もう付き合っちゃえよ(真顔)   作:オールドファッション

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第二期放送記念ということもあって、丹羽にわかさんが主催する『フリーレンにコロコロされる魔族オリ主杯』に参加しました。本作とはまったく異なる作風ですが、興味のある方はご覧ください。(https://syosetu.org/novel/399641/)
他にも素晴らしい応募作品が揃っているので、他参加者方の作品も読みに行って下さると嬉しいです。
盛り上がれフリーレン界隈!


最高の誕生日にしよう【後編・リーベ視点】

【千年前】

 

 人里から大きく離れた山で、人家から煙が立ち上っている。

 その煙が発生している場所から、俺はわずらしげに見上げながらため息を吐く。

 なるべく煙を出さないように気をつけてはいるのだが、飯炊きの時にはどうしても煙が立つ。

 習慣とはいえ、食事をするために料理もしなければならないのは面倒なものだと染み染み思った。

 

 現在で言うところの中央諸国に位置する場所に、俺は住んでいた。

 住むといっても、家とは名ばかりの掘っ建て小屋だ……家具などは一切ない。

 これでも初めて作ったものよりはマシな出来ではある。

 

 食事は基本的に木の実や山菜、時々獣などを狩って食べている。

 最近は麦畑や、山羊や鶏などの家畜を育て始めた……朝はパンケーキが無性に食べたくなるからだ。

 

『また焦がした……これじゃ、じゃじゃ馬の出来を笑えないな』

 

 人家から盗んだ調理器具を使いながら、見よう見まねでパンケーキを焼いたが、焚き火での火加減は思いのほか難しかった。

 まあ、練習すれば、そのうち上手くなるだろう……どうせ魔族の一生は長いのだから。

 

 ガサッ。

 

 遠くから、何かが草木をかき分けてこちらに向かっている。

 魔力探知で探ったところ、どうやら人間の魔法使いのようだった。

 

 俺はフライパンを地面に置き、近くの茂みに隠れて魔力を消す。

 相手の魔力量はそれほど多くないが、だからといってわざわざ戦うのも面倒だ。

 

『何だこりゃ……ボロ屋よりひでえ家だな』

 

 現れた人間の魔法使いは、俺が一生懸命建てた拠点を見てすぐに貶した。

 大工道具なしでここまで作ったんだ……むしろ褒めて欲しいものだ。

 

 魔法使いは人間の女だった。

 女とはいっても、とうに盛りを過ぎた90歳前後の老婆だ。

 かつては美しかったであろう燃えるような赤毛も、白髪のせいで今はくすんだ色をしている。

 

 老婆は家の中を軽く物色すると、焚き火のそばに置いてあるフライパンの中身を見た。

 焦げた不恰好のパンケーキを見て、懐かしそうに微笑んでいる。

 

『やっぱり、朝はパンケーキだよな。私も弟子によく作ってたよ』

 

 そう言いながら、老婆は俺のパンケーキを摘んでいた。

 甘味なんて一切ない掛かっていない小麦粉の焼き物を、なぜだか美味そうに食べている。

 人の食べ物を盗み食いするなど盗人猛々しいにもほどがあるが、怒りは湧き上がらなかった。

 

 そして、老婆は丸い墓石に目を向ける。

 墓石というにはあまりにも粗末なものだったが、一応花が添えてあった。

 

 老婆はその墓石を大事そうに撫でると、跪いて祈り出す。

 ここに魔族がいるというのに、あまりにも無防備な背中に俺は呆れた。

 

『なあ、久しぶりに話さないか?』

 

 その場で祈り続けながら、老婆は俺に語りかけてきた。

 だが、俺は茂みの中で息を殺したまま、ただ静観し続けている。

 老婆から大きなため息が聞こえた。

 

『そっちにその気がないなら、私から一方的に話すぞ。私もそろそろ歳でな……身の回りの整理をし始めたところだ。研究物の大半は弟子たちに譲り渡すつもりだが、趣味で集めた魔導具の中に結構厄介なやつがあってな。それをお前に譲りたい』

 

 なぜ、と言い返そうとしたが、俺は黙った。

 だが、老婆は俺の心を見透かすように話を続ける。

 

