知らないところで色々探られてることもしらず、クリスは帝都の自室でぐったりしていた。
問題は山積みではあるが、ンフィーリエの件もモモンガの件もなんとか自分の存在を知られずに動くことができたのは上々であった。
クリスは王都に来る前に転移のスクロールで一度帝都に戻った。
モモンガというプレイヤーのことやアインズ・ウール・ゴウンのことをジルクニフに報告していた。
正直ユグドラシルにいたときはモモンガについてはともかくアインズ・ウール・ゴウンというギルドについてはあまり詳しく知らなかったため、詳細な情報はつたえられなかった。
しかし、クリスの「アインズ・ウール・ゴウンという魔法使いがプレイヤーである可能性が高い」という情報からジルクニフは各国との同盟を急ぐのであった。
またジルクニフは、本来であれば墳墓に冒険者かワーカーを派遣しようと考えていた。
しかし墳墓とカルネ村の近さや出現した時期を考慮し、もしかしたらそのプレイヤーの拠点が墳墓なのかもしれないと考察した。
そのためプレイヤーの拠点にレベルの低いワーカーが行っても足手まといにしかならないと思い、それを取りやめた。
ジルクニフ自身が墳墓に直接向かうことも考えたが、危険であると周りから言われたため、まず使者を使わすことになった。主に帝国の権力者である皇女クリスと帝国の最高戦力であるフールーダーが候補に挙がった。
クリスはアインズ・ウール・ゴーン=モモンと気づいており、モモンガに関係があるかもしれない墳墓に向かうことを嫌い、最初は抵抗した。
しかし、プレイヤーになんとか交渉できそうなのが最高戦力のこの二名である以上クリスの意志は無視され、結局フールーダとクリスで行かされることになった。
早朝、クリスとフールーダは墳墓へと旅立った。
片方は死にそうな顔を、片方は顔を輝かせながら。
ジルクニフはそれを見ながら、無事を祈るように見送った。そして墳墓に先ぶれを出したのだった。
現在、クリスとフールーダは墳墓へと向かう途中である。フールーダを見ると出発してからしばらくたつのに、興奮が抑えきれないようだ。
クリスは何事もおきないことを願いながら墳墓に向かうのだった。
クリスとフールーダは昼頃に墳墓に到着した。
入り口には、女のメイドが並んでいる。
メイドはクリスとフールーダを見て挨拶した。
「おまちしておりました。クリスティーヌ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇女殿下、フールーダ・パラダイン様、只今主であるアインズ様がいらっしゃいます。いましばらくおまちください」
クリスは返答する。
「かまわない、出迎え感謝する」
クリスは内心冷や汗をかく。
~とにかく無事にここからでられること、うさぎのことが漏れないことが最優先だ。~
しばらくしてからメイドが話しかけた。
「おまたせいたしました。アインズ様の準備が整いましたのでどうぞ」
巨大な亀裂の裂け目を通り、立派な扉を抜けると豪華絢爛な部屋に通された。
奥へと向かう間にもクリスは思考を回転させる。
一方奥には異形の部下たちに囲まれて王座にアインズが座っていた。
部下たちは冷徹な顔で控えていたが、そのなかにいるアルベドがクルスを見た瞬間に唖然とした表情をし、
「うさぎさま・・?」とつぶやいた。
アインズはピクっと身動ぎし、アルベドの言葉に内心驚いた。
~なぜアルベドがうさぎさんのことを知ってるんだ。~
アインズは少し考えたあと、自分がアルベドの設定に自分とうさぎのことを書き換えたことを思い出した。
~なるほど。アルベドはうさぎさんのことがわかるのか。つまりあの女性は・・~
嬉しさが体中を駆け巡り、一瞬で鎮静された。
~うさぎさん、探しましたよ。ようやく見つけた~
アインズはアルベドにうさぎと二人で話すため協力するように命じた。
アルベドは潤んだ目で頷き、王座まで到着した2人を確認後、アインズに話した。
