ポケットモンスターSpecial Frontier 作:400円
マサラタウンを出発した二日後。
アズールの進行ペースは微妙の一言に尽きた。
想定通りの時間にトキワシティに到着したアズールはまずリオレウスについての情報を集める為、2日の滞在期間を設けたうえでトキワシティの通行人達に片っ端から聞き込みを開始した。
結果は収穫なし。コレに関しては当然と言えば当然なのであまり気にしていないが、問題は片っ端から聞き込みを行ってしまったことにあった。
「はぁー……こんなポケモンいるんだな」
「……いや、ポケモンじゃなくてモンスターだね」
「んん?じゃあポケモンじゃねえの?」
「ええっと……」
赤い帽子を被った少年のご尤もなツッコミに言葉が詰まる。
情報収集の為の情報開示は仕方ないとしても、自身から不用意に情報の開示を行うのはあまりよろしくはない。
というのもメゼポルタ地方の情報は非常に危険で、ちょっとした情報1つでカントー等の"外の地方"の常識がひっくり返る恐れがある爆弾ばかりなのだ。
例えば「立って普通に人の言葉を理解し、喋る挙句普通に人間社会に溶け込んでるネコみたいな人型モンスターが山程いる」なんて情報や「たった一晩で国1つ消し飛ばしたモンスターの中でもトップクラスのモンスターがいる」という誇張表現の塊みたいな信憑性ほぼゼロの情報など……最悪ポケモンという存在そのものが危うくなるのでは?と懸念される情報が多すぎるためにメゼポルタ地方は特に情報の漏洩に対して敏感で、基本教えてはならない、知ってるやつは一部例外を除いて基本外に出せないという永久鎖国状態を貫いている。
「……まあ、そういうことにしておいてよ」
「?へんなの」
苦悩の果てに面倒くさくなったアズールは少年のリオレウスに対する認識を改める事を諦めた。とはいえ物欲しさに突っ込むことだけはやめておくようにと釘を刺し、これ以上の収穫がないと判断したアズールは図鑑を開き、次の街を目指す段取りを組む事に。
図鑑を持っていたことに驚いたのか、「あーっ!」と指を差しながら懐からアズールの持つ図鑑と全く同じ形をした機械を取り出した。
「おにーさんも図鑑持ってるんだね!」
「……といっても、地図代わりだけどね。恐らくキミの競争相手にはなれないと思うよ」
「それでも同じ図鑑持ってると思うとなんか嬉しいじゃん!」
「……そういうもの、なのか?」
「そういうものさ!」
少年はそう言って手を差し出すと、自身の名を「レッド」と明かしながら握手を求める。名乗られた以上返さないのは失礼だと判断したアズールも自身の名を名乗り、レッドの握手に応えた。
「へへ、よろしく!アズールさん!」
「ああ。レッド君は……オーキド博士からソレを?」
「まぁね……っても、色々あったんだけど」
レッドは正体不明のポケモンに出会い、完膚なきまでに打ちのめされた事に自身の実力の程度を実感し、ポケモンについて知るためにオーキド博士のもとへ訪れたと言う。
しかし初対面が悪かったのか、泥棒と勘違いしたオーキド博士に驚いたレッドは誤ってポケモンが格納されているボールを一斉開閉するスイッチを起動してしまったのだとか。
それから全てのポケモンをボールに戻した後、余接苦節あって譲り受けたポケモン図鑑とフシギダネ、そして幼い頃からの相棒ニョロゾと共に旅を始めた。
「……ってのが、理由」
「なるほど……それにしても、あれだけの量をよく1日で捕まえきったね。すごいじゃないか」
「へへ……そうかな?」
「ああ。僕なら確実にもっと時間がかかっていた筈だ」
傍らに置かれていたボールの数をうろ覚えとはいえ相当数あったと記憶していたアズールにとって、レッドの才能は賞賛に値するものだった。
若さとはまた違った、才能すら感じるそのセンスに今後の成長が期待できるだろうと関心していると、レッドの興味はアズールの"ポケモン"に向く。
「そういえば、アズールさんの手持ちは?」
「僕の手持ちかい?そうだな……」
手持ち"ポケモン"ではなく手持ち"モンスター"ならいるが、当然ソレをおいそれと出すわけにはいかない。
