妄想を書いていったらそこそこの文字になったので記念に投稿します
ここでは人権が一切保証されない!
なんて謳い文句が平気で罷り通る、ここは化け物共との最前線である。当然入隊時に身元の確認はされないし、これからもすることはないだろう。結局使い潰して捨てるからだ。
我が国エレベンでは何十年か前に現れた化け物共に対抗するため、民主主義からファシストも真っ青な軍事国家に華麗なる転身を遂げた。なぜそうなったか?そもそも反対するような善人は真っ先に死んだからである。
「ねえ、いつまで吐いてるのよ……?」
「ちょっとまって、まだでる、うっぷ」
「リーダー昨日飲みまくったもんな。いつまで飲んでたんだ?」
「ごぜん2じ……」
「あなたバカって言われるでしょ」
そんなこんなで結成した超超ブラックなクソ国家は莫大な資金をかけ、ついに化け物共と全面戦争に向かうことができたのである。この決戦に至るまでの犠牲者なんて考えるより、朝食のパンを数えた方が有意義であろう。それぐらい悲惨だったともいう。
「ハイ、現在時刻0800、作戦を開始します!」
「さっきまで吐いてた人とは思えないくらい元気ね」
「よっしゃ、来たぜ戦場。オレの墓場よ」
「死ぬならあなた一人で死になさいよ」
「はいそこ静かに」
「ちっ。ゲロ吐き女がよ」
「は?」
「すいません……」
さて、そんな華々しい戦争の最前線所属部隊ということは、当然我々第〇一三番隊は素晴らしく強く美しいことは確定的に明らか、であるはずだった。
部隊メンバーを一人づつ紹介しよう。左遷させられた長官、我らが頭脳、リーダーである。元々いた部隊でやらかして底辺使い捨て部隊に左遷させられた、なんでここにいるのかわからない実力の持ち主だ。はよ戻って人類に貢献してほしいものである。
もう一人は落ちぶれた貴族令嬢、盾役のタンク。性格がドブカスで、貴族令嬢ではあったが大黒柱であるお父様が死んでからは色々なところを転々として、今に至るらしい。同情はしないしできそうにない。何故なら性格がドブカスだから。
そして田舎から出てきたネズミであるこの私、この部隊の力担当パワーだ。なんと三人だけだ!なかなか最高のメンバーである。将来入る棺桶の想像も膨らむものだ。
「パワー!そっち一匹行ったわよ!」
今叫んだのはタンク。ドブカスの方だ
「テメエ仕事しろや!何逃してんだカスぅ!」
今叫んだのはオレ。田舎ネズミの方だ
「こっちで対処するから!パワーはそのまま攻め続けて!」
今叫んだのはリーダー。左遷長官の方だ
以下三名の賑やかな叫びが織りなす地獄は現在人員募集中である。一緒にバケモンの苗床になるか、後ろから砲弾をぶち込まれて血煙となるかが選択できる。つまりは死ぬ以外の選択肢はない。あゝ無情
「何ぼーっとしてるのよ!前見て前!」
「うるせー!見てるわこんちくしょう!オ“ラ”ア“!!」
カサカサネチャネチャぬぽぬぽと音を立てて歩く化け物共は今日も平常運転にこちらを苗床にしようと歩みを重ねてくる。恐ろしさを感じるくらい気色悪い光景は絶望的に見えるが、性別が女であれば基本的に死にはしない。死にはしないが、尊厳はない。私ももう両手両足使っても数えられないほどの子に囲まれたことがある。あれから自在に心を無くすことができるようになった。嬉しくもない成長である。
「パワー!バフかけるからまっすぐ前に進んで!タンク!パワーの後ろに着きながら援護!バフは一緒に掛けるから!」
「ラジャー!」
「了解よ!」
とても頼れる上司に恵まれて嬉しい限り。有能でもあるリーダーは常人ではできないバフの重ねがけが出来る。この前なんでできるか聞いたら「むしろなんでできないの?」とか言われた。私が文明人ではなかったら上官殺しの不名誉を授かっていた所だ。
強化魔法というものは最近になって開発されたものであり、仕組みについて細かいことはわかっていないのだ。術者の感覚によって強化具合も内容も変わるため、とてもじゃないが安定した使用はできない。でもリーダーは出来る。さすがっす先輩……キッショ……
「硬った!?何よこいつ!?」
「戦車型ぐらい覚えてろテメエ何年目だボケぇ!」
「間接部分を叩け!あとパワーうるさい指示が通らない!!」
さて、我々は現在北部地区奪還作戦を実行中である。内容としては、まず我々が突っ込む。つまりは露払いであり、生贄でもある。その後に本隊が突っ込む、我々が整えた道をゆったりと歩くわけだ。死んで欲しい。切実に
「リーダー!クールタイム終わった!?」
「まだ!38秒保たせて!」
「無茶言うぜひゃっほーい!!」
「前に出過ぎるなって言ってるでしょ!?」
そもそも我々第〇一三番隊は棺桶とも呼ばれている。最前線に駆り出されることが多く、どこへ行っても休む暇もない。休みがなければ集中力を失い、最前線はコンディションが最高であっても死ぬ所だからだ。
まあ、常々言っている通り。
最前線というものは誰であっても、最強であっても、最狂であっても、最恐であっても、運が悪ければ死ぬ所だ。だから、この出来事は不運だったとしか言いようがないのだろう。
「あがっ!?」
切羽詰まりの声が聞こえた。ちょうど私の後ろだ。
「お“お”ん“いだいよぉおお”“”!!!」
小汚い豚のような声が聞こえた。ちょうど、私の後ろから。
今一番聞きたくなかった声、そう、タンクが落ちた声だ!
