──目が覚める───
……ここは…俺の部屋か…
「ルディ!!」
鋭い声が鳴り響く。パウロだろう。
俺はオルステッドを呼ぶために膨大な魔力を溜めて魔術を放った。
しかし、その反動なのか、疲れなのか分からないが気を失ってしまった。
しかも、黙って家を抜け出した。
さぞ厳しいお叱りを受けるだろうな…
「何で黙って抜け出したんだ?」
パウロが問う。
「…遊びに…行きたくて…」
「……」
数秒の沈黙が訪れる。
「遊びたいって言っても一人で帰れなかったら駄目だろう。
しかも、昨日はあんな大雨だったんだぞ。…全く、心配かけさせやがって……」
パウロの目にすこしばかりの涙が浮かぶ。
申し訳ないことをしてしまったなぁ…
「ご…ごめんなさい…」
外出禁止とか言われるのか?
それは困るんだがな…
「……だが」
パウロが続ける。
「そんなに外に行きたいのなら俺は止めない。お前にも新しい経験をさせないといけないしな。」
お?まさかの外出許可…?
「…本当ですか?」
「ああ。お前も外を見てみたいのはあるんだろう?なら俺はお前に経験させる。
だが、外出するときは必ず言うように。勝手に行ったりなんかしたら今度は拳骨だぞ?」
「肝に銘じます…」
パウロは前世では不倫はするわ、俺との再会の時には殴りかかってくるわで完璧な奴ではなかった。
しかし、パウロには仁義というものがあった。
それがパウロの良い所というのだろう。
──数日後───
俺はいつもの大木の下で魔力の増加トレーニングを行っていた。
内容としては土魔術で人形を作ること。
それも超複雑なやつだ。
例えるなら知恵の輪を何重にも重ねたものと言うのだろうか。
俺には"イメージ"することがまだ不十分だ。
回復魔術も無詠唱では出来なかったし、重力魔術やタイムリープ魔術も出来なかった。
この世界の魔術はイメージだ。
イメージでどんな魔術でも発明できる。
俺の今世での目標の一つとして頑張ろうと思う。
そんなことを考えていると、何者かが歩いてくる音が聞こえる。
誰が来たのか。
検討の付く人物が一人…
そこに居たのは睨むだけで赤竜を捻り潰せるほどの威圧感を持ち、見慣れた呪いの効果を薄めるためのヘルメッ………ん?
あれ…?ヘルメット…?
このヘルメットは前世のルートでのみ存在したメイドバイクリフの魔道具だ。
…つまり、オルステッドには記憶が残っている!!
ほぼ確定だ!
オルステッド自身が開発したのだろうか。
そんな中、オルステッドが問う。
「貴様、何者だ?」
とてつもない迫力がヘルメット越しでも伝わってくる。
ここはすこしばかりキザなセリフで再会を祝うか…
俺はオルステッドの前で膝をつく。
「龍神オルステッド様の右腕であり、七大列強第7位。『泥沼』
のルーデウス・グレイラットでございます。お久しゅうございます。オルステッド様…」
我ながら格好良い再会だ…決まった…!
「そんな奴は知らん。」
「えっ」
なぜ?原因だと考えられるオルステッドですら記憶が無いのか?いや…そもそも原因が違うのか?何故だ?どうして?なんで?
オルステッドが続ける。
「今ので確信した。先週程にブエナ村で莫大な魔力の発散があった原因が。そして、貴様が何者なのか。」
「貴様、ヒトガミの使徒だな?」
背中を針で突き刺すほどの冷や汗が溢れる。止まらない。
なぜ?どうして気づけなかった?
オルステッドが殺しに来る可能性を?
息が苦しい
「使徒ならば生かしてはおけん。」
終わりだ。…くそっ…
結局もう一回転生しても失敗か。
「死ね」
───目を開く────
「……あれっ?」
生きている。
なぜだ?
「すまないルーデウス冗談だ。」
「ハハッ……」
膝から崩れ落ちるようにぐったりとへたれこんだ。
冗談が下手くそ過ぎますよ社長……
「俺も会いたかったぞルーデウス。お前が居れば心強い。」
「……ハッ…………で…オルステッド様…どうしてこんなことに?」
土魔術で作った椅子に座り、オルステッドは語った。
────────────────
結論から言うとオルステッドはヒトガミに敗北した。
ヒトガミは奥の手としてある呪いをオルステッドや他奴らにかけたらしい。
それは、死を望む程恐ろしく、最も強い呪いだったそうだ。
そして、オルステッド率いるヒトガミ討伐隊御一行は全滅したそう。
「やはり奴は強い。失敗は最小限にしたつもりだったが後一歩のところで敗北した。」
普段の表情よりも恐ろしいものになっている。とは言っても、俺との再会が嬉しいらしく、程度は軽い。
「やっぱりでしたか…」
しかし、あれで駄目となると結構ハードだな…
「よって、ルーデウスには今世でも手伝ってもらうぞ。」
「ええ、俺もそのつもりでしたので。」
再びオルステッドコーポレーション企業だ。
なんと!二週目の人生でも就けるホワイト企業である。
「ところでそのヘルメットは…?」
「あぁこれのことか。」
「まさかもうクリフと出会いましたか!?」
「奴はまだこの世に産まれて間もないだろう。出会ったとしても魔道具を作れる技術も頭脳も無い。」
…そりゃそうか。
でもクリフのことだからもしかすると赤子の状態でも
「俺は天才だからな。こんなものは楽勝だ」
とか言って作ってくれるかもしれないな。
「これはクリフ・グリモルの魔道具を元に俺が作成したものだ。とは言え、奴の技術には及ばないがな。」
そんなものも作れるのか。
さすが社長!
あっしはどこへでも着いていきまっせ!
「それと、お前にこれを渡そう。」
オルステッドが何か俺の手に受け渡す。
「これは…『龍神の腕輪』ですか。」
これもずいぶん長く俺との時を共にした。
最後はアルスの孫…名前は何だったかな…
に渡してしまったが。
「ヒトガミからお前の情報を完全に遮断するためだ。
前回はそうはいかなかったが、今回ではお前の存在を隠す。
そうすればヒトガミも動きづらくなるだろう。」
なるほど。
確かにヒトガミのことなど眼中になかったな。
…いかん。平和ボケしすぎた。
「これでひとまずは大丈夫か?」
「いえ…あと一つ。任務をくれませんか。」
オルステッドが悩む仕草をする。
だがノープランということはないだろう。
「よし。分かった。ではお前に任せるとするか。
次の任務は…」
来ました~!やっぱり俺は社畜がよく似合う。
「ごくり…」
「ご…?…まあ良い…」
「お前の次の任務は、
ロキシー・M・グレイラットと出会うことだ。」
おお!社長直々に許可が出た!
まあ、言われなくても会うつもりだったが…
でも社長。ロキシーはまだグレイラットじゃないのよ。
まあ、将来的には妻になりますがね。
「奴が居るだけでヒトガミと戦えるかどうかの土俵に立てる。
必ずこさえろ。」
奴…ってララのことなのか?
ララも立派になったなぁ。
お父さん鼻が高いよ。
「かしこまりました。」
「よし。頼んだぞ。」
ひとまず次の目標は決まった。
俺は、俺にとって大切な人物のうちの一人
ロキシーと出会う!