髪が長くて細目の神父がいわくつきの子供を養う孤児院を経営しているだけなのにドチャクソ怪しまれる謂れはないですが?   作:蓮太郎

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1.怪しくない神父です

 

 なあ、噂の孤児院を知ってるか?

 

 お前はここに来たばっかりだからな、絶対に知っておくべきだ。

 

 あそこは教会でもあるが、変なガキばっかり集まっている。

 

 おっと、変なことは考えるなよ。クソガキだらけでも教会だ、下手に首を突っ込んだらどうなるか分かったもんじゃないぞ?

 

 ガキはともかく、どこからか寄付金を貰っているらしくてな。経営自体はそこそこ上手くいってるから商売相手として見るんだったら問題はない。

 

 だがな、あの神父にだけは絶対に気を付けろよ。

 

 なんでかって?見りゃわかる、めちゃくちゃ胡散臭いんだよ。

 

 あそこを任されている奴らしくてな、男のくせに髪は長いわ女っぽいような顔つきだわ、そのくせして身体はがっしりとしてやがる。

 

 何よりも目だ。閉じてるのかと思うくらい細いんだよ。

 

 実際に目が見えるのかって聞いた奴もいたが、視界はしっかり見えてるんだとよ。

 

 それだけで怪しいのかって?まあ…………お前も見たら一発で分かる。

 

 お、あいつだよ。この時間帯は買い出しによく出てるんだ。

 

 しっかり話してみろ、商人なら冷静に努めるんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは」

 

 その男は、一言で言うなら胡散臭いの一言だった。

 

 顔は整っており、髪は長く黒く、閉じているのかと勘違いするほど細い目で微笑みながら買い物鞄を持って歩いていた。

 

 この市場の近くにある孤児院の院長であり神父でもあるため食料を買い込む姿がよく見られるのだ。

 

 彼がこの地に孤児院を立てて10年にもなるが、一向に年を取るような姿を見せていないのが胡散臭さを加速させている要因であった。

 

「あんたか。今日は何がいるんだ?」

 

「アルシェが魚が食べたいと駄々をこねましてね。鮮魚、とはいかなくとも魚関係のものはありますか?」

 

「魚ぁ?随分と我儘娘だな、高くなるぞ?」

 

「丁度誕生日の子が居るんですよ。そのお祝いに合わせて出すので出費がかさむことは想定内です」

 

「そうか、そこのやつを選べ」

 

 店主はやれやれといった具合に魚が入っている箱を指さした。

 

 その箱の中にはぎっしりと塩漬けされた魚が詰まっており、それを手で取ってから吟味すると言うものだ。

 

 はやくしないと魚が腐ると苦情はあるが、実際に魚を好き好んで買う者は滅多に居ない。

 

 それこそ、この男が経営する孤児院に住む子供くらいだろう。

 

「おや?そこの方は見ない顔ですね。どちらからいらしたんですか?」

 

「こいつは俺の親戚だよ。ほら、名前くらい言っとけ」

 

「あ、アベルです。こんにちは」

 

「ええ、こんにちは。コベルさんの親戚という事は南から来たんですね。一度行ってみるべきでしょうか?」

 

「えーと、それは…………」

 

「あそこにゃ何もないってんだ!ガキ連れてこられてもやっかまれるだけだ」

 

 残念と言わんばかりに肩を落とす神父であったが、買う魚を決めたようで早々と支払いを済ませる。

 

「アベルさん、ここは活気が常に満ちています。良くも悪くも、ね」

 

 買ったものを袋に詰め込んだ神父は怪しく笑う。

 

「ここ最近は何かと物騒ですからね。特に夜なんかは気をつけて歩かないといけません。では、あなたに加護があらんことを」

 

 一方的に言うだけ言って立ち去る後ろ姿を見て商人たちはふぅと一息つく。

 

 確かに神父としては神秘的な風貌であるが、何を考えているか分からない言いように緊張が走ったのだ。

 

 微笑んだ表情ではあるが常に変わらないと言うのは不気味である。

 

「何なんですかあの人…………」

 

 新人の商人、アベルが叔父のコベルに聞く。

 

 その声は消えいるような物だった。

 

「言っただろ、神父と名乗ってるくせに全部が怪しんだっての。上客とはいえ、変なガキばっかり集まってるから何も言えん」

 

