瞑っててね」と指示してからその髪をわしゃわしゃと洗い始める。

 

 普段、水浴びをできるときにはちゃんとしているデンジでも他人に髪を洗われたことはない。故に細い指にマッサージするように髪を洗われてはじめてデンジは髪を洗うことは気持ちの良いことだと知った。

 

 流されるお湯が止まると、今度はマキマの腕が隣から自分の前まで伸びてくる。水気を手で拭ってぼやけた視界が晴れると、マキマは目の前のボトルからとろっとした液体を手に出した。

 少しだけなじませるように両手で白いシャンプーをあたためたあと、その手はデンジの頭に向かう。

 手に液体を乗せた姿をデンジが執拗に見てしまうのは仕方のないことだった。

 

「かゆいところはありますか〜?」

「えっと、その……耳の横とか……?」

「どうかな? デンジくん」

「気持ちいい……です……」

 

 説明をまじえつつ、何度かそのやりとりをしてすっかりシャワーで全てを洗い流したあと、すっきりとした頭でデンジは感動した。

 

「すげー! かゆくねぇ!!」

「ふふ、そうだよね。毎日入っていたら、もうかゆくなることはないと思うよ」

「すげぇ……すげぇ……これが普通にできるようになるんすね……!」

「じゃ、次はポチタくんも洗おうか。デンジくんも洗ってあげるやりかたを、よく見て覚えてね」

「はい! ポチタ〜良かったな! お前も可愛い女の人に洗ってもらえて嬉しいよなぁ〜!」

「ふふ、照れちゃうな」

 

 すでに自分自身の洗いかたを教えているため、本当ならポチタで実践してやらせてみることもできる。しかしマキマはポチタを洗うことを譲らなかった。

 これもデンジが素直なために疑問を持つことなく、マキマを信じきっているため自然に押し通された彼女の言外の要求である。

 自分にツッコミを入れる人間がいないため、彼女はわりと欲望を押し通している。

 

 ポチタの体も洗い終わり、今度は体……というところでマキマはデンジの背中も洗ってやる。

 デンジは至福すぎる時間に、普通に反応してしまっているので前を覗き込まれたら終わる……! と思っていたため、結局「あとは自分でできるかな」と言われてマキマが退室すると、残念なような安堵したような複雑な気持ちになっていた。

 

「ポチタ……どうしよう、おさまんねぇや。ここでシコってもいいと思うか?」

「くん……」

 

 ポチタはすっかり丸ごと洗われて自分自身のことは終わったので、デンジからはそっと目を逸らしてやる。

 マキマが離れたのを見計らい、デンジはどうにか事をおさめてから風呂をあがることができたのだった。

 

 用意されたいい香りのするバスタオルを使って体を拭き、ポチタもわしゃわしゃと拭いてやってから脱衣所から出ると、そこにはお茶を用意して待っているマキマがソファに座っていた。

 

「おかえり、お風呂は気持ちよかった?」

「気持ちよかったでェす!!」

 

 別の意味で気持ちよくなってきたデンジは、マキマの誘導に従って彼女の隣に座る。間に挟まったポチタの近くにも飲みやすいように用意されたお皿があった。

 ポチタだけは毛が少しも乾いていないのでタオルを全身に巻いている。その姿を見て密かにマキマがウッと声を出したのは幸い、二人には気づかれていないようだった。

 

「それじゃあ、今度はドライヤーで髪を乾かしてあげるね」

「へ? い、いいですよ。そのうち乾きますし」

「ううん、なるべくちゃんと乾かしたほうがいいよ。風邪ひいちゃうから」

「ありがとうございます……?」

 

 マキマはデンジを後ろに向かせてドライヤーをかけはじめる。

 その温風と細い手指の手つきに、だんだんとデンジはとろんと瞼が落ちてくる。激動の夜だったので、眠たくなってきてしまったのだ。

 長めに風呂に入っていたのもあって、体の奥底から疲労感が湧き出している。

 

「なんか……幸せすぎて……怖いくらいです……」

「そう?」

「……はい。ポチタもいて、美人なマキマさんもいて、もう借金もなくて、普通以上の歓迎を受けてて…………夢ん中いるみたいだ……」

「夢じゃないよ」

「すげ〜、幸せ……」

 

