ポケットモンスターSpecial Frontier 作:400円
誰かと言われると僕は青が好きです。そういう事です。
次の目的地が決まったレッドとアズール、少女の3名。
少女も同行することにレッドは驚いたが、少女は自身がそれなりに戦えることを告げると、自身の名前を明かした。
少女の名は「カスミ」。
お月見山を抜けた先のハナダジムのトップを務めているのだが、二人がそれを知るのはもう少し後のことである。
その一方で、お月見山の洞窟付近では──
全身黒ずくめの人相の悪い集団が入り口を守るように周囲を警戒していた、胸元には赤いRのマークがプリントされており、知る人が見ればその集団が「ロケット団」の一員であることが一発でわかる。
そのうちの一人が通信機で内部調査に取り掛かっている他の団員と通信を取っており、その内容はオーキド博士が予想した通りの内容だった。
【月の石はまだ見つかっておりません】
「よし、引き続き探索を続けろ。邪魔をする者がいたら……わかっているな?」
そう言い、通信を終える。
邪魔する者。人間は勿論、その対象には"ポケモン"も入っている。研究によって力を得たポケモンを倒せた場合は、その限りではないが大半のポケモンはそれが出来ないと団員達は信じ切っているため、大半のポケモンは"駆除"という扱いになる。
もっとも、万が一の事も想定して組織から"笛"の使用許可を得ている人物が捜索班にいる。これを万全の状態と表さずになんというか。
無論、こう思っているのはこの団員だけではない。お月見山を調査しているほぼ全員がこの作戦の成功を確信していた。
──場面は戻って、レッド達はというと。
カスミを先頭にお月見山への道を駆け抜け、そう間もないうちにお月見山へと辿り着いた3人だったが、入り口前で監視を続けている大勢のロケット団を見るやいなや、咄嗟に草むらへ身を隠す。
(あの連中……ニビシティにもいたな)
「……なーんか見覚えあるなぁ」
「あいつらがロケット団かしら……?」
「恐らくは。でもどうするかな……」
「どうする?」
「ポケモンを強化するのに重要な力を持つ月の石があるんだ、引き下がる訳にはいかないぜ!」
「……なら、こうするしかないね」
そう言い、アズールはロケット団員達の前に躍り出た。
「何だお前は?」
「何だお前はと聞かれたら、答えてあげるのが世の情け……なんてね。貴方達に聞くべきことがあるんだけど……」
「フン、ガキに教える事などなにもない。大人しく帰るなら、痛い目を見なくても済むぞ?」
「だと思った。それなら……力ずくで聞くしかない!」
カグラとノノを繰り出し、真っ向からロケット団員達に喧嘩を売るアズール。ロケット団員達も退く気がないのならと其々がポケモンを繰り出し、袋叩きにせんと襲い掛かる。
すぐにでも加勢したいレッドだったが、騒音に混じってレッドの図鑑から何かを受信したような音が鳴り、取り出すとアズールからのメッセージが。
【僕が引き付ける。キミ達は中へ行くんだ】
「……わかったぜ、兄さん!」
「ちょっと、助けなくていいの!?」
「それが兄さんの作戦だよ!いいから中に!」
カグラとノノ、そしてアズールが入り口とは逆方向で暴れ、団員達の注意を逸らしている間に、レッドとカスミはお月見山の内部へと侵入する。
それを見たアズールは僅かに口元を緩め、心置きなくカグラとノノの全力を振るう。
「なんだ、このガキ!?」
「見たこともないポケモンを使うぞ!?」
(まさか……このガキが"言っていた奴"なのか!?)
「聞けばそっちは無法者らしいね。ならば、此方も遠慮はいらないだろう?」
「たかがガキ1人とポケモン2匹で何が出来る!?」
「出来るさ。少なくとも貴方達を制圧するくらいはね」
自信に満ちた表情と、その自信を証明する様に次々とポケモンを倒してゆくカグラとノノ。
このままでは全滅だと焦ったロケット団員の一人がならばとアズールに狙いを定め、ポケモン達にアズールを集中攻撃するように指示を送るのを見て、「思ったとおりだ」と襲い来る攻撃を最低限の動きで回避し続けながら、ロケット団の容赦なさに情けないとアズールは内心で呆れる。
(まあ、それは僕も同じか)
「ズバット!毒針!」
「ベトベター!ヘドロ攻撃!」
「カグラ!ノノ!手当たり次第にポケモンを殲滅!その後はあの黒服どもを死なない程度に気絶させろ!」
アズールの指示に呼応するように吠えるカグラとノノ。
ポケモンの技の合間に襲い来るロケット団員を穿龍棍で培った体術を駆使しつついなす。
カグラとノノもまた一糸乱れぬ連携で攻撃を回避しつつ、アズールに攻撃が飛んでいかないように絶妙な位置取りで戦闘を続けていた。
──その一方で、レッド達。
アズールの陽動もあってすんなりと中に潜入する事が出来た2人だったが、洞窟内が暗すぎることもあって何処へ向かっているのかが不明瞭な状態だった。
打開策はないかと考えた矢先、閃いたレッドはピカチュウを繰り出すも、いつも通りの不機嫌そうな様子で現れる。
その様子を見て大丈夫なのかと不安を抱くカスミに、捕まえたばかりだから仕方ないと説明するレッド。
「でも実力はお墨付きさ!頼むぜ、思いっきり明るくな!」
それでも何だかんだ指示を聞き入れ、洞窟がピカチュウのフラッシュによって見落としが良くなり、2人の足取りも軽やかになった。
転ぶ心配も無くなったのか、調子に乗ったレッドは後ろ歩きで進んでいると、案の定背中から何かにぶつかる。
「いてて……何でこんなとこに岩があるんだよ……」
「まって、それ岩じゃない……!」
ぶつかった岩ではない何かが、ギロリとレッドを睨む。
それに驚いたレッドが大きく後退ると、岩らしきものの正体が明るみになった。
とげとげポケモン、サイホーン。妙に愛嬌のある分類名とは裏腹に、その体躯は岩のようにごつごつとしており、とてもじゃないが可愛いとは言い辛い。
「ダメじゃないか、子供がこんな所で彷徨いてたら……」
そんなサイホーンの裏からゆらりと男が現れると、続々とロケット団員達が姿を現し、レッド達はあっという間に包囲されてしまった。
普通の子供であれば怯えてしまうところだったが、正義感の強いレッドは寧ろ奮いたっており、物怖じすることなく一歩前へと歩み出た。
「お前達、ロケット団だろ!」
「……ほう。我々の事を知っているのか。外の子供といい……随分と我々の名前が知れ渡っているようだが……」
(外の子供……兄さんの事か!)