「マズーイ!!!!リーダーヘルプ!!!!」
クソッタレ!!何が原因だ!?タンクは生きてるか!?
ピクピクと艶かしく痙攣しているタンク、頭部には点状に焦げついた跡、白目を剥いては股から汚ねえもんが垂れている。
辺りにはバケモンから千切れた触手と人型の死体だけ……いや、違う。遠距離?最近確認されたとかいう新型の……
「リーダー!多分新型のバケモン!タンクの症状的にあってる!」
おそらく合っている、となると、やつの攻撃方法は
「遠距離からのレーザー!!」
言うべき事は伝えられた。リーダーなら、情報さえあれば立て直しの策を直ぐに練れる。問題は……
「っ!?あっぶねぇ!!」
前からピンク色のレーザーが飛んでくる。ギリギリで気付けはしたため、身を翻し、転がりながら回避する。
視認できるほどの速度で迫るレーザーは、頭の上をスレスレに飛んでいく。狙いはオレだ!
タンクを担いで走る。バケモン共の合間を縫って飛んでくるレーザーを、半ば転びながら避けていく。射線に被せるように立つ岩に向けて体を滑り込ませていく。
一息つける。オレがすべきことはまず、タンクの回復。リーダーとの合流。新型を見つけ次第ぶっ殺して、それから……
駄目だ頭が回らん!タンク回復させよう。そうしよう。
どうすれば回復させることができるのかと言うと、まず気付け薬を嗅がせて、全力でぶん殴ること。そうすれば自前の回復力で復活するはず
「オ“オ“……フガっ!?」
よし起きた!あとは力任せに右ストレートをかませば……!
「な、何、何が起きて……イギィ!!」
成功!
「ボケアホカス!起きたかこんにゃろー!」
「痛いわね何すんのよ!」
「状況説明!お前新型に撃たれた!オレお前抱えて逃げる!隠れてお前起こした!以上!」
「はぁ?……あっ」
ようやく思い出したようだった。
オレが戦場でもっとも信用していて、それよりもなお信頼していない愛くるしい
「右っ!レーザー来るぞ!」
「ひゃん!言うのが遅いのよ当たるとこだったじゃない!!」
きゃんきゃん喧しいなこいつ。バケモンの塊に蹴り飛ばしてやろうかな。
「うぉぉおおい!前!前前!!」
「いやーっ!!!なんでこんなにいるのよぉー!!」
前からゴキブリの形をしたバケモン共がわんさか列をなしてやってくる。いや、訂正しよう。あいつらに列を作るなどと言う高度なことはできない。どうもすいませんでした。
「すっげーなおい蜂玉がこっちに転がってくるぞ」
「何冷静に言ってるのよ早く燃やしなさいよ!!」
あまりにもあんまりな光景に少し正気度を削られて、一瞬惚けてしまった。直ぐに腰からぶら下げていたグレネードを放り投げる。
ストライク!哀れなバケモン共は汚ねえ花火となった。なむさん
「やばいわよどうするのこれ!もう耐えられないわよ!?」
「焦んなってガキンチョ。そろそろ来るから」
「誰が来るってのよこの地獄に!?」
そりゃあお前、あいつ以外いないだろう。
我らが頼れるヒーローこと、やらかして左遷させられた長官こと、昨日深酒しすぎて作戦前少しゲロ吐いてた彼女である。
そう、彼女の名前は
「助けに来たよ!!」
本名ボルカニック、我らがリーダーである。
「あ”ー生きてるぅー」
「だらしないわね。汚い顔晒さないでくれる?」
「おっ戦犯ちゃん、お前が狙撃で沈まなければもっと楽だったんだぞ戦犯ちゃん。頭を地につけて謝罪しろな?」
「はいはいはいはい雑魚共は黙ってようね。両方助けたのは誰だっけ?」
作戦は成功した。
無事に北部地区は制圧され、今は仮拠点が建てられている。あとは事務方やら土方の方たちのお仕事である。
我々第〇一三番隊は、今回の作戦のMVPとして、一番良い寝床と飯を提供してもらっている。つまりは宴だ。
酒も飲んで飯食って騒ぐ。これがここでの最上の快楽といっていいだろう。
性欲?あちらにバケモンの巣があるのでお一人でどうぞ。男だったら死ぬが、女だったら尊厳と引き換えの快楽が得られる。だた誰も助けには行かない。
「パワー、君も飲むといい。明日はなんと珍しく休暇だからね」
「マジ?明日エレベン滅ぶのかな?」
「なんでも、新型の討伐と、攻撃方法の提供。それと北部の統治についてで暫くは上が忙しいみたいでね。そもそも軍が動けないらしい」
「ほーん。まぁ今回だって軍結成以来初の成功だし、そんなもんか」
「ちょっと!私を置いて話さないでくれる?寂しいんだけど!!」
うるせー女が会話に入ってきた。こいつもう酔ってんのか?
「はいはいごめんごめん」
「寂しかったでちゅねータンクちゃ〜ん?赤ちゃんがよ」
「バカにしないでくれる!?まだ酔ってないわよ!」
いつも通りにやかましい。が、これこそ日常というものだと思う。
いつかこのやりとりが当たり前に続くと思える日が来るようなりますように。なんて
さて、我々第〇一三番隊は新しい隊員の入隊を待ち望んでいる。明日が見えないもの、自分を捨てる覚悟があるものは、ぜひ入隊を