根源的恐怖「因果の悪魔」   作:紅琳檎

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Case4-End,人類種の天敵

死の3日間。

全世界が恐怖した、それは。

 

「ソ連はもはや祖国ではない。 私たちモルモットという存在を産み出し、否定し、そして都合のいい道具のように扱う」

 

「生き残るために殺し合わせ、生き残りを実験体とし、実験体を工作員として送り出すも、知らぬ存ぜぬを突き通す」

 

「人権を軽視し、無視し、否定するそれは、もはや、私の生きる道程の前後にあってはならないと考える」

 

「5歳以上のソ連国民は民間人を含めて皆殺しにします」

 

「秘密の部屋を知っていて闇を暴く気もなかった大人も。 その大人から教育されてしまった子供も。 その全てを焼き払い、斬り刻みます」

 

「私たちを恨まないでください」

 

「恨まれるべきはあなたたちの祖国であって、死ぬべきは祖国であって、その祖国に庇護されているあなたたちなのですから」

 

 

発信されたのは、日本から。

世界中に届いた特大の犯行予告から、12時間後。

ボムとチェンソーの武器人間が、たったふたりでソ連の地に降り立ち。

 

「はじめっか、レゼ」

「うん、デンジくん」

 

蹂躙が始まった。

まずはじめの10時間で、首都モスクワとサンクトペテルブルクが壊滅させられた。

建造物、人間、自動車、様々なインフラを破壊する徹底ぶりに、犯行予告が嘘ではないことをソ連は知ったが、余りにも対応が遅すぎた。

宣言通りに5歳未満の子供は生き残っていたが、ふたりの武器人間が現れるところに人質として連れてこられているため、ソ連は攻撃することができなかったのだ。

何せ、宣言通りに全国民を殺戮するのであれば、生き残った子供たちだけがソ連の血を継ぐものになるから。

血は、絶やせない。

ソ連という国の成り立ちから、その血を絶やすことは、かつての自国民の犠牲を無かったことにしてしまう他ないから。

口惜しさに血の涙を流しながら、ソ連の兵は、爆ぜ、刻まれ、凍土の染料と化した。

 

次の10時間では、ヨーロッパの国境線付近を徹底的に破壊し、同じく5歳未満の子供たちを確保した武器人間ふたりは、捕らえた子供たちを隣国に保護させるように動いた。

レゼのかつての同僚でもあるモルモットの部隊や、秘密警察を差し向けられたのだ。

激戦に継ぐ激戦。

しかしそれも20時間程で大体の決着が付いてしまう。

不死性をもつふたりの武器人間が互いをフォローしあい、死体が増えれば摂取できる血の量も増えるため、補給いらず休憩いらずで殺戮の限りを尽くした。

各地の工作員が空路、陸路、海路でソ連へ戻るも、それらは等しく祖国の地を踏んだ瞬間に息絶えた。

一切の出国も入国も許さない、レゼの執念が生んだ地雷と時限爆弾。

ボムの武器人間は、祖国への憎しみにその力を加速度的に増大させていった。

 

残る1日と半日弱で目に付く全てを襲い徹底的に破壊し尽くす。

僅かな作物が育つであろう土地を。

整備された漁のための海岸線を、湖を。

野生動物を狩る森を、山を。

 

3日間、72時間。

ソ連という国は約1億5千万人の犠牲の下、国として、地図からその姿を消したのだった。

 

ふたりの武器人間は、人類史で最も死を齎した存在として、

「人類種の天敵」

と呼ばれた。

 

 

 

 

「なぁんにもなくなっちゃったね」

「まースッキリしていいだろ。 ソ連は放っといて良い影響も特にねーだろーし」

 

日本。

裸足で波打ち際を並んで歩くデンジとレゼ。

 

「何者でもなくなっちゃったなぁ」

「寂しい?」

「全然、これっぽっちも」

 

笑い合う姿は、どこにでもいる年頃の男女であった。

つい数時間前まで息をするように人間を殺していたようには見えない、ふたり。

 

「じゃあ取り敢えず。 ふたりで暮らすところからはじめてみよっか」

「寝室はひとつでいーぜ?」

「もちろんそのつもり。 寂しくないように、ね」

 

どちらともなく見つめ合い、キスをして、人類種の天敵と呼ばれたふたりは普通の暮らしを得るために、改めて歩き出した。

いずれ来る支配の悪魔との戦いで、日本国民約1億2千6百万人を皆殺しにするまで、後…………。

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