「アインズ様、バハルス帝国皇女クリスティーヌ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスがお目通り願いたいとのことです」
アルベドはクリスに話しかける。
「よくこられた。クリスティーヌ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿。わたしはこのナザリック地下大墳墓が主人、アインズ・ウール・ゴウン」
クリスはアインズを見て綺麗に礼をした。
「壮大な歓迎をしていただき感謝申し上げます。アインズ・ウール・ゴウン様」
そこで、デミウルゴスが話す。
「アインズ様、下等な人間ごときがアインズ様と同じ目線で話すのは無礼かと」
すかさず、アルベドが憤怒の顔でデミウルゴスに言う。
「やめなさい!デミウルゴス!」
その後にアインズも言葉をかける。
「デミウルゴス、この方たちはわたしの客人だ。失礼な言動は慎め」
デミウルゴスは動揺し即座にアインズに謝る。
アインズはクリスを見て言った。
「失礼をした。部下を御せなかったわたしの不徳。許していただけないか。お望みとあらば頭を下げることも辞さない」
それを聞いたアインズの部下達は驚いている。
クリスはその言葉を聞き、答えた。
「謝罪の必要はありません。アインズ様。」
クリスはまっすぐな目でアインズを見て言った。
「わたくしはこの場に貴殿と自らの国との友好を築くために参りました。わたくしの兄皇帝ジルクニフは貴殿と友好の証に同盟を築きたいと考えております。もし貴殿が友好を築いていただけるのでしたら、その前ではこのようなこと些細な事です。」
アインズはそれを聞き、嬉しそうに答えた。
「それはありがたい。こちらとしても”あなたと”友好を築きたいと思っていたところだ。それでは、後日帝国に書面を出そう。」
クリスはそれを聞いてほっとしたような表情をし、礼をした。
「はい、アインズ様、あなたのお心遣いに感謝いたしたします。」
アインズはクリスに話した。
「それではクリスティーヌ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿。」
クリスはアインズに話した。
「クリスティーヌで結構です」
アインスは話す。
「ではクリスティーヌ殿、遠方から来ていただいたあなたに少しばかりの歓迎をさせていただきたい。そちらのフールーダ・パラダイン殿には少し渡したいものがある。アルベド、フールーダ殿を案内してくれ」
アルベドは頷いたあとにフールーダを連れていき、クリスはアインズに別の部屋に案内された。
クリスが部屋に入ると、アインズは静かにカギをかけ、結界を張り防音の魔法をかけた。
アインズはクリスに話しかける。
「クリスティーヌ殿、今お茶を用意している。座ってくれ。」
クリスはアインズに案内され席に座った。
クリスの表情は少しほっとして様子だ。
「クリスティーヌ殿、じつは帝国に文を送りたいんだが、あなたはGMコールを使えるか」
クリスは怪訝な表情で答える。
「GMコール・・?”なぜGMコールが必要なのでしょうか?”」
アインズはそれを聞いて表情が変わる。
クリスははっとした表情をしてなにかを取り出そうとする。
アインズは瞬時にクリスに近づき、手を取った。
クリスの手から転移の巻物がこぼれおちる。
アインズはうさぎの手を取り引き寄せて言った。
「うさぎさん!やっとみつけた!」
クリスは顔を青白くして言った。
~やってしまった。でもせめてうさぎであることはばれたくない。~
「うさぎ?・・・なんのことでしょうか」
クリスの上からアインズの不機嫌そうな声が聞こえた。
「なんでごまかそうとするんですか?せっかく会えたのに」
アインズを見るとその目が赤々と輝いているのが見え、クリスは鳥肌が立つ。
「うさぎさん、ずっと探していました。」
そして、アインズが巻物を拾い上げる。
