もう付き合っちゃえよ(真顔)   作:オールドファッション

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冬ごもりはハンバーグの味

 翌日、私たちはグラナト伯爵領の領主に挨拶を済ませてから出発した。

 ”若い”が、中々の好青年といった領主だった。

 

 大陸最北端を目指している私たちだが、現在北部高原は情勢のために人の往来の制限が掛かっている。

 冒険者の往来でも一級魔法使いの同行が必要らしい。

 私はこの時代の魔法使いの資格は持っていないし、フェルンは三級までの資格しかない。

 リーベは…どうせ魔族なので資格は持ってないだろう。

 

『……何だそのペンダント、知らん……何だその舞は?』

 

 私の聖杖の証を見ても無反応だったくらいだ…人間界の知識はあっても、交流まではそこまでないんだろう。

 私はちょっとお姉さん気分になって舞い上がった。

 

 私たちは目的地を魔法都市オイサーストに定め、アウラの家を出立した。

 シュタルクとフェルンはアウラに色々と言っていたが、私は興味がないのでそれを遠くで眺めていた。

 ついでに私の隣にいたリーベもその様子を興味津々に眺めている。

 

「助けて、リーニエ……俺あの人直々に扱かれたら死ぬかも…」

「シュタルク、リーベ様は敵対しなければ基本的には優しい…頑張れ」

 

 別れる間際のシュタルクとリーニエの抱擁には私も少し驚いた。

 短い間とはいえ、互いに何か通じ合うものがあったみたいだ。

 フェルンは少しムッと膨れ、リーベは……何というかホクホクした顔をしていたな。

 

 逆にリーベとアウラの別れの挨拶はさっぱりとしていた。

 

「リーベ!早く戻って来なさいよー!」

「ん、了解した」

 

 こうして私たちはシュヴェア山脈を越えるために山越えを開始した。

 だが、やはりリーベの予測通りに冬はやって来る。

 大玉の雪の塊が吹雪となって視界を塞ぎ、横殴りに吹く風が私たちの体力を着実に削っていく。

 シュタルクは予想以上に寒さに弱かったのか、最初に脱落した。

 

「あれ、ジャンボベリースペシャルってこんな美味かった?」

「やばいな。文字通り最後の晩餐を走馬灯でやってる」

 

 寒さで気絶したシュタルクをフェルンが引きずっていたが、リーベはそれを見てやけに暖かな表情を浮かべる。

 そういえば貧弱そうなリーベはこの寒さの中でも元気だった。

 

「寒くないの?」

「アホか。魔王城の寒さを舐めるなよ」

「それもそうか」

 

 私もエンデの環境は身に沁みて覚えている。

 あの極寒地獄に比べれば、この冷気すら春風に思えるほどだ。

 しかし、そんな経験で誰もが寒さに耐えられるわけがない。

 私たちは寒さを凌げるような山小屋を探した。

 

「何でこういう山って都合よく山小屋とかあるんだろうね」

「そりゃ、誰かが遭難者の為に善意で建てた……という可能性もあるが、昔の遭難者が古い建物何かを見つけて少し補修したのが結果的に残って、色んな遭難者たちがそこに泊まっては痛んだところを補修してるんじゃないか?」

「何か歴史を感じるね」

「お二人とも!何を呑気にしゃべてるんですか!」

「お、歴史的建造物発見」

 

 そうこう会話していると、偶然、山小屋を発見する。

 だが……。

 

「うおっ」

 

 リーベがドアノブに手を掛けた瞬間に小屋の内側から蹴り飛ばされた。

 奴は見事に90度の角度で仰け反り、扉を突き破った蹴りを回避した…体柔らかいな。

 

「魔族か…」

 

 見れば、小屋の中には半裸の男のエルフが仁王立ちしている。

 時々、忘れそうになるがリーベは魔族だ…魔族がいたから攻撃したと言われても向こうには非はない。

 私に代わってフェルンが頑張って説明をしていたが……。

 

「…あの時の魔族か」

「…あー、久しぶりだな」

「えっ」

 

 どうやら互いに面識があったのか、相手も闘気を抑えた。

 相手のエルフはモンクのクラフトという男らしい。

 クラフトが穴の空いたドアを修繕してる間、リーベに色々聞いて見たが…。

 

「色々あったんだよ…小説上中下ぐらいの量になるけど聞くか?」

 

 と言われたので断った。

 あれ、このパターン前にもやったことがあるような…。

 

「リーベ様大変です。シュタルク様の体温が…」

 

