転生の間にも三年【異世界で成り上がる予定なので美少女達と事前準備(意味深)しまくります】   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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転生者のライラック

「交代だよ」

 

 一番最初に夜警をしていたマーシーさんが俺を起こしに来た。

 

 俺は魔法で眠気を飛ばし、意識を明白にすると外の焚き火に向かう。

 

 俺と一緒に夜警を行うライラックさんが地面に座って焚き火に木の枝を焚べていた。

 

「どうもよろしくお願いします」

 

「うん」

 

 俺も近くに座りながら焚き火に当たって体を温める。

 

 冬が終わり、春になったとは言え、まだ少し肌寒いのである。

 

「良ければお茶でも飲みますか?」

 

「貰えるなら」

 

 ライラックさんは表情を変えずに焚き火を見つめている。

 

 俺は異空間から乾燥させた桑の葉を取り出すと魔法で煎じてコップに注いでいく。

 

「どうぞ」

 

「うん、ありがとう」

 

 温かいお茶を啜りながら焚き火を見つめる。

 

 ちょっと気まずい。

 

 俺等と一番歳が近いライラックさんであるが、ポーカーフェイスなので表情が読みにくい。

 

 まだ幼さは抜けてないが、将来は美人さんになりそうな顔立ちはしているが……。

 

 そんな事を考えているとライラックさんが話しかけてきた。

 

「ねぇ……日本もしくは南部総合高校のどちらかに聞き覚えはありますか?」

 

「……ライラックさん、もしかしてあなたも転生者なんですか」

 

「あなたもということはナツさんも転生者なのですね……高校の方は知ってますか?」

 

「いや、その高校は知らないけど」

 

 するとライラックさんの表情が緩む。

 

 手で顔を覆い涙を流しているようだ。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「いえ……久しぶりに元日本人の方に会えて嬉しくて……」

 

 彼女の話を聞くと、修学旅行中のバスが崖から転落して、気がついたらテレビのある部屋に全裸で現れることになったらしく、そこからは全員パニックになり、何が何だか分からないうちに転生することになったらしい。

 

「今思うとあの空間は何か意味があったのかと思います。ただ私はそれを有効活用することができなくて……」

 

「俺達もライラックさんとは別の空間にアキやシュネ、メアリー達と一緒に飛ばされました。死因はコンビニに突っ込んできた車に引かれてですね。まぁあの空間……俺達は神の間とか転生の間って呼んでいるんですけど、あそこは異世界に転生するための準備を行う空間です」

 

「やっぱり……そうでしたか」

 

「俺達はあの空間に3年閉じこもって魔法の練習に勤しみました。魔法は精神に依存するので精神体になっていたあの空間での魔法の練習が、俺達が今ワイバーンを倒せる強さを得た理由になります」

 

「なるほど……そういうわけだったんですね……同じ転生者でもこれほど技量が違うわけだ。そういうチートかと思いました」

 

「チートは俺はバレているので話しますが空間魔法の才能です。神の間で育てた魔力を元にこの世界に来てから空間魔法は育てました。もっとも肉体があるので魔力の出力はまだ落ちているんですがね」

 

「あれでまだ完全ではないのですか……」

 

「ええ、まぁ全力を出すと地形が変わってしまうのでね……それとチートに関しては同じ転生者でも言わないほうが良いですよ。その能力を巡って争いになったりする場合もありますし」

 

「ナツさんはチートを選んでから転生したのですよね?」

 

「ええ、まぁ」

 

「私の場合それすらもしないで転生することになったのでランダムで……」

 

「なるほど」

 

 あんまり活用できるチートではなかったらしい。

 

 それか物資系のチートで、自分が使う前に家族に売られてしまっているなんて場合もある。

 

 まぁそんな状態で転生したのに、チートの事を知っているということは一応チートは持っているのだろうけど。

 

「魔力の上げ方とか知っていたら教えて欲しいのですが……」

 