「この巻物、転移の巻物ですよね。なんで逃げようとしたんですか。」
クリスが距離を取ろうとするが、アインズはクリスを抱きしめて言った。
「この部屋は特別な結界を張ってるんです。この部屋からは出られません」
アインズは、クリスの腰にまわした腕に力をこめた。
「うさぎさん、俺と話してくれますよね」
クリスは目をつむり、うなずいた。
それからクリスはアインズに何度も言い聞かせ、逃げないことを約束しなんとか引き離すことに成功した。
今はクリスとアインズは向かい合わせの席に座っている。
クリスはアインズに根根掘り葉掘り聞かれ、自分のことを話した。
ユグドラシル終了後皇女に転生したこと、自分のステータスを引き継いだこと。ただし、アインズには不死のことは内緒にしていた。
アインズは最初こそうさぎの兄という存在に少し不機嫌そうな表情だったが、ステータスを引き継いでることを知ると嬉しそうに言った。
「ステータスも引き継いでるんですね。あのとき、最初にうさぎさんに助けてもらったとき、うさぎさん本当にかっこよかったです。確かうさぎさんは忍者でしたよね。」
クリスは頷き、言った。
「まあ、あのときは本当に偶然通りかかっただけなんだけどな」
アインズは熱をこめた表情で言った。
「それでもうさぎさんは俺の命の恩人です。それだけではなくて、その後も相談に乗ってくれて俺を支えてくれましたよね。本当に感謝してます。」
アインズはローブから指輪を取り出して言った。
「うさぎさん、これを受け取ってもらえますか」
クリスは戸惑ったように言った。
「これは?」
アインズは笑顔で言った。
「アインズ・ウール・ゴウンの指輪です。うさぎさん、アインズ・ウール・ゴウンの仲間になってくれませんか。俺やっぱりうさぎさんにはそばにいてほしいです。」
クリスは一瞬驚いた表情を浮かべたがそっと断った。
「わたしにはうさぎの月がある。それに今は帝国の皇女だ。君のそばにはいることはできない。」
アインズはそれを聞いてご機嫌で言った。
「確かにユグドラシルではうさぎさんは結局仲間になってくれませんでした。でも今はうさぎさんにはギルドもない、自由の身のはずですよね?」
「それに帝国の件なら大丈夫です。同盟の条件にあなたの身柄を譲ることも書き加えておきますから」
うさぎはそれを聞いて少し引いていた。
~そういえばこのひとユグドラシル時代から粘着質だったな~
アインズは席を立ちそっとクリスに近づいていく。
クリスは反射条件で後ろに下がるが、壁につきあたり逃げられない。
アインズはクリスの至近距離まで近づき、肩に手を置いて言った。
「うさぎさん、今度こそこの指輪もらってくれますよね?」
クリスは内心恐怖で涙目になりながら言った。
「せ・・せめて兄様に説明をする機会をくれないか」
アインズは少し考え、クリスにさらに顔を近づけ低い声で言った。
「説明をしたら仲間になってくれますか」
クリスは顔をこわばらせて言う。
「わ、わかった」
アインズはクリスの耳元で言った。
「楽しみにしてますね」
するっと肩を撫でて手を離した。
その後話は終わったというばかりにアインズはメイドを部屋へ入れた。
ご機嫌なアインズに見送られ、その後クリスはげっそりしながら墳墓を後にするのであった。
帝国に帰ったクリスは真っ青になったジルクニフからモモンガから来た書面を読まされる。
そこには、同盟の承諾とその際に皇女の身柄を渡してほしいということ。皇女の身柄を渡さない場合宣戦布告して国を破壊すると書かれていた。
ジルクニフは青白い顔のままクリスに言った。
「どうゆう交渉をしてきたんだ・・おまえ・・」
クリスはバツが悪そうに言った。
「普通に同盟を結ぼうと思ったんですが・・すみません、わたしの正体がばれました」
ジルクニフは目を剝いてクリスを見つめ、頭を抱えながら溜息をついた。
「こうなった以上、おまえをアインズとやらに送るしかないな」
クリスは嫌そうに言う。
「本当ですか?」