 私が首を捻っていると、シュタルクの様子を見ていたフェルンが声を上げる。

 見ればシュタルクの顔が青ざめていた。

 それを見たリーベは……ホクホクした顔を浮かべて手を叩く。

 

「そういう時はな、人肌の温度で温めるといいぞ。北国で暮らしてた俺が言うんだから間違いない」

「じゃあ、お願いします」

「えっ」

「そういうのは同性の方がよろしいかと…リーベ様は経験があるようですし」

 

 私もクラフトも頷いた。

 女の子と男の子が一緒に寝るなんてちょっとエッチすぎる。

 

「…仕方がない。シュタルクを抱いて一晩過ごすか…」

 

 そう言って外套を脱ぎ、リーベは薄着になった。

 こう見ると身長はあるが、体つきは結構華奢で、それが中性的な顔と相まってなんだか…。

 

「うん、なんか女の子と寝かすより不健全な気配を感じる…」

 

 仕方がなく、クラフトに頼んでシュタルクと寝てもらった。

 起きたシュタルクの驚き様はちょっと面白かった。

 

 フェルンは窓から見える猛吹雪に震えながら、リーベに尋ねた。

 

「吹雪すごいですね…どれくらいで止みますか?」

「うーん、最低でも半年だろうな」

「…すみません、アウラ様との約束が…」

「いいよ、魔族からしたら半年なんてすぐだし」

 

 こうして、私たちはこの山小屋で半年過ごすことになった。

 小屋の近くにクラフトが運んで来た食料があったので、飢え死にはしないだろう。

 時々、食べれる野草や木の実、野ウサギなんかも捕まえて、それをリーベが調理をする。

 限られた食料で極上の料理を堪能することができた。

 

 半年の間も、リーベは2人に修行を課した。

 フェルンには例の魔力のジャグリングを継続して練習させ、現在は4個までジャグリングができるようになっている。

 

「おー、すごいなフェルン」

「私、同世代の中で一番ジャグリングが得意になった気がします」

「それ一応は魔力操作の練習だからな?」

 

 シュタルクは室内でもできる筋肉トレーニングをしていた。

 まあ、それはいつもやっていることなのだが、時々メンタルの修行のために…。

 

「馬鹿、えっち、ガキ」

「ひ、ひどい…うぅ」

「どうしたシュタルク、腕立て伏せの姿勢が崩れてるぞ」

 

 リーベの命令でフェルンがシュタルクの耳元で悪口を言わせられている。

 ただ、時々その悪口の中に本心が混じっている様な気がした。

 

 ちなみに私はいつもの様に魔道書を読んだり、お昼寝を繰り返していた。

 

「今の聖典と大分内容が違いますね」

「ああ、何百年も前に言語体系が変わったからな…それによって暗号も複雑化している」

「あー、たしかに俺が昔読んだ聖典の方が読みやすかった…あれ、それ考えると今の解読してる人類すごいな」

「やはりハイター様は素晴らしい僧侶だったんですね」

 

 横目で見ると、クラフトはフェルンとリーベを交えて聖典に関する意見交換をしている。

 リーベは魔族だが、聖典に関する様々な知識を持っているらしい。

 生前のハイターも、よくあいつのことは褒めていた。

 

 時々、聖典の話でもしているのか、リーベとクラフトが2人で会話していた時があったが、何を話していたかは聞こえなかった。

 

 そうして、すぐに半年が過ぎた。

 

「フリーレン、今生の別れとは思わん。何百年後かにまたな……リーベ、お前とはまた近いうちに会えるといいな」

 

 何度も繰り返した別れをして、私たちは剣の里に向かった。

 

 

 

 

 

 

「なあ、フェルン…そろそろ背中のこいつを振り落としていいか?」

 

 俺は背中にクソボケエルフを背負っていた。

 途中までフェルンがこいつをおぶっていたが、流石に疲れるだろうから代わったんだが…。

 

「いい匂い…師匠と一緒の匂いがする」

「木にしがみ付く昆虫並みにホールドされてますね」

「大丈夫か?背中のクソ科ボケ属エルフムシが俺の髪を食ってないよな?」

 

 俺は少し交代したことを後悔していた。

 途中で起きたフリーレンは俺に背負われたのが気に食わなかったのか、ひどく背中を殴られた…まあ、あんなの殴れたうちには入らない。

 

 しばらくして、石造りの壁で囲まれた集落が見えて来た。

 

「リーベ様どうしましょう…あっ、ちょっと」

 

