ポケットモンスターSpecial Frontier 作:400円
アズールがリオレウスに追いつく数分前。
ニビシティのポケモンセンターはリオレウスの放つ炎雨に襲われた。勢いを持って発射される火球はみるみるうちにポケモンセンターを破壊し、アズールが到着するころには既に瓦礫の山と化しており、その中のいくつかはリオレウスの放った炎が着火したままの状態で、メラメラと揺らめいていた。
「……っ!」
息も絶え絶えな状態でリオレウスに追いついたアズールは瓦礫の山となった建物に目を見開き、すぐさまカグラとノノを繰り出し、応戦の指示を2匹に送った。
脅威となる外敵の出現に気づいたリオレウスは振り向き、喉元を唸らせながら2匹に対して威嚇。2匹も負けじと唸り、一触即発の空気があたりに漂う。
やがてしびれを切らしたリオレウスが一際大きな咆哮をあげると、それが合図となってモンスター同士の戦闘が始まった。
我先にと飛び出したのはカグラ。リオレウスにタケシとの戦いでも見せた鬣を直線上に飛ばす攻撃を浴びせる。
しかし、リオレウスは予め蓄えていた炎を吐き出すことで鬣を燃やし、攻撃の威力を削ぎ落とした。
カグラ1頭だけならば、この攻撃無効の隙を突かれて手痛い一撃を貰うところだったが……ノノがそれを防ぐかのようにすかさず大きく跳躍し、リオレウスの真上から重力も加わった自身の体躯を押し付け、反撃の一手を封じた。
メゼポルタでオルガロン種が脅威とみなされる2匹の連携。お互いがお互いの隙を埋める様に行動し、矢継ぎ早に次の一撃を差し込む事で休む暇も反撃の一手も許さないのがオルガロン種の狩りのスタイルだ。
だが、これで倒れるような軟なモンスターではないのがリオレウス。背にのしかかるノノを振り解こうと暴れ回る。
するとノノが何かを察知したのか、リオレウスへの妨害を中断して大きく距離を取った。
次の瞬間、煙に巻かれた夜空からリオレウスの行動をさらに制限するように岩が降り注ぐ。瞬間的に背後を振り向いたアズールの視線の先には別れたはずのタケシとイワークがどっしりと構えていた。
「岩落としでヤツの行動力を奪うんだ!」
「キミは!来てくれたのか!」
「ポケモンセンターに火災が起きていると聞いてな。急いできてみれば……おのれ、よくも俺の街を!」
血が滲み出そうな程拳を握り締め、リオレウスに怒りを向けるタケシ。イワークも同じ気持ちのようで、指示されるまでもなく岩落としを継続させてリオレウスにぶつけている事から相当怒っているのが容易に理解できた。
しかし、それが逆にリオレウスの怒りの炎に油を注ぐことになり、耳を塞いでしまうほどの咆哮を放った直後に炎を吐きながら大きく後ろに飛び下がる。
その際にイワークの岩落としで発生した岩が利用され、炎で赤熱化した上に風圧で飛ばされた岩がこちらに襲い来る。
「イワーク!」
タケシの呼び声に反応し、咄嗟に岩とアズール達の合間に立ち塞がる事で緊急のバリケードとなったイワーク。
大丈夫なのかと問うアズールに「問題ない!」と豪語するタケシ。実際イワークも何ともないらしく、何事もなかったかのように再びリオレウスを睨みつける。
リオレウスもまた、痛めつけられたことに怒り心頭なようで口からより一層炎が漏れ出していた。
カグラとノノも隙さえ晒せばいつでも仕掛けられると身構えていた矢先に、場違いにも程がある笛の音が鳴り響いた。
「……笛の音?」
「見ろ!リオレウスが!」
笛の音を聴いた途端、リオレウスは先程までの怒りは何処へやら。興味を無くしたように煙が舞う夜空へと飛び立った。
まるで"帰ってこい"とでも言っているように鳴り響いた笛の音に"使役している誰かがいる"と勘付いたアズールはすぐに周囲を見渡すもそれらしい人影は見当たらない。
文字通りリオレウスに煙に巻かれた以上追跡は困難だと判断したアズールはタケシへの礼も兼ねて被害を受けたポケモンセンターの事後処理を手伝うことにしたのであった。
────翌日。
アズールより一足遅く訪れたレッドの幸運は最悪の一言に尽きた。
なにせ用があったポケモンセンターは昨夜のリオレウスの襲撃により木っ端微塵の廃墟と化してしまい、復旧にかなりの時間を要するのだから。
あんまりな出来事にレッドも唖然としていると、彼の視線の先で復旧作業を手伝うアズールがいた事に驚き、思わず声をかける。
「アズールさん!?な、何してんだ!?」
「おや、レッド君じゃないか。ご覧の通り復旧作業さ……昨日色々あってね……もしかして、センター利用したかった?」
その問いにレッドはうん。と頷く。
ジムチャレンジに万全を期す為、元々体力が減っていた自身のポケモンを回復させようとしていた矢先で今に至る。
唯一元気なのは昨日捕まえたピカチュウというポケモンのみらしいが……言う事を全く聞かないらしく、戦ってと頼んでもそっぽを向く問題児だと語るレッド。
何とかジム開始のギリギリまで特訓をするも、成果は見合わずピカチュウとの関係は変わらずじまいだった。
「……こーなったら、全部先制攻撃でやるしかないよな」
「無傷で勝ち進むなら、そうなるね。でも難しくないかな」
「まーね。でも負けたくない相手がいるからさ」
「……そうか。なら一つだけアドバイスを。キミの捕獲したピカチュウに"戦闘の義務はない"よ」
「?」
「キミがピカチュウと仲良くなる秘訣。ポケモンが大好きなキミなら、その意味もすぐに理解できるさ」
「うーん……そっか」
「そういう事さ。さて……ジムの挑戦しに行くんだろう?陰ながら応援させてもらうよ」
「へへっ、サンキュ!そうだ、アズールさんも観に来てよ!俺の活躍、スッゴいからさ!」
絶対後悔させないよ!と意気込みを見せるレッド。
レッドの実力に興味があったアズールは「それならば遠慮なく。キリがついたところで呼ばれるよ」と観戦の約束を取り付けた。それに上機嫌になったレッドは去り際に「絶対に来てくれよー!!」と叫びながら足早にジムへと駆け出すのであった。