幼馴染の曇った顔を見たい俺は物語の終盤で仲間達を裏切りたい!   作:一般通過曇らせスキー

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第2話:曇らせ道は一歩ずつ

 俺がやっていたゲームの世界に転生したと気付いたのは、それこそアルと出会った時だった。なんで異世界にいるんだよとか、いつ死んだの俺ぇ――という思いを抱えながらも七歳まで適当に生きてた中で、あいつに出会いこの世界を知ったのだ。

 

 前世の記憶でほぼ残ってるのは曇らせ願望のみで、それをいつか見たいなと思ってただけの日々……どう考えても娯楽が少なく命が軽いこの世界で、一目であいつが主人公だと理解した。本能? とも呼べる様な感覚だったが、こいつが軸だって……。

 

 その時の感情は、今も複雑だけど……覚えている事がある。

 それは……こいつの曇った顔が見たいなというだいぶだが、変な物。

 流石に自分の癖があまり受け入れられないのも知っているし、それこそ吹聴するものでもないのは分かってるが、ただ純粋にそう思えたんだ。

 

 あいつと出会って、関わってから少しだけど思い出して、日に日に増える記録で……あいつに待ち受けている過酷な運命を理解して。

 アルは優しい奴である。虫も殺せないし、冒険なんて知らないただの一般人。ファンタジー世界だけど、きっかけがなければ旅になんて出ないような人畜無害な善人。

 

 この先には悲劇が沢山だ。

 彼は沢山のものを失って、その度に出会って傷付いて、それでも前に進んで世界を救う英雄。

 だから、俺はそんな英雄の隣でその曇り顔を堪能したいと思ったんだ。

 最大の絶望は俺でありたい、だからこそ俺はあいつの親友になれるように頑張っている。あいつが強くなるのを知っているから、その隣でどこまでも前に進める。

 だから俺は、願うんだ。

 この先の未来で、どうかあいつが折れずに最後まで戦えますようにと。

 

――――――

――――

――

 

 森の中を一人で駆けていた。

 片手には魔石が埋め込まれた日本刀擬き。魔法の触媒にもなるそれを構えながらも俺は、巨大な猪の後を追っていく。

 

「……漸く見つけたぞ魔猪(まちょ)野郎、今日の牡丹鍋のために肉置いてけ!」

 

 ここ数日村の農作物が何者かに奪われるという事件が発生し、村人の証言からその犯人が魔物化した猪であることが分かり、俺はそれを狩りに来ていた。

 幸い人死にはないが、放置すれば何が起こるか分からないので迅速に対処する必要があったのだ。

 

 氷の刃を飛ばしながらも牽制し、俺は相手の足止めをする。

 攻撃を続けて五分ほどで、相手は苛立ったのか俺へと突進の矛先を変え、数本の木々を破壊しながらこっちに迫ってきた。

 

「――はっ、それを待ってたぞ!」

 

 ほぼ徹夜でこいつを追っていたせいか、ハイになったテンション。

 いつもより口調が荒くなってる気がしなくもないが、それを気にしてる余裕もないので、居合いの要領で刀を鞘に収めて――鞘の中で焔を溜めてそのまま抜刀した。

 

「【焔刀(えんとう)――居灼(いしゃく)】」

 

 俺の必殺の一つ。

 炎属性の魔法に居合いを乗せたその一撃は、魔猪の体を両断して……そのまま命を絶った。

 

「……いただきます」

 

 最後に少し黙祷と感謝を告げる。

 この世界ではない文化だが、それは元日本人として大切にしたい在り方だからだ。

 そして、俺は身体強化の魔法を使って持ってきていた袋に魔猪の体をしまい、そのまま森を後にする。

 

「アルー帰ったぞー!」

「あ、シド! 大丈夫、怪我してない?」

「多分? 攻撃も受けてないし大丈夫だと思うぞ」

 

 ひとまず帰るのは住んでる村のアルの家。

 一人暮らしの俺の家の隣にあるし、料理が得意な彼に任せれば多分美味しい猪鍋が出来るだろう。

 

「ってでっかいね、その魔猪……これ村人分賄えるんじゃない?」

「多分な、両断したとは言え元は四メートルぐらいあるし……」

「ならボクは村の皆に伝えてくるね。あ、そうだエリシアさんの看病頼んでいい?」

「ん、了解……今日が元気か?」

「うーん、一日シドが来なかったからちょっと不満気味かな?」

「え、想像つかないんだけど」

 

 そんな会話をしながらも、俺はアルの家に入り一室を訪ねる。

 そこには普段と同じでベッドに横たわる白髪に蒼い瞳のとても綺麗な女性。

 性格を知らなければそれこそ貴族の令嬢のような雰囲気を持っているが、その実態は超スパルタな俺の魔法の師匠であるエリシアという人である。

 

「遅い、何していた?」

「え、いや……狩りに行ってただけですけど」

「そうか、怪我はないか?」

「アルにも聞かれたけど多分大丈夫です?」

「…………お前、また変な魔法試したな? 魔力回路に無茶した痕があるぞ」

「……確かに師匠に隠れて必殺技的なの開発しましたけど、そんなにですか?」

 

 ジト目で頷かれる。

 そして、溜息をつかれ……彼女は来い来いと手招きをしてくる。

 とりあえず近づけという事らしいので近づいてみれば……食らうのはデコピン。

 無駄な威力を持ったそれを受けヒリヒリとした痛みを感じながらも、俺は彼女を睨み付ける。

 

「痛いです」

「無茶した罰だ。そもそも何勝手に魔法を作っている?」

「なんかいけるかなーって」

「馬鹿か、せめて私に見せてから試せ」

「おっしゃるとおりです、すいません」

 

 くどくどと説教を食らう。

 だけど、それは俺を案じているものと分かっているから反論できない。

 それから気まずさ故に喋れなかったが、俺が口を開く前に彼女がこう言ってきた。

 

「明日時間をとるから、魔法を見せろ。それで安全性を見てやろう」

「助かります……あ、そうだ。今日狩った猪で鍋するんですけど食べます?」

「鍋か、確かに冷えるからな……それもアルの料理だろう? 食べないわけがない」

 

 柔らかくなった表情に少し安堵して……俺達はアルが帰ってくるまで時間を過ごして、村の皆の元に行き鍋を囲んだのであった。

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