『今日は母さんの命日であり、そしてお前の誕生日でもあるからだ。さすがに、私ももう花冠を渡すような歳じゃないからな』

 

 俺は驚いた。

 あれから何十年も経ったというのに、まだそんなことを覚えていたのか。

 無駄なことに貴重な記憶リソースを使っているらしい。

 

 老婆は懐から鍵のようなものを取り出すと、それを地面に置く。

 

『私の秘密のアトリエにある。今行く気がないなら、気が向いた時にでも行くといい……何十年でも、何百年先でも。私の結界が張ってあるから、盗まれる心配はないだろう』

 

 えらい自信あり気な言葉だった。

 まるで大魔法使いになったかのような口ぶりだ。

 

 老婆の魔力は、あれから少しも成長していない。

 むしろ、幼少期よりも魔力量が減ったように見えた。

 基本的に、加齢によって魔力量が減退するようなことはないのだが、実際目の前の人物は魔力の総量が減っている。

 

(魔力制限による魔力総量の隠蔽?)

 

 俺は馬鹿げた妄想を思い浮かべて、それをすぐに否定した。

 以前、見た魔法関係の書物の中では、魔力の制限には特有の揺らぎが生じると記述があった。

 だが、老婆から発せられる魔力にはその揺らぎは一切ない。

 

 仮にそうだとしても、極めて非効率なやり方だ。

 だが、昔の破天荒ぶりを思い出すと、それをやりかねないとも思った。

 

『それとな、弟子の中にちょっとした問題児を抱えているんだ。もし、その問題児と会うようなことがあれば、色々と助けてやっちゃくれないか?』

 

 いやだ、面倒臭いと思った。

 自分のことでも面倒くさいのに、他人に構う暇はない。

 

 そんな怠惰な心根が老婆にも伝わったのか、老婆は苦笑する。

 

『いいや、お前たちは絶対に仲良くなれる。私の”直感”がそう囁くのさ』

 

 老婆は何やら確信を持ってそう断言した。

 

 弟子というからには、相手は人間だろう。

 魔族と気が合うと太鼓判を押されるような問題児だ。

 俺は最低でも百年は引きこもろうと決心した……どうせ、その頃になればその問題児とやらも寿命で亡くなる。

 

『なあ、昔したあの約束……まだ覚えているか?』

 

 老婆は左手を空にかざす。

 薬指には指輪は付けておらず、付けていた指特有の日焼け跡もない。

 

『まあ、今更こんなお婆ちゃんと結婚なんて嫌か!あははっ!』

 

 俺の無言の返答に落ち込むかと思ったが、老婆はまるで山賊のように豪快に笑い飛ばす。

 いつか見た誰とそっくりだ……やはり血は争えないらしい。

 

 

『じゃあな――弟。元気でな』

 

 

 一瞬、俺が隠れている茂みに視線を投げかけると、老婆は懐かしい微笑みを湛えた。

 そして、元来た道へと戻っていく。

 

 完全に人の気配がなくなると、俺は茂みから出て墓石の前に立つ。

 そして、老婆が触れた箇所を撫でた。

 

『何だ……これは?』

 

 墓石には”何かの魔法”が込められていた。

 魔法といっても、この構築式では魔法を起動させることはできないだろう。

 はっきり言って、未完成な構築式だ……あるいは、意図的に完成させてないのか。

 

『相変わらず。温かい魔力だな』

 

 太陽のような温もりを放つ魔力を感じ取りながら、俺は呆然と立ち尽くす。

 

 それが、俺がじゃじゃ馬を見た最後だった。

 

 

 

 

 

 

 

【それから千年後】

 

 せっかくの誕生日パーティーを抜け出した俺は、都市の中心にある大きな噴水の縁に腰掛けた。

 まだ秋頃だというのに、吐いた息が真っ白になる。

 さすがに北側諸国の夜は寒い。

 

「フェルンもいないし、ここでやってみようかな」

 

 俺は女神の視界に掛けた映像通信を切った。

 この距離であの魔法を使うのはさすがに疲れる。

 そろそろフェルンも怒り疲れてきた頃だろう……俺は心の中でザインに敬礼した。

 

 紙巻きたばこの缶ケースを開けて、マーベリットを真似て巻いてみるが、上手くいかなかった。

 慣れていないせいもあるが、この寒さで手がかじかんでいるらしい。

 

