ポケットモンスターSpecial Frontier 作:400円
それはそうとUA2000いきました。ありがたや…
エリカに案内されるがままに屋敷に入るアズール。
洋風だったカスミの豪邸とはまた違い、所謂「和」の趣がある屋敷に感嘆の息を漏らす。
「本来であればもう少しバカンスを楽しむ予定だったのですが……アズールさんが捕獲したドスランポス……でしたっけ?その子が悪さをしていると聞いて早めに切り上げてきましたの」
「成る程……で、対処しようとした先に僕がいた、と」
「ええ。それに、その子は
「……自分で言うのもなんだけどさ、敵対の意思を持っていたら今捕獲されたドスランポスをけしかけられるかも知れないとはならなかったの?」
「はい。貴方の目を見た瞬間「ああ、この人は味方だ」って分かりましたので」
裏表のない発言とまたも見せる儚げな笑みに思わず目を逸らし、この人
「どうかされましたか?」
「……エリカって、割と知らない人から手紙とかもらってない?」
「あら……確かによく貰いますけど、どうして?」
「いや別に。何となくそうだろうなーと思っただけ」
「はぁ……?」
質問の意図を汲めずにエリカは首を傾げた。その仕草ですら愛嬌のある姿に見えてくるのもあり、いるかどうかも定かではない神に愛されてるんだなと畏敬の念を通り越して苦笑するアズール。
「それよりも、そろそろ本題に入ろう」
「そうですわね」
「単刀直入に聞くけど、僕に何をしてほしいんだい?」
「ロケット団のアジトに潜入してほしいのです」
「……なんと」
真剣な表情でエリカの口から告げられた内容にアズールは目を見開き、同時に疑問を抱いた点に対して追求しようとする前にエリカはその疑問点を先回りする形で解決する説明から入った。
「本来であれば、私や私の部下達が行くのが道理なのですが……お恥ずかしい事に、近付くことすらままならない現状なのです」
「明確にロケット団を敵視しているから、ロケット団もキミ達に対してのアンテナが強いから、か」
「ええ。無論無償でやってくれとは言いません。友人から聞いたところによれば、アズールさんが使えるポケモンはスターミーだけと聞きました。なので……」
この子を貴方に。そう言いながらエリカはモンスターボールをアズールに差し出す。
中には獣の頭蓋骨を被り、骨を抱える小さなポケモンがすやすやと気持ちよさそうに眠りこけている。
「ポケモンだね」
「カラカラ。先日シオンタウンの付近で見つけた子です……本来であれば、親の「ガラガラ」というポケモンとよく行動を共にしているのですが……その」
「……まさか」
過ってしまった考えを読み取ったかのようにエリカは心苦しい表情で静かに頷く。
親であり、カラカラの進化系であるガラガラはすぐ隣で物言わぬ肉塊と化していたという。
それだけであれば、野生の世界ではよくある事、仕方のないこと。で片付けられる内容ではあるが……ガラガラの死因ともいえる致命傷は野生の世界ではまず付きようのない傷だったという。
「
「…………ガラガラは何か人に迷惑をかけることは?」
「いいえ。ガラガラは人気のない森や洞窟を主に住処にする種です。それこそ人から向かわない限り、まず出会うことはないでしょう」
「……外道め」
怒りの感情が込み上げ、奥歯を噛み締めるアズール。
自分達の様に人里に被害を及ぼした、あるいはその危険性があったのなら止むを得ない事情なのだろうと職業柄で割り切れる箇所もあっただろうが、何の意味もなく排除したのであれば、ただの虐殺に成り下がる。
見下げ果てた奴はどこにでもいるものだと無念に駆られていると、エリカはボールからカラカラを呼び出した。
出てきた瞬間、怯えたようにエリカの背中に隠れるカラカラは恐る恐るアズールを見つづけ、どういう人間なのかを観察しているようにも見えた。
「大丈夫よ。この人は貴方を傷付けないわ」
「はじめましてだね。僕はアズール。キミの事は聞いている……信じてくれとは言わないが、僕と一緒に来てくれないか?」
カラカラが怖がらないようになるべく目線をカラカラに合わせ、手を差し出す。
暫くするとカラカラがおずおずと骨を差し出し、それを優しく握ると感情が爆発したのか、ボロボロと涙を零しながら盛大に泣き出し、エリカが優しく抱き上げてカラカラをあやす。
