ポケットモンスターSpecial Frontier   作:400円

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時間軸的には今レッドはマチスと一戦交えてる頃です。


狩猟 その③

 

 先制を制したのはグリーンの相棒、リザード。

 自慢の鋭く尖った爪がリオレウスの胴体を切り裂かんと肉薄するも、リオレウスの硬い甲殻はものともせず、ガキン!という金属音と共にリザードは大きく仰け反る。

 その隙を逃さず、リオレウスは間合いを詰めて噛み付きにかかるも側面からの強力な放水で未遂に終わる。

 

「おい!俺のリザードまで倒す気か!?」

「助けてあげたのよ、お礼はいらないわ♪」

(今の放水……あの亀からか!)

 

 反省の色を見せないブルーに舌打ちを溢し、再びリオレウスに集中するグリーン。

 ブルーの傍らには亀のポケモンが隙を見つけては高圧力の水を放出しつつ、リザードの攻撃が開始される頃には攻撃の手を止め、リザードが離脱するとまた攻撃を開始するという即席で組んだとは思えない連携を見せる。

 

「アズールさん。リオレウスの弱点は?」

「雷……こっちでいう電気タイプの技が効く!」

「えっ、水タイプじゃないの!?」

「あんまり効かない!」

「と言うことは……ドラゴンタイプもあるということか」

 

 察しのいいグリーンに鋭いなと感心しつつも、リオレウスの迫りくる火球を前転ですり抜け、次の攻撃に備える。

 負けじとスターミーを繰り出し、先程の図鑑で目に止まっていたリオレウスに有効打になりうる技「10まんボルト」を指示すると、スターミーの中央の宝石から強烈な電撃がリオレウスめがけてほとばしる。

 電撃の効果があったのか、まともに浴びたリオレウスの動きが鈍くなり、今度こそとリザードの鋭利な爪がリオレウスの翼爪を斬り落とした。

 

「……急所に当たったか!」

「やった!これなら……!」

「いやまだだ、翼爪を斬られた位じゃリオレウスは負けを認めない!なんなら怒って更に攻撃が激しくなるぞ!」

 

 アズールの推測通り、怒りが頂点に達したリオレウスは怒号ともとれる咆哮を轟かせ、薙ぎ払うように炎を吐き出す事で周囲を火の海に書き換える。

 死臭が炎によって巻き上げられ、気持ちの悪い臭いが辺りに充満し、グリーンとブルーに精神的ダメージを与えていく。

 

「く……っ」

「……ぅっ」

「スターミー、高速スピンとハイドロポンプで周囲の炎を振り払うんだ!」

 

 高速回転しつつ、ブルーのポケモンに負けず劣らすの放水で周囲の炎を鎮火していくスターミー。

 しかし炎の範囲が広すぎるのもあって時間がかかるのは明白であり、その間スターミーの使用は難しくなる。

 それでも状況打開には必要と判断したアズールは隙を伺って気持ち悪さでダウンする二人に秘薬を手渡し、リオレウスの敵意が自分に向いている事を確認すると二人から離れ、逆方向で挑発的な行動を取ることでリオレウスの気を引いていた。

 

(……よし、此方に向いている。完全鎮火とまでは行かなくても、退却できる位に鎮火できれば、二人を安全な場所まで逃がせる)

 

 自分自身で戦う手段(武器)のない現状では回避以外の行動が取れないのは痛手ではあるが、最低限二人さえ逃がせればドラギュロスを呼び出せる。

 攻撃の苛烈さも、範囲も知っている自分であればドラギュロスの巻き添えを食らうことはまずないと考えているアズールに容赦なく自身の巨体をぶつけに行くリオレウス。

 一般人であれば、ロケット団の様に立ち竦んだり、慌てて進行方向からそれるという当たり前の行動をとるのだが──

 狩人(ハンター)であるアズールにとって、その選択は選択肢の中にすら入っていなかった。

 

「それはもう見慣れてるよ」

 

