「貴様は、私を裏切らないのか。技術が証明できない『信頼』など、この世界に存在しないはずなのに。」
ライオネルの指摘は、霊王国の王シオンにとって、技術的なプライドの崩壊と過去のトラウマの再燃を意味した。彼はライオネルが指摘したゴーレムの設計上の致命的な欠陥が、真実であることを知っていた。それは、技術的な連携がなければ解決できない、孤独な王国の象徴だった。
「裏切り者…」シオンは震える声でつぶやいた。「貴様は、私が孤立を選んだ理由を知りながら、なぜ私に手を差し伸べる? 貴様が、私の技術を盗むために来たのではないという証明はどこにある?」
「証明は、私の命です」ライオネルは静かに言った。「私は、あなたに技術的な協力を求めに来たのではありません。孤独なあなたに、繋がりを証明しに来たのです。」
ライオネルは、シオンの最も守りたいはずのソウル・アーカイブの前に立ち、台本知識から得た、欠陥の修復手順を提示した。この修復には、膨大な魔力と、外部からの絶対的な信頼が求められる。
シオンは警戒を解かず、ライオネルの作業を監視した。
「この欠陥は、『完全な孤立下での魔力生成サイクルの不安定化』だ。過去に裏切られたことで、あなたが外部との交流を断ったことが、技術を不安定にしている。修復には、外部の魔力を一時的に受け入れる必要がある。」
シオンは震えた。「外部の魔力を? それは、私の技術をあなた方に乗っ取れと言っているのと同じだ!」
「乗っ取るつもりはありません」ライオネルは言った。「閻王国の力は、今、支配のためではなく、奉仕のためにある。真王国の知識は、安全のためではなく、生命への奉仕のためにある。そして、私の命は、あなたを信じるためにあります。」
ライオネルは、自身のアバターの生命力コアを、ゴーレムの修復プロセスに接続し始めた。これは、ゲーム知識では存在しない機能であり、彼の意識とアバターの生命力を直接魔力として供給するという、極めて危険な行為だった。
「何を! 貴様、自分の命を魔力源にするつもりか!」シオンが叫んだ。
「この修復には、純粋で、裏切りのデータに汚染されていない魔力が必要です。私の命の魔力は、この世界で最も**『裏切り』の記録を持たない**、クリーンなものです。」ライオネルは、激しい痛みに耐えながら、自身の命を技術へと流し込んだ。
シオンは、ライオネルの非論理的な献身に、言葉を失った。技術が証明できない**「信頼」**という名のデータが、今、彼の目の前で、命の光となって流れている。
彼の脳裏に、過去に裏切った者たちの冷酷な顔が蘇る。彼らは皆、利益のために技術を求めた。しかし、ライオネルは**「繋がり」**という、技術の最も根源的な目的のために、自らの命を差し出している。
「なぜだ…なぜ、あなたはそこまで…」
ライオネルは、痛みに声を絞り出した。「あなたが、孤独ではないことを証明したいからです。あなたの技術は、裏切りを呼ぶ呪いではない。絆を繋ぐための、最高の道具なのです。」
修復プロセスが完了した瞬間、ゴーレムのコアが安定した。ライオネルは力尽きてその場に倒れ込んだが、その顔には、**「孤独な王を救った」**という確かな充実感が浮かんでいた。
シオンは、急いでライオネルの元に駆け寄った。彼の冷え切った手に、ライオネルの温かい命の残響が伝わった。
「...貴様は、私の技術の境界線を破った。貴様は、私に**『信頼』**という、最も不確実で、最も強力なデータをインストールした。」
シオンは、ライオネルを見下ろし、初めて孤独ではないという感情に触れた。彼の技術は、再び繋がりのためにある。
その時、外部の防御システムが、魔族の急接近を告げた。予言通り、魔族の総攻撃が始まったのだ。
「ライオネル…この命の恩は、必ず返す」シオンは、ライオネルを安全な場所へ運びながら、決意の表情を浮かべた。彼の技術の檻は壊れた。そして、技術の力は、今、仲間を守るために使われる。
第10話 完
第10話では、主人公の命懸けの行動によってシオンの**「技術の境界線」が破壊され、「繋がりの技術」**へと昇華しました。
次は**第11話「修復の連帯」**で、グラディウスとアルテミスの援軍が到着し、三国指導者が協力して魔族の総攻撃に立ち向かい、統一戦線の力を証明します。