「貸せ。儂が代わりにやろう」

 

 年老いた男が俺の隣に腰掛け、勝手に缶を引ったくる。

 俺は隣に座った老人を睨め付けた。

 

「孫が心配で見張っていたのか?デンケンのクソ坊主」

 

 俺はすっかり年老いてしまったデンケンを見下ろす。

 青年の頃は俺と並ぶくらいの背丈だったが、加齢で縮んだせいで再び俺が見下ろす形になった。

 子供の頃の小生意気さを思い出し、無性に腹が立ってくる。

 

「ほれ、一本できたぞ」

 

 あっという間に一本作り終えたデンケンは、それを俺に手渡した。

 俺は手に持ったタバコを睨んだまま固まった。

 

「……これって、どうやってやるもんなんだ?」

「何だ、タバコは喫まんのか」

「お前の義父殿に誘われたこともあったが、レクテューレ先輩に副流煙を撒き散らす危険性があったから断った」

 

 タバコと睨み合っている俺を見て、デンケンはもう一本のタバコを手早く巻いた。

 そして、マッチを擦ってタバコに火を灯し、それを吸い上げる。

 

「ふむ、良いキック感だ。これを用意したやつは玄人だな、悪くない」

「そりゃどうも。作った本人も喜ぶ」

 

 俺もデンケンを真似て、マッチを借りてタバコに火を灯し……吸い込む。

 喉や肺に煙が充満するような、微かな感覚を感じる。

 俺は息を吐いた……さっきの吐息とはまた別の白さの煙が立ち上る。

 

「うーん。よくわからん……別に美味くもないし、煙いだけだなこれは」

「まあ、吸い始めはそんなものだろう」

 

 隣で煙を吹かすデンケンは、何だか美味そうに味わっていた。

 歳の割には呼吸器官が丈夫そうだ。

 

「マーベリット、1級魔法使い選抜試験を受けるらしいな……お前ならともかく、大丈夫なのか?」

 

 受験生の名簿にマーベリットの名前を見つけた時、驚きのあまり俺は吐血しかけた。

 

 大陸魔法協会と帝国の魔法組織は大魔法使いフランメの働きかけで誕生した、いわば姉妹組織だ。

 だが、ある理由から両者は長い間対立している。

 俺は内政云々は興味がないので、どうしてそうなったのかはよく知らない。

 

 マーベリットは魔導特務隊という特務機関に属している。

 大陸魔法協会としては、敵の狗が知らん顔して受験しにきたようなものだ。

 だが、ゼーリエはどういうわけかマーベリットの受験資格を取り上げなかった。

 

「宮廷魔法使いという権力があるお前ならまだしも、マーベリットは地位もない軍属だ。試験に受かったとして、帝国には帰りにくいだろう」

「……辞めたそうだ」

「はっ?」

 

 俺は壊れたブリキ人形のように、デンケンに顔を向ける。

 デンケンも、珍しく項垂れていた。

 

「上司の隊長フラーゼに辞表を叩きつけて来たそうだ……おかげでフラーゼから嫌味ったらしい手紙を送られた」

「えぇ……まじかぁ」

 

 仮にも現役の軍人なのだから、そう簡単に辞められるものではないはずだ。

 おそらく、その辞表を受理させるためにデンケンも色々と手を回したのだろう。

 横顔に疲労の色が見える。

 

「まあ、何だ。お前のやることに手を貸すつもりなんだろう。相変わらず爺ちゃん子だな……娘とは大違いだ」

「娘の話はするな。それに儂は別に嫌われてはいない」

 

 デンケンは孫にはえらく懐かれているが、娘とは微妙な関係が続いている。

 仕事関係で長く家を留守にすることが多く、それが災いして娘とは疎遠になっていった。

 母親思いの娘に成長したが、父親であるデンケンに対しては未だに当たりがきついらしい。

 

 そういう経緯もあって、娘は子供に俺とマハトの名前から取ったマーベリットという名前をデンケンへの当てつけも込めて付けたのだ……この話にはマハトもドン引きしてたな。

 

「結婚する時も、お前と大喧嘩してたな。それを先輩と眺めながら優雅に茶を飲んだっけ」

「……今更だが、お前は他人の私生活に入り込み過ぎてやしないか?」

 

