ポケットモンスターSpecial Frontier 作:400円
ロケット団とアズール、レッドの戦闘は苛烈を極めていた。
ニョロの剛腕がロケット団のポケモンを投げ飛ばしたと思えばその投げ飛ばされたポケモンをカバーするように他のポケモンが横槍を入れることで追撃を阻止し、反撃の一手を打とうとすれば今度はアズールの指示で同じ事を繰り返す──どちらも決定打に欠けている状態で、一進一退の攻防が繰り広げられていた。
それでも数の差をものともしない二人の勢いに徐々に押されつつも、ロケット団員達が折れずに立ち向かえているのはヒプノックの存在が大きいからだろう。
コイツがいれば負けることはない──ヒプノックには少々重すぎるのでは?とメゼポルタのハンター達がコレを聞いたら百人全員が頭に疑問符を浮かべることだろう。
「ニョロ、冷凍ビームでヒプノックの動きを制限するんだ!」
「カグラはニョロの援護に回れ!」
ニョロの手から凍てついたレーザーがヒプノックの脚目掛けて発射され、着弾した瞬間にヒプノックの脚が氷像につつまれ、動こうにも動き辛い状況へと持っていかれる。
その間もカグラは強靭な身体を活かしての攪乱と相手の隙を見つけては隙に乗じる形で仕留めたりと、ニョロへ攻撃が飛んでこないよう軽やかな立ち回りで相手を翻弄する。
(相当ダメージも蓄積されているはず、もう少しだ…!)
終わりは見えてきた。そう希望を抱くアズールの期待は次の瞬間、無惨にも打ち砕かれることになる。
「おい、なんだあれ!?」
ロケット団員の一人が上空を指さすと、そこには突如現れた黒い靄が不気味に漂っていた。
その黒い靄はヒプノックの頭上に現れ、次の瞬間──
「な、なんだ…!?」
(黒い靄がヒプノックを覆った…!?あの黒い靄は一体…)
「やはり。キミ達では
「…お前は……っ!」
ロケット団員達の合間を縫うように現れたアズールには
赤衣の男もアズールの事を知っているのか、気味の悪い笑みを浮かべながら「また会えて嬉しいよ」と心にも無いお世辞を述べる。
「久しぶりだな、試練を越え続けるハンター」
「…じゃああの靄は、まさか!!」
「おおっと、アレのタネ明かしはもう少し後だ。悪いが……
飄々とした態度から一変して威圧感を曝け出す赤衣の男がアズールに向けて凄むと、口にモノを詰められたかの様にアズールは声が発することができなくなる。
「……っ!っ!!」
「ハハハ、なかなか面白いな。まあ安心したまえ。未来永劫そうなるのではなく一時的なものだ。さて……」
赤衣の男はレッドとノノに守られているブルーをじっくりと眺めると、一言「素晴らしい」とアズールに向けたお世辞とは別の、本心からの発言だった。
「まさか、外の地方にもこんな逸材がいようとは!」
「……な、なんだ…?」
「失礼。私は"赤衣の男"。見た目どおりの存在だ。キミ達がロケット団と相対するのであれば……私は敵ということになるね」
「なっ…!?何でロケット団の味方なんかしているんだよ!そいつらは「悪いやつ、だろう?」…っ」
「そんな事は分かってるさ。だが私は根っからの
今もなお言葉を発する事が出来ずに奥歯を噛み締める思いをしているアズールを見ながら、赤衣の男は「だからこそ試す価値がある」と言葉を綴る。
「キミ達が私の嫌いな人間かどうか……をね。早々に諦めてくれるのであれば、私の好感度はうなぎ登りだが…どうかな?」
「諦めるもんか」
「………アタシ、だって!」
「
「(……喉の違和感が消えた!)二人とも気をつけろ!あの靄は……!!」
危険だ。アズールがそう叫ぶ前にヒプノックを覆っていた靄が晴れた──そこには、物言わぬ無惨な肉塊と化したヒプノックを踏み付けながら捕食する黒い竜のような何かが。
既にリオレウスを目の当たりにしていたレッド、ブルーは"ソレ"が視線に入ってもまた別のリオレウスとは思わなかった。
──何かわからない。二人が抱いた感想はそんな漠然とした内容で、唯一の例外であるアズールも過去の交戦経験の記憶がなければ彼もまた二人と同様の感想を抱いていただろう。
それこそが黒い竜の特徴だと知るのはこの場では赤衣の男のみなのもあって、その異質さがより一層極まる。
当の黒い竜はアズールの敵意に晒されながらもやる気が無さそうに欠伸をしていた。
(やっぱり、Unknown…!くそ、ヒプノックに釣られたのか!?)
