転生の間にも三年【異世界で成り上がる予定なので美少女達と事前準備(意味深)しまくります】 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
私の名前はデジ・トラッカー……デジと皆から呼ばれている。
年齢は25歳。
クルップ公爵領で魔導具を作る工場に勤めている期間工である。
「ふう……今年で契約は終了か……職人としての枠に入ることができなかったな」
クルップ公爵領では工業が盛んであり、特に魔導具の製造が他の地域に比べて抜きん出ていた。
領内に魔物の領域もほぼ無く、冒険者の需要も少ないので、若い人達は工場労働者として働くことが殆ど……しかもクルップ公爵領は仕事に対して人口が多すぎる人余りが起こっており、学校で優秀な成績を納め、商会や工場に雇われないと、一生下働きなんてことも起こってしまう。
私も優秀とは言い難い能力だったが、運良く期間工という比較的高い賃金で期間中働くことが出来る職にありつき、仕事をすることができた。
学友であったリアとも付き合っているが、収入が安定しなければ結婚は難しいと言われていたので頭を抱えてしまう。
「はぁ……どうしたものか……」
「デジも落ちたのか?」
「ヒュースか」
私に声をかけてきたのはヒュース。
こいつも同じラインで働いていた期間工であり、【も】って事はヒュースも職人への試験に落ちた感じか。
「なぁデジ、クルップ公爵領でこれ以上働くとなると、体壊すし、結婚も夢のまた夢だよな」
「ああそうだな」
ベンチに座ってヒュースの話に相槌を打つが、将来が見えてこない。
リアも25歳……私と結婚をしようと彼女も紡績工場に働きに出ているが、生き遅れと呼ばれる年齢になってしまっている。
彼女の為にもどうにかして職人への転換試験に合格したかったが……。
「なあデジ……次の就職の為に職業案内所に行ったらこんなのを見つけたんだが」
「ん……開拓民募集のチラシか……開拓民は流石に……」
「いや、条件をよく見てみろ」
条件の部分を見てみると、そこには住居や食料支援……農具や生活用品に一時金まで出ると書かれていた。
「おいおい、これ本当かよ」
「俺も疑った。受付の人もこれほどの条件の開拓民募集は見たことがないから是非と言っていたが……人数の集まりが悪いらしい」
「なんでだ? これほどの条件だろ?」
「いや、条件良すぎるから疑ってるんだよ。僻地に連れて行かれたら結局条件破棄して農奴の様に働かされるんじゃないかって」
「……ありえなくは無い話だが……私は受けることにするぞ」
私にはもう選択肢は無い。
クルップ公爵領で彼女を養えないのなら別の土地に飛び出すしか無い!
「ヒュースはどうするんだ」
「デジが行くんだったら俺も応募してみようかな。ただ公爵領からフォーグライン辺境伯領のハーゲンシュタットって町まで行かないと行けないか」
「実費か?」
「いや、領主になるケッセルリンク男爵様と辺境伯様の折半で馬車を手配してくれたらしい。寄り合い馬車になるらしいが、歩きで行くよりだいぶマシだろう」
ヒュースから情報を聞き、私は開拓民募集について帰り際に職業案内所に行って、職員から情報を聞き出して、開拓民に応募したのだった。
それから2週間後。
彼女のリアは開拓民になることに不安を吐露していたが、このままだといつまで経っても結婚が出来ない為、賭けに出ることを承諾してもらった。
うちの町からは40人ほどが開拓民募集に参加するらしく、10人が乗れる寄り合い馬車に乗り込んで、ハーゲンシュタットの町を目指す。
馬車に乗っているので、歩くよりは疲れないが、それでも体調不良になったり、食事も村に寄れない時は制限されてしまう。
「まぁ普段の飯とあまり味は変わらないか」
公爵領の食事は安く量が作られることに重点が置かれているため、食事の質はお世辞にも高くなかった。
白パンを労働者でも食べられるのが良い点だと言われていたが、混ぜ物がされていたので、白パンと言っても味や食感は悪かったし、労働者階級が購入できる値段の食材からしても良くない。
うちの様に共働きの場合も多く、舌が馬鹿になっていたので、移動中の食事もあんまり苦にはならなかった。
約10日で公爵領を抜けて、南部の辺境伯領へと入る。
最初のうちは特に変化はなかったが、南に下るにつれて、村で食べられる食事の質が上がり、物価が安く感じた。
公爵領での期間工の月収が金貨2枚と銀貨7枚、リアの月収が金貨1枚と銀貨9枚だったからうちらは金貨4枚と銀貨6枚の収入があったが、家賃で金貨1枚を取られ、食費に金貨1枚、その他雑費で銀貨8枚を使い、貯蓄は金貨1枚と銀貨8枚……一見多い様に見えるが、病気になって働けなくなったりを考えるとこれでもギリギリの給料であった。
一応私とリアは結婚資金として白金貨1枚と金貨2枚を貯めていたが、貯金を引き出して持ち運んでいる。
村で食事をしたり、宿に泊まったりするのにお金がかかるため、移動支援を受けていても、ある程度はお金を使ってしまう。
公爵領の頃は宿1泊銀貨3枚もすることがあったが、辺境伯領に入ると夕食と朝食が付いて銀貨1枚と大銅貨5枚と半額で済んでしまう。
それでいて食事が美味しいので、辺境伯領の方が仕事さえありつければ楽に暮らせるのでは?
等と思ったりもしてしまったが、コネが無いと冒険者や娼婦になるか、キツイ鉱山労働者、開拓団のどれかになるしか無いと馬車を運転している案内役の人に言われて現実を再認識する。
自分達が馬車に揺られること16日目、ハーゲンシュタットの町に到着し、馬車から降ろされると、今回の開拓団についての説明が辺境伯家の家臣の方から言われた。
曰く、集団で移住することになるので、予定日までは指定された宿で待機してもらい、予定日の正午に移住者は西門に集まり、ケッセルリンク男爵が用意する移動手段で移動していくのだとか。
まぁまた馬車になるだろう。
説明によるとハーゲンシュタットの町から1250キロ離れた大陸の南西部の未開発地域……ステラリアと呼ばれる場所に向かうらしい。
「ステラリア!?」
「知ってるのか? ヒュース?」
一緒に移住するヒュースが怯えていたので聞くと、ステラリアには凶悪な魔物が大量に蔓延り、過去幾度と開拓に失敗した歴史がある地域らしい。
ヒュースの言葉に周囲の人達もざわつき始めるが、説明をしてくれている人は好条件の理由が危険を伴うためであることと、安全性に関してはケッセルリンク男爵とその仲間達は9歳でワイバーンを数百頭討伐して、辺境伯家に納めた実績があり、ハーゲンシュタットの町では知らない人が居ないくらいの英雄らしい。
なのでハーゲンシュタットの町の冒険者なんかは、この開拓団は開拓成功率が高く、しかも好条件だからと応募が殺到したらしく、町や噂を聞きつけた周囲の村から規定の1000名以上の応募が殺到し、辺境伯様がいきなり冒険者がごっそり居なくなられるのも困るからと制限をかけたらしい。
第一陣は公爵領から来る開拓予定者500人と応募を運良く突破した500人、あとハーゲンシュタットの教会の孤児達約300人の合計約1300人が移住するらしい。
とりあえず予定日は1週間後なので、私とリア、それにヒュースは妖精の止まり木という宿に滞在することになるのだった。