現在俺は外出中だ。
シルフィと出会うためもあるが、
単純に散歩がしたかった。
もう一度この世界に来てからはずっと働いてたり
考えてたりしていたからな。
少しばかりの休養も大切だ。
それと、少し傷心中の心の癒しだ。
前回の戦いで腕が持っていかれた後、人前では
心配をかけないようにと強がっていた。
だが前を向いて進むことを決めたからには
ポジティブに行こう。
安いもんさ腕の一本くらい…………と
そうしているうちに人の声が聞こえた。
子供の声だ。……となれば…
「魔族は消えろ!」
「あっち行け!」
ご名答。シルフィをいじめている三人組だ。
叩き潰してやろうか、とも思ったがステイだ。
なにしろ、
今回はラブアンドピースで行こうと決めている。
だがちょーっと痛い目を合わないといけないな?
「強風(ウインドブラスト)っ!」
「ぐえっ!」
全員吹っ飛んで遠くの地面に転がっていった。
やりすぎたか…?
その後シルフィの側に駆け寄った。
「ちょっと屈んで!」
「えっ…?こう?」
「そう!」
と言いながら服の汚れを洗い流してあげた。
懐かしいな…シルフィとの出会いもこんなだった。
それにしても緑髪のシルフィも可愛らしいな……。
「…大丈夫?」
シルフィに声をかける。
と同時に確認。
額の宝石と記憶は……
「……あ、ありが…とう…」
どちらもなし。
前者はあってもなくてもよかったが、
後者はあってほしかったな…
だがシルフィが無事で本当に良かった。
「ところで名前は何て言うの?
僕はルーデウス、ルディって呼んで良いよ!」
まずは自己紹介。
これはジャパニーズスタイルの礼儀だ。
「…シルフィエット……」
今回はしっかり聞き取れた。
「そうか…ならシルフィだね!よろしくね!」
「うん…よろしくね……。」
その時
「てめぇ!何しやがる!」
吹っ飛ばした内の一人が立ち上がった。
「寄ってたかっていじめるのは良くないですよ?」
「うるせぇ!それにそいつは魔族だろ!」
最高にムカつく奴だな。
ヒトガミの次にムカつく。
ぶっ殺す……
という言葉を喉奥に抑え込んで話を続ける…
「彼女……シルフィはクォーターですから
魔族なんかじゃありませんよ。」
「くぉーたぁ?何だそれ?
……とにかく!そいつは魔族なんだよ!
それに髪だって……」
「強風」
「ぐわぁッ!!」
一回目より更に吹っ飛んでいった。
もう見えないところまで行ってしまった。
……いけない。
さすがに腹が立ってやりすぎてしまった。
…でもこの世界には自業自得っていう言葉があるんだぜ?
坊っちゃんよ。
そうして自分を正当化した後
シルフィに話しかけられた。
「……すごい。」
「あっ…ごめんなさいシルフィ、
穏便に済ませるつもりが……」
「全然大丈夫…!ところでそれどうやったの…?」
「それ…?」
「うん、風を出して人飛ばすやつ。」
ずいぶん物騒な覚え方をされたもんだ。
しかし今回はお湯の魔法じゃないんだな。
「知りたい?」
「うん……!」
なるほど。
これでシルフィとは知り合えたな。
あとは記憶の問題か……
───
ここはかつてシルフィと遊び、
最近までは会議室として使われていた大木だ。
そこで昔に教えたように
シルフィに魔術を教えている。
「体に流れる魔力を意識するんです。」
「うーん……ん~?」
葛藤しているな。
しかし可愛い。
かつての臆病シルフィも捨てがたいな。
「もっと!魔術の全てはイメージですよ!」
「ん~?難しいよ……」
「いえっ!シルフィなら出来ます!頑張って!」
「……わかった!」
「さあ、イメージです!」
「むむ~っ?」
ぶわっ
と少し風が吹く。
成功だ。
「あっ!」
「そうです!良くできました!」
「やったぁ!ルディ!できたよ!」
シルフィは天才だな。
今回も無詠唱を使えてしまうなんて。
「シルフィは天才です!」
「えへへ、そうかなぁ…」
───
「ところでルディ。」
「なんでしょう?」
「ルディって左腕ないのはどうして?」
「えーと……これは生まれつき…ですね。」
さすがにぼかしておかないと
ショッキングだし信じて貰えない。
魔王が攻め込んできて戦いの中で吹き飛ばされた。
なんて誰が信じるだろうか。
少なくともこのころのシルフィなら
信じて貰えるだろうが。
「そうなんだ……それさ、魔術で治せないの?」
「僕の知り合いなら可能ですが、
あいにく来れない状況なので。」
その時
シルフィが何か決心した様子で立ち上がった。
「……ならさ!僕がその腕治すよ!
頑張って魔術を習ってさ!」
そんなことを言ってくれるなんて…
さすがは俺の嫁!!!
「けどシルフィ?腕を生やすには
王級魔術ではないとできませんよ。」
「そんなこと…よく分からないけど
ルディのためなら頑張れるよ!」
愛の告白…?
それくらいシルフィは思ってくれているのか。
やはり運命には逆らえない、
というものなのだろうか?
「……ありがとうございます。
でしたら僕もシルフィに教えるのを
頑張らないとですね。」
「うん!これからよろしくね!」
「こちらこそ!」
それから楽しい一時を過ごした後
解散してそれぞれの家に帰った。
このことをオルステッドに、
それからロキシーとザノバにも伝えたいな。
さらにはパウロ達にも。
そう思いながら家に帰った。
現在、そして将来の幸せを思いながら。