朝起きたら美少女になってた彼(あなた)にお願いがあるのですが。 作:すこやかおにぎり研究所
「トワさん、お湯いただきました」
いつもの流れで洗髪と風呂上がりのドライヤーを手伝ってしまったので、それに伴って入浴は別々。級友がプレゼントしてくれた入浴剤を一緒に楽しんでも良かったな、と思い至ったのは湯船に肩まで浸かって数秒後のことだった。
「あ、おかえりー。コーヒー牛乳、冷蔵庫で待ってるよ」
ソファのひじ掛けから身を乗り出すようにして、可愛らしいふわもこパジャマに包まれた彼が挨拶を返してくれた。
――片手にはスマートフォン、テレビ画面には萌えアニメ。おそらくソーシャルゲームの周回と、アニメの方は……なるほど、そういえば、そろそろ第3期が始まると言っていたっけ。
「……心がぴょんぴょんしてきますね」
「だよねー♪ リアル美少女はこの数ヶ月でだいぶ見慣れちゃったけど、二次元はまた別腹っていうか――」
少し遠回しだったなと苦笑しつつ、姿勢を改めた彼の隣のスペースに腰掛ける。
「あれ? 冷蔵庫行かないの?」
「そうですね、今はそれより堪能したいものが……」
彼に向かって微笑みかけ、太腿のあたりをぽんぽん叩く。
首をかしげる彼の頭上にクエスチョンマークを幻視したのち、間をおいて下半身に加わる幸せな重み。
「……こういうこと?」
振り向きつつ、彼がこちらに尋ねてくる。
「大正解です」
すかさず大きなぬいぐるみのように抱きしめ、少し大げさに頬ずりしてみる。……入り混じるシャンプーの残り香と、彼自身から放たれるなんとも甘い香り。脳がくらりとする感覚。
「も、もうっ、くすぐったいって……。
――ん? なんかすごく息吸い込んでない……?」
「……トワさんは『猫吸い』という文化をご存知でしょうか」
「@@@〜〜〜〜!!?」
声にならない声をあげる彼の身体に軽く体重を預けつつ、腰を両腕でしっかりと拘束することも忘れない。今の私はシートベルトです。
「うう……アルマ、今日ほんとーにテンション高いっていうか……誕生日だけにおめでたいっていうか……。
思い返せば朝、学園に行くときから……」
ホワンホワンホワントワトワ〜(回想突入)
・・・
・・
・
「忘れ物は……えーと、雨降ってるんだよね。傘、傘」
「カバンに折りたたみだけで大丈夫ですよ。
行きも帰りも、今日は私と相合傘です♪」
「ん〜、ホームルーム終わったー」
「……だーれだっ」
「わっ! ……えーと、アルマ?」
「ふふっ、正解です♪
……ということで次の移動教室まで、僭越ながら私がエスコートを」
「えっ、手つないで行くの……!?」
「な、なんでボクに抱きついて……?」
「充電です。選択科目の違いが恨めしい……」
「お、お昼にはまた会えるからっ!
うー、周りの視線が…………いやちょっジン、なにその生暖かい目! 『じゃあ後は若い二人で』みたいなモーション!?
ちょっ、待って、行かないでー!!?」
「ようやく二人きりになれましたね……」
「怪しい雰囲気出してるけど、ここフツーに生徒相談室だからね?
ていうかよく先生貸してくれたね」
「ふふっ、積み上げてきた信頼と実績の賜物です。
……さて、今日のお弁当ですが、以前みんなで行った喫茶店チェーンのメニューを参考にしてみました。量はさすがに加減してありますが」
「カツパン? それともシロくてノワールな……あ、たまごサンドと唐揚げ! バスケットのだねっ」
「どうぞ遠慮なく、ほっぺに付くのもいとわず!」
「……なるべくお行儀よく食べるね?」
・・・
・・
・
「帰りも駅ビルで手繋ぎっぱなしだったし、珍しくアルマからプリクラ撮ろうって言ってくるし……。ケーキ食べた時も、あと今も……な、なんていうかその、ボクが最初に思ったより――」
「『最初に』思ったより?」
イントネーションに含みを持たせつつ、彼の耳元にそっと囁く。……少し意地が悪いだろうか。
「〜〜〜っ、ほ、ほんとそういうとこ……っ」
――赤みを増した彼の耳に、一瞬だけ口づける。
彼の小さな両手に、自分の手を覆い被せるように絡めながら。
「……嫌ならば
――思い出した、芥川龍之介だ。
あなたが好き。二人きりでいつまでもいつまでも話していたい。キスしてもいいけど、嫌がるならしない。あなたがお菓子なら頭から食べてしまいたいほど可愛い。
――ヒトが愛する人に抱く、あまりに普遍的で、それでいて特別な気持ち。
「しょ、しょうがないにゃあ・・」
小さな頭がちょっぴり俯く。
……今、彼はどんな
「いいよ。」