無職転生~もっと本気だす~   作:ぽてちき

7 / 25
第七話「あなたに捧げる雷鳴のそばで」

とうとう卒業試験が始まる。

だが悔いはない。

正しくは悔いなんてないと思い込ませているだけだが。

 

 

─翌日─

俺は朝早く起きた。

 

「俺はオルステッド様と話し合いをしてきますので、父さんたちには散歩に出かけた。とかの理由で誤魔化してください。」

 

「かしこまりました。旦那様」

 

朝早いが、リーリャは相変わらず家事を行っている。

 

「…あの、旦那様。」

ドアに手を掛ける直前、リーリャに呼び止められた。

 

「何でしょうか。」

 

「その…迷惑に思うかもしれませんが言わせてください。

……ロキシー様の記憶が戻らなくても決して立ち止まってはいけませんよ。旦那様は偉大な方です。ロキシー様が居なくてもやっていけると信じております。」

 

「…分かりました。今世でもリーリャやオルステッド様に迷惑をかけるわけにはいきませんから。俺も頑張りますよ。

では、いって参ります。」

 

 

「よろしく頼みました。旦那様。」

 

目頭が熱くなる。

その通りだ。どうせまた会える。記憶がもどる。

今はまだそう考えても良いだろう。

 

 

────

 

「よく来た、ルーデウス。」

 

「それで、要件というのは何でしょうか…?」

 

「これからのことだ。

結局ロキシーは前回の記憶を引き継いでいなかった。

だが、仲間は他にも居る。

次はノルン・グレイラット、アイシャ・グレイラットを誕生させろ。」

 

「かしこまりました。そのつもりでしたので。」

 

 

「では頼む。」

 

やはりオルステッドも半ばあきらめているらしい。

計画が十年単位でずれるのはなかなか痛手だろう。

今回はいけるのだろうか…

 

 

 

 

 

 

─────

「このあたりで良いでしょう。」

 

馬とロキシーと共に家から離れた場所に来た。

今回はカラヴァッジョに雷を当てるヘマをしないで欲しいのだが…

 

「これから卒業試験を始めます。

ではルディ、よく見ていてください。私の魔力では一回が限界です。」

 

「となると試験内容は魔術の習得ですね。」

 

「ええその通り。しかも水聖級魔術の習得です。」

 

 

途端に空気が変わった。

ロキシーが魔力を貯めながら詠唱を…始める。

 

「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ!

 我が願いを叶え、凶暴なる恵みをもたらし───」

 

ついに終わってしまう。

そしてロキシーは旅立ってしまう。

そう思ってしまうと涙が溢れ出す。

それと同時に雨の勢いも増す。

 

あぁ…いかん…このままでは姿が……見えないじゃないか…

 

 

「ああ、雨よ! 全てを押し流し、

あらゆるものを駆逐せよ!

キュムロニンバス!」

 

ザァァァァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、次はルディの番です。」

 

「ッ…はい……!」

 

 

魔力を貯めて詠唱を始める。

「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ!

 我が願いを叶え、凶暴なる恵みをもたらし───」

 

 

ロキシーが居なくなってしまう…寂しい…

悲しみで胸が張り裂けそうになるが、詠唱は止めない。

ここで止めてしまえば

何か裏切ることになってしまう気がする。

 

雨は止まらない。

目元をぐっしょり濡らしてもなお、

詠唱を始めてもなお。

 

 

 

 

「ああ、雨よ! 全てを押し流し、

あらゆるものを駆逐せよ!───」

 

 

詠唱は終わったが、ここで俺は"このまま"続ける。

 

 

「雄大なる光の精霊にして、天を支配せし雷帝よ!───」

 

 

 

瞬間、ロキシーの目が見開かれた気がした。

信じられない、まさか、という用に。

しかし目がぼやけてよく見えない。

 

 

これは俺がロキシーに対して贈る俺なりの感情、

讃美歌である。

何もしてあげられない馬鹿な弟子をお許しください師匠……

 

 

 

「そびえ立つ者が見えるか! 

 

傲慢なりし帝の御敵が!

 

我は神なる剣にて、かの者を一撃に打倒せんとする者なり!

 

光り輝く力を以って、帝の威を知らしめん!

『ライトニング』!」

 

 

 

 

ビガァァン!!

 

耳をつんざくような雷鳴が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

───

 

終わった。

清々しい青空との対比に、俺の心は曇り模様だが不思議と悔いはない。

 

 

 

 

 

 

するとロキシーが抱きついてきた。

合格なのか…どうなのか…

 

 

「ルディ!!!」

 

 

「なんでしょうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会いたかった……っ……………会えて…っ良かったぁ………!」

 

 

 

心拍数が上がる。

そんな……ことが……っぐ……

 

 

 

「ロギシーぃ……っ!!!おれもッ…会いたがっだよぉ……!!」

 

 

 

「ありがとう……私のことを愛してくれて……っ!

私とまた再会してくれてっ………!!!」

 

 

 

 

「俺だって……!ロキシーと会えて……結婚できで…っ……

ロキシーとの子供をつぐれで…っ…一緒に過ごせで……

幸せだった!!ありがどう……ロキシー!」

 

 

 

 

ロキシーは記憶を取り戻した。

そして最後に話せなかったことを沢山話した。

そして再会を喜び合った。

 

 

 

 

 

雨はまだ、止まないみたいだ。

 

 

 

 

 

 




─前世の記憶のある人物─
・オルステッド
・リーリャ
・ロキシー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。