「貴様ら……何者だ?」
睨みをきかせながら問いかける男に「答える必要はない!」と一蹴してピカチュウを戦闘に出す。
それが合図となり、ピカチュウとサイホーンの戦闘が幕を開けた。
「サイホーン、岩落としだ!」
先制を取ったのはサイホーン。口から無数の岩を吐き出し、瞬く間にピカチュウは岩山の中に閉じ込められる。
呆気ない勝負だなと慢心するロケット団員達だったが、サイホーンを使役する男だけはまだ終わっていないと確信していた。
次の瞬間、岩山からピカチュウが飛び出し、自身の電力で小さな岩を収束させ、尻尾で勢いよく弾き飛ばす。
電力で威力の増した岩石の散弾は見た目通り鈍重なサイホーンに直撃し、一気に戦闘不能にまで体力を持っていかれた。
「俺のピカチュウは聞き分けは悪いが強いんだぜ!!」
今度はレッドがロケット団員達と同じように呆気ない勝負だったと慢心を抱く中、男は勝負の結果を鼻で笑いながら「仕方のない子供達だ……」と懐から注射器と"赤い笛"を取り出す。
「本来であれば、このサイホーンをコイツで進化させて痛い目を見てもらうつもりだったが……貴様らは運が悪い。いや、良いのか……どちらでも良いことか」
「その注射器で……!?まさか貴方達、私のギャラドスにもそれを……!!」
「ん?何だって?ああ……さてなァ?実験はそこら中でやったからな。一々覚えてるワケがないだろう?」
挑発的な態度かつ、自分達がやりましたと自白しているような仕草でカスミを煽る男。隠す気のない回答に怒り心頭なカスミは堪らずヒトちゃんを繰り出し、バブルこうせんを浴びせようとするも男は咄嗟に動けないサイホーンを盾にする事で攻撃を回避する。
「危ない危ない。人を狙うとは野蛮だなァ?」
「主人のために戦ったポケモンを盾にするなんて!!」
「盾?盾か……言い得て妙だな。確かに役割としては間違ってないかな?ハハハ!」
「……てめぇ……!!」
「さて、此方も忙しいのでな。ロケット団に歯向かえばどうなるか……身を持って知ってもらおうじゃないか!」
そう言い、男は笛の音色を奏でた。
まるで怪物が鳴き叫ぶような嫌な響きの音色が洞窟内で木霊したと思えば、次の瞬間、笛の音よりも遥かに悍ましい怪物の叫びが返ってくる。
鳴き声というよりは最早"咆哮"のソレは、ロケット団員達側の洞窟の奥からゆらりと炎を揺らめかせながら姿を現す。
「なに、あれ……!?」
「フフフ、先日組織にとある人物が現れてな。是非組織にとこの笛と此奴を寄贈してもらったのだよ」
(あれは……兄さんが探しているポケモンじゃないか!!)
現れた
その理由はリオレウスの放つ絶対的な威圧感。味方である筈のロケット団員達も威圧感に晒されたせいで足が竦んでいる団員がちらほらといる。
かろうじてカスミとレッドは気をしっかり持ちながら、目の前の怪物を見据えるも勝てるビジョンは全く見えなかった。
(……どうする!?今の俺じゃ、勝てない……!)
アズールを待つにしても、いつ来るかもわからない増援に期待している間にリオレウスは確実に此方を仕留めに来る。
幸い、洞窟内と言うこともあってリオレウスは窮屈そうにしており、すぐにでも外に出たそうにしていた。
(洞窟……そうか!)
「さて、そろそろお別れの時間だ。赤き竜よ、奴らを消しズミにしてやれ!」
男の合図とともに、リオレウスは咆哮を轟かせる。
背中を見せずに立ち向かう事を決めたレッドと、異邦の火竜との戦いの火蓋が切って落とされた瞬間であった。
用語解説
・【赤い笛】
見た目はまんまMHシリーズの【火竜笛アンビシオン】。
大きさは手のひらサイズ。
笛を吹いたものの前に火竜が現れ、一定時間が経過するか笛を吹いたものがもう一度吹く、または使用者が気絶等の意識不明状態になった場合、呼び出された火竜は撤退する。
ただし、あるアイテムを使った場合はその限りではなく、火竜が行動不能になるまで火竜は撤退しなくなる。