「……そりゃそうだ。まだ子供だもんな」
「ええ……発見当時、この子には傷一つ付いていなかった。とても……とても立派なお母様だったのでしょう」
「……因みに、犯人の目星は?」
「……当時付近で情報を探ってみましたが、ロケット団が彷徨いていたと」
「……予想を裏切らない
「改めてお願いします。ロケット団のアジトに潜入をしていただけますか?」
「了承した。その任、受けさせてもらう」
二つ返事でエリカの頼みを引き受けると、礼の言葉とともにカラカラの所有権を持ったボールとアジトと思わしき建物の写真が添付された資料を渡される。
とりあえずカラカラは出発まで暫くエリカに任せようと考えたアズールは資料に目を通すことに。
「Rocketゲームコーナー……実態を知ってたらここまでわかりやすいのもそうそうないよ?」
「表向きは本当にゲームコーナーの様です。実際に従業員や利用客もいたようで、従業員にそれとなく探りを入れてもその考えすら無かったようですわ」
「構成員じゃなく、敢えて一般の人間を従業員にさせることで機密性を裏付けしているってわけか」
「ええ……ですが、こんな噂もあります。変な格好の連中が奥の方で
「……奥の方ね。了解」
噂ではあるが、試してみる価値はありそうだと思案して出発の準備に取り掛かる。
「もう行かれるのですか?」
「こういうのは早いほうが良いからね」
「そうですか……くれぐれもお気をつけて」
「勿論」
カラカラを引き取り、アズールがその場を立ち去った後、誰もいなくなった部屋でエリカに一息をつかせる間もなく彼女の従者が慌てた様子で部屋に飛び入る。
妙な個体のイーブイがタマムシシティに現れたという報告に一難去ってまた一難と頭を悩ませるのであった。
それから数分後、アズールは情報通りにゲームコーナーへと足を踏み入れて奥の方へと進む。
「……この辺りだけ、やけにだだっ広いな。それにこのポスター……怪しいと言ってるようなもんじゃないか」
敷き詰められるように設置されたスロットマシーンの奥にあったなにもないスペースに貼られたポスターに違和感を感じ、裏をめくると片隅にスイッチが。
それを躊躇うことなく押すと、ブルーの時と同じく仕掛けが作動し、地下へと続く階段が現れた。
「……いかにも、って感じで」
独り言を言いながら、階段を降りていくアズール。
降りきった先で見たものは、娯楽施設とは正反対の研究用機材の数々と、実験用シリンダーに収められている誰が見ても生命に対しての冒涜だと憤りを感じる代物。
身体の半身は構成されているようだが、もう半身はまだ細胞のようなものが渦巻いており、未完成であることが見てわかる。
(……コレは、ポケモン……いや、人造物か)
「ねぇ」
「(まずい……)……って、はぁ?」
背後から呼び止められ、先手を撃とうと振り向いた瞬間、呆気に取られるアズール。
其処にはロケット団の団員服に身を包んだブルーが。どういうことだと問い質す前にブルーはアズールの手を引き、人気のない部屋へと駆け込む。
「とりあえずコレを着て」
「どういう事か説明しろ」
「説明は後。着ないと目立つわ」
渋々ロケット団の服に着替えると、改めてブルーを睨みつけ、警戒心を全開にして問い質す。
「……やっぱりロケット団だったのか?」
「んな訳ないでしょ。潜入よ、せ、ん、にゅ、う」
「どうやってここに」
「それは此方も聞きたいところだけど……秘密の情報源ってヤツ。とにかく探し物でしょ?」
「……いや、一人で「単独で行動したところで場所わかるの?」……」
「一通り回りきったから貴方の欲しいもの位は分かるわ。こっち」
そう言い、堂々と施設を歩み進むブルー後を警戒心全開にしながらついて行くアズール。
案内された部屋に入り、「確かこの辺りに……」と資料棚を漁るブルーを他所に部屋に乱雑に置かれた資料を手に取る。
(……メゼポルタのモンスターばかりだ)
見慣れたイラストとモンスターの情報が書かれた資料。その中には当然リオレウス、リオレイア、ドスランポスと敵対したモンスターの資料もあったが……情報の質はお世辞にも良いものとは言えないものばかり。
「……あった。ほらこれ」
「……コレは」
「多分、モンスターの事じゃない?