 そう言い、リオレウスに向かって(・・・・・・・・・・)アズールは前転を繰り出した。

 誰が見ても自殺行為だと判断する行動。現に遠目で見ていた二人は驚愕の表情を浮かべていたが、その直後になぜ驚愕したのかという内容が切り替わることになる。

 

「……当たって、ない?」

「バカな、どう見ても当たっていた(・・・・・・・・・・・)のに、傷一つないだと……!?」

 

 無傷でリオレウスの突進を真っ向から回避したアズール。

 唖然とする二人を余所に更にリオレウスに対して挑発をしかけ、ヘイトが向かないようにしつつもグリーンの図鑑にメッセージを送り込む。

 

【今のうちに退避するんだ。コイツは僕に任せて】

「……退くぞ」

「えっ?アズールを置いてくの!?」

「そのアズールさんから退けと言われてるんだ。俺達がいると打てない手があるんだろう」

「打てない手って……あっ」

 

 ──僕を含めて周囲の人間とポケモンの命の保証もできなくなる。それでもいいなら出すけど?

 

 ほんの少し前にアズール自身が言っていた事を思い出し、その切り札を切ろうとしている事を理解したブルーもグリーンの意見に賛成し、大凡の勘で当たらないであろう位置まで退避する二人。

 

【退避完了】

(……そのメッセージはありがたいぞ、グリーン君!)

 

 簡潔なメッセージに感謝しつつも、鎮火作業を行っていたスターミーを呼び戻し、自身とリオレウスの合間に立たせる。

 

「スターミー、フラッシュ!」

 

 先程も活躍した強烈な閃光がリオレウスの視界を奪う。

 効果としてはもっと適切なタイミングがあったのだが、数秒の足止めだけでいいと判断したアズールはスターミーをボールに帰還させ、最凶の切り札を召喚する。

 

「来い、ドラギュロス!!」

 

 放り投げられたボールから現れる、異邦の竜。

 緑白色の体躯に三日月型に反り立った角、三本の尾に対の翼から延びる鉤爪と薄緑の翼膜と金色の瞳。

 そしてドラギュロスが異質と象徴される赤黒い閃光がバチバチとドラギュロスを覆うように炸裂しており、既に臨戦態勢だと察したアズールは回避以外の事は考えない(・・・・・・・・・・・)ように思考を変えた。

 

 直後、ドラギュロスは挨拶代わりと言わんばかりにレーザーとも形容できる収束された赤黒いブレスをリオレウスに向けて発射。

 リオレウスも対抗して火球を放つも、貫通性の高い収束ブレスは火球ごとリオレウスを撃つ。

 被弾直後にドラギュロスはリオレウスへと猛突進し、リオレウスもまた迎え撃つように猛突進。

 お互いにぶつかり合って怯んだかと思えば、すぐに体勢を立て直したドラギュロスは翼から延びる鉤爪を上から振り下ろす。

 咄嗟の機転を利かし、鉤爪攻撃を後退しながら距離をとることでやり過ごすと、両者共に睨み合う束の間の休息が訪れる。

 

「……すご、い」

(俺のポケモン達なら……更に鍛えればある程度は対抗できるだろう。しかし……あれが、メゼポルタのモンスター……!!)

 

 遠目から見ていた二人も、異邦の竜同士の戦いに目を奪われていた。

 その迫力に呆然とするブルーと、自身のポケモン達の力量はリオレウス、ドラギュロスに何処まで肉薄出来るのかと思案しつつも、異邦のモンスターの脅威に畏敬の念すら抱くグリーン。

 そんな二人を余所にインターバルを経た二頭は再び交戦を再開。

 狙い撃ちではあまり効果がないと判断したのか、我武者羅に火球を放つリオレウス。その内の一発がドラギュロスに被弾し、矢継ぎ早に追撃の火球が襲い来るも、体内に蓄積されていた赤黒い稲妻を放出することで追撃を未然に防ぐ。