 フェルンたちは俺をどうするか悩んでいる様だが、俺は普通に集落の中に入って行った。

 見張り番は俺の顔を見ても特に止めることなく中へと招き入れる。

 俺はちょうど近くを歩いていた薄い桜色の髪をした子供に声を掛けた。

 

「新しい里長か?」

「リーベ様!」

 

 俺の腰にも満たない身長の幼女が掛けてくる

 俺も腰を下ろして目線を合わせ……。

 

『イエーイ』

 

 と、ハイタッチをした。

 その様子を奇妙な目でフェルンたちが見つめている。

 最初に口を開いたのは、眉をひそめたフリーレンだった。

 

「どういうこと?」

「何だ知らんのか?聖地巡礼というやつだ」

 

 俺はヒンメルの旅が終わってからしばらくして、ヒンフリ成分を補給するためにヒンメルたちの旅した場所を巡礼したのだ。

 当然、名シーンとなる剣の里まで行ったのだが、そこで出会った当時の里長となぜか意気投合してしまった。

 

『フリーレン様ってちょー冷たいよね。まじ音沙汰なくてぴえんなんだけど』

『ちょーわかりみが深い。それつらたんしょ?』

『ウェーイ』

『ウェーイ』

 

 俺の覚えた現代語が通じる珍しい相手だったな。

 それから何度か文通する様になって、一応俺の正体も明かしたが『あたしらズッ友しょ』という返事が送られて今の関係に至る。

 孫が生まれた時は写真も送って来たから、この子を一目見て分かった。

 やはり母親や祖母の遺伝がかなり強い……女系の一族なんだろうな。

 

「先先代がまだ若かった頃に撮ったリーベ様とのツーショット写真が今も居間にありますよ」

「おかしいな…あの人一応、魔族なのに…」

「ちなみに遺言の1つに…『リベちーメンゴ。最後に私の解釈違いを訂正するわ。ヒンメルまじ勇者』がありました」

「勇者の剣守ってる里長がそれ言っちゃダメでしょ」

 

 俺たちは先先代との時を超えた絆を感じながら、勇者の剣が封印された洞窟へと向かった。

 俺が前回来た時、ある程度強い魔物は倒しておいたので、山の主の様な個体はいなかった。

 勇者の剣がいまだに抜けていないのを見て、フェルンとシュタルクは困惑の表情を浮かべている。

 

「ヒンメルは成し遂げたんだ。あんな剣が無くたって世界を救って見せた。本物の勇者だよ」

「いい話だよな。俺もヒンメル戦記にこの話載せようとしたら編集から止められた…まあ、無理に出しても禁書案件になってたかもな…全く面倒な」

 

 ヒンメルを英雄として祭り上げている勢力に恨みを抱きながら、洞窟には入らずに俺たちは帰った。

 本当のヒンフリファンなら、むやみに聖地を踏み荒らさずにはるか後方から眺めるべしである。

 何やらシュタルクが興味深そうに剣を眺めていたが……まあ、あの年頃の男の子は剣とドラゴンが好きらしい。

 帝都で売ってた剣にドラゴンが絡まってる意匠のアクセサリーでも買ってやろうかな。

 

 こうして、俺たちは短い間だけだったが剣の里で数日を過ごした。

 別れの際は、新しい里長が直々に送り迎えをしてくれた。

 

「『フリーレン様ならやってくれると信じてました。マジ感謝』……これも先先代の遺言です」

「お前のばーちゃんの遺言どうなってるんだよ」

「そして『リベちー、もう会えんのマジでつらたん。私がこうしてやりらふぃーな会話できたのはお前だけだかんな☆』……これはリーベ様に向けた遺言です」

「マジでお前のばーちゃんの遺言どうなってるんだよ!遺言に☆を付けるな!」

「落ち着けシュタルク。死者の遺した大切な遺言だ…それは軽んじことは許されない」

「うん、それは私もどうかと思う」

「えぇ…何で俺が怒られてるの?」

 

 俺たちはシュタルクを叱りつけながら剣の里を後にした。

 シュタルクはまだ繊細なお年頃なのか、怒られたのが納得できない様子だった。

 頑張れシュタルク、人はそうやって成長するものだ……多分。

 

 シュヴェア山脈の山越えをようやく終え、俺たちは麓の町で宿を取った。

 流石に山中にある剣の里と比べると、いくらか栄えた場所ではある。

 俺とシュタルク、フェルンとフリーレンの男女に分かれた2部屋でしばらく休むことにした。

 

