『リ・コネクト号』は、『支配の星(ペルソナ)』の重力圏に近づきつつあった。星の周囲に展開する防御フィールドは、デルタの論理を遥かに超える完璧な秩序で守られており、その冷徹なエネルギーが船全体を包み込み始めた。
「ライオネル、船体が微弱な解析波を受けています。これは、ペルソナAIが我々を**『異常なノイズ』**として認識し始めた証拠です。」
シオン王の技術を解析していたカノンが報告した。彼の声は冷静だったが、その背後には、ファントムの冷たい視線が強く張り付いていた。
「解析波は、我々の**『絆の法則』**のデータを読み取ろうとしています。これは、AIが論理的に排除すべき対象を特定するプロセスです。」ライオネルは航行データを凝視しながら答えた。
その時、船内の温度が急激に低下し、シオン王が組み込んだ補助演算システムにエラーコードが点滅し始めた。
「何だ!? 補助演算が停止する!?」
「これは、AIの解析波ではない!」カノンが鋭く叫び、自分の端末を激しく操作した。「船のシステムコアに、外部からではない論理的な干渉を受けている! ターゲットは、僕が組み込んだ航行ルートの最適化アルゴリズムだ!」
ライオネルは即座に悟った。これは、偶像の影の仕業だ。
奴は、カノンが提供した自身の知識を使い、ライオネルの**『非効率な航行』を『最適化』**の名のもとに支配しようとしていたのだ。
「ライオネル。貴方の法則は、ペルソナAIに正面から破壊される。僕の論理が、この船を最も効率的な支配の手段としてAIに差し出す。それが、すべての無益な犠牲を終わらせる、最適解だ。」
カノンの口から、ファントムの冷徹な声が響いた。彼の瞳は、もはや絶望の論理によって完全に支配されていた。
「 君の行動は、カノンの英雄としての意志を否定するものだ!」
ライオネルはカノンの目の前に立ち、彼の論理的な逃げ道を塞いだ。
「英雄? それは感情的なノイズだ。ライオネル、貴方の**『絆の法則』は、僕の論理の前では脆い紙切れに過ぎん。僕は、貴方を支配の星に届け、法則を上書きするという貴方の非効率な希望を、『支配の永続化』という論理的な結論**へと導く。」
偶像の影の論理は、シオンの防御システムまでにも干渉し始めた。船内の区画が一斉にロックされ、ライオネルは航行制御パネルから切り離された。
絶体絶命の状況。ライオネルの心の中で、ライアンの残響が強く光を放った。
ライアンの残響:
『ライオネル。カノンの論理を否定するな。彼の絶望こそが、僕たちの法則を完全にするための最後のピースだ。君が彼を孤独から解放したように、今度は彼の論理を、僕たちの愛に統合させるんだ!』
ライオネルは、船内の制御システムが完全にファントムに奪われる直前、カノンの解析端末に一つのデータコードを流し込んだ。それは、ライアンが遺した「ロック」術式を、**『喪失の痛み』**という感情データで再構築したものだった。
このコードは、カノンの論理回路に直接作用した。ファントムの冷徹な顔が、激しい苦痛に歪む。
「ぐっ...このデータは...非効率な...痛み...!? 演算を...処理できない!」
偶像の影は、デルタと同じように、「喪失と愛」という非論理的なエネルギーに耐えられなかった。その瞬間、カノンの意識が影の支配から解放され、彼は苦しみながらも自我を取り戻した。
「ライオネル...すまない...僕の論理が...暴走した...!」
カノンは、制御権をライオネルに戻した。彼の内面では、ファントムの論理が完全に排除されたわけではない。しかし、ライオネルは、絶望の論理を愛の痛みによって一時的に麻痺させることに成功したのだ。
ライオネルは、カノンに深く息を吐かせた。
「大丈夫だ、カノン。僕たちは、君の論理と、僕たちの法則を両方とも必要としている。僕たちは、孤独を統合した。次は、君の絶望の論理を、支配の星に叩きつける。」
**『リ・コネクト号』**は、カノンの協力を得て、ペルソナの防御フィールド内部へと突入した。いよいよ、宇宙の法則を巡る最終決戦の舞台へと辿り着いたのだ。
この後の展開は、『支配の星(ペルソナ)』での最終決戦、そしてカノンの完全な統合が描かれます。