 そうは言っても、俺と先輩は永遠の師弟関係だ。

 先輩が亡くなるまでは何度もあの家に顔を出していた。

 葬儀に出席してからは久しくあの家には訪れていない。

 

 ポスッ。

 

 懐かしい思い出に浸っていると、膝の上に何かが置かれた。

 視線を下ろすと、何やら見たことのない本だ……装丁からして、恋愛小説だろう。

 

 俺はそれを置いた張本人を睨め付ける。

 

「マーベリットか?それともレルネンから訊いたのか?お前まで誕生日プレゼントとか言うなよ」

「儂じゃない――レクテューレからだ」

 

 予想外の名前に、俺は咥えていたタバコを落としかける。

 タバコを手に持ち替え、デンケンを見た。

 懐かしそうに、そして穏やかに微笑んでいる。

 

「子供の頃から、レクテューレはよく小説家になるんだと息巻いていた。たくさんの本を書いて、お前に読ませるんだとな」

「なぜ、俺に?」

「退屈させないためだと言っていた。魔族の一生は長いからな……だが、思うように書けずに何度も筆を折ったらしい。結局、あれだけ息巻いておきながら、完成したのはそれ一冊だった」

 

 知らなかった。

 俺と顔を合わせていた先輩はいつも天真爛漫で、それこそ悩みなんてなさそうな笑顔を湛えている人だった。

 だが、思い返せばよく利き手を隠すように握っていた。

 きっと、ペンだこを隠すための仕草だったのだろう。

 

 俺は先輩と違って筆はかなり早い方だ。

 それでも、1つの文章を書くためにどれだけの苦労があったかは理解できる。

 丁寧に装丁された表紙が、この一冊にどれだけの想いを込めたのかを物語っていた。

 

「儂はな。今でもお前とマハトを師として尊敬しているが、けして許してはいない。儂と妻から故郷を奪っただけでなく、義父からも娘の死に目に会う機会を奪った……妻がどう思おうが、それだけは変えられない。お前たちは魔族だ」

 

 穏やかな顔から一変して、デンケンは強い怒りを発していた。

 堅く握り拳を作り、ぎゅっと音を立てる。

 

 俺はマハトの起こした件に関与はしていないが、それを事前に知っていたからには同罪だろう。

 俺は、マハトの行為を肯定したのだ。

 それに対して怒りを向けるこいつの姿は、不思議と嫌いではない。

 

「お前がこれから何を成すのか、そんなものに興味はない。だが、どうか……レクテューレが信じたお前を最後まで貫いてくれ」

「……」

 

 俺はそれに対してすぐには言葉が出なかった。

 先輩が俺の何を信じたのか、それは先輩にしか分からない。

 だから、たとえその場限りの約束とはいえ、確約はできなかった。

 ある意味、その沈黙こそが答えだ。

 

 デンケンはその沈黙を受け止めて立ち上がる。

 背を向けて、どこかへ行こうとしていた。

 俺はその小さくなった背中に声を掛ける。

 

「なあ、デンケン。たまには一緒に酒でも飲まないか?」

「……どういうつもりだ?」

「別に、ただ一緒に酒を付き合ってくれる相手が欲しかっただけだ」

「……」

 

 デンケンは振り返ることなく、その場を去っていった。

 その態度に、憎たらしい坊主の姿を幻視する。

 まあ、ここにしばらく滞在するなら、どこかの酒場で顔を合わせることもあるだろう。

 

「酒なら私が付き合ってやろうか?」

「やめろ。なぜ仕事以外で上司と顔をつき合わせて酒を飲まなきゃならんのだ」

 

 突如、前触れもなく隣に現れたゼーリエに対して俺は悪態をついた。

 どうせ初対面の時に使った瞬間移動の魔法だろう。

 相変わらず心臓に悪い女だ。

 

「タバコか。お前にしては珍しいな……一本よこせ」

「……お前、タバコ平気だっけ?」

「長い人生だ。何度か嗜んだことはあるさ。むふー」

 

 どこぞクソボケエルフを連想させるドヤ顔を浮かべている。

 俺は試しに喫いかけの短くなったタバコを手渡した。

 