「ヒプノックが…味方じゃなかったのかよ!?」
「味方だとも。だからこそ糧になってもらったのだよ……この飛竜の、ね」
「…酷い」
「そ、そんな……Sleepが…!」
二人が苦言を呈する中、目に見えて狼狽えだすロケット団員達。黒い竜──Unknownを見て腰を抜かしたり、逃げ出したりするものもいればSleepという貴重な戦力を喪った事への焦りを見せる者、今後起こるであろう結末に周りの視線も気にならないほど慟哭する者と、三人と赤衣の男を除いて文字通りの絶望を抱く者しかそこにはいなかった。
そんなロケット団の様子を見て赤衣の男はとても嬉しそうに口角を上げ、嬉々として慟哭する団員の髪を掴み上げてその理由を綴る。
「これが、私がロケット団に手を貸す理由だ。理不尽な出来事で未知の力を取り上げられればこの彼の様に慟哭し、みっともない姿を曝け出す。運命に抗おうとせず、ただ訪れるであろう結末に絶望するしかない……これこそが、私の大好きな人のあるべき姿だと思わないか?」
「これっ…ぽっちも!!共感できないぜ!」
外道の極みに怒りを隠すことなく前面に押し出すレッドと、応えこそしなかったものの怒りの感情を顕にするブルー。
二人の感情を一身に受けてもなお余裕の表情を崩さない赤衣の男は掴み上げていた団員を乱暴に離すと「それでは始めよう」と指を鳴らした。
すると先程までやる気がなさそうだったUnknownの目付きが変わり、血で染め上げた様な瞳が三人を見据える。
「本来であればキミ達二人に行うものだが…私は器が広いのでね。初回特典としてそこのハンターも特別に試練への参加を許可してあげよう」
「何が試練だ…!レッド君、ブルー、決して油断しないように!」
「わかった!!」
「ええ!」
Unknownのタマムシシティ全土を覆うような悍ましい咆哮が轟く。
咆哮に晒されたであろう隠れていた野生のポケモン達は一斉に逃げ出し、身構えていなかったロケット団員達は背筋を凍らせて一目散に逃げ出す。
「ニョロ、まだいけるか?」
「カメちゃん…お願い!」
「カグラ、ノノ。其々レッド君とブルー、及び二人のポケモンのサポートに回るんだ…
苦肉の策ともいえるドラギュロスの投入を決意したアズールにドラギュロスを一度見ていたブルーはUnknownがリオレウス以上に危険であるのだと悟る。
避難させる余裕すらない──そんな中でもブルーが不幸中の幸いだと思ったのは、Unknownの咆哮で野生のポケモンが逃げたことで被害が及ぶのは少数に抑えられる事くらいだった。
「レッド君、ブルー。二人に其々カグラとノノをつける。二頭が合図をしたらすぐにその場を離れるように。最悪カグラとノノが咥えてでも連れて行ってくれるけど…それだけは心掛けてくれ」
「兄さんは?スターミーしかいないんじゃ…」
「いや、スターミーとカラカラ…後は、使いたくないけど使うしかない切り札が一体」
「……?」
「とにかく、合図があったら下がって。それとその際にはポケモンもボールに戻すこと。合図を無視したら確実に瀕死になるよ」
「り、了解!」
「ブルーも。キミは一度見てるから分かるかもしれないけど」
「分かってる」
「……作戦会議は終わりかな?私達もそろそろ待ちくたびれていた頃だ。まだだというのならもう待たないが……まだかい?」
赤衣の男が痺れを切らす一歩手前まで来ていた所に、三人はポケモンとモンスターを繰り出した。
レッドはニョロを、ブルーはカメちゃんを。そしてアズールは──ドラギュロスとカラカラを繰り出す。
ドラギュロスの背に乗るように現れたカラカラをアズールら意外そうに見るも、戻すには高すぎる事もあってやむを得ずそのままに。
カグラとノノは指示通りに二人の傍につき、ドラギュロスの決死の一撃にいつでも動けるようにその場で構える。
「……おっと、私としたことが忘れていた。万が一の事態に備えておかなくては」
わざとらしく思い出した素振りを見せ、赤衣の男が指を鳴らす。
するとヒプノックの時と同じように黒い靄が広範囲に広がり、簡易的な決戦場が出来上がった。
「逃げる選択肢を取る人は好きだが……この試練においてそんなマネはさせるわけにはいかないのでね。さぁ、試練の始まりだ……!」
嬉々として手を広げる赤衣の男に呼応するようにUnknownが再び咆哮を轟かせる。
未知の黒影との戦闘が、幕を開けた──
モンスター解説
・ヒプノック
眠鳥。睡眠効果のある液体を吐き出す害鳥。ハンターの相手としては序盤の相手で、一部種類を除いて睡眠以外は特にややこしいことはして来ない。本編では噛ませ犬として出した。
・Unknown
オリジナルモンスターではなく、本当にMHFでUnknownで名前が通っているモンスター。一応「ラ・ロ」という名前もあるそうだが、大体モンハンのUnknownといえばコイツ。
見た目は黒いリオレイアだが、そのスペックはリオレイアではとても太刀打ち出来ないスペックを誇る。