無職転生~もっと本気だす~   作:ぽてちき

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間話「見習い剣士と魔族」

俺はチェスター。

行商人をやっていた者だ。

魔王様と出会ってから何故かは分からないが

俺の心の中に変化が生まれた。

 

そして俺は実家に帰り、父と会話することができた。

最初のうちは

「…最近元気か?」とか「…良い天気だな」とか

ぎこちない話が多かったが、

俺が謝罪を述べてからは壁無しに会話できた。

 

とても良い経験を貰えたし、将来を考えられた

出来事だった。

魔王様には感謝しないとな。

 

 

……ところで俺は現在何をしているのかって?

あれから俺は剣の道を進むことにした。

俺のためにも、

魔王様のすねで無惨に散ってった

愛剣のためにも戦わねば……と

思ったからだ。

そして毎日独学で体作りをしている。

合っているかは分からないが。

 

そして剣の修行には師匠が要る。

 

そう考えた俺はあてもなくただ魔大陸へと向かった。

魔大陸には強い奴らがうじゃうじゃいるなんて

話を聞いたことがあったからなのだろう。

 

結果見つけられたかだって?

それは……

 

 

 

 

 

 

「暇だなぁ」

否。見つからない。

それどころか窃盗罪で捕まってしまった。

犬や猫の耳のようなものを持った種族に。

たしかなんとかディアみたいな名前の種族だった

気がする。

 

これは生きるためには仕方がなかった盗みだったから

どうしようもない気がするが。

 

 

逃げれば良いって?

俺、非力だぜ?

型も知らない、体も鍛えあげられてない、

おまけに獣人語も分からない。

 

これって詰みってやつっスか?

 

 

すると獣族が食事を持って檻に向かって歩いてきた。

「ちょっ!まってくれッスよ!

俺!反省したッス!許してぇ!」

 

「─────」

 

あー……やっぱ分からねぇ。

言語とか覚えておくべきだったな…

そそくさと食事を置いて獣族が檻から離れていく。

 

……と思ったが、また戻って来た。

誰か人を連れて。

 

 

「あでっ!優しく扱えよな!」

なるほど

連れられてきた人物は新しい檻の住人だったわけだ。

 

 

連れてこられた人物は一言で言えば

猿のような奴。

どこか胡散臭くて、でも面白そうな奴。

 

「んお?なんだ先客が居たのかよ。」

 

「あ、どうもッス。」

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

彼はギースと名乗った。

ギャンブルに負けて払うものが無くなって

ここに来たらしい。

 

「そういうアンタは何だ?」

 

「俺?俺はチェスターッス。

剣士を目指して魔大陸に来たら捕まって

万事休すってやつッスね。」

 

「なるほどなぁ、俺も戦闘能力は無いけどよ。

ここ、抜け出せるかも知れねぇぜ?」

 

「本当ッスか!?」

 

「ちっと乱暴かも知れねぇがな。

着いてくるかい後輩。」

 

「後輩?俺後輩ッスか?」

 

「おうよ、俺が来たからお前は助かったんだ。

ぜひ慕ってほしいもんだぜ。」

後輩というあだ名をつけられた。

悪い気はしないから良いか。

 

するとギースが耳元に手を伸ばした。

「通信ッと!」

 

 

ジジっと音を立てて耳が光だした。

「何スかそれ?」

気になって聞いてみた。

 

「これはな、俺のセンパイが使ってる魔術だ。

使い方を教えてもらって盗んだやつさ。」

 

「盗んだ…?

そのギースの先輩から教えてもらったんじゃ

ないんスか?」

 

「おいおい、俺のことは呼び捨てかよ…

まあそれは置いといて。

これはとある奴から教えてもらったやつなんだよ。

そいつズル賢いからこうやって技術盗むの得意なんだ。

後輩にも後々教える機会が来るかも知れねぇな。」

 

 

「へぇ…」

 

「それと後輩よ…俺のこと本当に信頼してんのかよ……

先輩とか言ってもいいんだぜ?」

 

「それはなんか嫌ッス。」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

─数日後─

 

 

檻の中に閉じ込められること数日。

その時は来た。

 

ドォンと遠くから聞こえてくる。

「お、ついに来たか。」

ギースが音に気付いた。

 

「まさかこれが助っ人ッスか?」

 

「おうよ後輩、これでこことはオサラバだぜ。」

 

 

ドォンドォンと音が段々近づいてくる。

そして姿を表したのは見慣れた人物だった。

 

「フハハ!無様な姿だなギース!」

魔王バーディガーディがその姿を見せた。

 

「あっ!魔王様!」

呆気なく呼ぶとバーディが答えた。

 

「む?貴様は…チェスター!何故ここにいるのだ?」

 

「少ーしヘマをして……」

 

「フハハ!貴様ら二人揃って大馬鹿者よ!