 ゼーリエはそれに口をつけて深く吸い込み――盛大にむせる。

 

「げほっ!ごほっ!まずっ……何で人間はこんなものを好んで吸うんだ?」

「さあな。元々は悪霊除けの魔法薬だったとは思うが、いつの間にか嗜好品になっていたし……多分、刺激物に飢えてるんだろう」

 

 俺はおこちゃまなゼーリエからタバコを取り上げ、再び吸った。

 むせはしないが、やはりその良さは分からない。

 キック感と言われても、ほとんど感じるものがないのだから。

 

「で、何の用だ?」

「けほっ……何って、今日が誕生日なんだろう」

 

 予想通りの言葉に俺はげんなりする。

 ようやく煩わしい誕生日が終わろうとしているのに、最後に上司に祝われるなんて……。

 

「お前もかぁ……魔法でもくれるのか?」

「お前には必要ないだろう。それに、特権授与の時にもう渡したはずだ。交換するなら別に構わんが」

「ならいいや」

 

 俺の言葉にゼーリエはつまらなそうにしている。

 たしか、特権授与式の場でも……。

 

『正気かお前?』

『いいから寄越せ』

『( =ω= )』

 

 俺が”望んだ魔法”が、よほど気に入らなかったらしい。

 これでも一番希望の魔法がダメだというので、仕方がなく妥協して選んだというのに。

 

「で、結局プレゼントはなんだ?俺は今、最高のプレゼントをもらって最高の気分なんだ。生半可なものじゃ満足しないぞ」

「なぜ受け取る側がそんなに偉そうなんだ……まあ、安心しろ。私のプレゼントは今日の贈り物の中でも一番だろうからな」

 

 ゼーリエはえらく自信ありげな表情を浮かべていた。

 俺は特に期待もしなかったが、逆に変なものが渡される心配もなかった。

 これでも互いに半世紀近い付き合いになるのだ。

 

 中途半端な期待感で俺が待っていると、ゼーリエはそれを口にした。

 

 

「あいつの命日なんだろう?私の魔法で送って行ってやる。超特急便だ」

 

 

 予想外の言葉に、俺は開いた口が塞がらなかった。

 こぼれ落ちたタバコを、魔力の触腕でキャッチする。

 そして、遅れて俺は苦笑をこぼした。

 

「あんた……最悪だけど、最高の上司だよ。本当に」

「ほめ言葉か、貶してるのか分からんな」

「ははっ」

 

 ゼーリエが伸ばした手を握ると、辺りの景色が一瞬で変わる。

 空を見上げると、今のオイサーストの星の位置とは大きな誤差があった。

 この一瞬で、ゼーリエは目的地のすぐ近くまで転移したらしい。

 大昔から見慣れた山の景色が懐かしく思えてくる。

 

「だいたいこの辺りだと思うが、場所はわかるか?」

「500年もいたんだ。木が生え変わっていても、さすがに間違えはしない」

 

 俺は辺りを見渡しながら、先頭に立って目的地に誘導する。

 だが、すぐに振り返ってゼーリエを見た。

 よく見ればいつものように薄着だし、足はサンダルだ。

 持ち前の魔法で寒さは平気かもしれないが、ここは完全な獣道だ……傷でも負わせたらレルネンたちに叱られる。

 

 さすがに靴なんて持ち合わせていないので、俺は外套を脱いでゼーリエに着せた。

 すると、外套はゼーリエの背丈に合うように縮んでいく。

 

「驚いた……いつもボロボロの外套を羽織っていると思ったら魔導具か」

「俺が初めて直属の上司に会った時に貰ったんだよ。俺が魔力で編む服じゃ見栄えが悪いって……まあ、なんだかんだ重宝しているが」

 

 旧友シュラハトと同じデザインの外套だ。

 ソリテールからもうボロボロだから捨てろと言われたが、記念の品なので未だに着ている。

 

「お前は外套といい、女神の視界といい、珍しいものを持ってるな。私の弟子もあの手鏡と同じものを持ってたよ」

「へえ、そりゃあ奇遇だな。でもな、あれは一点物(オリジナル)だぞ」

「そうだな。喧嘩別れをした相手を探すって賢者エーヴィヒの墓所に忍び込んで手に入れたらしい。だが、結局見つけても中々会いにはいかなかった……人間には時間が限られているというのにな」