本来ならば「悪いけど出せない、ごめんね」で強引に打ち切る事も出来たのだが、レッドの期待の眼差しに折れたアズールは人気のない所で見せると言い、レッドと共に人気のない平原へと足を運ぶ事に。
「さて、僕の手持ちだが……まず約束してくれるかい?」
「約束?」
「そう。これから君が見るのはとても貴重な存在だ。オーキド博士以外の誰にも言わないように。もしバラしたら……」
「バラしたら……?」
「……そこはご想像にお任せするよ」
あえてどうなるかを伏せることでレッド自身の未知に対する恐怖を増幅させ、絶対に言わないよう何度も頷かせる。
実際はバラしたとしても目撃者が一人だけなので「何いってんだこいつ」で終わる話なので特に何があるわけでもないが、信用を失うという代償を払わせる訳にもいかない。
内心でごめんねと謝りながら、ボールを"2つ"放り投げる。
「紹介しよう。カグラとノノだ」
「……でっか!?」
漆黒の体毛に、刺々とした鬣。
立派な犬歯をのぞかせる巨大なオオカミの見た目をしたそのモンスターはメゼポルタでは「カム・オルガロン」と呼称される存在だ。
別名響狼(きょうろう)と呼称される本種は番で広範囲を旅し、狩りを行う習性を持つ。その為こういった長旅にも向いている種であり、一度主と認められれば忠実に任務を遂行する忠犬的存在にもなる。
単独でも脅威ではあるが、真価を発揮するのは同時に攻めてきた時。番に相応しい連携で機敏に追い詰めるその動きに翻弄される同業者も少なくはない。
もう一匹の白い狼は「ノノ・オルガロン」。凛々しい見た目とは真逆の可愛らしい名前のとおり、響狼の雌個体だ。
「コイツらは番でね。常に一緒じゃないと気が済まないんだ」
「番……夫婦ってこと?」
「そう。どちらも指示には従ってくれるから特に気にしてないけどね」
「へぇー……」
アズールの説明を気にすることなく仲睦まじく毛繕いをしだすオルガロン夫婦。レッドの視線に気付いてもすぐ素知らぬ顔をして番の毛並みを整え続けている。
「撫でてみる?」
「いいの!?」
嬉しそうに顔を輝かせるレッドに勿論。とアズールは返すと、カグラとノノの名を呼ぶ。
するとさっきまで毛繕いをしていた二匹がアズール達のもとへ寄ってきて、察したノノがレッドに撫でていいと言わんばかりに頭を差し出した。
恐る恐る撫でると、気持ちよさそうに唸るノノに「おぉ……」とレッドが感慨深い声を漏らす。それに思わず口元が緩むアズールと「なにしてんだコイツ」と首をかしげるカグラ。
「……アズールさんとこのポケモン、すごいね」
「心強い味方さ。さて、時間も食ったし僕はそろそろ行くとするよ。レッド君はどうする?」
「うーん、俺はもうちょっと休憩しておくよ」
「そうか。また何処かで会えるといいね」
「うん!またね、アズールさん!」
「ああ……っと、そうだ。言い忘れるところだった」
思い出した様にリオレウスを見たら教えてくれとアズールはレッドに伝える。カントーを旅するのであれば、捜索の目として役に立ってもらうのもアリだろうと考えた故の協力要請。
真意を知らぬままレッドは二つ返事で頷き、それに安心したアズールはレッドを一瞥して次の目的地「ニビシティ」を目指す。
「珍しいポケモンに……リオレウス。ふふ、いいこと聞いちゃった♪」
2人の気付かぬところでそれを聞いていた人物がいたということをアズールは知る由もない。
・アズール
メゼポルタ地方のハンター。
オーキド博士の依頼によりカントー地方に来訪し、いるはずのない「リオレウス」の捜索および狩猟の為にカントーを旅する事に。
見た目のイメージはMHFのアスール装備(男)にインナーシャツと肩や手首、足部分のプレートや装飾を外した感じ。
これはメゼポルタ地方側の采配であり、「ただでさえ物々しい恰好なのにそんなのつけるのどうなん?」って事で引っ剥がされた。当然武器も無いので頼れるのは味方モンスターのみである。
・カグラ(カム・オルガロン)
・ノノ(ノノ・オルガロン)
アズールが捕獲した個体。嫁のノノ・オルガロンも同時期に捕獲したので嫁ともどもアズールの忠犬。なぜカムではなくカグラにしたのかは筆者の心が汚れているからなのと、オルガロン装備の神楽のがカッコいいと思ったからである。