「何かやってるとかは?」

 

「言うな言うな。ここ最近で頭角を現してる何でも屋とかハンターがあそこの出身なんだよ。変なこと言って目を付けられたら消されちまう」

 

 まるで誰かが消されたことがあるかのような口ぶりで話す叔父にアベルはぶるりと身体を震わせる。

 

 見た目は整っていても雰囲気が怪しければ何かやっているかもしれないと勘ぐってしまうのは無理もない。

 

 下手な詮索は文字通り命取りになる。

 

 先ほど言われた通りある程度権力を持っている人間との繋がりを示唆されては何も言えない。

 

 商人は情報が命、しかし情報には触れていいものと触れてはいけないものがある。

 

「深入りはするなよ。付き合いは表面上だけだ」

 

 叔父の忠告通り、アベルは決心する。

 

 怪しい奴には自分から近づかない、近づかれたらのらりくらりとかわすだけ。

 

 アベルは奇妙な神父を知り、今日を生き抜くだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世に生まれて早35年。前世という他の人たちと違う個性を持ちこの世界に生まれました。

 

 巷で噂の転生ですよ。ちなみに神様にバッチリと会って転生しました。

 

 言ってしまえば見せ物ですが断る理由もなく、むしろ断った方がひどい目に合いそうなので仕方なく、本当に仕方なく転生しました。

 

 まあ、当時は高揚感もあってやんちゃして、色々後悔して孤児院を開くことになりました。

 

「ただいま帰りましたよ」

 

 教会兼孤児院に入りながら私は声を掛けました。

 

 私の帰宅に気づいた子供たちの足音が近づいてくるのが聞こえます。

 

 音からして3人、他の子は遊んでいるのでしょうか?

 

「神父様、おかえりなさい!」

 

「しんぷさまー」

 

「ご飯まだか!お腹空いたゾ!」

 

 出迎えてくれた三人娘、彼女達は年齢は同じなのですが肉体の成長速度が大きく違うんですよね。

 

 まず最初に声をかけてきた子、身長は大体130㎝で茶髪の人間種であるサーシャ。

 

 次に見た目は完全に5歳児ですが金髪で耳が尖っているのが特徴のアリシア。

 

 最後にご飯をねだる今日が誕生日の青髪でケモ耳を生やしたジャック。

 

 おっと、最後の子は男の子のような名前ですがれっきとした女の子です。そこに触れると泣き出してしまうので注意してくださいね。

 

「ジャックの誕生日ですからね、今日は奮発しましたよ」

 

「やったぞ!魚だ魚!」

 

「神父様が帰って来るまですっとソワソワしてたんですよ。神父様は大丈夫でしたか?」

 

「おや、私は心配されるような事をしましたか?」

 

「だって、神父様は怪しいんですもの」

 

 澄み切った笑顔で断言された。

 

 すごい、あんなにきれいな瞳でボロカスに言われるのは久しぶりですよ。

 

 この子たちも初めてこの教会兼孤児院に来た際は私を滅茶苦茶警戒していた時期がありました。

 

 今ではすっかり打ち解けていますが、それでも未だに怪しいといわれるんですよね。

 

 私を転生させた神がこの世界の本家となっているので本気で神の存在は信じていますし、そこまで怪しい事をしているつもりもないんですがね?

 

 この神父服だって本家の物からほんの少し改造して赤いラインとか入れたりしただけですし、髪も元々の色で長いのだって…………

 

 はあ、全く。皆さん何でもかんでも私を怪しいと思って困りものです。

 

 髪が長くて細目で子供を養う孤児院を経営している神父なのにドチャクソ怪しまれる謂れはないですが?

 

 





~主人公紹介~

『神父様』
異世界転生してやんちゃした結果、落ち着いて孤児院経営をしている。
やんちゃしたころの伝手で経営しているため、一部では弱みを握っているのではないかと噂されている。実際、彼等彼女らの恥ずかしい頃の話をたくさん握っているので間違いではないが、基本的に善意で寄付を受けている。
転生特典はリボルバー拳銃とかいう馬鹿な事をしており、弾薬のことを忘れていたことに後で気づき泣く泣く錬金術を学んでいたりする。
格好については完全な趣味、別に邪教を侵攻している訳でもないし転生した神様がこの世界の主流な宗教の主であるため完全に真っ当な神父である。

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