クルスはスーという冒険者として王国のエランテルで情報を収集していた。
いまは、偽装として白銀髪に青の瞳、顔には仮面を被りローブを羽織ったシルバーの冒険者である。
今回は情報収集のため目立たずひそかに行動することになっている。
冒険者ギルドに入ったとき、漆黒の剣とやたらと存在感のある漆黒のフルプレート姿の冒険者、黒髪の女、ンフィーレア・バレアレが遠巻きに注目されているのを見た。
スーは近くにいる冒険者にこっそり状況を確認すると、ンフィーレアがあの漆黒のフルプレート姿の冒険者に護衛依頼をしたらしい。
スーはカッパーの冒険者になぜと怪しんだものの漆黒の剣も一緒に同行するとのことで見過ごすことにした。
黒のフルプレート姿の冒険者も気になるが、まずは冒険者たちに情報を聞き出すほうが先である。
その日から数日しばらく冒険者に情報を聞いたが、結局なにも情報が得られないまま過ぎていくのだった。
夕方になり、スーは宿屋に戻る途中にでかいハムスターに乗った黒のフルプレート姿の冒険者を見かけた。
~あれは、噂に聞いたことがある。森の賢王じゃないか?~
その事実に驚き、黒のフルプレートの冒険者の実力を認識し警戒を強めた。
~あの者何者なんだ。そういえばンフィーレアが護衛依頼をしていたな。今日は墳墓も
魔法使いの情報も得られなかったし、あの者について少し聞いておくか。~
スーは何度かエランテルでも諜報活動をしているためその街の住人とも比較的知り合い程度には親しかった。
ンフィーレアの店には何度がポーションを買いに行き何度か顔見知りの客といった関係である。
スーは、一緒に行った黒いフルプレートが街に帰ってきているなら、ンフィーレアも店にいるかもしれないと、その足でンフィーレアの店に向かった。
店の扉を開けると、暗く静かでスーはもう閉店したのではないかと思った。しかし、閉店したのに
扉が空いてること、いつもはこの時間帯は店がまだ開いてることを思い出し首をひねりながら声をかける。
「すみませーん」
返事がない様子を見て、奥の部屋へと様子を見に行こうとしたそのとき奥から物音がした。
スーはだれかいるのかもしれないと思い、奥の扉をおずおずと開く。
次の瞬間、スーの目に残虐な光景が広がり、目を見開く。
数日前に見かけた漆黒の剣のメンバー達が血だらけで倒れている。
その横に倒れたンフィーレアと、知らない金髪の女と坊主の男が立っていた。
スーは内心頭を抱えながら、この場をどう切り抜けるか頭を回転させた。
この男と女の実力もなにもわからない状態で油断はできない以上
戦闘にもちこむのは危険であると判断した。
ンフィーレアを見捨てて逃げることも考えたがこの人物が貴重なタレント持ち
であることを思いだしなんとか助けることにした。
スーは自分の前で男と女がなにやら言い争ってるのを後目に
忍術を二つこっそり発動する。
~これで逃げ道は整った~
スーは内心笑いながらその時を待つ。
そのころ、坊主の男と金髪の女は言い争っていた。
坊主の男は、金髪の女に怒鳴った。
「おまえが時間をかけるから余計なものがきたではないか!」
金髪の女はにやりと笑い「あららーごめんねー、じゃあこいつもころせば問題ないんじゃない?」
と坊主の男に話す。
坊主の男はそういう問題ではない!とため息を吐き、ンフィーレアを掴み女に告げた。
「さっさと殺せ。わたしはこいつを連れていく」
女は「はいはい」と言いながらスーに近づこうとしたそのとき、足を止めた。
突然、扉の外から大勢の人が近づいてくる声と足音が聞こえたのだ。見ると街の見回りをしている
騎士達が大勢こちらに駆け寄ってきている。
金髪の女と坊主の男は驚きながらも目を見合わせ、慌ててンフィーリアとともにその場から消えた。
スーは驚いて辺りを見回し、部屋に入ってきた騎士達に犯人と間違えられ取り押さえられた。
その隙に坊主の男にかけられた魔法で透明化した金髪の女はンフィーリアを連れて部屋を立ち去ったのだった。
数分後、スーは一つの忍術をそっと解いた。それは幻術の類であり、瞬く間にその場にいた騎士達は消えた。
そして、スーは”本物のンフィーリア”を担いで宿屋に向かったのだった。
スーがかけた忍術の二つ目は影分身と変化の術であるが、”本物のンフィーリア”と”偽物のンフィーリア”をこっそり入れ替えたのだった。
自室についたスーはンフィーリアをベッドに寝かせた。途中で路地裏でスー特製超回復薬を使ったため、ンフィーリアの体調には問題はないはずだ。
それよりも問題なのは今後ンフィーリアをどうするかである。
偽物のンフィーリアもいつ坊主男と金髪女に気付かれるか分からないため、早急にンフィーリアを安全な場所に保護する必要がある。
そこで帝国の伝令から伝言が届いた。ジルクニフから王都に向かうようにとのことであった。
~・・・完璧なタイミングだな~
スーは思わず苦笑した。
坊主男と金髪女に姿を見られているためスー自身は一端エランテルを離れようと考えていた。
スーは服装を変え、少し悩んだあと、ンフィーリアを担ぎステルスで冒険者ギルドに忍び込んだ。
二階のギルド長の執務室の前にンフィーリアを置きノックする。
人が近づいてくる音がしたのを確認後、スーはそっとその場を離れた。
~これで意識がないンフィーリアがギルド長に発見され死体もじきに見つかるだろう~
そのまま、スーはギルドを離れた。王都に足を向けようとしたときだった。
「失礼」
スーは声をかけられる。
振り向くと、例の漆黒のフルプレート姿の冒険者が黒髪の女を連れて声をかけてきていた。
「あ、いや・・君は今ギルドから出てきただろう。少し騒がしいと思ってね。なにがあったんだ?」
スーは内心警戒しながらも答える
「さあ?気になるのならギルドの様子をみてきたらどうだ」
それを聞いて黒髪の女がすごい形相でスーを睨みつけた。
「アイ・・モモン様になんて態度なの!ゴミムシの分際で!!」
スーはそれに対して冷静な表情を浮かべているが内心その名前に驚いていた。
~モモン?・・・それに今なにかいいかけたな~
スーは聞き覚えのあるその名前にかつてのしつこかったプレイヤーを思い出し、漆黒のフルプレートの男をまじまじと見つめ、気のせいだろうと考え直した。
スーは聞かなかったことにした。ただでさえ現状問題が山積みなのにあのややこしいプレイヤーのことなんて考えたくなかったのである。
漆黒のフルプレートの男は慌てて黒髪の女を止める。
「おい!そういうのはやめろといっただろう!」
そしてスーを見てまた話し出す。
「わたしの仲間が失礼をした、すまない。ところで、あなたは・・その・・
”うさぎという名前に聞き覚えはないか?”
その瞬間スーは確信した。この男はモモンガであると。
幸いなことにモモンはスーがうさぎであることには気が付いていない様子である。
~ここは、穏便に知らないふりをしてこの場から離れよう~
スーは頭のなかですぐに算段を立てももんの質問に答えた。
「うさぎ?知らないな」
モモンはスーのことをじっと見ていたが
「そうか、突然すまなかったな。それでは私たちはギルドの様子を見てくるとしよう」
とスーに話し黒髪の女を連れてギルドに入っていった。
スーは分かれるや否や足早に王都へ向かうのだった。
うさぎは逃げられたか?