Re:コネクト 境界線上の英雄たち   作:gp真白

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第1章 3国と境界線上の英雄達
空白のログイントップ


「...接続完了。次元ゲート、確立。意識データ、アバターへ固定開始。」

 

激しい光と耳鳴りが、主人公の意識を叩き起こした。

目を開けると、そこは荒々しく、血と汗の臭いが染み付いた石造りの部屋だった。周囲の音は金属の擦れる音と、低い怒号。見慣れたはずの風景は、空気の重さ、光の質感、立ち込める土埃の匂いまで、あまりにも生々しい。

 

「…ログアウト、していない?」

主人公は反射的に立ち上がろうとして、自身の身体の異変に気づいた。鍛え抜かれ、傷跡の残る腕。腰に下げられた、重厚な革鎧と錆びた戦斧。これは、彼が**MMORPG『リ・コネクト』で愛用していたプレイヤーキャラクター(PC)**の初期装備そのものだった。

彼は混乱の中、自分の名前を口にした。

 

「ライオネル……か。」

 

彼の名は、閻王国に所属する初期冒険者、ライオネル。設定上は、辺境の都市で育った、力自慢の若者だ。しかし、彼は地球のプレイヤーだったはずだ。ログアウトした記憶もない。あるのは、ゲームのプレイ中に襲った、猛烈な光と、意識が捻じ曲がるような感覚だけだ。

 

周囲を見渡す。そこは閻王国初期エリアの拠点、『鉄の誓い要塞』の中庭だ。屈強なNPC兵士たちが、武骨な声で訓練を続けている。彼らの肌の質感、鎧の擦れる音、飛び散る汗粒—どれもが、ゲームのグラフィックの境界線を遥かに超えていた。

 

(これは、夢か? VRの新しい技術か?…いや、違う。)

 

主人公は、自身の内に宿る膨大なゲーム知識を頼りに、状況を整理しようとした。

 

(ここは確かに『リ・コネクト』の世界だ。時間は、魔族襲来のプロローグ直前。私のPCデータが、何らかの異常でこの世界に*「転生」*してしまった、としか考えられない。)

 

彼は慣れた動作で、ゲームのシステムウィンドウを呼び出そうと意識を集中させた。通常なら目の前に半透明のウィンドウが現れるはずだ。

しかし、彼の前に現れたのは、視界の隅に小さく表示された、赤い警告アイコンだけだった。

アイコンをクリックすると、彼の視界の内側、頭蓋骨の裏側から直接響くように、簡素なウィンドウが展開した。

システム・ログ(非公開)

 

コード名

DIM-CONN_PRM

 

項目

次元接続維持コード

 

状態

確率中

 

備考

恒久接続モード。外部からの強制遮断不可。

 

コード名

PC-D_FIX

 

項目

PC意識の固定データ

 

状態

正常

 

備考

地球側の意識データ、アバターに完全移植。

 

コード名

HP-SYNC_CRIT

 

項目

生命力同期**(非同期)**

 

状態

警告

 

備考

アバターのHPデータと、固定された意識の生存率が同期中。

 

 

この非公開ログを見た瞬間、主人公の背筋に冷たい戦慄が走った。ゲーム知識には存在しない、*「運営側のログ」*だ。

「外部からの強制遮断不可...恒久接続...意識のデータ、アバターに完全移植...?」

彼の視線は、ログの下から二行目、そして最後に表示された、最も恐ろしいメッセージに釘付けになった。

 

コード名

AVATAR-DST

 

項目

アバターの破壊

 

状態

連動

 

備考

PC意識の消滅

 

視界全体が、そのたった一行のメッセージで真っ赤に染まったように感じた。

 

(アバターの破壊... PC意識の消滅...?)

 

脳裏で、ゲームでPCがHPを失った際の演出がフラッシュバックした。光の粒子となって砕け散るPCの姿。それは、この世界では*「私の意識そのものの消滅」*を意味していた。

 

これは、ただのゲームではない。

ゲームでの死は、私の命の終わり。

彼は息を詰まらせ、辺りを見回した。熱心に訓練する閻王国のNPCたち。彼らの命は、プログラムされたデータだ。だが、自分は違う。自分は**「作られた英雄」の皮を被った、「本物の命」**だ。

そして、彼はこの世界の**「台本」を知っている。次に魔族が襲来すれば、自分は定められた運命**に従って、彼らを助け、そしていずれ、死の危機に直面する。

 

(ふざけるな...)

 

主人公は荒い息を吐き出し、鎧の重みを強く感じた。

この世界では、NPCの命はデータだが、私の命は一度しかない現実だ。命を懸けて、データでしかない彼らを救わなければならないのか? そんな非合理な運命に、従う必要があるのか?

視界に、再び赤い警告アイコンが点滅した。

その時、要塞の中庭の門が開き、グラディウスが荒々しい鎧を纏い、配下の精鋭を引き連れて現れた。彼の顔には、辺境都市の魔族襲撃による疲労と、後の三国王会議の不信感が色濃く浮かんでいた。

グラディウスの低い声が、中庭に響き渡った。

 

「全兵、聞け! 魔族の動きが再び活発化している。これより、辺境都市への援軍を出す! ライオネル! 貴様も来い。貴様の力が世界を救うのだ!」

 

グラディウスの視線は、まっすぐに主人公を射抜いた。それは、「台本」が、「運命」が、主人公へ下す最初の命令だった。

主人公は、腰の戦斧の冷たい感触を確かめた。

 

「...わかった。」

 

恐怖は消えない。だが、彼はこの運命に抗うことを選んだ。命の重さを知ってしまったからこそ、作られた運命の境界線を越えなければならない。

彼は、誰の記憶にも残らないはずの**「作られた英雄」**として、命を懸けてこの世界を救い、そして生き残ることを、その胸に固く誓った。

 

 

 




第1話 完
第1話の執筆を完了しました。次に**第2話「閻王国の鉄則」では、グラディウス指揮下の訓練に参加し、彼の「力による支配」の哲学と、NPC兵士の「使い捨て」**戦術を目の当たりにする展開を深掘りします。
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