「申し訳ありません。
妊娠いたしました……。」
リーリャの報告がゴングとなり今、始まったのだ。
家族会議という名の試合が。
「……それで…?」
「奥様の出産を見届けてからおいとまさせていただきます。」
「…………」
「……っ。」
「…………」
気まずくて長い長い時間が続いた。
次に誰かが話し始めた。
「いいわ……」
ゼニスだ。
「ここに滞在しなさいリーリャ。
家族を失うなんてことは許しません。」
「……え?」「……は?」「……へ?」
三人とも困惑しだした。
それは勿論だ。
前回とは全く違う展開だ。
ゼニスは認めた。
なぜかゼニスはリーリャを認め、パウロを許したのだ。
「…俺、幻滅されたのか?」
パウロがショックを受けている顔をしている。
「それはどういう…?」
リーリャが問う。
「そのままの意味よ。
あなたは私たちの大切な家族だし、
幻滅したわけでもないわ。」
どういうこった。
それに唐突過ぎる。
少し寛大すぎないかゼニスさんよ……?
まさかヒトガミと関係が?
だがその後そんな邪念は消えた。
ゼニスが優しく、まるで昔話をするみたいに
笑顔で話し始めた。
「……私の子供はきっと頑張りやさんになるわ。
特に私に似て優しい子に育つわね。
大人になったら珍しい人と結婚して、
おしどり夫婦になるのかしら。」
「……えっ…………それって…」
俺の問いかけに構うことなくゼニスは続ける。
「リーリャの子供はきっとしっかり者になるわ。
リーリャの言い付けをしっかり守って、
頼りのある子にね。
……でも少しミスをしちゃって
リーリャを困らせたりなんかするかもしれないわね……」
「……母さん?」
「私、目が覚めたらルディが産まれた瞬間になっていてね。
すごく嬉しかったのよ。
もう一度……皆で話ができるっ…て。」
「奥様……?」
慌てた様子でゼニスは誤魔化した。
「い…いや、何でもないわ。
ただどんな子供になるかな~なんて考えてただけよ…。
それに変なことを言っちゃったわね…ごめんなさい。」
「……どんなになるかじゃないでしょう…?
"こうなった"……じゃないんですか?母さん。」
「えっ?ルディ…?」
「全て見てきたものなんじゃないんですか?それって。
母さんが……ずっと……ずっとずっと……!
対等に話が出来ることを望んだ……!
そんなものなんじゃないですか……?
ねぇ…………母さん……。」
「そ……そんなっ…ルディ……っ。」
「母さん。」
パウロがゼニスを慰めるように話した。
「俺は…結局どうしようもない奴だった……。
でもお前はずっと思っていてくれたんだろ?
愛人のことをよ……。」
「奥様…」
リーリャがパウロの話を肯定するように話した。
「私は奥様のそばで幸せな生涯過ごしてきました…。
ですので、また……こうしてそばにいられることは
私にとっての幸福なんです…」
「母さん……。
お久しぶりです。……そして…
お帰りなさいっ……!母さん!」
「ルディ…あなた…リーリャ……
ありがとう………いえ、こういうときは
ただいま…かしら?」
「ええ…おかりなさいっ…母さん…………!」
難しいことなんて一つも無かったのだ。
ゼニスははじめから記憶はあった。
誰にも打ち明けられないまま、悩む中でも
俺のことを気にかけてくれていた…。
母親というのは…
どの世界でも偉大なものなんだな……。
ゼニスの記憶が戻った。
正確に言えば打ち明けた。
それは明るい未来の幕開けであった。
だが同時に
苦難の幕開けでもあったことはまだ知らない。
前世の記憶のある人物
・オルステッド
・リーリャ
・ロキシー
・パウロ
・ザノバ
・ゼニス