 そして、眠気が臨界点に達する前にそれは起きる。

 

「ただいま〜、ビスケットは隣の部屋に隔離しておきましたよマキマ……は?」

 

 この部屋に来る前に見た亀裂。

 しかしその両端にリボンが結ばれた異様な亀裂が三人の前に開いて、とんでもない美女がぬるりと飛び降りてきたのだ。

 

「はえ……?」

「ええ……」

 

 美女と目が合ってデンジが間抜けな声を出すと、ユカリは状況を見て困惑した。

 

 ユカリの前にある光景は、デンジの髪をドライヤーで乾かしているマキマと、タオルに巻かれたまま立ち上がり、なにかあったときに攻撃できるようにこちらを睨むポチタらしき存在。

 

 だが、ユカリはまず深呼吸をして自身の眉間を指先で揉んだ。ものすごく思い悩むように。

 

「……マキマ」

「うん、なに?」

 

 けろっとしたマキマが首を傾げる。

 

「マキマ、未成年誘拐は犯罪ですよ!? どこから連れてきたんですか!! 同意は!?」

 

 二年も先取りしてデンジを拾ってきた彼女に、ユカリは「どこで育てかたを間違えたのか」みたいな顔をしながら叫ぶ。

 一瞬なにを言われているのか分からないという顔をしたマキマが、次の瞬間顔の表情を歪めた。

 

「ちっ、違っ、違います! 保護! 保護したんです信じてユカリ!!」

 

 デンジの前では完璧なクールビューティーを演じていたマキマは、ユカリが帰宅したことで自分の理想像が崩れ去る音を聞いた。

 

 だが、その間デンジはほぼ夢見心地だったので特にマキマに幻滅したりはしない。可愛い美女がもう一人増えてますます「夢か?」と考えていただけである。

 

 デンジが寝たあと、ポチタのドライヤーをかけながら行われた舌戦、もしくは痴話喧嘩はポチタを大いに困惑させることになったのだった。




・神隠し空間
スキマとはまたちょっと違う個別空間。いろんな景色が裂け目から見える。
地獄にも実は行き放題。

・ポチタの刃物カバー
当然のように手編み。目測で作ってるのになぜかピッタリ。
ユカリは手編みのマフラーかなとか思っていたので、あとでこれを見てマキマを詰める。

・マキマ
ナチュラルにポチタにだけ敬語を使い続ける女。
デンジには保護者ムーブするが、対ポチタだとただの不審者。
ポチタに塩対応される部分に栄養がある。

・イッヌ
ちゃんと動物病院連れてってもらって怪我の処置をしたので安心!
犬にとっては突然の病院イベント発生だったので腰を抜かすほどびっくりした。複数飼いだと本人がエリザベスカラーつけていても意味ないから隔離処置しなくちゃいけなくて大変。マキマさんの家は二階と三階が全部……ってことなので、文字通り隣の部屋に入れている。あとでデンジとポチタがちゃんと謝りに来た。

・シャワー
ものすごく丁寧に教えてもらった。思春期の男の子になんて残酷なことを!
臓器売買もまだ半分くらいで済んでるので、出るものは出た。

・ユカリ
岸辺と昼から会って夜まで三次会くらいまでしていた。
ユカリは図太いので怖いこと言われても平気で飲み続ける。

動物病院に犬を連れて行くのははじめてじゃないので今回は派手に切っちゃったなーと思っていただけで疑問に思わなかった。
帰ってきてデンジとポチタがいたのでびっくり。執着してるのも知ってるし見た目は知っていたが、知らないていで話す冷静さは一応持ち合わせていた。
このあとマキマを詰める。

・デンジとポチタ
人間状態で保護されたので体はボロボロ。心は幸せに満ち溢れている。
教育担当が増えているのでもうちょっと賢くなるかもしれないし、ユカリとマキマの前で猫をかぶるだけでいつもの感じになるかもしれない。
原作合流まで(具体的にはパワー加入まで)どんな生活をしていくのかはお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。