ポケットモンスターSpecial Frontier   作:400円

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我が事ですが、飽き性の自分がここまでやれてるのはひとえに皆さんのおかげと思っております。ありがとうございます……!


報告と、新たなモンスター

 

 アジトからの脱出からある程度時間が経った頃、ブルーに連れられてようやくエリカの屋敷へと戻ってきたアズールは屋敷に入るやいなや、気分の限界を迎えたのか玄関で突っ伏した。

 

「おかえりなさ……!?」

「あー…えっと、話は後でするから…この人が横になれる場所、貸してくれない?」

「すぐに。だれか!だれかー!!」

 

 出迎えたエリカの声で何処からともなく現れた付き人が二人がかりでアズールを担ぎ、何処かへと連れ去ってゆく。

 此方です、と歩き出すエリカの後ろをついて行くと、ほんの一瞬の合間に布団に寝かされたアズールに驚愕の表情を隠すことなく曝け出す。

 

「…うっそぉ」

「これで少しは休めるといいのですが…何があったのですか?それに…貴方は……?」

 

 目立った外傷も見当たらないのに肩を貸していたブルーの正体が気になったエリカ。

 仕方ないと踏んだブルーはほんの少しの嘘を混ぜて、エリカにアズールとの関係を告げる。

 

「アタシはブルー。この人の…相棒よ」

「そうだったのですか。私は…」

「エリカさん、でしょ?アズールから聞いてるわ」

 

 本当は依頼人としか聞いていないが、風の噂で聞いていたエリカの容姿や特徴を覚えていた自分を内心で褒めていると、額に手を抑えながらアズールが布団から上半身を起こした。

 

「……うぅ、ここは」

「あ、目が覚めた」

「私の屋敷ですわ。アズールさん」

「エリカ……と、ブルー。そうか、僕はあなぬけのヒモで……」

 

 慣れないあなぬけのヒモにやられた自分を恥じながら、肩を貸してくれたブルーに礼を述べると、「気にしないで、相棒♪」と聞こえのいい返事が返ってくる。

 何のことだ?と疑問に思っていたが、すぐにどうでもいいかと判断したアズールはエリカに潜入の報告を行う。

 

 

 ────

 

 

 時間にして小一時間。タマムシの地下でそんな事が行われていたのかとエリカは驚愕と同時に何もできなかった自分に歯痒さを感じていた。

 

「…そうでしたか。ありがとうございます」

「ただ、タマムシのアジトは"支部"みたいなものだ。本部は別の都市にあるんだと思う」 

「見当はついてるの?」

「……多分、ヤマブキシティだ」

 

 リオレウスの目撃情報、不自然なくらいに囲われた都市に、誰一人通そうともしない怪しい警備員。

 中こそ見ていないものの、其処がロケット団の本拠地であると睨んだアズールは「ジムリーダーの権限で入れないか?」をエリカに尋ねると、残念そうに首を横に振って既に行った後だと告げた。

 

「…そうか」

「無理やり押し入るのは?」

「難しいでしょう。仮に入ったところで、厳戒態勢を敷かれた状態で本拠地に乗り込むのは自殺行為に等しいかと。それに……」

「それに?」

 

 エリカが一枚の用紙を取り出し、アズールに手渡す。

 まさかと思ったアズールの予感は的中したようで、用紙にはドスランポスとは別のモンスターの目撃情報があった写真が。

 

「もしかして、此処だけメゼポルタ地方だったりする?」

「いいえ、れっきとしたカントー地方ですわ」

「…だよねぇ」

「どれどれ?……っ」

 

 興味津々に見に来たブルーだったが、写真を見て身体が強張ったと思うと、僅かに震え出す。

 その様子はエリカからの位置では見えなかったが、隣にいたアズールからは筒抜けで、ブルーの小さな異変に疑問を抱いた。

 

「…どうした?」

「っ、いや、なんでもないわ……うん」

「………エリカ、こいつも僕らのとこのモンスターだ。名前はヒプノック。眠鳥の俗称でも知られている…これが撮られたのはいつ?」

「1週間前です…私がバカンスに行っている間の資料で、イタズラと判断した者が適当に置いていたようで」

「…分からなくもないけど、適当って」

「引き続きで申し訳ないのですが……」

「分かってる。引き受けるよ」

 

 断る理由もないアズールに感謝を述べつつ、暫くの拠点として使ってくれても構わないと寝耳に水な内容に遠慮なくとエリカに感謝を返す。

 

「勿論、ブルーさんも」

「えっ?ええ…ありがとう、ございます」

「………ごめんエリカ、ちょっと席を外してもらえるかな。ブルーと話しておく事…打ち合わせがあるんだ」

「わかりましたわ。私も用事があるのでこれで…」

「分かった。気を付けて」

「お互いさま、です」

 

 くすり、と笑ってその場をあとにするエリカ。

 二人だけになった途端、部屋に沈黙が訪れる。こういう時に茶化す一言を吐くはずのブルーは、ヒプノックの写真を見て以来、意気消沈した様に黙りこくっていた。

 

「ブルー?」

「…あっ、えっ、な、何かしら!?」

「……いや、ヒプノック見てからなんか変だと思って」

「そーかしら?アタシはいつも通りよ♪」

「…ならいいんだけど」

「それより!さっき言ってた【天廊】とか、メゼポルタ地方の事、色々聞かせてよ!」

 

 話をはぐらかしたブルーに敢えて追求することをやめ、「誰にも言わないように」と釘を差した上で自分の視点で見たメゼポルタ地方の事を語りだす。

 

「メゼポルタは…緑豊かで、モンスターの数は人の数よりも遥かに多く、同時に常に危険が寄り添う。ビル街を見慣れているカントー地方の人達から見れば、僕達の都市は一昔前の風景だと捉える人も少なくはないと思う。実際僕もタマムシシティのビル街には驚いたからね」

