ポケットモンスターSpecial Frontier 作:400円
翌日。ニビシティジムに挑戦を決めたアズールは早速ジムへと足を運んだ。
昨日の聞き込みが別の形で功を制し、道に迷うことなくジムへ辿り着くことができたアズールは早速受付に自身の名前を書き込む。
間もなくして名前を呼ばれたアズールはジムのリングへと案内され、リングに上がると対面には挑戦者を迎え撃つべく立ちはだかるトレーナーと見たまんまの石のポケモン。
こういう時のポケモン図鑑かとアズールは図鑑を取り出し、石のポケモンについての情報を参照すると「ゴローン」という名が表記されていた。
かかってこいと挑発するトレーナーに乗る形でアズールも自身の仲間が入ったボールを放り投げる。
遠吠えと共に現れた響狼こと「カグラ」に観客の注目が集まり、それを使役するアズールにも観客の興味が集まっていく。
メゼポルタ地方ではよく見る響狼も外の地方の人達からすれば希少種なカグラを見る観客の大多数は「なんだあのポケモン!?」と驚愕しており、同時に何をするのかという期待の眼差しを向けていた。
そんな周囲の視線を意に介さずに眠そうに欠伸をするカグラ。
余裕綽々な態度に腹を立てたのか、トレーナーが開始の合図もなくゴローンに自慢の体躯を駆使した突進を指示する。
見た目通りの岩石が余裕ぶったカグラに直撃し、突然の攻撃にカグラがよろけてしまう。
不意打ち同然の一撃に反撃するようにカグラもその体躯を活かしたタックルをゴローンにお見舞いし、ついでと言わんばかりに後ろ脚で蹴りを入れつつ、後方へと下がる。
名前の様にゴロゴロと転がり、リングのポールに激突し、目を回すゴローン。たった二撃、それもただぶつかって蹴っただけでジムトレーナーのポケモンを気絶させたという事実はカグラとそれを操るアズールの注目をより浴びさせるには十分過ぎる成果だった。
(……これも情報のためなんだ、悪く思わないでくれよ)
次の試合の準備ということで、一旦リングから出るよう指示されたアズールはノビているゴローンと想定外の事態に開いた口が塞がらないトレーナーに内心謝罪しつつも降りたその場で待機する事に。
ふとアズールが上を見上げると、リング会場を一望できる特別部屋のような場所に、上半身裸で腕組みしながら試合の行く末を見守る青年が。その背後には先ほど見たゴローンより一回り小さい岩のポケモンや、岩で出来た蛇のようなポケモンも一緒になって試合を見逃すことなく見続けている。
アズールがその人物こそジムリーダーなのだと気付くにはそう時間は掛からず、彼が情報を持っていることを願っている内に再びアズールがリングに立つ時間が回ってきた。
向かいには屈強な男が今か今かとやる気に満ちた表情でアズールを見据えており、彼の側にはジムリーダーも従えていた一回り小さい岩のポケモンが数匹。無論このポケモン達もやる気に満ちているのは言うまでもない。
「最初のヤツはあっさりやられたが、俺はそうは行かないぜ?」
「……御手柔らかに」
そう言って再びカグラを繰り出すと、先の試合が目覚まし代わりになったのか既に臨戦態勢で身構えるカグラが其処にはいた。
そして試合開始のゴングが鳴り響くと、カグラとポケモン達は一斉に飛び出した。
────
ジムリーダーのタケシは普段よりも一段と滾っていた。
その理由は今目下のリングでイシツブテ三匹に勇敢に立ち向かう見たこともないポケモンと、それを従えるトレーナー。
間違いなく自分への挑戦権を勝ち取る彼らの存在はタケシの燻っていた闘争心に火をつけるのに十分な実力を持っている。
「お前も滾るか、イワーク」
タケシの呼びかけに応える岩蛇ポケモンことイワーク。久しぶりの自分の出番が楽しみなのか、グラグラと揺れている。
それが武者震いであるとすぐにタケシは理解し、「オレも同じだ」と微かに震える腕を見せながら、あっさりと勝ち進んだトレーナーに期待の眼差しを向ける。
