リーリャの記憶が戻った。
だが今回のことには不明な点が多い。
だからまずは作戦会議といこう。
俺はオルステッドと連絡をとった。
オルステッドは俺が死んだ後、
通信魔術というようなものを発明したという。
石板の魔法版だな。
その魔法というのは、対象者の魔力をもとに探しだし、声を飛ばす魔法で、勿論聞くことも可能だ。
なんとも便利なものを開発できたもんだ。
手を耳元にのばして放つ。
「通信!」
「……ジジッ…………………何の用だ?」
おぉ繋がった。やっぱり電話というのは便利だなぁ。
「オルステッド様。お話があります。」
「ふむ、ならば大木に来い」
「かしこまりました。」
オルステッドは会話が単調だ。
魔力の消費は少量でもしたくないのだろう。
塵も積もれば山となるだ。
大木のそばでは時計回りにオルステッド、俺、リーリャの順番で土魔術の椅子に座っている。
ここが会議室なのがなんかなぁ…と思ってしまう。
今度どこか場所を確保しよう。
「それで、要件というのは?」
早速結論を持ち出す。
「リーリャの記憶が元に戻りました。
理由はまだ分かりませんが。」
「…何だと…?」
オルステッドが驚きを隠せない。
そしてオルステッドがリーリャに対して問う。
「リーリャ・グレイラット」
「はい。何でしょうかオルステッド様?」
ヘルメットのおかげで障害なく話せている。
やっぱりクリフは天才だな。
「お前に3つのことを問う。
1つ。お前の子供の名は?
2つ。ルーデウスの家内の名前は?一語一句間違えずに答えろ。
3つ。お前はヒトガミの使徒か?」
やや長い問いにリーリャが即答する。
「1つ目。アイシャ・グレイラット。
2つ目。シルフィエット・グレイラット。
ロキシー・M・グレイラット。
エリス・グレイラット。
3つ目。ヒトガミという存在は旦那様から聞いております。しかし、使徒というものではございません。
…どうでしょうか?」
「ふむ良い。やはり、引き継いでいると考えて良さそうだ。」
ふー、安心した。名前を少し間違えただけとか使徒です。とか言った瞬間刺し殺されるかと思った。
一語一句とか怖いこと言わないで欲しいものだ。
「理由に何か心当たりはあるか?」
「……いえ。強いて言えば旦那様に感謝されたから……でしょうか?」
「なるほど…」
オルステッドが眉間にシワを寄せながら考えるのがヘルメット越しでも見える。
「つまり、とあることをトリガーに前回の記憶が蘇るのか…」
俺が相づちを打ちながら返事する。
「あぁ…!なるほど……それだったら納得がいきますね。」
となると、ゼニスにパウロ、ロキシーやシルフィやエリスの記憶も戻る可能性だってあり得る…!
鳥肌が止まらない。
「でしたらまずは全員集めるところから始めるべきなのではないでしょうか?」
「その手もありか…それならば…」
「ルーデウス。すまないが作戦変更だ。」
…魔大陸まで出張とか無いよな…?
魔 界 大 帝 !
とか言う奴を連れてこいとか言わないよな?
言わないよな?
動悸する心臓を押さえながらオルステッドの話を聞く。
「ロキシー・M・グレイラットを始めとする前回の仲間を増やせ。」
あっっっぶな!
ほぼ内容変わらなくて助かった~!
リーリャがだらだらと汗を流す俺を不思議そうに見ているが
返信を返す。
「喜んでお受けいたします…!」
「そうでしたら、私もお力添えさせてください。奥様と旦那様の手引きはお任せください。」
「ああ。ルーデウスにリーリャ。よろしく頼んだ。」
「かしこまりました。」
─数日後─
いざ。作戦決行。
あれから2日後。
俺とリーリャは作戦を立てた。
内容はこうだ。
俺がかつてしたように家の壁を破壊する。
そうして、ゼニスが家庭教師を呼びましょう!
とはしゃぐはずだ。
そこでリーリャがロキシーが来るように根回しする。
多少未来は変わっているとは思うが、正直根回しなんかしなくても来そうな気がする。
「では、旦那様。よろしくお願いいたします。」
「分かりました。」
魔力を壁に向けて貯める。
この感覚は懐かしい。
しかし考え深いものだな。
あの頃と同じ光景なはずなのに背負っているものに雲泥の差がある。
俺は今世ではハッピーエンドにするんだ。必ず。
そろそろ良いかな?
壁をうめるほどのサイズになったら…
「射出っ!」
バガァァン!
「ルディ!!」
読み通りゼニス、パウロ、そしてリーリャが来る。
するとゼニスが俺のそばにある本に目をやる。
そしてにんまり笑みを浮かべながら
「ルディ…?もしかしてこの本声に出して読んじゃった…?」
「…その…ごめんなさい。」
途端にゼニスがはしゃぎ出した。
子持ちの成人女性とは思えない。
「きゃー!聞いた?あなた!ルディはやっぱり天才なのよ!」
「本当にルディが…?」
パウロは信じられないというような顔で話し合っている。
「ぜひ、家庭教師を雇いましょう!ルディには魔法の才能があるのよ!」
パウロが止めに入る。
「おいおい、待ってくれよ。男の子が産まれたら剣術を習わせるって言っただろう。」
「でもルディは天才よ?」
「そうじゃなくてだなぁ…」
おっと…口論を始めてしまった…
するとリーリャが
「午前に魔術、午後に剣術というようにすれば良いのでは?」
ナイスリーリャ!
2人とも納得の顔だ。
ひとまずロキシーに出会うための道としては十分だろう。
あとはリーリャに任せよう。
健闘を祈る!リーリャ!
───魔大陸のとある場所で────
「…これは?」
「なぜ…?」
今、金髪の女エルフと髭面のドワーフの男は気づいた。
自分たちが何者なのか。
そして気づいた。
この大男には敵わないということを。
「こんなものか。やはりつまらんな。"奴"ではなければ。」
魔王は語った。
次はワレが戦に勝利するであろう。と