朝起きたら美少女になってた彼(あなた)にお願いがあるのですが。   作:すこやかおにぎり研究所

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シンデレラ

 夕飯は鶏肉のグラタンとサラダ、そしてちょっと贅沢に缶詰入りのオニオンスープ。

 デザートは駅前で買ったモンブラン、トワさんは迷った末のフルーツタルト。隣り合わせに座りながら一口ずつ取り分けて、互いに「せーの」で食べさせ合って……。

 いつかはもっと大きなケーキで、二人きりではなくみんなの前で――そう口にしてみれば。

「なんだか結婚式みた、い……?」

 たちまち赤く染まる表情(かお)の、なんて愛らしいことだろう。タルトにのったイチゴのような、あるいはリンゴの皮のような。……あなたがお菓子なら食べてしまいたい、と恋文に綴った文豪は果たして誰だったか。

「ふふっ、神前式でもそれはそれで。トワさんならきっと、白無垢姿もお似合いですよ」

「ボクはどっちかと言えばドレス派……って、まっ、まだアルマと結婚するとは限らないし……」

 俯いた彼の頭を、指でそっと持ち上げて。

 ――鼻先が触れるくらいの距離で、目を見つめながらそっと囁く。

「してくださらないんですか?」

「ふえぇっ!? …………か、考えておきます……」

 漫画だったら瞳がぐるぐると渦を巻いていそうな声色と表情。

 ……ちょっぴり意地悪を働きたくなってしまう。

「……『しょうがないにゃあ』ではないんですね」

 少しトーンを落としながら、内心期待していた反応を吐露してみる。……目線を伏せて、切なげに。

「た、たしかにボクが結婚するとしたらアルマ以上に適任な人っていないと思うけどっ!

 で、でも、ほら、まだまだ先の話っていうか……ね?」

 自分(アルマ)以上に適任はいない。……今はその言葉を聞けただけで良しとしよう。

「ふふっ、すみません。少し意地悪してしまいました」

 額に軽くキスをして、微笑みかける。……唇を重ねて押し倒したい気持ちもあったが、脳内で(イマジナリー)ジン君が「トワがまだ食ってる途中でしょうが」と往年の名作ドラマのようなツッコミを入れてきたのでひとまずは止めておく。

「紅茶のおかわりを淹れてきますね。さっきは普通のでしたから……そうですね、今度はストロベリー風味でいかがでしょう?」

「え!? ……あ、うん、じゃあそれで……?」

「では、一旦失礼して」

 ティーポットを回収しつつ台所へ。内側に残った茶葉を取り除き、電気ポットに水を入れる。

 ふと壁に目をやると、給湯器のリモコンに表示されたデジタル時計が目に入った。

 ……あと数時間も経てば「今日」という日が終わってしまう。

 十二時を過ぎても解けない魔法があればいいのに。そんな気持ちから連想したのか、無意識に飛び出た鼻歌は「シンデレラ」をタイトルに冠した音楽ゲームの主題歌だった。

 ……まあ、お泊りなのでロスタイムはあるんですが。

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