「さあ来い。オレは逃げも隠れもしないぞ!」
勝利を申し訳なさそうにするトレーナーに向けてニヤリと口を緩め、来る決戦に闘志を燃やし続けているのであった。
────
着々と勝利を掴み取り、挑戦権への駒を進めるアズール。
覚醒したカグラの前では並居るポケモン達は敵ではなく、まさに疾風怒濤の勢いで次々とジムトレーナーを倒し続ける。
「勝者、アズール選手!」
そうして半ば作業と化していた挑戦権の獲得戦も終わりを告げ、アズールはジムリーダーへの挑戦権を掴み取った。
山程いたであろう他の挑戦者達は肩を落としていたり、不完全燃焼な状態でジムを去っていったらしく、その日唯一の挑戦者として観客からの期待も高まっていた。
「待っていたぞ、挑戦者!」
現れたのは先ほどからずっと試合を見ていた青年と、岩が連なった巨大なポケモン。
やっぱりかと思っていると、青年は力強く自身の名を「タケシ」と名乗る。返す様にアズールも自身の名を名乗り、タケシの気迫に感動を覚えた。
「……ちょっとでも気を抜けば気圧されそうだ」
「フフ、それは此方も同じだ。見たことの無いポケモン……油断すれば一瞬で倒すキミのポケモンはオレの相手にとって不足はなし!正々堂々、ぶつかり合おうじゃないか!」
少し暑苦しさこそあるが、悪い暑苦しさではないと思いながらもアズールはタケシのお望み通りにカグラを繰り出した。
カグラの登場に「来たな!」と口元をニヤリとしたタケシは背後のポケモン……イワークを対峙させる。
数秒の睨み合いの後にカグラが飛び掛かるも、見た目通りのイワークの頑強な岩の身体には傷一つついていない。
(そりゃそうか。さっきのイシツブテやゴローンとはレベルが違って当然だ……手間取りそうだな)
「無駄だ!オレのイワークの身体に傷をつけれる奴はいない!イワーク、お前の尻尾を叩きつけてやれ!」
遠心力の伴ったイワークの尻尾がカグラの胴体にクリーンヒットし、弾き飛ばされ転げるカグラ。
その一撃に腹が立ったのか、カグラはその場で一際大きな雄叫びをあげると、カグラの口元から黒い吐息が漏れ出していた。
「……本気を出してくるか!」
「カグラ、距離を取りつつ鬣を飛ばすんだ!」
アズールの指示通りに大きく跳躍し、空中で縦に回転しながら硬質化した鬣をボウガンのように飛ばす。
その内のいくつかはイワークに被弾し、体躯に突き刺さる。
「ならば!この体躯を活かした最後の一撃を浴びせるまでだ!イワーク!ロケットずつき!」
蜷局を巻いていたイワークが自身の身体をバネのように伸ばし、鈍重そうな体躯から想像もつかない速度でカグラへと接近する。
その勢いを助長するようにイワークの周りには風圧が渦巻いており、逃げることも容易に接近することも許さない。
ひとたまりもない一撃が今まさにカグラへと直撃する寸前、カグラの負けで終わったと確信した観客達とは違ってアズールは自身の勝利を確信する。
「駆けろ、カグラっ!」
三度雄叫びを上げたカグラは襲い来るイワークの真正面に立ち、大きく開けた口から風圧を纏った空気の弾丸が放たれる。
勢いよく突進を続けるイワークに弾丸を避ける術は無く、自慢の岩の身体は風圧と弾丸の威力でバラバラに吹き飛んだ。
「……!」
「……よし!」
一瞬の静寂を経て、ジム内が大歓声に包まれる。
その最中、タケシは真っすぐにアズールのもとへと歩み寄り、一言「完敗だ」と言いながら握手を求め、断る理由もないアズールは「情報のアドバンテージがあったからだよ」と謙遜も混じえてしっかりと握手を交わした。
この試合がきっかけとなり、後に「謎の狼ポケモン使い」としてアズールは噂の人となるのだが、本人がそれを知るのはもう少し後のことである。
モンスターの強さですが個体値で表すと
一般大型 大体500〜580程度
古龍級 600族
古龍 順伝〜伝説
一部古龍 ムゲンダイマックス
という形になります。