こんばんはルーデウスです。
私は今格安物件へと来ております。
クモの巣があったり
少し埃っぽかったり
薄暗かったりしますがそれを帳消しするくらいに
鉄格子の窓から良く通る月明かり!
これだけでもお釣りが返ってきますね。
月見は日本人のたしなみですから。
そして、
なんとここはシェアハウスとなっているのです!
肝心の相手は…
手を縄で縛られたお嬢様!
エリスです!
まだ眠っておりますがもうじき目を覚ますでしょう。
そしてエリスの相手は手を縄で縛られたルーデウス君。
絶体絶命ですね。
さて、ここからどうすっかなぁ……
─数時間前─
「本気かい…?」
エリスと共に誘拐され、
その後勉強の大切さを教えて帰ってくる。
そんな計画を聞いたフィリップが疑問を持ちかけてきた。
「大丈夫です。
エリスは僕が命に変えてでも守ってみせます。」
「うーん……
ルーデウス君が着いていくって言われても…」
「それでしたらギレーヌを護衛に着けましょうか?
後ろから見守って危なくなったら助けて貰う感じです。」
「それだったら良いかな…
でもルーデウス君の授業に
口出しをするわけにもいかないからね。
許可しよう!」
「いえいえ!第一はフィリップ様の意見ですよ。」
となんとかして説得を行った。
そしてなぜシルフィではなく
ギレーヌを連れていくことになったのか。
それは実に単純だ。
一つ、シルフィに屋敷内の視察をお願いしたから。
可能性としては殆ど無いが
今ヒトガミが動き出すかもしれない。
念のためだ。
二つ、ギレーヌの記憶も戻す機会を得るため。
本当に些細な出来事でも戻るトリガーになる。
数撃ちゃ当たる…といったところである。
そして三つ、単純にシルフィに怪我をさせたくないから。
現在シルフィは俺の妻兼
精神安定剤となっている。
シルフィが怪我をしたり、最悪死んでしまったら
俺の心は完全にへし折られてしまう。
それだけは絶対起きてほしくない。
屋敷に残っていてもシルフィが怪我する可能性はあるが、
外に出るよりはマシだろう。
と考えたのが理由である。
そのあとは、
エリスの記憶は今回で戻るのかなぁとか、
シルフィは無事でいてくれるかなぁとか、
今回もあの使用人は裏切るんだろうなぁ…とか
考えながら計画を練り直していた。
────
そして現在に至る。
俺は眠っているエリスを起こすために肩を触……
「………」
俺は無言で肩ではなく胸に手を伸ばした。
今のうちに感触を楽しんでおこう。
しばらく楽しんだ後手を離してエリスに呼び掛けた。
「お嬢様起きてください。」
「……ん」
眠そうな目を開けて目を覚ました。
「え?何よこれ…!」
自分の手に結ばれた縄を見てエリスは驚愕した。
「早く外しなさいよ!!」
「自分で魔術を使えば良いじゃないんですか?」
「そんなの出来ないわよ!早く外しなさい!」
小型犬のようにギャーギャーと騒いでいる。
あんまり騒いでいるとアイツが来るぞ……
「うるせぇな!!ガキが!!」
怒鳴ってドアを蹴り開けて出てきたのは
The荒くれ者と言える見た目の男である。
見た目的に年齢は中年程だろう。
「あんた何よ!」
威嚇をするようにエリスが反発する。
「チッ」
中年男が舌打ちした後エリスの腹めがけて
蹴りを食らわせ……
ようとした瞬間かすかに物が燃える匂いがした。
気のせいだろうかと考える暇もなく、
エリスが動いていた。
エリスは縄で縛られていたはずなのに。
空中に飛び、中年男の蹴りを回避したエリスの手に
あるものが見えた。
この部屋で拾った木の棒だ。
一瞬の隙にエリスは回避と武器拾いをしていた。
「は?どうい───」
中年男の蹴りが空振りした後
ぶっきらぼうに声をあげたがそれは途中までしか
聞こえなかった。
その隙にエリスが中年男の
足、腹、手、顔、に木の棒を打ち付けて気絶させた。
俺の魔眼無しの動体視力で見て四ヶ所だから
実際は何十倍の箇所を打ち付けていたと思われる。
中年男が鈍い音を響かせて地面に倒れこんだ。
俺は数秒唖然して動けなかったが、
エリスに何とか声をかけた。
「エリス!?突然どうして?もしかして記憶が──」
「分からないわ。」
俺の言葉を遮るように答えた。
「分からない……けど自然と体が動いたのよ。
気づいたらこうなってたわ…」
記憶は無い…?だがあの動きは確実にエリスだ。
まごうことなきエリスの動きだった。
脳は覚えていなくても
身体は記憶していたということなのか?
