朝起きたら美少女になってた彼(あなた)にお願いがあるのですが。   作:すこやかおにぎり研究所

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天文学者の夢(月まで1メートル)

 いつもと変わらない朝。同じマンションの一室、いつものように鍵を開ける。

 ……扉の向こうには、いつもであればまだベッドですやすやと眠っているはずの彼が、笑顔を浮かべて立っていた。

「えへへ……あーるまっ」

 ――今日はあなたの誕生日だから、いつも世話になっているお礼になんでもする。

 自分が最も愛する人にそう言われ、思わず言葉がついて出る。

「では……今日一日だけ、私に独占されてください」

 ぱちくりするまぶた。小首をかしげ、彼から言葉が返ってくる。

 ……そういうこと「だけ」ではないんだけどな、と苦笑しつつ、自分よりずっと低い視点に合わせて傅くように膝を落とす。

「えっと……ボク、なんか勘違いしちゃってる?」

 ――恥ずかしそうに視線をそらす彼の、ほんのり染まった頬に触れる。

「ふふ。今日は平日ですから、まずは学園へ行かないと」

「そ、そうだよね。……ってことは、つまり……?」

 ごくり、と彼が息を呑む。……トワさん、本当に見ていて飽きないなあ。とっても素直で、表情豊かで。天真爛漫、という言葉はこの人のためにあるのだろう、とすら思ってしまう。

「いえいえ。……本来すべきでない場所での『行為』は、夏の一件で懲りましたし……」

「そそそ、そうだよねっ。

 ……ほんとそう、ジンみたいに隠れて『しよう』とする方が本当はおかしいんだからっ」

「……ジン君とは少しお話をする必要がありそうです」

 夏休みが明けて二ヶ月。良くも悪くも「女性」としてのトワさんに周囲が慣れきったタイミング、そういう隙が出始めてもおかしくない。

 上手くやる分には構わないし、二人の行為は容認している。……問題はジン君とトワさんがこう……衝動的かつ楽観的なタイプなことというか……そこに懸念があるというか……。

「……こほん。

 ひとまず、朝ごはんにしましょうか。今日はエッグベネディクトに挑戦したいと思いまして……じゃーん、イングリッシュマフィンを持ってきました♪」

「わ、朝マックでしか食べないパン!」

「ぱっと調理しちゃいますから、テレビでも見て待っていてくださいっ。台所、お借りしますね」

 立ち上がり、荷物を持って移動する。

 いつもと同じようで、いつもとはちょっぴり違う一日――その始まりに、うきうきと胸が踊ってくる。

 さて、どう過ごそうか。まずは手を繋ぎながら……いや、今日は雨が降っているから、相合い傘での登校かな。それと……そうだな、休み時間のたびに「充電」と称して抱きしめさせてもらおうか。今日はお昼も二人きりにさせてもらおう。ソースがほっぺたに、なんて言いながらキスするような様式美(ベタ)をやるのはどうだろう。照れながら戸惑う、愛らしい彼の反応が浮かんでくる。絶対やろう。

「……ふふ、今日は素敵な誕生日(いちにち)になりそうだ」

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