ポケットモンスターSpecial Frontier   作:400円

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キョウがどんどん残酷なやべーやつになってますが、別に嫌いではないです。


狩猟 その②

 

 メタちゃんの陽動が上手くいっているのか、道中でロケット団を見る機会は目に見えて減り、コレと言った妨害もなくイワヤマトンネルを進んでゆくアズールとブルー。

 視線の先に微かに陽の光が見えてきたかといったところで、二人を待ち構える男がいた。

 

「フフフ……」

「…お前は、お月見山で……」

「覚えていたか。フフ、光栄の極みだな」

 

 思ってもいない事を口にする男にあからさまに顔を顰めながら、周囲を警戒するアズール。

 お月見山で対峙したリオレウスを操っていた男はその様子を見て高らかに笑うと、「案ずるな」と一言告げる。

 

「ここに部下は(・・・)いない」

「……部下じゃないのはいるって?」

「ハハハ、本来ならばそうだが、それも違う。ここにいるのは正真正銘、この俺一人だ」

 

 それでも尚警戒を解かず、伏兵に警戒を続ける二人。

 埒が明かないと判断したのか、男は自身の手持ちポケモンが入っているであろうボールを地面に置き、戦う意思はないと両手を上に上げる。

 

「これでどうだ?」

「何が狙いだ」

「フッ、いや何、今回は礼を言いに来ただけさ」

「礼だって?」

「ああ。礼さ。お前達は知らないだろうが、我らロケット団の団員は非常に多くてな。それだけ数が多いと当然、優劣の差はつく。仕事のできるヤツとそうでないヤツ。できないヤツは当然いらないが……下手に生きて帰せば我々の情報を吐き出すかもしれないし、かといって処理をしたところで後始末に困るのも確か」

「……何を言っている?」

 

 唐突な組織語りに意図を掴めずにいるアズールに男は赤い笛を見せびらかしながら、気味の悪い笑みを浮かべ、真相(・・)を話し出した。

 

赤き竜は人も喰らうのだろう(・・・・・・・・・・・・・)?」

「………まさかッ!!」

「…あっ!メタちゃん!」

 

 男の仕出かした最悪の顛末がアズールの頭に過ぎり、それを証明するかのようにひどく怯えたメタちゃんがブルーの胸に飛び込む。

 見るからに身体をプルプルと震えさせるメタちゃんにただならぬ事態を感じたブルーは男に睨みを利かせながら「何をしたの」と男に問いただすと、男は再び高らかに笑う。

 

「お前……やりやがったな!!」

「さあ何のことやら?俺はただ腹をすかせていた赤き竜に使えない部下ども(新鮮な肉)をやっただけだが?」

「…!!……最ッ低!」

 

 もしかしてと考えていたブルーも何が起こったのかを理解し、男に軽蔑の意志を見せるも、男は「褒め言葉として受け取っておく」と全く効いていない様子で笑い飛ばす。

 

「さて、俺も暇ではない。やる事があるので失礼させてもらう」

「逃がすわけないだろ……!」

「ハッハッハ、もしかしてだが…捕まえる気か?ならば……もう少し早く手を打っておくべきだったな!!」

 

 男が指を鳴らすと、地面に転がっていたボールから煙が噴き出し、瞬く間に視界が白い煙で覆われる。 

 分断や誘拐を警戒したアズールは咄嗟にブルーの腕を掴み、引き寄せると煙の中から男の声が響いた。

 

「俺の名はキョウ。また会おう、異邦の狩人(・・・・・)よ!」

「待てッ!!」

 

 笑い声と共に煙が晴れると、役目を果たした空のボールがそこかしこに転がっているだけ。

 キョウは既に撤退済みである事実に「屑が…!!」と悪態をつくアズール。

 

「どうするの!?」

「……生存者がいるかも知れない。僕は急いで戻るが…キミは」

「アタシも行く。黙って見過ごせるもんですか!」

「……わかった。くれぐれも僕から離れないように」

 

 そうして来た道を折り返し、リオレウスがいるであろう場所まで二人は全速力で駆けぬけるのであった。

 

 

 ────時は少し戻り。

 

 

 まだメタちゃんがアズールの姿に変身した状態でロケット団達相手に逃走劇を披露していた頃に戻る。

 見た目はアズールといえども中身はポケモン。人では出来っこないような軽やかな足取りでロケット団員達をおちょくりつつも、決して捕まらない様にすばしっこく逃げ回っていた。

 

「あのガキ……!俺等をおちょくりやがって!!」

 