「……嘘だろ?」
ブルーから手渡された情報媒体をその辺にあったパソコンに差し込み、データを読み込む。
すると其処には確かに「テンイ化について」というタイトルが付いたレポートのデータが表示されていた。
「…………」
「そんなにマズイものだったりするの?」
「かなり。もしレポートに「
冷や汗を流し、そうでないことを祈りながらもレポートを開く。
──テンイ種について。
メゼポルタでは悠久の時を経て独自の発達を遂げるモンスターがいるらしく、ソレを「テンイ種」と呼称される。
テンイ種のモンスターは強大な力を秘めており、先日赤衣の人物より受け取った赤き竜もその可能性を秘めているとのこと。
戦力増強も兼ねて、例の計画と同時進行する形で赤き竜のテンイ化計画を進める事を進言する。
──テンイ化について。
しかし、悠久の時を得るのは容易ではない。更にテンイ化は数多もの戦いを経た上で起きるものらしく、カントー中で戦闘経験を積ませる必要がある。
悠久の時に関しては、以前開発したポケモン用の強制進化薬で代用が出来るかどうかを実験する必要がありそうだ。
──テンイ化実験レポート
強制進化薬での実験結果は失敗といっても過言ではないだろう。何名かの犠牲者で済んだのは不幸中の幸いともいえる。
強制進化薬を注入した途端、赤き竜は暴れ狂い、その場にいた団員を捕食したり、焼殺したりと凄惨な事態を引き起こした。
強力な麻酔薬を投与したことにより鎮静化したが……強制進化薬でのテンイ化は我々にも重大なリスクが伴う為、今後は禁止にするべきだろう。
以前赤衣の人物が言っていた「驚異の象徴」についても調べる必要がある。
──驚異の象徴について
テンイ種は発達部位と呼ばれる、テンイに至った証として自身の身体の一部が大きく発達するという事が赤衣の人物により判明した。
であれば、この驚異の象徴と強制進化薬を調整すれば「人為的にテンイ化を促せる薬」ができるかもしれない。コレができれば、ロケット団に歯向かうジムリーダー達は一網打尽にできるだろう。
しかしこの施設では機材の殆どが先に進行していた例の計画にリソースを割いている為、本部の研究施設にてこの実験を進める事を進言する。
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「……
「ッ!誰か来た、隠れましょう!」
足音に気付いたブルーが慌てた様子でアズールごとロッカーに押し込む。
本来であればオイシイと感じるシチュエーションであっても、今の二人にはソレを感じる余裕はない。
「……あれ?パソコンがつけっぱなしじゃないか。全く……消しておけとあれ程言っておいたのに」
ブツブツと文句を愚痴りながら資料をまとめて抱える研究者。パソコンから情報媒体を抜き取り、適当な棚に戻すと抱えた資料と共にその部屋をあとにする。
行ったかと思い、安堵したのも束の間。暗い雰囲気の部屋に赤いサイレンと警報が喧しく鳴り響く。
【施設内に侵入者!繰り返す、施設内に侵入者!総員、捜索を開始せよ!これは訓練ではない!繰り返す、これは訓練ではない!】
「……何でバレたんだ?」
「……もしかして、アジトの入り口……開けっ放し?」
「あ、それだ」
「それだ、じゃないでしょ!?もう!」
ロッカーから出てアズールのやらかしに頭を抱えるも、すぐに脱出の手段に切り替えるブルー。
「……その、ゴメン」
「とりあえずコレ持って出るわよ!」
先程のレポートが記録された媒体ともう一つの媒体をアズール押し付け、脱出を試みる二人。
最早潜入とは何だったのかと問いたくなるような脱出劇が、始まろうとしていた。