『シュタルク様、リーベ様いますか?』

 

 シュタルクが外出し、それと入れ替わる様にフェルンが俺たちの部屋を訪ねてくる。

 開けてから開口一番の言葉に俺は少し驚いた。

 

「今日がシュタルク様の誕生日って知ってました?」

「…すまん、初耳なんだが」

「ですよね…私もです」

 

 フェルンは口にこそ出さなかったが、今この瞬間クソボケエルフ同盟が心の中で結ばれた気がした。

 

「同じ男性としてアドバイスが欲しいのですが…シュタルク様は何が欲しいと思いますか?」

「ふっ、あれくらいの年頃の男子はな…ドラゴンと剣の意匠のアクセサリーとエプロン。そしてウンコという言葉で爆笑するらしいぞ」

「……はあ、そうですか。ありがとうございました」

 

 そう言ってフェルンは真顔のまま部屋の扉を閉じる。

 気のせいか、さっき結ばれた同盟も破棄された様な雰囲気だ。

 

 一回に降りてくるとエプロン姿のフリーレンと出くわした。

 テーブルに用意された食材や調味料で大凡の見当はつく。

 

「なるほどな、ハンバーグか」

「戦士の誕生日といえばこれでしょう」

 

 そういえばアイゼンもそんな内容の手紙を書いていたな。

 思い返せば、リヴァーレが俺にハンバーグをご馳走した日は俺の誕生日だった。

 昔からある風習なんだろう。

 

「手伝おうか?」

「いい、これは私からの誕生日プレゼントだから」

「そうかい。じゃあ、なるべく生地はぬるくならない様に濡れた布巾を掛けて寒い場所に保管しておけ。あと、すでに粗挽きの肉よりも塊肉をミンチにした方が肉汁がたっぷり出るぞ」

「……そうしようと思ってたの」

「はいはい」

 

 俺はフリーレンの調理風景を眺めながら、久しぶりに女神の視界を取り出して二人を監視することにした。

 ふむ、どうやらシュタルクが空を眺めている……少し離れた場所からフェルンがそれを眺めるという不思議な光景だ。

 そしてシュタルクが、真剣な面持ちで口を開いた。

 

『マジかよ…あっちはうんこだ』

「ふっ、だから言っただろフェルン…」

 

 俺はそれを聞いて、勝利の右拳をあげた。

 それをフリーレンがハンバーグをこねながら怪訝な顔で見つめる。

 

「何見てるの?」

「フェルンとシュタルクの様子……おい、こねる時は冷水で手を冷やせ。生地にムラができる」

「うるさいなぁ……そうやって私たちの冒険も覗いてたのか、この覗き魔め」

「流石にトイレや風呂は覗いてないぞ……おい、その大きさで一気に焼いたら焦げるぞ。焼き目つけたら蓋して蒸し焼きに…」

「もー、うるさいな…だったら少し手伝ってよ」

 

 フリーレンはハンバーグの生地をこね、俺はそのハンバーグを焼く係になった。

 焼いている最中も、女神の視界を壁に立てかけて二人の様子を眺めている。

 それを後ろからフリーレンが呆れた顔で眺めていた。

 

「よくよそ見しながら料理できるね…ハンバーグ焼いたことあるの」

「ん、ないぞ…ただ知り合いにハンバーグ焼くのが上手い男がいたんだ。そいつの調理風景を何度も見てたから、嫌でも覚えてるよ」

「ふーん、戦士?」

「ああ……な、何てことだ。ついに明かされたシュタルクの悲しき過去…それを聞いてフェルンは何を思うか」

「……絶対に焦がさないでよ」

 

 俺はハンバーグに完璧な火入れを行いながら、シュタルクとフェルン…いや、シュタフェルのクソエモい会話を聞いていた。

 なんだろうな…ヒンフリがクソボケエルフという難攻不落の城を落とす勇者の物語だとすれば、シュタフェルは…思春期に目覚めた少年少女たちが友情を通じて恋愛に発展するかしないかのせめぎ合いって感じだな。

 いとあはれ……いや、ニューあはれシネマパラダイスと名付けようか。

 それともあはれスタンドバイミーか。

 

 そしてしばらくして、二人が帰ってきた。

 

「ただいまー…」

「あらあら、お二人さん!遅かったじゃない!」

「またお母さんテンションですか…」

「…いや、どちらかというと世話焼き好きのおばちゃんだな。リーゲル峡谷の村で俺が同い年の女の子と話してると、よくこんな人が現れた」

「あらあら!どうしたのシュタルクそのブレスレット!」

 