 団員の一人が忌々しそうに言い放ちながら追いかける。

 他の団員たちも同じく、逃げ回るアズールもどきに焦燥感に駆られていた。

 捕まえたら一発殴ってやらなきゃ気がすまない。団員達はみなその信念を胸に捕獲しようと躍起になる。

 しかしメタちゃんはそれに応える義理はないと言わんばかりに捕獲のてを避けていき、それに伴いじわじわと団員の数が増えていった。

 やがてイワヤマトンネルで捜索していた殆どの団員がメタちゃんを取り囲むと、やっと痛い目にあわせる事が出来る喜びで皆が邪悪な笑顔を浮かべながら、じわじわとメタちゃんを追い詰める。

 

「覚悟しやがれ、クソガキが」

 

 そう言い、団員の一人が拳を振りかぶった瞬間、その団員は地面に赤い花を咲かせながら突っ伏していた。

 その赤い花を強靭な脚で踏みつぶしながら、喉を鳴らしメタちゃんに威嚇するのは、リオレウスだった。

 

「あ、あれは……赤き竜!?」

「クソッ、彼奴をやりやがったのか!?」

 

 邪悪な笑顔から一変して驚愕、焦り、恐怖と三者三様の表情を各々見せるロケット団員。それが耳障りと判断したのか、リオレウスはメタちゃんではなく周囲のロケット団員達に矛先を変え、咆哮を轟かせた。

 

「う、うわぁあぁぁっ!!?」

「暴走しているのか!?皆逃げろッ!!ヤツは敵う相手じゃ」

 

 ない。と言い切る前に頭からかぶりつくリオレウス。

 おもちゃで遊ぶ猫のようにソレを乱暴に放り投げると、思い切り壁に激突した団員はピクリとも動かなくなった。

 自分たちを殺しに来ている。そう確信した団員達は立ちすくみ、勇気を振り絞って逃げようとした団員は火球で焼かれたり、尾で弾き飛ばされたりとリオレウスから容赦のない致死レベルの攻撃を浴びせられる。

 

 一人、また一人と赤い花を咲かせてゆく光景に恐怖を感じたメタちゃんは変身を解いてブルーのもとへと一目散に逃げてゆく。

 背後からは助けを求める声や、叫び声が反響し、暫くするとその反響も聴こえなくなってしまった。

 

 

 ────

 

 

 時は戻り、その現場へと全力疾走する二人。

 近づく度に血なまぐさい臭いが強くなっていき、慣れていないブルーの顔色がどんどん悪くなってゆく。

 それに気付いたアズールは立ち止まり、ブルーに懐から取り出した丸薬を手渡す。

 

「……これって?」

「僕の出身では"秘薬"と呼ばれている。臭いに慣れていないんだろう?飲めば少しは気分が楽になる筈だ」

「…ありがと」

 

 手渡された秘薬を口にし、その場で少しだけ休憩をする二人。

 秘薬のおかげもあってすぐにブルーの顔色が回復すると、再び走り出す。

 やがて臭いが一番濃い場所に着くと、ブルーを手で制して先に進むの前にアズールが壁越しに覗き込む。

 

「リザード!切り裂く!!」

 

 其処にはリオレウスと交戦をするグリーンと彼の相棒が。

 周りの惨状に顔を顰めつつ、被害者であるロケット団員に対しては自業自得と哀れみの感想しかグリーンは抱かなかった。

 しかし、コレが街に出た時の被害は計り知れないと判断した以上見過ごすわけにもいかなかった彼は、リオレウスを倒すのではなく、消耗させることを目的に戦闘を仕掛けていた。

 

「行くしかない…!ブルー、キミはここにいるんだ」

「えっ!?でも!」

「この臭い、わかるだろ?もう彼奴は化け物(・・・)だ。油断すれば殺される。リオレウスとの交戦経験もないキミに任せるわけには「なら、一番の安全地帯である貴方の傍にいればいいわね!」何いってんだキミ!?」

「大丈夫、邪魔にならないし……アタシもけっこー強いのよ?」

 

 ブルーの根拠のない自信に無理矢理にでも止めたかったアズールだったが、そうこうしている内にもグリーンと彼のポケモンは消耗されていくことを危惧していたアズールは半ばやけくそ気味に「僕から離れるなよ!!」と言って交戦地点へと躍り出る。

 

「グリーン君!手を貸す!」

「アンタは……足を引っ張るなよ!」

「分かっている!」

「アタシもやっちゃうんだから!」

 

 現れた援軍にほんの少し口を緩め、共同戦線を張る三人。

 アズール(見覚えのある顔)が視界に入ったリオレウスはまとめて相手してやるとでも言いたげに咆哮を轟かせる。

 それこそが、交戦の火蓋が切って落とされた瞬間であった。

 

 

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