ジルクニフはやつれた顔で言った。
「当たり前だ。いくらおまえが貴重なプレイヤーだとしても、おまえがアインズのところに行かないと帝国がなくなるんだぞ」
クリスはそれを見て、すこし考えたあと溜息をはきながら言った。
「しょうがないですね。わかりました。そのように彼には送ってください」
ジルクニフはクリスを疑うように見た。
「いいのか?わたしから言っといてなんだが、おまえはあの者を嫌っているのではないのか」
クリスはジルクニフをじっと見て言った。
「うっとおしいとは思ってますけど、兄様と帝国にはかえられませんから」
ジルクニフは下を向き、涙を滲ませながら言った。
「・・・感謝する」
クリスはそれを見てわずかに笑いながら言った。
「いいえ」
その日のうちに帝国はアインズに手紙の返事を送り、同盟が書面上で成立した。
そして、クリスが墳墓に向かう当日
ジルクニフは火急の知らせで目が覚めた。
「なに!クリスがいないだと!!!」
報告をした騎士がジルクニフの剣幕に怯えながら答える。
「はい、今朝侍女がクリスティーヌ様の寝室に行かれたらいらっしゃらなかったと」
ジルクニフはすさまじい形相で騎士に尋ねた。
「城内はさがしたのか!」
騎士は怯えながら答えた。
「はい、探していますが現在見つかっておりません」
ジルクニフは頭を抱えて、叫んだ。
「クリスティーヌ!!!あいつ!!!!国内と周辺を探せ!決して逃がすな!」
騎士は「はっ」と言ってすぐに去っていった。
ジルクニフの頭に帝国滅亡の文字が浮かんだ。
クリスside
そのころ、クリスは上手いこと帝国から脱出していた。
今は変装して法国に向かう商人の馬車に紛れ込んでいる最中だ。
~なんかモモンガさんのところにはどうしても行ってはいけない気がするんだよね~
クリスは残してきたジルクニフを思い、そっと心の中で謝るのだった。
モモンガside
クリスを監視させていた部下からアインズにクリス逃走の知らせが届いたとき
モモンガは驚き、またとない幸運に歓喜した。
これでうさぎさんはわたしのものだ
「ふふッ・・・ふふふふふふふふふふ」
笑いだしたモモンガに部屋に入ってきたアルベドは心配そうに声をかけた。
「アインズ様、うさぎ様を追いますか?」
アインズはアルベドに笑顔で伝える
「いや、わたしがいく」
アインズは甘い声で言った。
「悪い子にはおしおきだな・・・」
その目は爛爛と輝いていた。
クリスside
クリスはふと寒気がした。
「なんだ?・・・」
外を確認するように見ようとすると、急に馬車の馬がけたたましく鳴き止まった。
「なんだっ!?なにがあったんだ!???」
急いで馬車から降りようとした
そのとき目の前に金色の光に輪が現れ、赤いローブが見えた。
顔が青ざめた
逃げ出そうと足に力を入れたとき
「うさぎさん」
甘い声に足をとめた
振り返ると血だらけのジルクニフに杖を向けるアインズがいた
「お兄様!!!」
悲痛な声をあげるクリスに
死者の吐息のような冷たい空気をまとい
骨の手が忍び寄る
「つかまえた」
次の瞬間クリスは意識を失った
モモンガside
~やっとだ・・・やっと手に入れた~
モモンガは満足そうにうさぎを抱きかかえる。
うさぎは意識を失っている。
その左手の薬指にそっとアインズ・ウール・ゴウンの指輪をはめる。
そして首に隷属の首輪をはめた。
がちゃんっ
アインズはその細い首に似合わない固い首輪をそっと撫で笑った。
~これで、もう逃げられないですね。うさぎさん~
それ以降、うさぎの姿を見た者は誰もいなかった。
うさぎは暗いアインズの部屋に閉ざされ、一生をアインズのもとで過ごすことになる。
その後、アインズ・ウール・ゴウン魔道国はバハルス帝国の謝罪を受け入れ、バハルス帝国は属国となり、暗い歴史を辿るのであった。
一度モモンガさんにナザリックに閉じ込められたらバッドエンドですぐ終わってしまったのでごみ箱に投げ捨てた案です。お納めください。