幼馴染の曇った顔を見たい俺は物語の終盤で仲間達を裏切りたい!   作:一般通過曇らせスキー

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第1話:曇らせこそがファンタジー

 ――曇らせとは浪漫でありファンタジーである。

 それが、俺の生涯の結論であり尤も純粋な性癖だ。

 きっかけは、何だったかは分からない。

 ただ気付いたときには好きになっていた事だけは覚えており、ずっとある想いとしては可愛いキャラの泣き顔が見てぇなとかそんなもん。

 

 だって、あれじゃん? 

 普段強気でリーダーシップがあって、仲間想いのキャラが曇った瞬間とかさ、もうやばいじゃん。感情のジェットコースターというか、ずっとそのキャラを見ていたからこそ起こる感情移入と絶望度で脳が破壊される快感というか……。

 

 でも、一つだけ言っておく。

 俺は曇らせが好きなのであって、バッドエンドは好きではないのだ。

 後味が悪いと最悪だし、救われない展開とかは曇らせではない。だって、言葉としては曇るってことな訳で、晴れなければ意味がないからだ。

 

 だからここで断言しよう、俺の性癖は曇らせだ。だけどその先のハッピーエンドが見たいというそれが根本の癖であると。

 それは間違いないし今後一生輪廻の果てでも変わらないと言える。だって今が丁度というか転生(・・)して前世の記憶がある状態だし。

 故に思う、俺はこの世界で欲望のままに生きたい。

 せっかく二度目の人生だ。望んで止まない理想の曇らせ顔を見るために、俺は人生を使おう。

 

――――――

――――

――

 

 晴天の下で俺は、幼馴染と一緒に剣を振っていた。

 横にいるのは白い髪に碧眼をした少年であり、この世界の主人公だ。

 そんな奴と一緒にいる理由は勿論修行であり、来たる日というか夢と願望(曇らせ顔)のためである。

 

「ねぇシド……なんで今日もボクの修行に付き合ってくれるの?」

 

 今日の修行を始めて約三十分が経ち急にそんな事を聞いてきた幼馴染……その顔は真剣そのもので、普段活発に笑う彼からは想像出来ない声音だった。

 

「え、なんだよアル? お前と一緒にいたいからだけど……他になんかあるのか?」

 

 俺の幼馴染は、転生した世界の主人公である。

 つまりはこの先の困難を乗り越える存在であり、俺の願望を叶える上で最も適した男なのだ。関係性至上主義の俺はせっかくそんな奴の幼馴染というポジションに転生したんだから一時も離れたくないんだ。

 

「そっか……君はそう言うよね。急にごめんね、なんでもないや」

「なんでもない、じゃないだろ? なんか誰かに変なこと言われたのか?」

 

 それから剣を振り直そうとする彼を見て、俺は気になったからそう聞いた。

 普段は明るくて曇ることを知らない彼が、こんな風に思い詰めた顔で何かを聞くなんて有り得ないと思ったからだ。

 というか俺が知ってるゲームのアルならこんなことで悩まないんだが、まじで深刻なことを言われたのかもしれない。

 

「……えっとね、僕が君に釣り合ってないって言われたんだ」

「――へ? なんでだよ」

 

 アルは、この世界の主人公であり俺が転生した世界の英雄となる男だ。

 それが俺と釣り合ってない? え、まじで何言われてるんだよ? 大丈夫、そいつ目腐ってない? というかめっちゃムカつくんだけど。

 

 だってあれだぞ、こいつの未来を知っている俺はその成長性の高さを知っている。だからこそ魔法を覚えて毎日鍛え必死に置いてかれないようにしてるのに、人の努力をなんだと思ってるんだそんな事を言った馬鹿は。

 そもそも、ゲームのアルってこんな弱気な奴だったった?

 

「シドは魔法もいっぱい使えて、剣も上手くて村の皆に頼りにされてるでしょ? そんな人気者の君と、ボクだと釣り合ってないんだってさ」

「そんな事で悩んでたのかよ、馬鹿だなアルは。俺は俺の意思でお前と一緒にいるんだよ、だから他の奴の言葉なんて気にすんな」

 

 それにあれだ。

 何より言った奴が馬鹿すぎる。アルにはいいところがいっぱいあるのに、それを見ずに言うなんてさ。

 

「でも……ボクもそう思っちゃうし」

 

 なんてことだ。

 まさかそんな事で弱気になるなんて、マジで許さないぞふざけたこと言った奴。此奴を曇らせていいのは俺だけなんだ。その役目をとられてたまるか!

 

「分かった。それならあれだアル。今からお前の凄いとこをめっちゃ言って褒める。だから自信を持て」

「え、何言う気なの?」

「座して聞け。まず凄い優しい、いつも無茶する俺の手当てしてくれるし、料理が美味い、それに英雄譚めっちゃ知ってて読み聞かせが得意」

「ま、待ってよ――恥ずかしいんだけど!?」

「俺に吐露した自分を恨め、あとはそうだな――ぐふっ、いい拳だぞアル」

 

 続けようとしたところで腹に突き刺さる鋭利な拳。

 鍛えている故に重いそれは、俺のみぞおちを的確に射貫き地に伏せさせるのに十分だった。

 

「分かったからやめてよシド! あーもう聞くんじゃなかった」

「ふはは、それを糧に強くなるんだぞ」

「ほんと君って馬鹿だよね、ほら修行続けるよ。今日こそ一本取るからね!」

「望むところだ、簡単に勝てると思わないことだな!」

 

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