「へぇ…言われてみれば、あなたの服装ってカントー地方じゃ結構変わってるものね」

「…褒め言葉として捉えておくとして。代わりと言うべきか、僕らはカントーや他地方には無いモンスターと戦う為の技術を持っているんだ。誇張抜きでブルー3人分くらいの大剣もあるよ」

「……どうやって持ってるのよ、ソレ」

「うーん…気合い?」

「根性論でどうにかなるもんなの……?」

 

 聞けば聞くほどメゼポルタ地方の人間が見た目にそぐわぬフィジカルを持っていることにドン引きし、もしかしなくても自分達の知る人間に似た全く別の人種なのでは?と疑念を抱くブルー。

 そんなブルーに気付くこともなくアズールは更に話を続ける。

 

「モンスターについては……まあ、リオス種やらドラギュロスとか見てるから何となく察しが付いてると思うけど……竜種、こっちで言うドラゴンタイプのモンスターの種類がメゼポルタで一番多いんだ。質問なんだけど、カントー地方のポケモンの総数ってどれくらいになるんだ?」

「151種ね」

「…思ったより少ないんだね。僕が遭遇、戦闘した種類だけでもメゼポルタでは最低でも170種のモンスターが生息しているんだ」

「遭遇、戦闘だけでも、って事は……」

「情報だけ流れてくるモンスターもいるし、軽く200は余裕で越えているだろうね」

 

 リオス種の様なバケモノクラスのモンスターがまだ沢山いる事実にメゼポルタの魔境ぶりをブルーは実感し、アズールに「よく人間は生存していけたわね」と引き気味に語ると、苦笑しつつも「住人である僕も何でか分からないけどね」と返す。

 スケールの違う話に満足したのか、ブルーが話題を切り替える意図を込めて、一番興味のあった天廊についても訊ねるとアズールは天廊で遭遇した出来事を想起しつつ、天廊について話し出した。

 

「【天廊】は…かなり簡単に言うと、現在進行形で稼働中の古代の塔だ。誰が、いつ、何の目的で建てたのかは一切不明。中には侵入者を排除するための仕掛けやモンスターが蔓延っていて、一定階数には番人(・・)が鎮座しているんだ」

「頂上はどうなってるの?」

「……分からない。何せ頂上が見えない(・・・・・・・)からね。300階に到達しても全然頂上に着く気配すらなかったから、割と本気で成層圏くらいまで建ってるんじゃないかな」

「ふぅん…あ、番人って?」

「番人は……言ってしまえば、最凶(・・)のモンスターって所かな。部屋全体を一瞬で凍らせる冷気と、一瞬で気絶に持っていくほどの毒…僕らの間では《壊毒》と呼んでいる」

「壊毒…?普通の毒や猛毒とは違うの?」

「それらより更に質の悪いのが壊毒だ。ものの数秒で身体に毒が回り切るし、浴びてしまうと鎧も溶け出して防具としての機能を失うんだ」

「……それ、死んじゃわない?」

「いや?せいぜい気を失う程度で済むかな」

 

 その番人が単純に誇張表現されているだけなのか、それともアズール達ハンターという人種がおかしいのか、ブルーの刹那の思考で出た結論は「どっちもおかしい」という結論だったと同時に、アズールの自身が色んな意味で異常であるという自覚の無さはさておき、(ハンター)とだけは敵対しないでおこうと心に誓った瞬間でもある。

 

「…ま、こんなもんかな。閑話休題、本題の件に戻るとしよう。眠鳥の調査だけど…キミは、ついて来れるかい(・・・・・・・・)?」

 

 来る、ではなく来れるのか(・・・・・)とブルーに質問を投げかける。

 先の眠鳥を見た時同様に強張った顔で黙りこくるブルー。身体全体では見せなかったものの、握り締められた拳は小刻みに震えており、何かしらのトラウマがあるのだろうとアズールは悟る。

 

「……ついてこなかったら?」

「どうもしない。眠鳥程度なら一人でも対処できるし、無理強いしてまで連れて行ってもだろう?それに、エリカの屋敷は安全だし、不安ならここで身を隠しているのも悪くないと思うよ」

「……行くわ。アタシにもやることがあるから」

「…なら、止めはしないけど」

 

 自分に言い聞かせるように「大した事ない」「大丈夫」と小声で自身を激励するブルーに彼は一抹の不安を抱える。

 その不安は任務に対するものではなく、ブルーに対してのもの。最悪任務に失敗してもトライアンドエラーを繰り返す内に達成は出来るし、自身が口にしたように相手はたかが眠鳥。キショウ種(クソデカいヤツ)じゃなければ、取るに足らない相手だとアズールは眠鳥自体には脅威すら抱いていなかった。

 

(……こういう時にカグラかノノがいてくれれば、片方を護衛につけてあげられるんだけどな)

 

 過去の自分の行いに少しだけ後悔するアズール。カスミの所で元気にやっているのだろうかと2頭に思いを馳せるのであった。

 




世界観解説
・メゼポルタの武器
 メゼポルタの武器はハンター用兼対モンスター用前提で設計されており、当然ではあるが人間やポケモンに対して殺傷能力は非常に高く、持ってるだけで即逮捕となる。
ただし、極端に強いモンスターが外地方に出現している場合は非常事態措置としてメゼポルタ地方から人物情報とそのモンスターに有効なその人物の使用するを武器を国際警察に一時提供した上で15分というごく短時間での使用が許可される。
極端に短い片手剣もあれば、ハンターの身長を余裕で越える大剣などバリエーションは豊富で、使用するには当然ハンターズギルドの正規ライセンスを取得している必要がある。
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