「ん? 魔力を空っぽになるまで使って寝る。そしてちゃんと食事を取れば徐々に上がっていく筈だ。ただ魔力は才能によって成長の鈍化が激しくなるらしく、ずっと伸び続ける人も居れば、殆ど魔力が伸びない人も居る。幼いうちから魔力を伸ばし続けた方が成長の鈍化も遅いらしいけど」

 

「なるほど……良いことを聞けました。ところでアキさんやメアリーさん、シュネさんの3人は前世からの付き合いがあるというのでよろしいでしょうか」

 

「ああ、前世からの付き合いがある。まぁ紆余曲折あって今は全員彼女ということになっているけどな。俺が成り上がりたいのも地位が無いと重婚を公にできないからだからさ」

 

「なるほど……成り上がりたいと思う理由がわかりました」

 

「ライラックさんは成り上がりにはあまり興味がない感じですか?」

 

「そうですね……いや、成り上がろうとは思っているんですけど、道筋があまり見えていない感じで……アルフレッド達と冒険者を組んだのも冒険者予備校で比較的仲が良かったからなのと、現実が見えているパーティーなので無茶をしないだろうと思ったからでして」

 

「なるほど……確かにアルフレッドさん達を見ているとよく言うと堅実そうだという印象を持ちますね」

 

「無茶をしないだけ良いですよ。冒険者になろうとする人の多くは無茶をして亡くなる方も多いので」

 

 俺は異空間から木苺のジャムパイを取り出し、ライラックさんに器ごと渡す。

 

「良ければどうぞ」

 

「いただきます」

 

 サクサクと食べながらライラックさんに聞く。

 

 アルフレッドさんが俺達がクランを作ったら入れて欲しいと言っていたが、ライラックさんは参加しますか……と。

 

 冒険者予備校の教育レベルは分からないが、日本の高校までの教育を受けていたのなら、クランの事務仕事を回すこともできるでしょうにと問いかける。

 

「正直冒険者として依頼者と契約を結んだり、商人と交渉をしたりするのは慣れましたし、前世の知識が生かせる場面も多いです。クランを作るのであれば参加したいとは思ってます。ただナツさんはどの様な手段で成り上がるつもりですか?」

 

「うーん、それは考えている途中なんだよな。大貴族の家臣として貴族を狙うか、開拓をして貴族を狙うか……多分このどっちかだと思うけど、とりあえず冒険者予備校で伝手を色々作っていって実績を挙げていく事からスタートかな」

 

「その方が良いでしょうね……」

 

 その後はライラックさんと俺の出生について話し合った。

 

 俺が小作人出身で紆余曲折あって村を出た話は良いとして、ライラックさんも町に近い村で育ったらしく、父親が冒険者だったので父親に狩りの仕方を教わり、冒険者予備校を通って旦那でも捕まえてこいと言われたらしい。

 

 そのまま家を出て冒険者予備校を卒業し、銀の翼のメンバーと1年冒険をして慣れてきたため、アルフレッドさんがシルバーランクに上がるために冒険者ギルドからの評価が上がる依頼を受けていこうということで今回のクムさんの護衛を受けたのだと。

 

 アルフレッドさんとマーシーさんの目標は冒険者を引退しても食べていける食い扶持を確保することと、子供を育てられる蓄財をすること。

 

 ジャズさんはシルバーランクの冒険者になってどこかの村の用心棒をやりながらそこそこの家の娘と結婚できれば良いなと考えているらしい。

 

 命のやり取りをする世界だからこそまだ16かそこらの年齢なのに将来のことについて詳しく決めている。

 

「私も含めて銀の翼のメンバーは安定思考だからこそ、ワイバーンを倒せるナツさん達と伝手を得られたのは大きいと思うわ。どんな形でもナツさんが貴族になったら、家臣にしてもらおうって打算もあるだろうけど」

 

「なるほどな……あ、あと俺達が貴族になりたいのはシュネの家が没落した貴族で、その復興を目的としているというのもある」

 

「なるほど……とにかくこれから町に着くまでの1ヶ月色々あると思うけどよろしく頼むわね」

 

「おう」

 

 

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