─ジジジ
「ルーデウスか?何だ。」
「オルステッド様。お話があります。」
俺はシルフィと共にリビングを借りて会議を始めた。
「これからの、家庭教師の件についてです。」
今回の議題は家庭教師、
つまりエリスと会いに行くメンバー会議だ。
「なるほど、それでどうしたいのだ?」
「俺は数日経ったら行く予定ですが、
問題はシルフィです。」
するとシルフィが淡々と話し始めた。
「…僕はルディと一緒に行きたい。
でもアリエル様の護衛に行かなければいけない…
どうすればいいですか……?」
「……」
少し悩んでオルステッドが答えた。
「前回はアリエルの元に魔獣が転移して
シルフィエットが行かなければまとめて死亡する
運命であった。
……だが、転移を止めれると仮定すれば
デリック・レッドバットが生存する。
となればお前は不要であろう。」
デリックはアリエルの護衛の一人だった人物だ。
前回はアリエルを庇って死亡した。
オルステッドによるとデリックが居るかどうかで
未来が変わっていくらしいから
心強い仲間になりそうだ。
「本当……?だったら僕はルディと一緒でも?」
「構わん。細かい点は俺が修正する。それに
ルーデウスには護衛を着けなければならないしな。」
「僕も、シルフィが居れば心強いです。
ありがとうございますオルステッド様。」
「構わん。
だがお前には転位を止める使命があるのだ。
俺も用が済んだら合流するが
それまでは気を引き締めろ。」
「かしこまりました。」
────
「ということで、俺はエリスと会いに行きます。」
社内会議の次は家族会議だ。
テーブルを囲むように全員揃って座っている。
「……もうそんな時期なのね……」
ゼニスがぽつりと口にする。
「心配する必要はありませんよ。
旦那様は転位を止めてくれます。
そうすればまた皆会えますよ。」
リーリャが答えた。
「そうね……でも、」
ゼニスは心配しているようだ。
そこから全て壊れていったのだから
仕方ないことではあるが。
「なに、ルディは絶対出来るさ。」
パウロがゼニスに慰めの言葉をかけた。
「……そうよね、ルディは私の子だもの…
立派に出来るわ。」
みんな無自覚にプレッシャーかけてくるな…
…話を切り替え。
「そしてなんですが、ギレーヌを呼ぶことや
ボレアス家への連絡は父さんにお願いします。」
「俺…だよな、やっぱり。
それなら俺に任せとけよ!
ギレーヌになに言われようと連れてくるさ!」
パウロが腕捲りをして気合いを入れ始めた。
「ギレーヌにも記憶があるかもしれませんから、
心配は大丈夫ですよ。」
「うーん…それもそうだな」
腕捲りを直した。
「あとはシルフィの両親の承諾なんですが……」
「それはやっておいたぞ。」
パウロが即答した。
まじ?
パウロも仕事が早いな。
「本当ですか?賄賂とか渡してませんよね?」
「失礼だなぁ~。しっかり説得させたぜ。
それと『シルフィをよろしく頼みます。』ってさ。」
「……分かりました。ありがとうございます父さん。」
「何てことないさ。お前も頑張れよ。」
「私からも、成果を期待しております旦那様。」
「リーリャ…」
「それじゃあ私からも。」
するとゼニスが近づいて話を始めた。
「ルディはシルフィちゃんに、エリスちゃん、
それにロキシーちゃんもみんな守れるって
信じてるわよ。
前みたいに格好いいところ見せてあげてね。」
「みんな…ありがとうございます……」
視界が滲んできた。
「あれっ…?」
「どうしたんだよ?ルディ?」
「ごめんなさい……涙が……」
「……まあ、しばらく会えなくなるからな、
それまでは俺たちのことを頼ってくれよ。
俺だって期待してんだからさ。」
「ありがとうございます……父さん……」
すると、
「あ──お兄…ちゃ……」
「…え?」
どこからか声が聞こえた。
「もしかして……」
その予想は大正解。
アイシャであった。
「えっアイシャ!?今話した……?」
ゼニスが驚いている。
覗き込んでみたが眠っている。
気のせいだろうか…?
「あれ…?幻聴か?」
パウロが困惑している。
そんな中隣に目をやってみると
ノルンがこちらを見ていた。
俺を見る目は何か力強さを感じた。
ノルンも俺を応援してくれているのだろうか…?
「二人とも……」
それぞれの形や言葉でエールを貰った。
プレッシャーがどうこうとか言ってる場合ではない。
みんなの想いを背負っている。
だからプレッシャーに負けず頑張りたい。
そう実感した日だった。
──数日後──
家の前に馬車がやってきた。
そこには
銀髪のドルディア族 ギレーヌが乗っていた。
「お前の顔なんて二度と見たくなかったが
仕方ないな。」
そう言ってギレーヌが馬車を降りた。
「久しぶりだなギレーヌ!」
パウロが元気に挨拶するが
フル無視してゼニスの方へと歩み寄った。
「それとゼニスも久しぶりだな。」
「本当、何年ぶりかしらね。」
「しかし、本当に子供が出来たなんてな。
パウロの子だが本当に大丈夫なのか?」
「ええ、元気な子供達よ。」
そんな世間話をしている。
するとパウロが話を切り出した。
「ギレーヌさ、前世の記憶とか持ってるか?」
捻りもないド直球ストレートだ。
それにはさすがのギレーヌも
「…???突然何を言い出す?
ついに頭が狂いだしたか?」
と困惑している。
「……いや、何でもない……忘れてくれ。」
ギレーヌは覚えてない様子だ。
全員が覚えてる、とはいかないな。
「……とにかくルディとシルフィちゃんを
よろしく頼むよ。」
「ああ。」
これから長い別れになる。
それまで元気にしておいてくれ……と願い
馬車に乗り込んだ。
「では父さん!行ってきます!」
「今までありがとうございました!」
シルフィと共に別れの挨拶を告げた。
馬車が動き出す。
「ルディも!シルフィちゃんも!頑張れよ!!!」
「行ってらっしゃいルディ!シルフィちゃん!」
「旦那様、奥様よろしくお願いします!」
それぞれ激励のメッセージをくれた。
遠くにうっすらだが、アイシャとノルンが
手を振っているように見えた。
二人も応援ありがとう
そう心の中で答えた。
───
「……自己紹介といくか?
私はギレーヌ・デドルディア。
これから向かう所のお嬢様の護衛兼、
お前達の護衛でもある。」
「よろしくお願いしますギレーヌ!」
突然呼び捨てされギレーヌが驚いている様子だ。
「あ、ああ。」
「僕はルーデウス・グレイラット。
こちらはシルフィエット・グレイ……
そういえばまだ違うのか…
……えーと、シルフィエットです。
どちらとも魔術師です。」
「よろしくお願いします。」
「そんなかしこまらなくて良い。
ルーデウスにシルフィエットか、
よろしく頼む。」
これから勝負が始まる。
俺はそこで
エリスの記憶を戻すことと転移事件を食い止める。
だが実際はそんな緊張を持たなくたって良い。
なにしろ、
シルフィが一緒に居るし、ギレーヌだっている。
家で待っている人たちや
オルステッドにロキシーもザノバもいるんだ。
それに俺はもう一度この世界で本気をだすって決めた。
大切な人たちを守るために。
俺が皆を守る。
いや、俺達で、未来を変えていくんだ。
平和を築き上げるんだ。
必ず成し遂げるさ。
そう思いながら見覚えのある風景を
馬車から眺めていた。
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