 俺はシュタルクのコートの袖から覗くブレスレットを見ながら、フェルンに向かって親指を立てた。

 フェルンは指摘されたのが恥ずかしいのか俯いている。

 シュタルクもフェルンの様子を見て頬を掻いていた。

 はー、甘露甘露。

 

 俺はホクホクした顔で出来たてのハンバーグを皆の席に配った。

 謎の巨大ハンバーグにフェルンは困惑していたが、シュタルクは毎年食べ慣れてるので『待ってました』と満面の笑みを浮かべている。

 フリーレンはその様子で察したのかため息を吐いた。

 

「戦士ってのは不器用だね。これはね……」

「精一杯がんばった戦士…そうか」

 

 ハンバーグに込められた意味を知ったシュタルクは少し視線を落とし、まるで懐かしむ様にそれを口に運ぶ。

 

「アイゼンから貰ったレシピで作ったんだ」

「俺も少し手伝ったよ…どうだ美味いか?」

「…ああ」

 

 シュタルクの返事は震えていたが、皆それについて深く追求はしなかった。

 俺は何やら、時代を超えたあはれの波動を感じたがなんとか堪えている。

 フリーレンはシュタルクを見て何を思ったのか、懐から謎の瓶を取り出した。

 

「あとこれ、まだ少し残ってるから…」

「お、服だけ溶かす薬じゃないか」

 

 俺がそれに興味を示すと、フェルンからの謎の冷たい視線が向けられる。

 フリーレンが今も少し薬臭いのは、今朝何かトラブルが起きたせいらしい。

 

「リーベ様はこういうものに興味があるんですか…?」

「興味というか…便利だよなこの薬」

 

 俺がそう答えると、フェルンが少し遠ざかった。

 何を勘違いしてるんだ。

 

「よく考えろ、服だけ溶かすんだぞ。鎧や高度な防御魔法が掛かった服だって溶かす結構イかれた性能をした魔法薬だ…道中、そういう面倒な敵に遭遇したなら掛けてやるといい」

「そ、そんなすごい薬だったんですか。フリーレン様…すみません、私てっきり」

「え、私そこまで考えてないけど」

「やっぱり捨てていいですか?」

 

 俺以外の二人はシュタルクにプレゼントを渡したようだ。

 仕方がない、俺もとっておきのものをシュタルクにプレゼントしてやろう。

 

「受け取れシュタルク…俺からのプレゼントだ」

「こ、これは……まさか!?」

「そう、マハリー物語の作者ベルバラマリー先生直筆のサイン入り本だ…かなりのレアものだぞ」

 

 俺が初めて会いに行った時、俺とマハトの物語を勝手に書籍化したことを土下座して謝ってきたな。

 俺で例えるなら、推しが急に家に押しかけてきたような感覚だろうか。

 まあ、俺も恋愛の参考書として読ませて貰ったから別にいいが、サインをねだったらこれを受け取った。

 現在はプレミアがついてかなりの希少本になっているらしい。

 

「……」

 

 隣で見ていたフェルンがちょっとうらやましそうに見つめている。

 フェルン誕生日の時にでも別のサイン本を用意して置くか。

 

「さあ、シュタルク…俺のハンバーグも食え」

「え、リーベさん少ししか食べてないけどいいんですか?」

「馬鹿だなシュタルク、全員がこんなでかいハンバーグを全部食べきれるわけないだろう…正直、胃もたれてしてきた」

「まるでジジイだな」

「うるせえなババア、お前は年齢の割にがっつり食ってるんじゃねえよ」

 

 大きくなって立派な戦士になれよシュタルク。

 お前はいつか、リヴァーレを殺さなきゃいけない男だ。




クラフト「お前は魔族なのに信仰心が篤いな」
リーベ「別に…習慣でやってるだけだ」
クラフト「だからってそう毎日祈ることはできないさ。お前も天国に行きたいのか?」
リーベ「俺は行く資格はない……だが案外、天国にいてほしい相手がいるから続けているのかもな」
クラフト「そうか…そういえば、あの嬢ちゃん元気か?」
リーベ「ああ。すごいぞ、料理はうまいし絵だって描けるんだ」
クラフト「そりゃすごい…あの時殺さなくてよかった」
リーベ「今の俺は殺さなくていいのか?」
クラフト「戦う必要があるか?」
リーベ「…いいや」
クラフト「そうだろうな…あの嬢ちゃん大切にしろよ」

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