 反撃に出たドラギュロスは尻尾をリオレウスに向けながら叩きつけ、尻尾の先から再び蓄積されていた赤黒い稲妻を今度は球体状にして地面を這わせる。

 

 一本だけの尻尾なら大した脅威にもならなかっただろうが、ドラギュロスの尻尾は三本。

 其々の尻尾から這い出る赤黒い稲妻は三方向に扇状で這う。

 図体の大きいリオレウスはそれを飛ぶことで回避しようとしたが、ドラギュロスに専念していたことで失念していた。

 

 ──ドラギュロスには飼い主(アズール)がいるということを。

 

「スターミー、もう一度フラッシュだ!」

 

 ドラギュロスに当たらないよう計算された位置から放たれた強烈な閃光。

 驚いたリオレウスは体勢を崩して地面に叩きつけられ、容赦なく稲妻が襲い掛かった。

 トドメと言わんばかりに、ドラギュロスは天井ギリギリまで飛翔し、未だ地に伏せる標的(リオレウス)に狙いを定めた。

 

「……ホントにお構い無しじゃないか……!!」

 

 構えを取ったドラギュロスをみて慌ててスターミーをボールに戻す。

 ドラギュロスの必殺技の一つ「ドラキック」。

 名前と現在ドラギュロスが取っている行動だけで連想するなら高高度から放たれる飛び蹴りで終わるが、真価を知っているアズールにとって、下手をすれば命を落とす(・・・・・・・・・・・)かもしれない事態に冷や汗をかいていた。

 瞬間、リオレウスめがけて脚を前に突き出しながら急降下を始めるドラギュロス。

 すんでのところで体勢を立て直したリオレウスは僅かに体躯をそらすことで直撃は免れたものの、ドラギュロスが地面に激突した途端、着弾(・・)地点からドーム状で覆うように赤黒い稲妻が大放電を起こす。

 これこそがドラキックの真髄であり、アズールが最も懸念していた問題の一つ。

 ドラギュロス以外(・・・・・・・・)を襲う大放電。ハンターであるアズールですら紙一重の回避でやり過ごす他ないこの一撃があるからこそ、アズールはドラギュロスをこういう場面でしか出したがらない。

 

(……後一秒遅れてたら死んでた)

 

 何とか回避できたアズールとは違い、放電をもろに浴びたリオレウスは分が悪いと察したのか、背を向けて退却を試みる。

 しかしその足取りは重く、弱々しく足を引きずりながら逃げるように離れていく。

 

(追い詰めた!)

 

 瀕死であると判断したアズールがトドメの一撃をドラギュロスに指示しようとしたその時──ふいに場違いな音が洞窟内に鳴り響いた。

 アンビシオンの様な笛ではなく、鐘を鳴らすような音が複数回鳴り響いたと思った次の瞬間、奥からリオレウスを守るように(・・・・・・・・・・)火球が降り注いだ。

 アズールが発射された火球の先を見ると、リオレウスに似た緑の甲殻を纏う異邦の竜が。

 

緑色のリオレウス(・・・・・・・・)……!?」

 

 遠目から見ていたブルーが新たに現れた緑色のリオレウスに驚愕の声をあげる。

 勿論ブルーだけではなく、グリーンも発言こそせずとも、目を見開いてその存在に驚愕の表情を浮かべていた。

 勿論、アズールも例外ではない。

 

「嘘だろ……!?」

 

 緑色のリオレウスの正体を知っているアズールはすでに起こっていた最悪の事態に苦虫を噛み潰したような表情をする。

 その件の存在がリオレウスを守るように前へと躍り出ると、ドラギュロスの苦手とする毒を帯びた棘をばら撒き、追撃の妨害を企てながら殿を務めていた。

 その様を見て、勝ち誇るような雄叫びをあげるドラギュロスをボールに戻し、血が滲み出そうなくらいに握り拳を作るアズール。

 

 

 これが、天と地の領域が、始まってしまった(・・・・・・・・)瞬間である。

 

 

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