我輩が今出してやろう!そして抜け出すぞ!」

 

「さっすがはバーディだぜ!」

 

そうしてバーディが梱包を裂くみたいに

檻を素手で引き裂いた。

恐ろしい…

 

「ふぅ…助かったぜ。

それにしてもお前ら知り合いだったのかよ。」

ギースが質問をしてきた。

 

「そうッス、魔王様のおかげで俺は

剣の道に進むことができたッスからね。

もっとも、まだ師匠すら見つけられてないッスけど。」

 

「む?貴様剣士になると?」

 

「魔王様のおかげで心に区切りがついたッスからね。

今は俺のやりたいことをやってるッス。」

 

「なるほど……」

とバーディに近づかれまじまじと見られた。

顎を撫でて考える仕草をしている。

 

「……その決意は貴様の目から十分に伝わった。

良い!我輩から師匠となる者を紹介しよう!」

 

「まじッスか…!何度も世話になって申し訳ないッス!」

 

「良かったな後輩!」

 

 

 

───

 

 

 

獣族の村から数時間ほど歩き、平野に着いた。

道が整備されていないが危険な場所は無い。

そこでギースが今後のことについて話し始めた。

 

「俺らはこれから中央大陸へ向けて行く予定だ。

だが後輩。お前はどうすんだ?

剣の道に行きたいなら構わねぇし、

止めるつもりもねぇ。」

 

 

「剣……いや、魔王様と一緒に行動するッス。」

ただし剣の道を諦めるわけではない。

延期という感じだ。

 

「貴様、剣の道はどうした?」

バーディから圧を感じる。

 

「剣の道は行きたいッスけど俺分かるッスよ。

魔王様とギースが何らかの理由で

俺を必要としてるってことを。

でなきゃS級冒険者のギースがあそこで捕まらないし、

自力で抜け出せるはずッス。」

 

ギースが少し驚く。

 

「はは…まじかよ、ご名答だぜ。

…その通り俺らは後輩を必要としてる。

それは後輩が今後俺たちにとって重要な役割を果たす。

そういう未来が見えているからだ。」

 

バーディが少し不満を持っていそうな

雰囲気をしているが、大丈夫だろうか。

「我輩は構わん。知られてしまったら仕方あるまい。」

 

将来俺が役に立つ?

なぜそう感じたのだろうか。

そんな疑問に答えるようにギースが話を持ちかけた。

 

「後輩お前よ、"この世界は一回目の世界じゃない"

って言われたら信じるか?」

 

 

「は?一回目じゃない?」

訳が分からない。

一回目も何もそんな概念は無いに決まってる。

そんなもの信じられる訳が無い。

 

「どういうことッスか…?それはどういう……?」

 

「分かんねぇか、しょうがねぇ。

お前はセンパイと会ったことねぇし。」

 

先輩。

さっき出てきた言葉だ。

「先輩……って誰なんスか?

なんで理由がその先輩に!?」

 

 

「この世界はセンパイ

『ルーデウス・グレイラット』のボス

『龍神 オルステッド』によってリセットされた世界

……って言った方が分かりやすいかな。」

 

龍神、その言葉は歴史に疎い俺でも分かる。

現在の世界最強。絶対的強者。詳細不明。

出会ったら死ぬ。

そういう認識の人物だ。

 

龍神によって起こされた事案。

その事案の元はルーデウスという人物。

彼の名前は以前バーディの口から聞いた。

最強の魔法使い、という認識をしている。

俺が尊敬しているもう一人が元凶だったとは。

 

「この世界で前回の記憶を持ってる奴は

センパイと関わりのある奴っていうのが俺の考察さ。

実際、センパイと会ったこと無いお前は記憶が無い。」

 

「なるほど…それで、なぜルーデウスはリセットを?」

 

「センパイはなある奴を倒そうとしてんだ。

通信魔術を盗んだ奴だ。

センパイは奴に恨みがあるからな。」

 

一体それは正しいことなのだろうか。

ルーデウスが悪でギースが正義。

本当に合っているのだろうか。

ルーデウスが正義でギースが悪の可能性だってある。

 

「……分かったッス。俺はギース達の仲間に加わるッス。

俺はルーデウスって人も慕ってるッスけど、

今回は魔王様が正しいと思ったから

俺はそうさせてもらうッス。」

 

「フハハ、そうこなくては!」

 

「だから、俺を弟子にしてくれッス!魔王様!」

魔王様は剣士ではない。

しかし彼には恩がある。

その恩を返したい。

 

「む……承知した、貴様を鍛え上げてやる!」

快くバーディが許可してくれた。

 

 

そして、その日俺の人生は変わった。

二人の魔族によって。

 

俺はこれからどうなってしまうのか、

この行動は正しいのか、

それは分からない。

 

だけど悔いはない。

恩は必ず返す。

それが俺のジンクスだからな。

 

 

 

そうして俺たちは中央大陸へ向けて歩き始めた。

 

 

 




─前世の記憶のある人物─
・オルステッド
・リーリャ
・ロキシー
・パウロ
・ゼニス
・ザノバ
・バーディ
・ヒトガミ
・シルフィ
・エリス
・ギレーヌ
・ギース
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