根源的恐怖「因果の悪魔」   作:紅琳檎

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とぅーとぅー


Case4-1,THINKER

レゼってさ。

今日も今日とてお昼を食べに来たターゲット……デンジくんから珍しく話しかけられた。

女慣れしてないからか思ったより受け身のコミュニケーション気味で、私から話しかけることが多いのに、珍しい。

 

「何ですか〜? バカ舌さん」

「いやお世辞抜きでウメェよここの飯」

 

いやそうじゃなくて、とデンジくん。

 

「レゼっていつもいるけどよ、学校はどうしてんだ?」

 

その言葉に一瞬だけ動揺して。

いつもより少しぎこちない気がする笑みを浮かべて、質問の意図を探ろうとする。

 

「モチロン、珍種のデンジくんとは違って通ってますけど」

「チンシュったってよぉ、別にデビルハンターじゃなくともガッコー行かねーで働いてるやつもいんだろ? 俺も似たようなモンじゃねーか」

「いやいや、小学校も行ってないのはおかしいでしょ」

「……まぁそりゃそうか。 いや違ぇよ、レゼのハナシ」

 

流せると思ったのに、ダメだったか。

それにしても意図が掴めない、些細なことで違和感を持たせても仕方ないし、どこか上手い具合に誤魔化さないと。

 

「うーん?」

「今の時期は、まだ学校あるだろ? 昼間っからアルバイトしてんのは学生としちゃ少しチンシュじゃねー?」

「ああ、それでかぁ」

 

よかった、事前に用意してた言い分でなんとかなる範囲だ。

妙に感が鋭いからもう少し気をつけたほうがいいかな。

 

「私は日本で勉強したくて外国から引っ越してきたの。 それで日本語の勉強もあるから、学校も普通に通うより長い期間のところに行ってるんだ。 自由登校も多いし、お金も必要だから、この暇ぁな喫茶店で勉強しながらアルバイトしてるってわけ」

「確かに暇だけど声に出すんじゃないよ……」

 

マスターにべーっと舌を出して、またにっこりと笑ってデンジくんを見る。

実際に行っていなくても、事前調査でそういったカリキュラムの学校があることはわかっているから、学校の内部まで案内しろと言われない限りは誤魔化せるだろう。

ふーん、と気のない声で返事をして、デンジくんは興味がなくなったかのようにメニューを眺めだした。

……あれ?

 

「ちょっと〜? 聞いといて興味ナシですかぁ〜?」

 

焦燥感。

今の返答に間違いはなかったはずだ、学籍情報まで調べられなければそんな簡単に露呈するような嘘でもない。

しかし未だかつてないこの気の無さは、私を焦らせるのに十分だった。

 

「うーん……興味がねーわけじゃねーんだけど」

「けど?」

「何で嘘ついてんだろうなって」

 

ぴったりとくっついた私にしか聞こえない、小声で。

思わず息を飲んで無意識のうちに右手を首に伸ばす。

 

「止めとけ」

 

抱き寄せるように彼の手が私の右手を抑え、膝の上に拘束されてしまった。

密着していたのが裏目に出た。

自分でも分かる、表情の抜け落ちた顔で彼の顔を見るも、気にした様子もなく片手でメニューを捲っている。

油断はなかった、しかし、どこで気付かれた?

 

「詳しくはわかんねーけど、レゼも学校行ったことないんだろ?」

「……どうして、そう思ったのか、聞いてもいい?」

「教科書」

 

ふと、先程まで開いていた教科書を見る。

違和感のないように同年代が使っているだろう物を入手し使っていたのに。

 

「内容がさ、ちょっと古いんだよな。 数年前のお古を使ってるようなカンジ。 基本的に日本の教科書って毎年更新されてるんだよ、同じ教科でも」

 

リサーチ不足だったな、なんて言われて。

冷静な部分がこの瞬間に事を起こすには時期尚早だ、と。

しかし今動かねば、と感情が爆発しそうになる。

 

「子供んときから通ってりゃ、毎年教科書を買うもんだから知ってるだろうけど」

「……へぇ。 それは、参考になったかな」

 

どうする、ボムにならずとも抜け出す術はある、あるが……回収予定地点と時間の調整をしていない状態で戦闘を始めてしまえば、いくらなんでもこちらが不利だ。

短期決戦が勝ち筋だが準備不足であり、更に時間がかかればかかるほど、ソ連のエージェントに回収困難だと判断されてしまえば見捨てられる可能性すらある。

 

「レゼってさ」

 

先程と変わらない声色で。

 

「何がしたい?」

 

悪魔が囁いた。

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