ポケットモンスターSpecial Frontier   作:400円

21 / 24
ポケスペを読み直しつつ、アズールの切り札を考える日々……切り札の候補は三体いますが、どれにするか絶賛悩み中です。


眠鳥と、ある少女の傷痕 

 

 ロケット団のアジト潜入から翌日。

 アズールとブルーの二人は準備を整え、エリカ邸を出る。朝の陽光が眩しく輝き、眠気を飛ばすように二人を照らしていた。

 

「…清々しい程いい天気だなぁ」

「………」

 

 昨日の眠鳥の件からブルーの表情は優れない。本人は明かそうとはしないが鳥に対してのあからさまな反応に気付かないほど、アズールは鈍感ではなかった。

 

(鳥が苦手なんだろうけど……怯え方が普通じゃない。まるで…連れ去られた時のトラウマみたいな……いやまさかね。いくら何でも荒唐無稽な話か)

「…ねえ」

「ん?どうかした?」

「……やっぱりなんでもない!さ、早く行きましょ!」

 

 急に元気に振る舞い、調査に行こうと催促するブルーが空元気なのは一目みただけで分かったが、アズールは追求することなく彼女に従い、眠鳥の調査を始めることに。

 眠鳥の資料を手に取り、出現個所や発見者の証言を元に大まかな位置を割り出してその場へと向かう。

 やはりと言うべきか、タマムシシティの郊外……それもロケット団のアジトがあるゲームコーナーを中心に円形の移動範囲を取っていると調査の結果判明し、十分な警戒をもって最も出現率の高い現場…東16ポイントと仮称した場所へと二人は足を運ぶ。

 その道中で、ふと気になった事があったアズールはブルーの気を紛らわす意図も含めて、その気になった事を訊ねる。

 

「そういえばだけど…何でロケット団のアジトに用があったんだ?」

「えっ?あぁ……これよ、これ」

 

 そう言い、彼女が取り出したのはテンイ化の情報が入ったディスクと同じタイプのディスク。其処には簡潔に「MEW」とだけ記載されており、ポケモン素人のアズールにはそのディスクの価値がどれほどのものなのかを今一想像できなかった。

 

「…"ミュウ"?」

「そっ。このディスクの中にはミュウの情報が記載されているの。だからコレを頼りに動いていけば…ミュウちゃんゲット♪ってわけ」

「ロケット団が情報を保存するくらいって事は……希少価値が高いポケモンって事か」

「ええ。なんてったって"幻のポケモン"ですもの♪」

 

 上辺だけの上機嫌な態度でミュウについて語り始めるブルー。151番目のポケモンにして全てのポケモンの遺伝子情報が組み込まれているという生物的にも規格外の存在で一説によれば「絶滅種」とまで言われる程の希少種だという。

 それを聞いたアズールは自身の地方に存在する【古龍】を思い出し、もしもミュウがメゼポルタにいれば、間違いなく古龍として扱われていただろうなとミュウの規格外なポテンシャルに感心を寄せる。

 

「……それで?そのミュウを捕まえて何をするつもりだい?」

「それは勿論…お金よ、オ、カ、ネ♪」

「…だと思ったよ」

 

 彼女の事だ、適当に飛ばせた写真を売りつけたり、所有権の問題で捕獲できないのに捕獲情報を売りつけたりと……大方そんな所だろうと彼女の商魂にアズールは呆れを通り越して尊敬すら覚えていた。

 そんな雑談をまじえつつも、ヒプノックがいたであろうポイントへと到着し、アズールが辺りを見回すと赤い羽毛がちらほらと周辺に落ちており、情報の整合性が取れたことに安堵する。

 

「やっぱりここみたいだな」

「…いるんだ」

「いてくれたほうが手間が省けるからありがたいけどね」

 

 赤い羽毛を拾い、抜け落ちてからそこまで時期が経っていない状態だと理解したアズールは「まだ近くにいる」とブルーに警戒を促すと、身体をビクリと跳ねさせて急に怯えたように辺りを見回しだす。

 

「……あ」

「…いたけど、案の定(・・・)だったな」

 

 悠々と姿を現したヒプノックと、ロケット団の連中。

 味方としてメゼポルタのモンスターを従えているからかロケット団の面々は余裕の表情を浮かべており、瞬く間にブルーとアズールを取り囲んだ。

 

「ククク…また会えて嬉しいぞ。ガキ共」

「……っ」

「(…やっぱりか)どちら様で?悪いけど、全身黒ずくめの人間の知り合いは居ないんだよね」

 

 ヒプノックからブルーを守るように前に立ち、リーダー格の団員の煽りに煽りで返すアズール。

 どう見ても不利な状況でも減らず口を叩くアズールに苛立ちを覚えるも、その余裕そうな顔を絶望に染めれると確信しており、怒りを見せることなく挑発を続ける。

 

「そうか。なら忘れられない知り合いになってやろう……この【sleep】の力を使ってなぁ!!」

 

 そう言い、笛を取り出した団員は迷うことなくその笛を吹くと先程までおとなしかったヒプノックがブルーとアズールを標的に定めたのか、背中の羽根を大きく開いて二人に威嚇する。

 

「ひ…っ!!」

「(状況は不利だが…やるしかないか)ブルー、僕から離れないで。相手の事は気にせず、キミは自分の身を守る事に専念するんだ」

「……わ、かった…」

 

 最早隠す気力もないブルーはおもむろに震えだし、ヒプノックに対して明確に怯えていた。

 しっかりとアズールの服を握り、力なく頷くブルー。

 その姿を見て「やはり連れてくるべきではなかった」とアズールは先程の自分の楽観視に怒りを覚える。

 仕方がないと割り切ってブルーの護衛とヒプノックとの戦闘を両方こなすというハードワークをこなそうとした矢先。

 