 

 何やら重大な犯罪の片棒を背負わされた気がしたが、俺は無視した。

 前の持ち主がどうしたか知らんが、今は俺が持ち主だ。

 

 あの女神の視界は正真正銘の本物だ。

 世に二つと無い珍品ということで、俺はレプリカだと吹聴している。

 オリジナルだと知れたら魔族でも欲しがるやつは山ほどいる……面倒なものを譲り受けたものだ。

 

「ん、着いたぞ」

 

 そうこう話をしている内に、俺たちは目的地についた。

 周囲には強力な結界が何重にも張られている。

 俺はそれを解除して、昔の生活拠点にゼーリエを招き入れた。

 

 そこには朽ちた小屋の残骸と、石の墓しかない。

 さすがに保存機能を備えた結界でも、木ではこの長い年月に耐えられなかったらしい。

 だが、石ならばまだ風化せずに残っている。

 

「去年は来れなくて悪かったな――”フライハイト”」

 

 俺は育ての親の名を呼ぶ。

 その名前の懐かしさに、ゼーリエもふんと鼻を鳴らした。

 今やこの名を知っているのは、一部の宗教の歴史家たちと、俺たち二人だけだ。

 

「今日は色々なことがあったんだ。土産話にたくさん訊いてくれ」

 

 俺は墓石を撫でながら、未だに残ったじゃじゃ馬の魔力を感じて微笑む。

 本当に、今日は最高の誕生日だった。




【第二期放送記念・1話同時視聴会】

リーベ「さあ始まりました!フリーレン2期……一体どんな素晴らしいあはれを見せてくれるのか期待です!!」
アウラ「うっさ。何で私の出番がない2期なんて見なきゃならないのよ」
ソリテール「そうね。まあ、私たちはあるかもしれないけど」
マハト「やるにしても2クール目だろうな」
リヴァーレ「出番がある奴らいいなぁ」
トート「私らの出番は3期かぁ……何年後になるのかな?」
リーベ「シャラップ!もう放送時間ですよ!!」
一同「……」

【OPが流れる】

リーベ「ヒ”ン”メ”ル”が映ったああああああ!!!」
一同「うっさ」

【封魔鉱】

リーベ「おっ、ザオム湿原だ。俺もここで封魔鉱拾ったなぁ」
トート「リベちゃんの指輪に嵌められている石だね」
ソリ、アウ『……』
リヴァーレ「あの鉱石硬いんだよなぁ……あ、落ちた」
リーベ「あっ!またヒ”ン”メ”ル”が映ったああああああ!!!」
一同「うっさ」
リーベ「え!?お姫様だっこ!?お米様抱っこまで!?」

ヒンメル『ハイターは酒くさいってさ!』

リーベ「あ”あああああ!!その誰にも触れせたくない独占欲!!解釈一ぃ!!!」
ソリテール「ふんっ!」
リーベ「ぐえー!?」

【二人の喧嘩】

リーベ「うぅ……少年少女の思春期特有の距離感がいい」
マハト「血反吐を吐きながら喜んでいる……」
アウラ「ん、何この犬を蹴って遊びそうな男は?」
トート「リベちゃん的にはこういう男同士の絡みってどうなの?」
リーベ「興味ないね。でもヴィアエレは好きです」

【ブレスレットのシーン】

リーベ「あ”あああああ!何だよこの補完シーン!製作陣は神か!?」
トート「これこそ、もう付き合っちゃえよって感じだよね」

【EDが流れる】

リーベ「またヒ”ン”メ”ル”が映ったああああああ!!!」
一同「うっさ」
アウラ「え、何この作画?もしかして色鉛筆で描いてる?」
リヴァーレ「へぇ、そりゃ余計に手間が掛かるだろうな。でもアナログって味があるからいいよな」
リーベ「ちなみにアニメーション作家が1人で描き上げたらしいぞ」
アウ、リヴァ「えっ、何その狂気」

【次回予告】

リーベ「次回予告はいつものだな……ん、この声は?」
マハト「聞き覚えが……」
アウラ「まさか……」

フリーレン『南の勇者だよ』

三人「うわああああああ!!!!」(トラウマ発症)


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