すると音を聞き付けてやってきたもう一人がやってきた。
「なっ!?何をしたお前ら!?」
「逃げるわよルーデウス!」
流れるがままにエリスに手を引かれて外へ飛び出した。
外に出る途中壁を破壊した気がするが気のせいかな…?
───
その後エリスはあてもなく外へ出たそうなので
俺が案内して牢屋から少し離れた馬屋にやってきた。
「ここで馬を借りてロアに帰りましょう。」
「帰れるのね!じゃあルーデウスに任せるわ!」
「任せるって…
ちなみにエリスはあそこの文字は読めますか?」
と馬を借りる値段が載った看板を指差した。
するとエリスが看板に近づいて顔を寄せる。
うーんと少しばかり唸った後
「分からないわ!」
ときっぱり答えた。
やっぱり分からないんかい。
「ここで文字や数字を習っていたら計算ができたのに。」
「そんなの必要ないでしょ!
ルーデウスがやれば良いのよ!」
そう簡単には考えを変えてくれない。
俺は馬を借りてロアへと向かった。
───
馬車に揺らされること数時間。
ロアへと到着した。
「ようやくロアに到着ですよエリス。」
「ん…着いたのね。」
目を擦りながらエリスが着いてくる。
すると遠くに人影が見えた。
ボレアス家の使用人だ。
もちろん裏切る奴だ。
「あっ!」
エリスが驚いたような反応を見せて
使用人へと走っていった。
そして次の瞬間路地から現れた男に連れ去られた。
また来たなこのフラグ…
さっきみたいにエリスがなってくれれば一瞬だろうな…
可哀想に。
荒くれ者に同情しながら
エリスが連れ去られた路地へと向かった。
そこに居たのは牢屋に居たもう一人の男だった。
あと一人は気絶したまま起きないのだろうか。
「ハハハ…人質はとったぜ…!」
いかにもこの後死にそうな奴のセリフだ。
「くっ……エリスを離せ変態!!」
半分茶番のようなものに付き合ってやることにした。
「それは残念だが出来ないな!
だが条件を飲めば解放してやらなくもない…」
「じょ…条件?」
「お前、俺達の仲間になれよ。
お前が金を必要としてるのは知ってるぜ?
仲間になれば金なんかいくらでもやるぞ!」
よくもまあ嘘くさい嘘をつけるな。
もちろんだが断らせてもらう。
「それは不可能なので
実力行使といくしかありませんね。」
と言いながら魔力を込める。
俺の練習の成果をみせてやる!
「なっ…なんだそりゃ!?」
練習の成果。
それは魔導鎧……
の試作段階を三つほど挟んだ疑似魔導鎧の腕部分
魔導腕だ。
試作段階とは言え
ものすごいゴツい見た目になってるから
インパクトは百点だろう。
作成方法は
土魔術で形作る。
紋章をイメージして土魔術の中に組み込む。
それらに魔力を込める。
といった感じだ。
現状俺の今世での最高傑作だ。
「さあ喰らえ!岩砲弾!」
結構威力を殺した弾を撃つ。
「ぐぉっ!?」
結構弱めだがそれでも一般人を気絶させる
程度には持っていける。
「フハハ!」
……もうこれどっちが悪党か分かんないな。
ルード・ロヌマーの再来なのか?
数発撃った後荒くれ者が気絶した。
そして終わってから気づいた。
これ勉強にならなくね?
想像通りエリスが唖然としている。
どういうこと…?という風に。
すると、
「ルーデウス……………」
突然エリスに声をかけられた。
「何でしょう…?」
「……手合わせをお願いしても良い?」
「へっ?」
突然エリスに手合わせをお願いされた。
あれを見てもなお立ち向かってくるのか?
身体の記憶は殆ど戻ってるっぽいから
抑えきれないのかもしれない。
「……分かりました。お願いします。」
俺は要求を呑んで了承した。
そしてエリスとの手合わせが始まった。