カグラ(・・・)ノノ(・・)!兄さん達を守るんだ!」

 

 そんな中でロケット団員の中(・・・・・・・・)から助け舟が出された。

 一人のロケット団員がおもむろにアズール達へと近づくと、敵対するように団員達と向かい合い、その制服を邪魔そうに脱ぎ捨てると、アズールから思わず笑みがこぼれた。

 

「レッド君!」

「助太刀するぜ、兄さん!…と女の子!」

「たかが一人と2匹の狼が増えただけで何ができる!」

「言ってろ!兄さん、カグラとノノを!」

「ああ!ノノはブルーを守れ!カグラは僕と共に行くぞ!」

 

 指示を受けたノノはブルーの近くへと飛び寄り、周囲を威嚇することで一切の接近を許さない意志を示す。

 カグラはアズールの隣へ立ち、いつでも行けるとでも言いたげに頷くと、標的(ヒプノック)をしっかりと見定め、なおも威嚇を続けるヒプノックに威嚇で返した。

 

「よっし、俺たちも行くぞ!ニョロ!!」

 

 ボールから出てきたのは、一回り大きくなったニョロゾ…ではなく、ニョロボンというポケモン。

 筋肉質となった腕と、ニョロゾの時とは違う勇ましい目付き。以前会った時よりも経験を積んできた証とも言えるその姿に安心して背中を預けられると確信したアズール。

 それとは裏腹に団員達は一斉にポケモンを繰り出し、容赦の欠片も感じられない包囲戦を仕掛けた。

 

「…全く、僕一人ならともかく、子供二人相手に大人気ない!カグラ、軽く灸を据えてやれ!」

「ニョロ!手当たり次第にメガトンパンチだ!」

 

 カグラの突進が包囲網の一辺を弾き飛ばし、逃げ道を作ろうとするもヒプノックがその弾き出された箇所に狙いすまされた睡眠液を吐き出し、逃げ道を塞いだ。

 ならばとカグラは横に飛び、団員とそのポケモンごと頭突きで吹っ飛ばすも、またもやヒプノックは其処に睡眠液をばら撒く。

 

「無駄だ無駄だ!お前たちが逃げようとすればこのポケモンがそれを阻む!うっかりあれに触れようものなら…文字通り、ぐっすり眠ることになるだろうよ!」

「…アイツの言う通り、あの靄には触れないように。触れた瞬間眠気にやられる事になるよ」

「わかった!……けどアイツ、それ言ったら警戒されるだけなのに、何で言ったんだろ?」

「…此方が知らないと思ってるから、だろうね」

 

 または、余裕であるか故に敵に塩を送ってもさして影響はないと勘違いをしているかとアズールは予測したが、その通りだった。

 慢心に満ちた団員はカグラとノノをたかが狼のポケモンだと高を括り、笛の音を奏でる。

 呼応するようにヒプノックが慌ただしく跳び上がったと思うと、次の瞬間狂ったように睡眠液をばら撒きながら暴れ回りだした。

 

「うわぁ!?ぁ…あ………」

「んなっ!!ま、まて!味方を……ぐぅ」

「カグラ!」

 

 暴れ回るヒプノックを膂力で飛び越え、その刹那に鬣の雨をヒプノックの背に降らせることで背に損傷を与えるカグラ。

 当たることがないと油断していた箇所に攻撃を受けた事もあって暴れ回っていたヒプノックが大きく仰け反る。

 飛び越えたことで背後に回ったカグラが仰け反りに合わせる形で背中に刺さった鬣を押し込むように突進。

 背後からの一撃でバランスを崩して盛大にコケるヒプノック。見ている此方も痛々しい有り様ではあるが、同情する間もないアズールにとって、そのダウンはチャンス以外の何物でもなかった。

 

「もらった!」

「させねぇよ!行け、ケンタロス!!」

 

 ボールを構えたアズールを妨害するようにケンタロスがアズール目掛けて突撃し、反応が遅れ、ケンタロスの突撃をもろに喰らったアズールがブルーの隣までふっ飛ばされてしまう。

 

「っ、だ、大丈夫!?」

「……ゲホッ、何とか。突き飛ばされるのには慣れてるからね」

「…ごめんなさい。アタシも戦わなきゃいけないのに」

「無理矢理連れてきた僕にも責任がある…けど、コレを切り抜けたら聞かせてもらうよ」

「……わかった」

「ノノ、引き続きブルーを守ってくれ」

 

 アズールの指示に頷き、警戒を継続するノノ。

 ポケモン達もノノがどれほどの実力者なのか分かっているのか、迂闊に近付こうとはせずに様子をみる形で攻撃の機会を伺っている。

 その様子に「任せたぞ」と一言添えた後に呼吸を整え、レッドの隣へと戻るアズール。

 

「大丈夫か、兄さん」

「何とかね……さぁて、反撃開始といこう」

「おう!」

 

 まだまだ戦う意思を見せる二人に苛立ちを隠せないロケット団員達。

 二人はまだ気付いていないが、団員達のはるか後方には眠鳥を使いこなせていない団員をほくそ笑む様に眺める赤衣の男が。

 

「やはり…末端の雑魚では操れないか。仕方がない、折角の機会でもあるし……私も少しだけ力を貸すとしよう」

 

 ──正体不明(・・・・)の力でね。

 

 ほくそ笑む表情から邪悪な笑みに切り替わった男のすぐ背後では、背後で黒い靄が渦巻いており、その靄の中で2つの紅い光が唸り声をあげていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。